TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

28 / 35
魔法少女アニメ

 日本に来て最初の行き先となった、フレンドリー・S・マートでの滞在は、イラにとって凄く刺激的な時間となったらしい。

 約1時間半の滞在を終え、大日本ホテルへ到着してからも「毎日行きたい!」と、満面の笑みを浮かべて言っていたのを見れば良く分かる。

 

 リーガル大帝国を凌駕する食べ物や飲み物の美味しさは当然のこと、専門の店には劣れど置かれていた漫画や雑誌類、豊富な調味料も気に入っていた。本矢首相にお願いして、全種類を1つずつ買ってもらっていた程には。

 

 後は、私たちが寄ったコンビニの店長である西山さんが、激マズ栄養補助食(青色クッキー)を食べるところを含め、イラ的には話していて愉快な人と判断したからなのも、決して小さくはないようだ。

 

 確かに、私も食べ物の美味しさとかを抜きにしても、西山さんが店長さんをしているフレンドリー・S・マートには、直接会話をするためだけに行ってもいいとすら考えていた。

 

 そこで働くバイトの人たちだって、一癖も二癖もある人ではあるけど、宇宙人である私やイラに対しても普通に接してくれるような、心が強くて優しい性格の持ち主ばかり。そりゃあ、居心地もいい訳である。

 

「わぁ! ここが、チェイスが日本滞在中に泊まる部屋……凄い。こんなの、今まで見た事ないよ!」

「でしょ? リーガル大帝国基準で便利と思えるものはないけれど、この光景と漂う雰囲気とかは随一だと思うんだ。私」

「うんうん! 布団って寝具もふかふかで、ぐっすり眠れそうだったし……あっ。このこたつって暖房器具、何か凄く心地いい。入ってたら私、出たくなくなっちゃいそう」

「うん、それ分かる」

 

 当たり前と言うべきか、イラは私と一緒の部屋に日本滞在中は泊まる事になっているため、本矢首相とホテルロビーで別れた後あの部屋に直行したのだけど、案の定中に入るや否やテンションが上がった。

 

 日本のようなタイプの文化は今まで、私が寄った事のあるリーガル大帝国が支配下に置く宙域、友好関係にある星間国家が支配下に置く宙域、第三国が支配下に置く宙域、そのどれでも見た覚えがない。

 

 星間国家屈指の情報量と正確性を誇る、リーガル宇宙情報局の量子データベースにすら、類似性が2~3割しかない国家がある程度と聞けば、恐らく誰でも分かるだろう。日本が、かなり特殊性の高い国であると。

 

 宇宙は尋常ではない(全容を把握し切れない)広さなのだから、同じような文化を持つ国家だって、地球以外でいつかは見つかると思うけど、この様子だと確率は極めて低いに違いない。

 

「でさ、チェイス。この国って確か、凄く面白い娯楽が多いんだっけ。アニメとかゲーム、漫画に小説……でも、今は何か見たいって気分だからさ、おすすめを私に教えて!」

「分かった。じゃあ、【大魔法少女マーナ&ペール】とか見てみる?」

「タイトル名からして、魔法ものだね! じゃあ、それでお願い!」

「了解。えっと……あったあった」

 

 そうして、一通り部屋の中の雰囲気を味わったイラが、テレビの前のふかふかソファーに座ると、私おすすめのアニメを見たいと要求してきたので、大魔法少女マーナ&ペールと書かれたディスクを機械に入れて、再生ボタンを押した。

 

 タイトルの通り魔法少女ものであり、内容も素質のある中学生くらいの女の子2人が、魔法妖精と呼ばれるマスコット的存在に声をかけられ、人々を苦しめる化け物と戦う割とありふれたアニメである。

 

 ただし、魔法妖精というネーミングながらその見た目は千差万別であり、主人公とパートナーの魔法少女の魔法妖精は何故か、見た目がまるで鷹と鷲みたいな猛禽類である。

 魔法妖精ではなく、魔法鳥と種族名を変えるべきではないのか、とんだ名前詐欺じゃないのかと、初めて見た時は思ったっけ。

 

 そして、戦闘描写が他の魔法少女ものよりも力が入っている上に、魔法少女となった女の子2人の可愛らしい容姿と性格も相まって、同系統のアニメの中では人気も高い。

 

 ただ、設定もそうだけどシリアスな場面も比較的多めなこのアニメの性質上、年齢層は割と高めで、それ故か放送時間も日曜日の朝ではなく夜である。

 とはいえ、そこまでどぎついグロテスクな描写が入る訳ではないけど。

 

「うわっ、えぇ……何この身体と魔力強化倍率、えげつなくない? マスコットくんも割と強いし……でも、契約に外法を使ってて、弱点が割と致命的なのを考えると妥当なのかな……?」

「まあね。それくらいやらないと、このアニメの世界(日本)は魔獣に支配されて、亡国になりかねない」

「敵の物理激減がねぇ。魔法があれば貫通するってところがもう、完全に殺しに来てるもん」

 

 主人公たちをサポートするマスコット的存在が、格好いい猛禽類である点から視聴を勧めてみたのだけど、1話2話と話を進めていくにつれて、イラはそれ関係なしにこのアニメの世界にのめり込んでいく。

 

 魔法が実在している祖国から来たという事もあってか、アニメのストーリーやら音楽やらイラストを楽しんではいるけれど、劇中に登場する魔法の方により大きな興味を向けているようだった。

 

 まあ、イラが天使のような格好になったのは、アニメの魔法少女が変身する仕組みとほぼ同じな魔法によるものな上、何の因果か戦闘スタイルや使用される各種魔法が、リーガル大帝国軍で使われる魔法に通じている。

 

 勿論、全てが全て当てはまっている訳ではないけれど、日本人が考えた想像上の産物が、少しでも軍隊で使用される魔法に通ずるともなれば、興味を向けるのも無理はない。私も()()()見た時、そっちの意味でテレビに釘付けになったから。

 

(うーん……まあ、心配はしてないけどさ)

 

 何となくだけど、これは仮に本国に持ち込んだとしても、リーガル大帝国の一般人に向けて提供するには、一部のSF作品と同様に色々と気を遣う必要が発生する事になるかもしれない。

 

 太陽系(地球)は、女帝陛下が大丈夫と判断して与えてくれたものではあるけど、一応お伺いは立てておこうかな。

 

 ともなれば、長編かつ完結済みな作品故に、詳しい説明のために必要な設定資料集や小説版・漫画版全巻を1セット揃えなければならない。

 そうなると、費用もさることながら膨大な量になるのも確定だけど、致し方ないか。大林さんを経由して、関係者の人たちにお願いしよう。

 

「失礼します。あの、夕食は如何なさいますか?」

「あー……その、イラがアニメに夢中になってて離れそうにないので、簡単なものを部屋に持ってきてもらっていいですか?」

「了解しました。和食か洋食、どちらに致しましょう?」

「和食でお願いします。イラもそれで良いよね?」

「いーよ!」

 

 ちなみに、私以上にこのアニメに夢中になってしまったイラは、私がお煎餅を食べながら休憩している時も合わせ、かれこれ4時間以上もずっと見続けていて、それでもなお動く様子を見せていない。

 

 そのため、一緒に夕食を食べたかった私は仕方なく高級和食屋での夕食はキャンセルし、この部屋で仲良く2人で食事を取る事に決めたのだった。




本小説の閲覧、および評価や感想を下さった読者の方々に感謝です。執筆の励みと助けになっています。

差し支えなければ、評価や感想の程をよろしくお願いいたします。

本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?

  • SF
  • 現代
  • お好きな方で
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。