TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう 作:ひのかぜ
ありがたい事に、現役のアストラ級航宙巡洋艦1隻の護衛を伴ったイラの来訪は、大林さんのお陰で本矢首相に割とすぐに承認された。
それも、私が大林さん経由で相談を持ちかけてからたったの5日で、各種準備を終わらせるとまで言ってくれたのだ。
本当に大丈夫なのか、無理そうならもっと期間を延ばしても良いし、最悪中止となっても何とかする旨を伝え、日本を満喫しながら待っていたら、本当に5日で準備が終わった。
本矢首相や閣僚の人、および日本政府の指令で準備にてんやわんやしながらも、凄まじい仕事の早さと正確性で動いてくれた人々には、本当に感謝しなければならない。
(いやぁ、本当に凄いね。間違いなく大変だっただろうし、後でお礼の動画を投稿しとこう)
加えて、日本の次に訪れるアメリカのジョージ大統領と、その次に訪れるイギリスのアリス首相にもイラの情報を即座に共有、来訪を歓迎する旨の発表をしてもらったのだ。
頼んでなかったのに私の意図を汲み取り、相談と許可取りを事前に済ませておいてくれたなんて、実にありがたい。
その分、日本にとって得となる何かを追加で提供出来れば良いけど、果たしてそれが本当に出来るだろうか。
「うーむ……雨、止みそうにありませんね。むしろ、強くなってきた気がします」
「はい。幸いにも、風はさほど吹いていませんが……この様子だと、歓迎の挨拶は手短に済ませた方が良いでしょう」
「確かに。身体の汚れは、入浴しさえすればすぐに綺麗になりますが、車内の水濡れや汚れはそうもいきませんし」
「お気遣いありがとうございます、チェイスさん」
そして、皆が一息つきたいかもしれないと考えた私が気遣って提案、各種準備が終わった日から1日置いた今日、2隻の巨大宇宙船が着陸する空き地の側でイラを迎え入れるため、本矢首相一行と私で待っていたのだ。
しかし、私の気遣いが駄目な方に作用してしまったのか、よりによって今日の天気は雨で、気温も13度前後とそれなりに低い。なお、降水確率は90~100%である。
決して油断する事なく、モドの高精度天候予測機能を使っていれば、もしくは本矢首相の好意を昨日素直に受け取っていたならば、まず間違いなくこの悪天候を回避出来ただろう。
2日後なら、普通に晴れとなっていたのが予測出来たから、尚更申し訳なく思う。
それについて少し前に謝った時、本矢首相は「お気になさらず居てください」と言ってくれたし、イラも「雨ごとき、別に気にしなくて良いのに!」も元気そうに声掛けしてくれたけど、これは私の反省するべき点である。
取り敢えず、イラ以外に友達を呼ぶ予定はないけれど……重要なお出かけやイベントの際は、しっかり天気予報をチェックするのを忘れないようにと、そう強く思った。
「さて、もうそろそろ……あっ。本矢首相、窓から上を見てください。来ました」
「これは……何と言う迫力……」
しょうもない世間話も交えつつ、暖かい車内でのんびりしながら待ち、デジタル時計が12時30分を示したとほぼ同時、空き地の上空100mの空間が不自然に歪み始め、ぼんやりと光を放ち始めるのを目撃した。
で、それからおよそ15秒が経った後、私にとっては見慣れた巨大な亜空間ゲートが徐々に全容を明らかとしたと同時、イラを乗せた護衛艦と輸送艦の2隻が中からその姿を現す。
職業柄、首都惑星などで何度も見た光景ではあるけれど、その迫力は見慣れたはずの私でも視線を向けざるを得ない程には凄かった。
ならば、初めて生でこれを見る本矢首相や、車内に居る護衛の職員さんや運転手さんが唖然とするのも無理はない。
他の黒い車に乗っている警備の人たちの様子は見えないけど、この様子だと同じように唖然としながら、窓から様子を窺っている事だろう。
(相変わらずだねぇ、この威容は)
2隻が完全に抜け出し、ゲートが役目を終えて閉じていくのと同時に反重力機構が作動、場所が大分モドとギリギリだという点があってか、降下速度はかなりゆっくりめだ。
だけど、それはそれで2隻の迫力を更に増やさせ、より多くの人たちに相当な威圧感を与える事となる。特に、地球人にとっては。
まあ、一部のSF好きな人にとっては威圧感などなんのその、逆に本物がやって来た事に対して、テンションを相当上げるに違いない。
「首相、あれがイラです! にしても、何であんな格好を……?」
「なるほど……分かりました。では、出ましょうか」
そして、空き地の範囲内ギリギリに2隻が無事に降り立ち、甲板から飛び降りた人影……イラが、私や本矢首相が乗るこの車に走って近づいて来たのを確認したらすぐ、傘などの雨具を身につけて外へと出る。
何故か飛行魔法を発動させたままな上に、頭上には煌めく輝きと魔力を放つ光輪を、格好も全体的に白系統で統一しているのが気になるけど、その理由は容易に推測出来る。
大方、月で待っている間に地球と言うか、日本のインターネットを暇潰しで覗いた時に目に入った、【天使】のイラストか何かに影響されたのだろう。
雪のような白髪に銀の瞳と言う元々の容姿も相まって、日本人への受けはそれなりに良さそうだ。アメリカやイギリスの人たちに対する受けは、ネットの反応を見てみなければ分からないけども。
「やっほー、チェイス! お出迎えありがとうね!」
「うん。待ってたよ、イラ」
「それと……貴方が、チェイスがハマった日本の本矢首相ですねっ! 私、魔翼族の【イラ・ノーテアス】と申します!」
「ええ、存じております。チェイスさん共々、日本旅行を思う存分お楽しみくださいね」
「はーい!」
相当楽しみにしていたのか、この場の誰よりも高いテンションで私や首相、警護の人たちにはしゃぎながら挨拶をするイラを見ながら、これからの日本旅行はとても賑やかなものになるだろうと、私はそう実感した。
本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?
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