TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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予定を変更し、本章は今話にて終了とします。また、前話の後半部分に文章の追加を行いました。


日本の憂鬱

 宇宙人の地球来訪。メッセージが届いてからおよそ4日、日米英3ヵ国の首脳によりほぼ同時に発表されたこの事実は3ヵ国の国民のみならず、地球に存在する国家群ほぼ全てとその国民に、衝撃を以て受け止められていた。

 

 かねてよりなされていた、宇宙人は存在するか否かの議論がある日突然、()()()()と証明された事で終止符を打たれる。

 

 同時に当の宇宙人が地球を認知し、そこに暮らす人々の織り成す文明に興味を持ち、来訪する急展開となったのだ。全国家に来訪する訳ではないとは言え、無理もないだろう。

 

 特に、今回の来訪の対象として挙げられた日本とアメリカ、イギリスに住む一般の人々や各種メディア関係者は、それはもう凄まじい盛り上がりを見せている。

 

 宇宙船の内部と思わしき部屋の中、非常にゆったりで穏和な雰囲気を醸し出して各国の言語にて自己紹介を行い、自身の来訪を知らせて友好的に接してきた、水色混じりの白髪ショートボブで紫色の瞳、背中に不完全ながら翼を持つ宇宙人少女。

 

 公開されたメッセージ動画の中で、チェイス・アリアーネと名乗った彼女が見せた、魔法によって顕現した光の翼による飛行も相まって、世論は概ね好意的である。

 

 しかし、全員が全員好意的にチェイス(宇宙人)を見ている訳ではないのだ。最初の来訪先と言う事もあってか最も盛り上がっている日本でさえ、それは例外にはあたらない。

 

 友好的な態度はまやかしであり、心内では日本や地球を侵略しようとしているのではないかと、純粋な恐怖を抱く。

 

 相手が友好的であっても、心を許し過ぎるのは危険だから警戒はしておくべきとの考えの下、掲示板などに投稿・議論したりする。

 

 こんな感じの感情を抱いたり、そんな感情から行動を取る人々も少なからず存在するのだ。

 

 だが、中には実力を行使して排除をしようと画策する過激派、来訪に合わせてデモをしようと考える者、上手い事取り入って自分らが有利になろうと考える団体も存在しているのだ。

 

 それに比べれば圧倒的にマシであり、むしろ抱いておかしくない普通の感情だと言えるだろう。

 

「はぁ。相変わらず、過激派連中はいつも通り……か。全く、見るのも嫌になってきたぞ」

「そうですね、先輩。でも、私たちが目を光らせていないと、チェイスさんが日本に来た時、万が一が起きかねません」

「そうなんだよなぁ。連中、彼女の機嫌を損ねたら最悪日本どころか、地球が滅亡するかもしれんとは考えんのかね」

「考えて、理解した上でやってたりするかもしれませんよ?」

「……嫌な考えだが、俺もそう思っちまった」

 

 だからこそ、日本ではチェイスの来訪前から公安の人たちを含めた全国の警察組織、および政府が各所に目を光らせ、万が一が起こらないように日夜パトロールを行っていた。

 

 それだけではなく、日本のどこかに潜んでいる可能性の高い他国のスパイに対しても、より一層厳しい警戒体制を敷いている。

 

 ただし、日本にはスパイを直に取り締まるための法律が存在しないため、どうしても素早く動く事が出来ない。

 政府内では法律制定に向けた動きが加速してはいるものの、現状は何か別に理由を見つけるなりして、捕まえるしかないのだ。

 

 故に、公安に勤めている職員の勤務時間は激増し、過労のあまり体調を崩す職員も出てきているため、ここをどうにかする事が目下の課題となっている。

 

「こう言う時に、他国が羨ましいよな」

「そうですね。スパイを直接取り締まる法律が出来れば、いちいち手間のかかる手続きを踏まずに済む……そう考えたら、チェイスさんの来訪は日本にとって、かなりの追い風になりそうです」

「確かにそうかも知れん。宇宙人頼りってのが複雑だが」

 

 言わずもがな、アメリカやイギリスでもテロ行為に発展しかねない芽を摘むため、特殊組織や警察の取り締まりが一層厳しくなっているが、この2ヵ国も2ヵ国でこれらに割かれる人員の負担はかなり大きくなっている。

 

 何なら、日本の代わりに日本の周辺諸国の相手をする約束を交わしてしまった都合上、政府の援助があるとしても負担が限界に近い人員が多い。

 

 しかし、そうするだけの価値がチェイスとの交流にはあると、両国の上層部他多くの人々がそう考えている以上、どうにもならないのだ。

 

「地球滞在期間は確か2ヵ月と少し、その内日本への滞在はおおよそ4週間……あぁぁ、胃が痛い。何故に彼女は日本への滞在を長くしたのか……」

「文化的に興味を引く何かがあったとかですかね。技術的には、十中八九地球は話にすらならないので……それよりも先輩、調子悪いなら私が引き受けておきますよ。こう見えて、胃腸は強いんで」

「いや、流石に任せっきりはまずいだろう。ただ、お前がそう言うなら少し割り振らせてくれ。こちらとしても大助かりだ」

「分かりました。それで良いなら行きましょう」

 

 なお、公安の職員も多分に漏れず公開されたメッセージ動画を閲覧していて、友好的だと確信を持てた人が多かったらしく、否定的な目で見る職員の数はあまり多くなかった。

 

 ただし、チェイスは彼ら彼女らにとって、仕事量が激増した事による睡眠不足と疲労感、自分たちの行動如何によっては最悪日本や地球が危ないと言うプレッシャーによる胃痛、これらに悩まされるきっかけとなっている。

 

 故に、その件に関してだけはほんの少しだけ文句を言いたいと、心の中で思う職員の数はまあまあ多かったものの、実際に口に出して何かが起きた場合のリスクが大きいため、暗黙の了解で誰も口には出していない。

 

 居ないからと言って口に出し続けて慣れ、いざ来訪した時にうっかり口に出してしまったり、変に広まったせいで話に尾ひれが付き、それが巡りめぐって耳に入ってしまう。これ程恐ろしい事はないだろう。

 

 後は、文句を言う暇があるなら今はひとまず仕事を進めて、しっかり休息を取る時間に回した方が有意義であると、皆が同様の考えでいるのも非常に大きい。

 

「あー……先輩。匿名での情報提供が今ありまして、自宅の近所で怪しげな集団がたむろしているらしいです。写真と音声付きで」

「全く、変な奴らがどんどん湧いてくるな……少しは自重してくれ、頼むから」

 

 現に、政府が役立った情報に対する報償金を付けた上で、積極的な情報提供を呼びかけた影響により、案件が舞い込んできているのだから。




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