TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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和風の大浴場

 大日本ホテルが誇る、本格的な和風の大浴場。莫大な費用と手間暇をかけて作り上げたそれは、このホテルに泊まる宿泊者からは、すこぶる評判が良い。

 

 勿論、私もその存在は知っている。ここに来た初日に、色々とホテルに関して説明されていて、この大浴場についてもあったからだ。

 

 今日に至るまで入ったことはなかったけれど、それに関しては部屋での滞在に十分満足していることと、どちらかと言えば美味しいものを食べる方に、私の興味が向けられているからという理由があるため。

 

 そもそも、1人で入るならば部屋のバスルームで十分なのだ。広さも十分な上に綺麗で、お風呂用品も色々と揃っているし、いい香りのする入浴剤だってあるのだから。

 

「「おぉ……!」」

「ふふっ。お気に召したようで何より」

「はいっ! 思い切り翼を広げて入っても、誰にも迷惑かけないで居れるのって最高ですっ!」

「テンション高いね、イラ。はしゃぎ過ぎてのぼせないようにしてよ?」

「うん! チェイスこそ、のぼせないように気を付けてね!」

 

 しかし、今日からは私1人ではなく、親友たるイラが一緒に泊まるので話は別。

 

 私自身1度も入っていないこともあり、せっかくなら新鮮な気持ちを一緒に味わいたいからとイラに提案、部屋で軽めの夕食を取ってからすぐにお願いし、大浴場での諸々の準備が済んでから入りに来ている。

 

 ちなみに、私の和風スイートルームから大浴場までの距離はそこそこある。敷地自体の広さに比例して建物内も広く、瞬間移動魔法や飛行魔法、ワープポータルでも使わない限りは時間が少しかかってしまうけど、全く以て苦にならなかった。

 

 というか、その程度で苦に思うようでは軍人どころか、地球と同等かそれ以下の文明を持つ人々との交流など、出来なかったに違いない。

 

(……)

 

 それと、個人的には他の宿泊客が一緒に入っててもいい、というかイラも交えてお話ししたいとすら思っていたけど、無防備かつ至近距離で何か問題が起きたら洒落にならないとの理由で、1時間貸切状態となっていた。

 

 諸々の準備とかも含めれば合計で2時間弱、その間は入りたくても入れない人たちが出てしまうのである。何というか、本当に申し訳ない。

 

「いつもありがとうございます、大林さん。貴女を含む日本の皆さんが苦労してくれているお陰で、私はこうして快適な旅行を楽しめていますから」

「どういたしまして。我々としても、チェイスさん方が来てくれたお陰で、いくつか恩恵を頂いておりますので」

「そうですか……ふふっ、それは良かったです」

 

 なお、貸切状態とは表したものの、実際は女性秘書の大林さんが一緒に入浴してくれている。話し相手兼、私たちに万が一の事態が起こった際に備えて、すぐ動けるようにするためだという。

 

 しかも、脱衣所には近接戦闘技術に秀でた女性2人の護衛がついていて、仮に誰かが入ってきたとしてもすぐに追い返せる体制が整っているとのこと。何とも細かな警戒網だと言わざるを得ない。

 

(……多くて、数日に1度ってものかな。毎日入ったら、他の人たちに余計な迷惑をかけちゃうし)

 

 でも、今回は日本(地球)の人たちにとっては初めての事であり、政府として慎重かつ厳重な交流を推し進めるのは、至極当然の事。

 私やイラに何かトラブルなどがあった場合、その波が全世界に波及していく可能性があるともなれば尚更だ。

 

「はぁぁ……癒されますねぇ。何と言いますか、この少し熱めのお湯に浸かっていると、疲れとかが溶け出していくようですよ」

「そうですね、チェイスさん。私も、総理大臣の秘書をやっているとどうにも疲れが溜まってきてしまいまして……」

「私たちの国で言ったら、女帝陛下の側近をやってるようなものですもん! 疲れて当たり前だと思いますっ!」

「ふふっ。イラさんやチェイスさんの国に比べたら、霞みますけどね」

 

 何せ、私はリーガル大帝国では相応の地位を頂いていて、女帝陛下との繋がりもある軍人。仮に地球で、死なずとも重傷を負ったとしたならば、私自身にその意思がなくとも、本国が報復と言う名の侵略戦争に踏み切る可能性が、全く否定出来ないところが痛い。

 

 そして、そうなれば地球側に成す術は全くなくなってしまう。当たり前のように、核兵器と同等かそれ以上の通常超兵器が飛び交う戦場でも生き残れるように、多種多様な超科学装備や魔導装備を備える軍艦が、おびただしい数襲来してくるから。

 

 場合によっては、地球最強の水素爆弾ですら鼻で笑われるレベルの大量破壊兵器、プラネットバスター(星落とし)を多数投下して、地球人を絶滅させるだなんてとんでもない展開すらあり得る。

 

「それはそうと……キツい誹謗中傷のコメントが、寄せられてしまったとお聞きしました。改めてお詫びいたします」

「いえ、お気になさらず。そもそも、誹謗中傷なんて気にしていたらSNSアカウントなんて作りませんし、ある程度は織り込み済みです」

「そうそう! 勿論、私もチェイスも全く気にならない訳じゃないし、ない方が良いのは間違いないけど、許容範囲内ではありますからねっ!」

「ありがとう。その言葉を頂けるだけで、幾分か気が楽になりました」

 

 ちなみに、日本政府の人たちよりは気楽なネット上でも、侵略戦争の可能性がちらついているからか、私とイラ(宇宙人)との交流に好意的な声は沢山あるものの、不安視する声や否定的な声だって少なからずある。

 

 私が作ったSNSアカウントにも、その辺の事情に絡んだ誹謗中傷や強い否定のコメントが時折されているのを見れば、嫌でも理解出来る。誰かが通報してくれているのか、大半は削除されて残っているものは少ない。

 

(……交流、もう少し頑張ってみるかなぁ)

 

 勿論、SNSのコメント欄を閉じるつもりは、私にはない。総スカンを食らうレベルの純然たる誹謗中傷はほぼ消えるし、本当に大丈夫なのかと不安だったり、それ故に私を否定してくる日本人の気持ちを無視しないと、そう心に固く誓っているから。




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