TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう 作:ひのかぜ
直接口にする事はある意味恐ろしくて出来ないが、正直勘弁して欲しかった。
秘書である大林さんから、チェイスさんの友人が現役の護衛艦1隻と輸送艦1隻を伴い、日本に遊びに来たいと言っているとの話を聞いた時の、私の心の中である。
結論から言ってしまえば、今日から5日の猶予をもらう代わりに友人……イラさんの来訪自体は承認した。ギリギリにはなるが、2隻の艦艇にはチェイスさんの【モド】と呼ばれる宇宙船の隣に、何とか停泊してもらう事で決着がつく。
停泊する場所は水上でも良かったらしいが、これ以上厳重警備するべき箇所を増やしたくはなかったし、乗組員の方々からしても仲間の艦艇が側に居た方が安心するだろうとの考えから、このように閣議決定した。
「現役の星間国家の軍艦……あれ1隻で、地球の軍隊をまとめて相手取ってもお釣りが来るだろう。おぉ、怖い怖い」
「武装が尋常ではありませんでしたものね。しかも、あれで巡洋艦と言うのですから」
「411m……アメリカ最強の原子力空母よりも大きい。輸送艦に至っては526m……首相、アメリカとイギリスには勿論共有済みでしょう?」
「無論です。なお、両国共に「彼女の友人の来訪も国家を挙げて歓迎しよう」と、共有後すぐに声明を出したとの事で」
「なるほど。無難な選択肢を選んだものだな、米国も英国も」
アストラ級航宙巡洋艦。ワープしながら目標に向かうミサイル、膨大な熱量を伴うビーム砲、開発途中である地球のそれよりも遥かに強力無比なレールガン、某SF作品に登場する艦艇の主砲のような特殊な砲。
攻撃兵器のみならずそれらに対抗するための、超電磁バリアーなる兵器を筆頭とした防御兵器も存在していたし、各種通信機器やAIも地球とは比べるのもおこがましいくらいに強力。
何なら、艦艇搭載のAIは普通に自由意思を持っていて、しようと思えば機械の身体に意思を移し、人間と遜色ないやり取りだって出来るらしい。
それでいて、我々地球人が考えるような問題は初期ならともかく、今現在は殆んど発生しないと言うのだから、まさに衝撃でしかなかった。
で、ノア級輸送艦の方は非戦闘艦ではあるものの、防御力は宇宙空間を航行する船である以上、かなり高いらしい。地球の通常のミサイル程度では、例え被弾しても航行に支障をきたす事はないという。
なお、大林さん経由で私たちに教えてくれたこの情報は、リーガル大帝国の一般人でも書籍などで容易に知り得るもの。つまるところ、それだけ技術が成熟している証でもある。
もしくは、技術力に差があり過ぎて、万が一核心技術がバレても全く問題にならないと言う可能性もあり得るか。
いや、リーガル大帝国以外にも同等の技術力を持った星間国家はあると、チェイスさんは言っていた。
そうなると、やはり前者としか考えられない。軍人である彼女がバレてはまずい、秘匿性の高い情報をそこら辺で喋るような事はしないだろうし。
「それで、イラと言う少女の趣味嗜好はどうなのだ? チェイスと馬が合うのなら、似通っている可能性は大きそうだが」
「大まかには同じです。違う点を申し上げますと、強くて格好いい動物には目がないというところでしょう。ふれ合ってみたいとも」
「首相。その感覚は、地球人のそれと似ている感じなのか?」
「そうですね。地球の動物データを参照してもらったところ、いわゆる猛獣や猛禽類がそれに当たります」
「ふむ……容易ではあるが、容易ではないようだ」
こんな事を私から話題に出しておいてなんだが、今はそれよりも伝えられたイラさんの性格や趣味嗜好に関する情報を共有し、対策を立てる方が重要だ。
曰く、彼女はチェイスさんにとっては唯一無二とも呼べる大の親友であり、お互いに数々の戦場で背中を預けあった戦友。
また、チェイスさんと同様に女帝陛下に目をかけられている存在でもあり、具体的には私的な宇宙旅行で軍艦を同伴させたり、場合によっては国家の方針に多少なりとも影響を及ぼせるかもしれないとの事。
万が一、こちらにのみ非がある大きな失態を犯し、イラさんが感じる不快感が限界を超えてしまえば、最悪地球が終わる。
そうでなくとも、悪い意味で人類史に私の名を残すのみならず、日本と言う国が後世まで語り次がれる羽目になってしまう可能性は、悲しきかな低いとは断言出来ない。
とは言え、幸いにもチェイスさんと同程度の穏やかさであり、精神的感覚も地球人に似通った部分があるとの事。
余程調子に乗って挑発を繰り返したり、こちらから攻撃さえしなければ、過剰に恐れる必要もないか。
まあ、そうやって自分に言い聞かせたとしても、自分の一挙手一投足が日本や地球の運命に大きな影響を与えると思う事で生じる緊張と恐怖感は、いつまで経っても慣れるものではなかったが。
「国民の反応はどうなのですか? 首相」
「全体的では、悪くはないですね。ただ、軍艦での来訪と言う事もあり、過激な者はどうしても増えてくる。無論、これまで以上の対策は必須でしょう」
「やはりか……では、全国の警察や公安に取り締まりを強化するように伝えよう。ある程度の批判は間違いなく出るだろうが、そんな事を心配している場合ではない」
「下手すれば、地球滅亡のスイッチを我々が押しかねませんからねぇ。そうでなくとも、各国からの目があるのですし」
「はぁ……マジでキツいなぁ、この仕事。いやまあ、首相に比べれば天と地の差なんだけども」
ちなみに、来訪して日本旅行を楽しむ宇宙人が1人増える事に関して、国民の反応は上々だ。アメリカやイギリスの一般人に関しても、両国首脳曰くそれなりに良い方との事らしい。
なお、今回の訪問対象外となっている国の人々の反応は、取り敢えず考えない事にしている。そこまで考えて行動なんてしていたら、全く以てきりがないのだから。
(とにもかくにも、チェイスさんたちの日本滞在は成功させなければ、未来はない!)
首相に就任したばかりで、こんな素晴らしい大役を任されてしまった自分の運の悪さを恨めしく思いつつ、改めて何事もなくこのバトンをアメリカに渡せるよう、努力していく事を心の中で私は誓うのだった。
本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?
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