星の庭。
"アーク・ワン"。
フォーカスジェネレータと呼ばれる装置は阻隔層を破るためのエネルギーをエネルギーウェルから供給され、それを撃ち抜いた。
そして撃ち抜いた隔壁の向こうへと飛翔していった。
「あれは宇宙船かしら。」
「む、誰かがいる気配がしますぞ。」
電子音声<休眠を解除します....>
突然休眠が解除されたクリステンは休眠明けの重い体をカプセルから引き起こす。
「カプセルの故障かしら。」
星間航行には全く適した構造をしていないのはわかっていた。
だから故障することも覚悟していた。
「...違う。故障じゃない?」
となれば電力が不足してということかと残量を確認するがまだ稼働には十分なほど残っていた。
「まあ、ここまで来てしまったら外の世界を記録できるだけ記録してみましょう。」
カプセルのある部屋から電源の落ちた観測ブリッジへ出る。
窓の外には一面の星空が広がっていた。
しかし源石の有無は全く分からない。
星の位置を記録しようと更に窓の外を観察する。
「あれは...何かしら...?」
目に映ったのは円筒形の屋根にキッチンやランチパッド、流れる水、半透明の黄緑色の板が中心の光の周囲を回るいかにも居住しているようにみえる物体が見えた。
近づいて観察したいがとっくに推進剤は尽きている。
アレのランチパッドから何かが打ち出され、こちらに向かって来る。
クリステンは身構えたが特に何もなかった。
そのかわり目の前の窓によく分からない生き物が浮いていた。
「あなたがこの宇宙船の船長?」
生き物が話す。
「ええ....そうだけどあなたは?」
「ぼくはチコ!」
目の前の生き物はそう言った。
「ロゼッタさまがよんでるからこれにのって!」
すると目の前のチコは星形のなにかに姿を変えた。
「これ...って言われても、どうするのかしら?」
その星形に触れると中心に引き寄せられて固定された。
「いきますよ~!」
「ちょっとま――――」
そう言われると凄い勢いでアレに向かって発射された。
長いような短いような時間を経てアレに着地した...
....顔面から。
ちょっと土にまみれたが特に骨が折れたりはしていない。
「あれ?ちょっとちゃくちがうまくいかなかったか?」
「だいじょうぶ?」
ここには他のチコもいて、続々とクリステンの周りに集まる。
チコ達の奥の方から水色の肩出しワンピースを着て王冠を載せた女性がクリステンの元へ近づいて来る。
「貴女がロゼッタ?」
「はい..お察しの通り私はロゼッタと言います。」
「この星船『ほうき星の天文台』の主です。」
「貴方達は何をしているの?」
「私達は星々を旅しているのです。」
「たまたま貴女の星船を見つけ、貴方を見つけたのです。」
「なるほど。」
「貴方は何処へ?」
「私は初めてここへ来たの。空の先を見たくて。」
「特に何処へ行きたいというものはないわ。」
「ただ...」
「あの宇宙船では航海には心許ないわ。」
「良ければ貴女の天文台に乗せてもらってもいいかしら。」
「構いません。貴方を歓迎しましょう...」
「もし貴女...クリステンがよければあの宇宙船も天文台と一緒にできるけれど...」
あれらには高価な分析機器などが載せられている。
自分の船室を持っていけるのならば記録も捗るだろう。
「いいわよ。是非ともそうしてもらえるとありがたい。」
このあとフォーカスジェネレータと天文台のドッギングがチコ達の協力もあってスムーズに行われた。
またロゼッタのお付きのチコ、バトラーから天文台の設備の説明を受け、いつ自由に使っても構わないと言われた。
ドッギングしてから幾日が経った頃、訪問者が現れた。
「おお?見ない人だね!」
赤い帽子に白丸の模様、中心に"M"の文字が刺繡された作業着姿の髭の立派な男が話す。
「もしかしてロゼッタの言っていたお客様って君のことかい?」
「ええ、私がそうよ。」
「ぼくはマリオって言うんだ。よろしく!」
「ところで、君は宇宙を見に来たんだって聞いたんだ。」
「よければ僕が案内してもいいかい?」
望遠鏡の観測では色々と限界があった。
クリステンはその提案を受け入れた。
「...やっぱりこれなのね。」
例の星形...スターリングに体を預けた。
クリステン、二度目の射出。
その後マリオに色々な星々...
マリオ達は『ギャラクシー』と呼ぶ所を案内された。
古代遺跡や建造物、水の流れだけの物を星と呼んでいいのか。
クリステンはそう思ったがこちらでは普通のことらしい。
途中、龍や走る花と戦うこともあったがマリオが全部なんとかしてくれた。
行った先々で源石を見つけることはなかった。
それ以上にとても住めるものではないが。
そうしてまたスターリングで天文台へと戻ってきた。
3回目ともなれば着々にも慣れ、顔面から着々するようなことはなくなった。
これでマリオともお別れになるかと思っていた所にマリオが話しかけてきた。
「今度レースをするんだけど見に来ないかい?」
この天文台には娯楽が少ない。
いくら研究者とはいえど恋しいものだ。
「いいわ。」
マリオの提案を了承した。
「ちなみにロゼッタも出るんだ。だからこのまま天文台で行くからゆっくりするといいよ。」
「天文台でといっても時間がかかり過ぎると思うけれど...」
「そこは問題ないよ。彗星の速さで飛んでいけるからね。」
どういうことかと疑問を浮かべると
「そろそろ向かうと思うから船の中にいた方がいいよ」
マリオがそう言うので星の庭の中へ退避する。
すると天文台に振動が走る。
半透明の板が周りを回転し始め、テラスやバスルーム、ベッドルームが中心の光へ消え、エネルギーのフィールドが渦を巻いて天文台を覆う。
次の衝撃で中心から眩い光が溢れ、天文台は飛んだ。
今クリステンはどこかの惑星の軌道上にいる。
そこには源石はなく、緑豊かな自然があり、都市がその光を地上に模る。
それらを見下ろす人工衛星の中で、マリオとロゼッタはレース開始のカウントダウンを待っていた。
反重力装置という言葉を聞いたとき、脱出ポッドへ乗ったミュルジスや職員達は無事だっただろうか、と思ったがそれを確認することはもうできない。
レースの3カウントが始まる。
「このコースの名前は『レインボーロード』か。」
名前の通り路盤が虹色のレースコース、スペシャルカップ最終レース。
レーサー達は虹の道を駆ける。
もし、ライト夫妻の研究が認められ、誰かが空への研究を続けていたら。
テラの人々はあの壁の向こうの世界を手にすることができていただろうか。
そんなことを思った。
しかしもうテラは無い。
ここはテラの外の新世界。
その一歩を踏み出した。
私をこの世界が歓迎するかのような景色をこれから見ていくだろう。
Welcom New Galaxy!
あれから数か月後トリマウンツ上空に星の庭が合体した不明飛行物体が現れるのは後の話。