TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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激マズ栄養補助食

 これといったトラブルもなく、平穏無事にイラを出迎える事が出来た私と本矢首相。

 

 モドの左隣に停泊したアストラ級航宙巡洋艦は勿論、右隣に停泊したノア級輸送宇宙船の船内でも特にこれといった事はなく、船員たちによる日本の分の積み荷下ろしも転送魔法の併用により、あっという間に終わる。

 

 この積み荷の保管場所に関しては、ひとまず陸上自衛隊の基地と決まっていて、装甲車までも動員した物々しい警備の下、輸送トラックに詰め込まれて運搬されるみたいだ。

 

 私たちにとっては容易に手に入る品々だし、それ程高い技術が使われている訳ではないけれど、地球……日本にとっては、それでも超技術の使われた品々。万が一を想定し、リスクを最小限に抑える方法を取ったのだろう。

 

 こっちで保管場所までの運搬をやっても良かったけど、頼まれてもいないのにやるのは違う。何せ、私たちの手を離れた時点で積み荷の所有権は日本にあるのだし、保管場所の警備までもずっとやる訳にもいかないのだから。

 

「あはは……すっかり御用達になりましたね。一応、連絡をもらってからチキンは沢山用意しておりますが、お二人とも食べます?」

「はい、是非とも」

「おぉ! これが、チェイスも一押しの()()()! 見た目と匂いからして、究極の美味である事は確実ですね店長さん!」

「大げさですって。いや、チェイスさん方の国の事を考えれば、大げさじゃないのかぁ。一体、どれだけ食事が残念なんだ……?」

「えっと……このチキンが最大の半分の50だとすれば、うちの国は一部の例外を除けば、高級品でも30~40しかならないくらいには残念ですっ! 同じ高級品ならぶっちゃけ、勝負にならないかと!」

 

 ちなみに、積み荷云々で忙しい人たちを尻目に、私やイラは本矢首相と一緒の車に乗り込み、フレンドリー・S・マートへゆっくり向かった後、イートインコーナーで食事を楽しんでいる。

 

 私が泊まっている大日本ホテルの高級和食料理屋、バイキング形式の大食堂に直行するのもそれはそれで良いのかもしれないけど、いきなり日本の中でも最高峰の料理を食べてしまうのは、少しもったいない。

 

 それに、大衆が日常的に利用するこのコンビニの話をしたら、イラが興味を示したのだ。なら、尚更立ち寄らない選択肢はないだろう。

 

 あの美味しいチキンを筆頭とした揚げ物類、サクサクフワフワでとっても美味しい菓子パン、保存が効いてなおかつ味も一級品なスナック菓子、多種多様な味の飲料。

 

 人生に彩りを与えてくれるこれらを、私はイラに味わって欲しかった。場合によっては、人の命を沢山奪うことになる仕事とは無縁な地球で、何も考えずに。

 

 というか、スッゴく今更の話なんだけど……立ち寄った時間が時間だからか、コンビニに居るのは西山(店長)さんただ1人。連絡も結構急だったし、立ち寄るタイミングも悪かったから、余計な心労を与えてしまっている。

 

 そして、これからもほぼ毎日立ち寄る事になりそうだし、お詫びに西山さんや他のバイトの学生さんたちにも何かあげたい気もするけど、それはそれで困らせそうな気もするし、さてどうしようか。

 

 しかし、滞在中はコンビニに立ち寄らないっていう選択肢は、本当に申し訳ないけど選べない。

 地球の存在を認知し、実際に前世の故郷たる日本へ来てしまった以上は、どうしても。

 

「あの、イラさん? 失礼ですがこの、見るからに食欲が失せそうな色をしたものは……?」

栄養補助食品(クッキー)ですよ! はっきり言って、リーガル人の舌を基準にしてもとーっても不味いんですけど……興味があるなら、食べてみます? 栄養価は非常に高いですけど、地球人に対する毒性はないので、その辺は安心してください!」

「えぇ、いや……でも、そこまで不味いと言われると、逆に気になってくるんですが」

「なら、1つあげますね! どうしても生理的に受け付けなければ、吐き出してもらっても構いません!」

 

 そんな時、イラが何を思ったかは知らないけど、懐からあの正直2度と食べたくないくらいに不味い青色のクッキーを取り出して、西山さんに手渡した。

 

 戦地で四の五の言っていられない状況だったり、飢え死にするかしないかの瀬戸際だったりとピンチであればまだしも、平常時にこれをあげるなんて嫌がらせとしか言えない。

 

 ああでも、西山さんはリーガル大帝国の食べ物が、どれだけ残念なものなのかを気にしていたっけ。それをイラが見て、残念筆頭なこの激マズ青色クッキーをあげたくなったのかも。

 

 ただ、私はもとよりイラですら不味いと言う程の、残念筆頭なこのクッキー。西山さんが食べたらどうなるか、推して知るべしである。

 

「お気遣いありがとうございます。では早速……おっう!!」

 

 案の定、日本の一般的なお煎餅の大きさをしたクッキーを口にした瞬間、見て分かるくらいに彼の顔が歪む。

 言葉には出さずとも、この世界にこんなにも不味いものがあったのかと、とてもじゃないが食えたものではないと、そう思っているのが丸分かり。

 

 だけど、せっかくもらったものを吐き出すのは、例えあげた本人から許可が出ていたとしても抵抗感があるのか、込み上げている吐き気を根性で抑え込むと、全てを口に放り込んだ後に牛乳で流し込んだ。

 

 私が西山さんの立場に立ったならば、間違いなく口から吐き出した後にトイレへ駆け込んでいただろう。

 

「うっわぁ、この人凄い……」

「凄い根性だよね、イラ。私が西山さんだったら、絶対に吐き出してる」

「チェイスさん。もしかして、こういう食べ物ばかりなのですか?」

「安心してください、本矢首相。流石に、ここまでのものはリーガル大帝国でもそうそうありませんので」

 

 なお、青い顔をしながらも凄まじい根性を見せ、この激マズクッキーを完食した西山さんに対して、私を含めた店内に居る全員はその行為に対して凄いと思いつつも、そこまでやるかとドン引きもしていた。




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