大きなおっぱい触りたい 作:ピノの星型が全く出ません
「アイドル衣装でお腹出したりしてるので、なんだかんだ言いつつスタイルには一般人よりも自信を持っていて、好きな男を落とすための武器として使おうとする恋愛つよつよ愛莉ちゃんはいいと思います。誰か書いて」そう言い残すと、男は塵となって消えた。
「ほしかったんですよねぇ、S.E.E.S.制式召喚器…FEのアーマリーコレクションも!」(
現在位置は自室、目の前にはダンボール。
開封の儀開始の宣言をしろ磯野ォ!
「…………うん。さっさと開けよ」
一人芝居も程々に、梱包を外していく。
アタッシュケースを開けて!?
腕章を左腕につけて!?
ホルダーを腰に巻く!?
これですよこれ!この重量感!たまらん!!
腰に巻いたホルダーから抜いた銀色の凶器を自分自身のこめかみに突き付けて……
「ペ・ル・ソ───」
ドクン、ドクンと胸の鼓動が早まる。
パタパタと階段を上る音が聞こえてくる。
──────階段を上る音?
……ちょっと待った。
階段を上る音っていうのは、誰かがこの部屋に向かってきてる証拠だ。
母さんは仕事部屋に籠ってるはずだし、父さんは会社。では、この足音is誰の?
『椿、いる?入ってもいいかしら?』
ノックをしながら、扉越しにかけられた声は、中学の頃に散々聞いていた二つの声のうちの一つの幼馴染ではない方。……要するに愛莉なんだけど。
ここで、俺の部屋の一角を見てみよう。
『QT』時代の愛莉のサイン入りブロマイド
『QT』時代の愛莉の公式タオル
『QT』の愛莉の名前が入ったペンライト
『MORE MORE JUMP!』のリストバンド
『MORE MORE JUMP!』のロゴ入りTシャツ
愛莉のドット絵風アクキー
うーん、どっからどう見ても祭壇。そこまで規模は大きくないけど。
普段は誰が来るにしても、前もって連絡があるからブラインドで隠してるんだけど、なぜか今回は連絡もなくいきなり来た。家に上がったということは母さんがなにかしら対応したのだろうけど……
『椿ー?』
(まずい!愛莉にこの部屋を見られるのは本当にまずい!)
『応援してる』とは言ったけど、思いっきり推してることは愛莉には言ってない。
愛莉の性格上、バカにされることはない。それは断言できる……ちょっとからかうくらいはしてくるかもしれないけど、少なくとも、それが原因で愛莉側から距離を取るということはないと思う。
しかし、俺個人としては非常に愛莉と顔を合わせづらくなる。『オカンピンク』とか言っておきながら『実は隠れてファンでした』とかどの面下げればいいんだよ。万一にも、バレてしまったら愛莉の前での一人称を
『椿?おかしいわね、お母さんの話じゃいるって話だけど…』
はい、隠蔽完了。考え事しながらだって部屋の中歩くくらいはできるからね。色々考えながらも、とりあえずブラインドだけはかけておこうっていう寸法よ。
「愛莉、連絡なしで来るなんて珍しいけどどうしたの?」
「よかった、いたの、ね……」
愛莉の視線が俺の右手で固定された。祭壇に気を取られてて忘れてたけど、俺の右手には召喚器。割とリアルなそれは、知らない人から見たら……まあ、勘違いされても仕方ないかもしれない。
「つ、椿…あなた、なにしてるの!?また私たちのこと泣かせる気!?」
言い方ァ!
いや、確かに記憶喪失のフリで絵名を泣かせたし、声も出せなかったから、絵名からの話を聞いてちょっと泣いてた愛莉に弁明もできなかったことはあるけど。
目に涙を浮かべた愛莉が、背伸びをして俺の右手から召喚器を取ろうとしてくる…が、身長差の問題で子供が背伸びしてるみたいになってる。そういえば愛莉って160もないんだった。ちょっとかわいい、近くにいるからかなんかいい香りもする…………
『我は汝、汝は我。我は汝の性────』
やかましいわ。愛莉をそういう目で見ようとする俺には死を。晩鐘は俺の名を指し示した。
「そんな!危ない!もの!よこし!な!さい!」
「ち、違う!これオモチャ!音出るだけ!」
背伸びだけでは奪えないことを悟ってか、ついにぴょんぴょん跳ね始めた愛莉にも聞こえるように引鉄を引いてみる。
『ワォーン!』
あ、コロマルだ。
「というわけで、これは本当にオモチャ。それよりも急にどうしたのさ。連絡なしで来るだけでも珍しいのに一人で来るなんて」
あれからちょっとだけ時間が経ち、すっかり落ち着いた愛莉と机を挟んで話しを始めた。
「作詞ぃ?」
「まだ、ちゃんと決まったわけじゃないけど…あの感じだと、近いうちに『MORE MORE JUMP!』で正式に依頼したい旨のメール出すから…一応伝えておこうと思って」
申し訳なさそうな顔をしている愛莉の話を聞いたところ、ついさっきまで所属しているグループのメンバーとミーティングをしていたらしい。
その中で、『君だけのパレット』*1を見て、原作の小説まで手に取ったメンバーがいたらしく、原作者の『
あれよあれよという間に話は進み、もうメールの下書きまで作ったらしい。
小説家が作詞をするっていう話はないわけではないし、逆にボカロPや作詞家が小説を書くっていう話もよく聞く。作詞の依頼を小説家に出したいという意見が出るのもおかしくはない。
そりゃあ、絵名も他の誰かも連れてこれないはずだわ。
俺が『杜若』だって知ってるのは、家族を除けば、絵名たちのお母さんと彰人と愛莉だけ。バレたくないからメディア露出もしてないし。
絵名にバレるわけにいかないのは言わずもがな、ユニットの他のメンバーにもバレないように気を遣ってくれていたのだろう。
「音楽関連の話だから、受ける受けないは椿が好きに決めていいのよ?私がいるからって遠慮する必要もないし」
一人で来たので何事かと思っていたら、わざわざそんなことを言うために来たらしい。…バレないように心配してくれたことといい、相も変わらず律儀なことだ。
俺の音楽センスが壊滅的なのはご存知の通り。音楽を聞くだけならまだしも、自分から届ける方に回るようなことはしたくない。俺が演奏でもしようものならハルマゲドンが起きて、他の作り手の努力もぶち壊してしまう。─────それなら、作詞も同様なのではないか。
そんな風に考えて、音楽は聞くだけに留めて依頼が来ても全部断ってきた。
…でも、今回は他でもない愛莉からの頼み。いくら昔馴染みとはいえ、異性である俺の部屋に一人で来るくらいには信頼してくれていて、筋まで通そうとしてくれた友人の力になりたいと思ってしまったのも事実。
愛莉が本心では嫌がっているのなら断ったけど………どう考えているのかなんて、朝比奈さんに比べればよっぽど分かりやすい。
「分かった、引き受ける。って言っても連絡が来たらの話だけどな。音源とイメージさえあれば…なんとかなると思う。やってみたことはないから断言はできないけど」
「いいの?無理してるんじゃ…」
「大丈夫。俺がやりたくてやるんだよ」
「そう………ありがとう、椿」
前もって曲ができてて、どんなものにしたいのかというイメージもしっかり聞いて、そこに詞を当てはめていく感じなら…ワンチャンやれる可能性も無きにしも非ず…なはず。
「……来た」
《杜若様
大変お世話になっております。
MORE MORE JUMP!の桐谷遥と申します。
この度は───────》
机の上のノートPCには、担当編集を介した複数のやり取りの後に、俺と『MORE MORE JUMP!』と作曲家の三者での直接のメールのやり取りが表示されている。
画面をスクロールしていって、最後の一通に添付されていた一つの楽曲ファイルをダウンロードして再生する。
『─────♩』
作曲家さんが仮メロを入れてくれているおかげで、俺の仕事は詞を書き上げるだけ。『MORE MORE JUMP!』の方からキーワードもいくつか上げてもらったし、この曲をどんな風にしたいのかというイメージも細かく掘り下げた。
「……」
小説が、
作り手に回ることに対する抵抗感がなくなったわけではないけど、受けた以上は本気でやる。
作詞の勉強もしてきたし、ちょっとお高めのヘッドホンとスピーカーも買ってきた。不安だらけの初めての試みだけど───────愛莉が家に来たときのことを思い出せばモチベーションは充分。
「よしっ、始めるか!」
……あっ、さっきの『小説が云々』のくだり、ちょっとかっこよかったかも。今度、彰人に教えてあげよ。
小鳥遊 椿(たかなし つばき)
↓(一部消して)
たか つばき
↓(順番入れ替えて)
かきつばた(杜若)
小鳥遊椿
ポエマー。曲先の作詞に限れば天下取れる。
相手によって自分のスタンスをだいぶ変える。カスって言われても文句言えないレベルで変える。
割とガチで愛莉への好感度が高い。
筆が乗りに乗った結果、詞と一緒に、曲とリンクする書き下ろしの短編小説まで送った。
曲はバズった。モモジャンの公式チャンネルで投稿された短編の朗読もバズった。親友のグループの知名度がいい方向で上がったことに喜びつつも、音楽関連の依頼が増えたのでカスは頭を抱えた。
桃井愛莉
親友の文才は普通に認めてる。
主人公との関係値が他の異性以上かつえななん(仲良すぎて恋愛対象から外れてる)未満なせいで、ヒロインステークスをぶっちぎりで独走中。
MORE MORE JUMP!
作詞の依頼を飛ばしただけで、専属の作詞家になってもらったわけじゃない。