TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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リーガルの魔法事情

 3週間後から始まる地球訪問・滞在に向けて、日本とアメリカとイギリスにメッセージを送った翌日の朝、リーガル本星きっての巨大総合商店で、私はイラと待ち合わせをしていた。

 

 言わずもがな、目的は3ヵ月後の予定だった約束を早め、一緒に遊ぶためである。

 

 あの後、バノン(多目的通信用端末)で訂正メールを送ってから、5分もしない内に「じゃあ明日遊ぼうねっ!」と、笑顔で撮った自分の写真と共に返事が帰って来たから、余程遊びたかったのだろう。

 

 その割には待ち合わせの時間を30分程過ぎているが、この程度なら造作もない。わざとではない事、肝心な時に遅刻をしない事、私以外の相手に繰り返し同じ事をしなければ、許容範囲内だ。

 

「ふぅ。チェイス、お待たせ~! 遅れちゃってごめんなさい!」

「良いよー……いつもより気合い入ってる?」

「まあね! 3ヵ月後だと思ってたから、尚更だよ!」

「それもそっか」

 

 考え事をしながら、フードコートで買ったほうじ茶擬き(リーガル山茶)を飲みながら待っていると、わざわざ【転移魔法】を使ったイラが、目の前に現れた。

 

 滅多に着ない、格好が全体的に白を基調としたお嬢様風ワンピースなのを見るに、相当気合いを入れてきたようである。十中八九、今日はこれの準備に手間取って遅れてきたのだろう。

 

 ちなみだけど、転移魔法は技術面はもとより消費魔力の面でも、結構キツい魔法の筆頭である。人や状況にもよるが、使用後は相応に疲労感が身体にのしかかってくるのだ。

 

 休息時間を入れる事も考えたけど、魔力回復用の激マズポーションを飲んでたし、この点は考慮に入れなくても大丈夫か。

 

「さてと。イラ、どこ行く?」

「うーん……じゃあ、ルーツェ魔法屋行こう! 見て回るだけでも楽しいよ!」

「了解」

 

 軽く会話を交わしつつ、イラから【ルーツェ魔法屋本店】へ行こうと言われたため了承、飲み終えたほうじ茶擬きの缶をゴミ箱に捨ててから、一緒にフードコートを後にした。

 

 魔法が存在するリーガル大帝国では非常にポピュラーなお店で、彼女が言うように魔法に関係する品々が売っているだけではなく、政府から直々に【魔法戦】を敷地内で行う許可がなされていて、そのための設備や人員も完備されている。

 

 早い話、魔法に一定以上適性のある免許持ちの大人同士が、()()()()()()()()のみを使用し、一対一で戦う競技の事だ。

 当然、競技である以上は厳しいルールが多数存在し、これらを破る行為は決して許されない。

 

 なお、魔法攻撃に完璧な耐性を持つ大きな的に、魔法の試し撃ちが出来る広大なエリアも存在するが、こちらはほぼ全ての人に開放されている。

 

 無論、子供と大人のエリア分けは成されているし、人への攻撃はご法度ではあるけど。

 

「ふーん、地球には魔法がないんだ。科学技術もそんなじゃないみたいだし、リーガルだと余裕で助かる怪我とか病気でも、地球人にとっては死活問題になりそう」

「まあ、なっちゃうだろうね。先進国って呼ばれてる国ならまだしも、発展途上国って呼ばれてる国になってくると、その傾向は顕著っぽい」

 

 で、のんびり歩きながらルーツェ魔法店の敷地内に入り、陳列されている魔導書やらポーションを見て回りながら、3週間後に行く地球についての話をイラと交わして楽しむ。

 

 未開の星云々よりも、魔法の方に圧倒的興味を向ける彼女だけど、それでも私と居る時は積極的に話を振ってくれたり、色々と聞いたりしてくれる。

 

 自分が微塵も興味のない分野でも、友人が好きならそれについて多少であれ勉強し、話を合わせて楽しんでもらうのを信条とするイラ。

 

「だよねぇ……あっ、そう言えば地球に持ってくお土産で悩んでるんだっけ?」

「うん。出来れば印象良く行きたいし、手っ取り早いのはお土産かなって」

「じゃあさ、この店の治癒系ポーションをいくつかプレゼントしたら? 魔力を持たない人でも、使用法を間違えなければ問題なく効果出るし」

「なるほど。でも、未知の物質である以上確実に警戒はされるだろうし、どうしようかな」

「自分が怪我したり、相手に怪我させて実演する訳にもいかないもんねー。難しいところだよ、それは」

 

 私としては、地球に関する話をしてもらえるだけでも嬉しいのに、流れで軽く言っただけのお土産云々の話を振り、あまつさえ真剣に考えてくれるのだ。

 

 わざわざ約束を取り付け、自分が楽しむために遊んでいる今日のような日でさえ、である。

 

 凄まじい信条だと思うと同時、あまりにも自分を抑え過ぎていないか、そのせいでどこか調子が悪くなったりしてないかと心配に思う。

 

「ねえ、イラ。今は楽しい? 何か、私の話ばかりしてる気がしてるから」

「……ふふっ。もう、チェイスは心配性なんだから! 大丈夫、とっても楽しいよ!」

「そっか。イラが楽しいなら良かったけど、もしあれならちゃんと言って」

「はーい!」

 

 故に、私は時折こうして尋ねるのだけど、その際イラは決まって琥珀色の瞳でじっと見つめてきた後、笑って否定してくる。気遣って嘘をついている様子は全くなく、本心から出る一言だ。

 

 両親の教育方針が成せる業なのか、過去に何かがあったがための立ち振る舞いなのか、はたまた別の理由があるのかは分からない。

 

 けど、彼女が()()()であるのは間違いなく、私はこんな友人を持てた事に感謝しなければならないだろう。

 

「そうだ。何か欲しいものがあるなら、私が買おうか? 自慢みたいになっちゃうけど、お金には大分余裕があるんだよね。今」

「えっ、良いの!? ありがとうね、チェイス!」

 

 だからこそ、私はその辺のお礼も兼ねて、欲しいものの1つや2つくらいなら買ってあげようと即決した。

本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?

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