TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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女帝陛下の決定

「お待たせ致しました。女帝陛下、入ってもよろしいでしょうか?」

「うむ、入れ。今日は早かったな、リマジナ」

 

 強大な軍事力を誇るリーガル大帝国、その中枢たる大帝国政府庁舎()の一角に存在している女帝陛下の執務室へ、とある1人の男が呼ばれて訪れていた。

 

 その男の名前は【リマジナ・ロトス】。リーガル大帝国の魔導の総本山、軍事にも深い関わりを持つ魔導技術省のトップの人間である。

 

 大帝国内でも一二を争う程の魔法使いであり、他国の追随を許さないレベルでの軍事・民間に関わらず、魔導技術の発展に大きく寄与するなど、多大な成果を生み出す優秀さ。

 

 何かと未開の地を見下しがちなリーガル人の中でも、比較的中立の立場から油断せずに見定める慎重さ。

 

 高い能力と地位を持ちながら、これ見よがしという態度を周りに表す事がなく、誰にでも平等に接する事が出来るその性格。

 

 故に、女帝陛下も一目置いていて、魔法が関わる事柄で何かがあった場合、いの一番に呼びつけて意見などを聞くくらいには信頼されているのだ。

 

「ところでだ。そなたは、つい先日からチェイスが未開の現地人に地球と呼ばれている惑星に、休暇旅行に行っているというのは知っているか?」

「あー……はい。陛下があの御方に、直々に地球のある星系を贈られたということもあり、大分噂になっておりますので」

「そうか。実はだな、そのチェイスから「是非、目を通して頂きたいものがありまして」と、亜空通信でこれが送られてきたのだ。わらわも1度見てみたが、まあ色々と凄かったからそなたも見てみろ。ちなみに、わらわは思わず夢中になって仕事を放置してしまった」

「ふむ……【大魔法少女マーナ&ペール 1st season】……なるほど、地球のアニメーション……え? これが娯楽? レベル高くないですか?」

「そうだ。何でも、地球の娯楽は我が国のそれを凌駕するらしい」

 

 なお、リマジナが女帝陛下に呼ばれた理由は、地球(日本)旅行中のチェイスから、魔法少女もののアニメを公開している会社の公式サイトのURLが送りつけられてきた事に由来していた。

 

 クオリティーが高過ぎて純粋に面白かったというのも勿論だが、魔法少女という存在や彼女たちが使う魔法が、明らかに自国の軍に通ずるもの。

 

 しかも、そのアニメを製作したのは未開の地であるのに加え、魔法が存在していなかった地球人(日本人)。ただの空想で、星間国家にすら通用する魔法を作り上げた驚きから、女帝陛下は意見を聞こうとして思わず、かなり信頼している彼を呼んだのだ。

 

 完結済みかつ長編アニメの大魔法少女マーナ&ペールは、十五周年記念として無料公開されている1st seasonのみでも、相当な長さである。

 

 しかし、女帝陛下はそれを全て視聴し終えた後、2nd seasonや3rd seasonのチェイスを経由しての視聴はもとより、各種設定資料集などを一通り取り寄せる事も決定した。

 

 可能であれば、アニメ製作会社の人員は勿論の事、大元となった小説の原作者を魔導技術省の研究部門に招き入れ、その技術の吸収も視野に入れ始める。

 

 とは言うものの、太陽系の権利は既にチェイスの手の内。女帝陛下直々に贈呈した事もあってか、いつもの強権的な振る舞いは出来ない。

 

 仮に権利がチェイスになかったとしても、リーガル大帝国を凌駕する娯楽の宝庫に、わざわざ土足でズカズカと上がり込んで持ち去ろうなどという考えは、女帝陛下には一切なかったが。

 

「……失礼ですが、本当に地球には魔法が存在していないのですか? どう見ても、魔法が存在するが故に生まれた娯楽としか思えないのです。というか、本当に娯楽としてもレベルが段違いですね」

「うむ。そなたが信じられぬのも無理はないが、正真正銘地球には魔法は存在していない。正確には、我が国のように()()()()()()()()()()()()()()、だが」

 

 そして、端末の操作によって執務室のモニターに映し出される、臨場感たっぷりなアニメ映像を見ているリマジナも、初見の女帝陛下のような反応を見せていた。

 

 無論、このアニメは戦闘シーンばかりではなく、主人公組の中学生女子2人が同級生や家族と日常を過ごしたり、どこかに旅行へ行ったりする話も存在している。

 

 どちらかといえば、女帝陛下もリマジナも魔法少女が契約により、その身に宿した魔力を元にした魔法を使い、怪物と戦う光景の方に興味を注がれてはいるが、それでも日常話に興味を示さない訳ではなかった。

 

 純粋に娯楽としてのレベルが高いのはそうだが、元となった日本の町の文化がふんだんに使用されているためである。

 

「そうですか。にしても、まさか身体強化と変身魔法の最新理論とほぼ同種のそれを、地球人が空想で作り上げてしまうなんて……これ、何かの拍子に魔法が使えるようになったら、確実に色々な分野の魔法に手を出すでしょうし、数百年~千年もすれば星間魔導大国になりますよ。科学技術もそれなりにあるんでしたよね?」

「ああ。しかし、星間魔導大国か……ちなみに、地球の分類は今のところ未開の地扱いだが、そなた的にはどう思う?」

「ここまでとなると、流石に未開の地扱いは失礼だと思います。偶然にしては出来すぎですし、恐らくですが……他にも類似したアニメは存在するかと思うので」

「なるほど。うむ、確かにその通りだ」

 

 ちなみにだが、リマジナは魔法少女が魔法を使う場面になると、普通に楽しみながらも中継器を通して、地球のインターネットに接続した自身の端末(バノン)で、某解説サイトの大魔法少女マーナ&ペールの項目を逐一確認している。

 

 で、自国の軍に参考になりそうな未知の(有用な)要素を見つけると、その部分を端末の機能を使用してすぐさま保存し、分かりやすく纏めるという行為を繰り返していた。

 

 軍事力強化に繋がる可能性のある要素は、何であれ全て取り入れる方針である故なのと、チェイスによって日本の文化が持ち込まれた後、このアニメがリーガル大帝国の勢力圏で一般公開されることを見据えた作業という側面が大きい。

 

 この国でも、ようやく娯楽の充実化の重要性が叫ばれ始めてきたタイミング、日本のアニメの存在は非常に都合が良かったのである。

 

「よし、チェイスには日本のアニメとやらを大量に仕入れてもらおう。それと……今月の大帝国会議の議題は、地球に関する話に変えよう。そなたも、しっかり準備しておけ」

 

 なお、それ故かアニメに夢中になっている女帝陛下は、軽い口調で2ヵ月に1度行われる会議の議題を地球についてとするという、重要な決定を下したのであった。




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