氷結系最強になりたくて!   作:無銘のヲタク

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終わりもあれば始まりもある

 

あの学園テロ事件から数日、魔剣士学園の生徒達は前倒しでそのまま長期休みに入ることになった。

 

校舎がテロリストの放った火の手によって焼け焦げ、講堂に至っては教団との戦闘跡でそこら中穴だらけでボロボロになっているとなれば当然の処置だろう。

 

ただ…これに関しては俺も破壊に関与してしまっているから申し訳ないと思う節はあり…テロリスト達の魔の手から生徒達を守るには必要な損害だったと割り切ってもらえるとありがたい。

 

そんな学園に行き、長期休みのための色々な手続きを終えて、いざお休み突入!という今、俺はというと校門の前で相棒の帰りを待っているところである。

 

というのも、学園から帰ろうとした時にちょうど校門付近でシェリー先輩に会うと、何やらシドと少し話がしたいそうで彼等の話が終わるまで待っているわけだ。

 

しかし、どうしてあいつはああも美少女に好かれるのか。

 

自分の趣味にしかまるで興味を示さないようなやつで、ましてや恋愛なんて全然関心ないだろうに…うらやまし。

 

そんなお熱な男女二人が長期休みの前に話すってなったら、それはもうウキウキで……って感じではないよな。

 

今立っているところからある場所に視線を向ける。そこには一台の馬車の前で鉄柵に手を置いて俺の相棒とシェリー先輩が話している姿が目に入るも、今回の事件解決の立役者の顔に歓喜の感情はまるで感じられず、ひたすら哀愁感じさせるものだ。

 

それもそうか。なんたって…

 

俺は手元の今朝発行された新聞を見て、そこに大々的に書かれている見出しに目を向ける。

 

 

『ミドガル学術学園副学園長、王国の逆賊、()()()()から学園を護るために戦った末に命を落とす』

 

 

そう。今回のテロで学術学園副学園長であり、彼女の養父でもあるルスラン・バーネットが亡くなった。しかも寄りにもよってシャドウの手によって。

 

おまけにどうやら彼女は母親が早くに亡くなっているらしく…そんな彼女をここまで育ててくれた副学園長への恩は計り知れず、彼女が悲壮感の底に沈むのも無理はない。

 

要するに今回の件は、副学園長が学園の守護者として讃えられながら、その死を憂う娘の悲劇のお話──────

 

 

 

 

ってだけでは終わってくれない。

 

 

 

 

何故なら学園を護ったとされる副学園長こそ、今回のテロを引き起こした真犯人。

 

つまるところ、あの痩騎士の正体が副学園長だったというわけだ。

 

それが分かったのは俺が事件の時講堂で奴を見たときだ。というのもそもそも剣を嗜んでる者にはその者特有の姿勢や足の運びがあるのだが、痩騎士と呼ばれたその男のソレが前に一度見た副学園長のものと一致したからだ。

 

加えてシドから聞いた話によると、シェリー先輩の母親と副学園長は昔一緒にあのアーティファクトの研究に着手していたのだが、研究しているうちにその危険性に気づいた先輩の母親は国に渡そうと提案したらしい。

 

当然、教団員である副学園長が見過ごすわけもなく、教団の邪魔だと考えた彼の手によって先輩の母親はその生涯に幕を下ろした。

 

いやはや……流石に惨い。

 

今まで父親のように思っていた人間がまさか自分の母親を殺した張本人なんて…

 

ただ、ここまで聞くと一つ疑問が生じる。

 

 

 

それは────この事実がありながら、何故副学園長が英雄のように扱われているのか?

 

簡単に言えば、捏造と情報操作だ。

 

どうやら副学園長が今回の事件は全て『シャドウガーデン』(俺達)の仕業となるように仕組んでいたようで、俺等ひいてはシャドウが多王国の逆賊とされるように証拠や証言だったりをでっち上げたのだ。

 

ただ、そんなことされてアルファ達が黙っていられるわけもなく、情報を何らかの方法で改竄しようとしたようだが、そんな彼女たちにシャドウが…

 

『例え世界中の罪を引き受けたとしても何も変わらない。我らは我らの成すべきことを為すだけだ』

 

アイツを神格化している彼女たちにその言葉は深く刺さったようで…シャドウが言うならと彼女達もこれ以上この件に関して手出ししないことになった。

 

ただでさえ、親代わりの存在が居なくなっただけでも大分心にきてるところに、実はその肉親が今回の事件の首謀者でおまけに自分の母親を殺した張本人なんて事実…

 

こんなものはまだ精神的に未成熟な少女が一人で背負うにはあまりに重い。故に冤罪を吹っ掛けられてるは少々不服だが、俺もこの判断には概ね賛成だ。

 

 

 

ただ…唯一の懸念は…

 

俺は新聞から目線を外し、再度シド達の方に目を遣る。

 

馬車を近くにおいて、二人は海を背にして会話している。俺がいる所からじゃシドと会話する彼女の表情を正確に読み取ることはできないが…

 

口元には笑みを浮かべながらも、拭いきれぬ哀愁。

 

そして──────

 

 

シドに背を向け、馬車に向かおうとする彼女をシドが呼び止めて何か問いかける。

 

彼女がふと空を仰ぐように顔を上げる。その瞬間、風が通り過ぎ、彼女の桃色の髪がふわりと舞う。

 

風に解けた髪の隙間から覗く瞳は、薄く霞がかかったようで。だが、光の届かぬ暗闇(ひあい)に隠された最奥には──────

 

 

 

静かに燻る、昏く澱んだ『憎悪』の灯火。

 

 

 

 

かつての彼女からは想像もつかないような…強く、鋭い意志。刹那の瞬きの中、俺は確かにそれを彼女の瞳に見た。

 

その後、彼女はシドへと僅かに笑みを浮かべると振り返って馬車に戻る。

 

御者の掛け声と共に彼女の乗った馬車は街道の先へと過ぎ去っていく。それを見送ったシドは彼女とは反対の道を歩き出す。

 

「…ごめんね、グラス。待たせたね」

 

「いいんだよ、別に…先輩はこれからどうするって?」

 

「留学するんだって、ラワガスに。何でも()()()()()()()()()()()ができたんだって」

 

「…そうか」

 

ラワガスといえば、世界屈指の頭脳が集まる最先端の学術都市だ。確かに彼女のアーティファクトの修復も可能なほどの見識や才能を活かすならば最も適した環境と言える。

 

「……いいのか?」

 

「…何が?」

 

「彼女のあの瞳。あれは明らかにお前を…いや、シャドウを────」

 

「いいんだよ」

 

シドは身体を近くの柵に預けて、目の前の海を眺める。

 

 

 

「彼女は何も知らなくていいんだ」

 

 

 

潮風に髪を靡かせながら、シドの黒い瞳はただ水平線を見つめている。

 

 

その姿は、いつもの影の実力者らしい演出なのか…それとも──────

 

「……はぁ…ほら、行くぞ。お前のせいで腹減ってんだ。今日は俺が奢ってやるから早く来い」

 

「本当に!?いやぁ、最近はアレクシアからのお金も無いから金欠でさぁ…!」

 

「お前結構もらってなかったか?もう使い切ったのかよ」

 

「ちょっと気に入った影の実力者らしい骨董品があってね」

 

「程々にしろよ?あんま置き場所もないだろ」

 

「その時はグラスの部屋にでも置いてくれ」

 

「いいぜ。そしたら喜んで捨ててやるよ」

 

「ちょっと?」

 

昼の陽光に白く照らされた街道を俺とシドはゆっくりと歩きながら、学園を後にする。

 

 

 

 

 

 

「さて、何処で飯食うか……ん?」

 

「どうしたの────あれって…」

 

俺たちの視線の先には、大勢の騎士達が集う中、一際高貴な格好と雰囲気を纏う一人の女性。炎の如き深紅の髪を持つその人は、周りの騎士達に何やら指示を出している。

 

「わかりました。貴方達は引き続き調査を続けてください。何か結果が出たら逐一私に報告してください」

 

「「「了解!」」」

 

 

「あれは、アイリス王女か」

 

「みたいだね。概ね今回の事件の事後処理をしてるのかな」

 

そういえば、彼女は紅の騎士団とかいう騎士団の団長をしてるんだったな。そりゃあの時も駆けつけてくるし今回の後始末も任されるわけだ。

 

大変そうだなぁ、と他人事のように心の中で呟きながら、俺達は彼らの横を通り過ぎる。

 

 

「では────あれって……そこにいる水色髪の君!」

 

 

──────と、思っていたんだが…

 

俺は周囲を見回して、呼ばれている人の特徴と一致する奴がいないか探す。だがどれだけ探してもこの付近に水色髪の人物は見当たらない。ということは……

 

 

「……俺のことですか」

 

俺はため息がでそうなのをグッと堪えながら、呼ばれた方へと振り返って自分を指差す。

 

俺を呼び止めた張本人、アイリス王女は周りの騎士達に声を掛けた後、俺の下まで近づいてくる。

 

「突然、呼び止めてごめんなさい。貴方はグラス・コーリ君で間違いないかしら?」

 

「確かに俺はグラス・コーリですけど…」

 

「よかった。それに隣にいるのはもしかしてクレアさんの弟さんの?」

 

「シド・カゲノーです」

 

「それはそうと、王女様は俺に何か御入用ですか?」

 

「ええ、少し。時間を頂けるなら私の騎士団本部まで来てもらえないかしら?」

 

うわぁ…面倒事の匂いがするなぁ…ここはひとつ王女様にはお引き取り願おう。

 

「実は、今からこいつと────」

 

「王女様に呼ばれるなんてすごいね、グラス!僕のことは構わず行ってきなよ!」

 

おい?

 

「さぁ、王女様。ささどうぞ、彼を連れて行っちゃってください」

 

「え、ええ。しかし、良いのですか?彼は先程何か言って────」

 

「いやいやいや大丈夫ですよ!じゃあ、グラス!僕は少しの間町の中を歩いて回ってるから!」

 

こいつ…!自分が巻き込まれないように俺を生贄にしやがった…!何かついでに長いものに巻かれる三下ムーヴしてるしよぉ。

 

シドは俺の背中を力一杯押してから、そそくさと街の喧騒の中に消えていった。そこに残ったのは静かに青筋を浮かべる俺と困惑顔の王女様。

 

「えっと……それじゃついてきてくれるかしら…?」

 

「…………はい」

 

 

そんな状況で俺に取れる選択肢は一つしかなかった。

 

 

────────────────────

 

「それじゃあ、この部屋に入ってもらえる?」

 

俺は頷いてからドアノブを手前に引く。その部屋に入って俺の目に映ったのは資料等が置いてある西洋風の事務机。

 

「ここは私の執務室で、普段は私が書類整理や来客の対応などを行っているのですが…とりあえずここに座ってください」

 

「どうも」

 

俺は軽く会釈してからアイリス王女が用意してくださった椅子に座り、それを見てから彼女は自分の執務机の椅子に腰を下ろす。

 

「王女様にしては意外と格式ばった感じじゃないんですね」

 

「ここはあくまで騎士団長としての場所ですから。なのであまりグラス君も畏まらずとも構いませんよ?」

 

「一庶民の俺にはそんなの恐れ多いですよ」

 

「まぁ、いきなり肩の力を抜いて言われても、難しいですよね…」

 

そう言って苦笑する彼女は、少しすると真剣な表情に変わり、机の上に肘をおいていわゆるゲン〇ウポーズを取る。

 

「では、何故私が貴方をここに呼んだのかと言うと…」

 

俺を真っすぐ見据える彼女を前に、俺は内心冷や汗を流す。

 

 

もしかして…バレたか?俺の正体。

 

いや流石にバレちゃいないと思うんだが…だが、この前は結構近くでやり取りしたし、そこから何か判明して俺の正体に辿り着いたとかか…?まぁ、バレても最悪俺が学園に居られなくなるだけなんだが…

 

 

「単刀直入にいいます」

 

俺は思わずゴクリと唾を飲んで、これから綴られる言葉に意識が集中する。

 

「貴方──────

 

 

 

 

 

 

 

 

紅の騎士団に入団しないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………ん?

 

「ん?、あ、え…入団…ですか…?」

 

「はい、そうです。あっ、勿論今ではなく学園を卒業してからですよ」

 

何か…思ってもなかった方向から飛んできたぞ…バレたわけじゃないのはよかったけど。というかスカウト?

 

「なんで俺なんです?」

 

確かに最近はちょっと目立つようなことやってきた自覚はあるけど、王女様に目を付けられるようなことはやってないぞ。

 

「実は以前、貴方がクレアさんとブシン祭の予選で戦っているのを目にしまして…彼女のことは以前から勧誘していたのですが、あの試合で加えて彼女自身から貴方のことを聞いて、是非あなたにも入団してほしいと」

 

あ、あの時のかぁ…俺が唯一人の目の多い中で多少真面目にやったクレアとの試合を、よもや王女様に見られていたとは…ってかクレアの奴俺のこと王女様に話してたのか。余計な事しゃべってねえだろうなぁ。

 

「加えて、先の学園襲撃事件の際、貴方は生徒達が拘束されている中、単身で敵の注意を引き付け魔力が使えぬ環境下で数人の襲撃者を制圧。それからも生徒の避難支援に力を注いだと生徒会長からも聞いています」

 

生徒会長…!いやまぁ、俺が彼女を責める謂れはないんだが……何か俺のやったことの悉くが裏目に出てる気がする。

 

「そういった実績などを踏まえて、今回はここまで足を運んでもらった次第です」

 

「なるほどぉ…」

 

「それでは、返事を聞かせてくれる?」

 

 

いや、まぁ当然────

 

 

「申し訳ないんですけど、入団はお断りさせていただきます」

 

「……それはどうしてかしら?」

 

 

 

あんたらが追ってる組織のNo.2だからだよ!!

 

 

 

って本音をかますわけにもいかないしなぁ…かといって中途半端な理由だとタダじゃおかないと彼女の目が言っている。

 

うーん……

 

「実は以前、さっき一緒にシドが騎士達に事情聴取っていう体で拷問まがいのことをされたことがありまして。そこから騎士団っていう存在に苦手意識ができちゃって」

 

「!!そんなことが…!同じ騎士の立場にある者として謝罪を…!」

 

「いや、アイリス王女が誤る必要はないですよ。それに貴女があの騎士達とは違うとは分かってますから」

 

「ありがとうございます……ただ、それが私の騎士団への入団を断った理由ですか?私の設立した【紅の騎士団】は私が信頼のおける人物のみを選出した騎士団です。グラス君の感じる不安や心配は問題ないと私は感じています」

 

結構粘ってくるな…そういえば今回の一件で副団長さんが殉職したんだっけ。優秀な人材の穴埋めとか信用回復のために王女様も結構必死なんだろうな。

 

「確かにアイリス様が作った騎士団に俺の悩みは杞憂なのでしょう。だが、どうにもこの不信感は拭えないんです」

 

「そう、ですか…」

 

「それに今の俺は先のことなんて考えず、ただ只管に己の力を究める。これしか頭にないんですよ。子供っぽくて申し訳ないんですが」

 

今もこれからも、俺にとっての最優先事項は『氷結系最強』になることだ。そのためにも騎士団なんてしがらみ、束縛だらけの環境に身を置く暇なんてない!

 

「いえ、ひたむきに自己研鑽に励むことは誰にでもできるわけじゃないとても立派な行為です。これからも精進した方がいい」

 

「ありがとうございます」

 

俺がそう言うと、彼女は少し力が抜けたように上等そうな椅子に背を預けて、ほっと息を吐く。

 

「────わかりました。残念ですが、貴方の入団は諦めることにします」

 

「いやぁ、すみません。俺みたいなのが王女様のお誘い断るなんておかしな話ですよね」

 

「いえ、こちら側から貴方を求めて申し出ているのです。そこに身分は関係ありませんよ」

 

「そう言ってもらえると助かります。では、話はこれで終わりですかね?じゃあ────」

 

「最後に一つだけ」

 

俺がさっさと帰ろうとしたところで、その行動を止められる。

 

なんだよ。もうこれ以上面倒ごとはごめんなんだが…

 

 

「これは私個人からのお願いになるのですが…貴方に剣の修練を手伝ってもらえませんか」

 

「!!俺がですか?」

 

「はい。実は先日、ある人物に自分に必要だと感じればあらゆるモノを取り込めと助言を頂きまして」

 

……うん、それ俺だね。

 

「元々グラス君のクレアさんとの試合を見た際、貴方の剣にとても興味を惹かれた。既存の型とは違うけれど決して乱雑なわけではなく洗練された剣技。それに加えて私が最も強く心惹かれたのはその魔力操作です」

 

「!!」

 

「私は元から人より数倍の魔力を有しているせいか、どうしても技の一つ一つが大味になってしまっているのだと先日思い知らされました」

 

はい、思い知らせました。

 

「あの男の魔力は確かに膨大だった。ですがそれ以上に彼の魔力操作はどれも緻密で繊細で研ぎ澄まされていた。どうすればそのような技巧が身につくのか。考えた末に脳裏に浮かんだのが貴方の試合でした」

 

彼女は俯き加減で話していたのを、面を上げ、その目は強くこちらに訴えかけるようだ。

 

「貴方の魔力操作はスケールこそ違えど、あの男に迫るものがあると私は感じました」

 

鋭いな!?ちょっと油断してたけどこれからは適度に緩めながらやるか…

 

「最近は妹のアレクシアとも稽古を共に行ったり、他者の技を知ろうと努めているのですが…貴方にもどうか私の試みに協力してほしいのです」

 

「あぁ…いや~」

 

アイリス王女との修練とか流石に目立ちすぎるだろぉ…!いやまぁ、確かに何でも取り込めとは言ったけどあれは結構妹さんと仲よくしようねーみたいな意味合いが強くて。まさか俺まで巻き込むとは思ってなかったんだが…!

 

断りてぇ…めちゃくちゃ断りたいなぁ……でも────

 

目の前に移るこちら見つめるアイリス王女の瞳。

 

そこに宿るのは、嘗ての傲慢とも言える自信でも俺に心折られたことからの絶望でもなく、ただひたすらに己の強さを求めんとする気合と覚悟。それは確かに以前の彼女では持ちえなかった確かな意志。

 

「…………わかりました。俺でよければ力になりますよ」

 

焚きつけちまった俺がほっぽりだすのは道理に合わねえよな。

 

「!!本当ですか!」

 

「ただし、あんま目立ちたくはないので人がいない時でお願いしますよ?」

 

変なところでやったら、最悪俺の頭と胴体がサヨナラバイバイしちゃうからね。

 

「わかりました。これからよろしくおねがいしますね」

 

柔和な笑みと共に差し出された手を俺はおずおずと握り返す。ニコニコしてる彼女に反して俺は心の声を誤魔化すようにぎこちなく笑うことしかできなかった。

 

 

 

どうも面倒なことが増えちまったなぁ……仕方ない。ここから先のことは未来の俺に任せるとしよう。

 

 

 

そんなこんなで色々と予想外の事態が起きて、何故か王女様の修練仲間になってしまったがその後はちょっと事件について話をしてから俺は彼女に見送られながら部屋を後にした。

 

────────────────────

 

騎士団本部から出て、正面に聳える大きな門を開けて敷地を抜ける。

 

 

「やぁ、お疲れ様」

 

「やぁ、じゃねぇよ。すぐさま見捨てやがって」

 

「だって巻き込まれたくなかったし。それに彼女はグラスに用があったんでしょ?」

 

「まぁ、そうだが……お前との飯を口実に断ろうとしてたのによぉ」

 

「ああやった方がモブっぽいと思ってね」

 

「だと、思ったよ」

 

はぁ、と俺は今日何度目かの大きなため息をつく。色々面倒なことになったことを説明しても、「強キャラっぽくていいね!」なんて満面の笑みで言うこいつをぶん殴りたくなった俺は間違ってない。

 

そしてタイミングを見計らったように、俺の腹から情けない音が宙に響く。

 

「……飯、行くぞ」

 

「行こう行こう!グラスの奢りなんだっけ!」

 

「無しだ無し。置いてった奴に奢るわけねえだろ」

 

「ええ~。折角ガンマがおすすめして高級料理店で鱈腹ごちそうになろうとおもったのになぁ」

 

「お前みたいな馬鹿舌が食っても味分かんねえだろうが」

 

「そっちだって別に大して変わらないだろう?」

 

「……うっせ」

 

その後、俺達二人はマグロナルドに行ってハンバーガーを腹一杯食べた。そして財布に鐚一文入ってないこいつの分も結局俺が払うことになった。ただ、シドの分を奢っても大して俺の財布ダメージを負わなかったのは幸いである。

 

なんと良心的な値段なんだ…!ジャンクフードだけは俺の味方だ。

 

 

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