ここには夢がちゃんとある~♪(なお希望はない)


ならば、せめて助けてくれる人がいていいじゃない!

例えば、こんな非常時に活躍しそうな工業高校生とか。



※アニメもまともに見ていないため、原作との矛盾がある可能性があります。

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ニコニコ動画でアニメOPを見たとき、思わず笑ってしまいました。


ゾンビ発生より、数日

元は血避け用に着るつもりだったカッパから、水滴が滴る。

腕を振るい、カッパについた水を払う。ほぼ意味のない行為だが、やらずにはいれない。

 

「(雨、か)」

 

ッチ、と同乗者の誰かが舌打ちをする。それに対して、誰も文句は言わなかった。皆、気持ちは同じなのだろう。

軽トラの荷台に積まれている以上、雨水を防いでくれる屋根なんてものもはない。

 

まあ、屋根がないからこそ乗っているわけだが。

コンパネと金網が貼り付けられ、角材やパイプでガチガチに補強された荷台の仕切板を見る。突貫工事で洗練されてないが、頑丈だ。

車体がひっくり返らないかぎり、"奴ら"を一方的に叩けるだろう。

 

槍を持ち直し、気を新たに引き締める。槍とは言っても、鉄パイプの先端を斜めに切り落とし、一部を補強しただけの粗末なものだが、殺傷能力は十分だ。現に、この獲物で何体も仕留めている。

 

思えば、自分が工業高校にいなければ、この鉄パイプの加工すら難しかったのだろうか。いや、グラインダーぐらいなら普通校にもあるか?仮になかったとしても、このくらいなら時間をかければ可能だろう。

しかし、粗末なものとはいえ、多人数の手に渡るよう量産できたのは工業高校ゆえか。

 

 

グッと、慣性の力が体にかかる。

警戒のため、ノロノロ運転の軽トラが止まったようだった。

 

"1号車、右5"

 

イヤホンをした無線手……クラスメイトの田中から、事前に決めたハンドサインで、奴らの位置を知らされる。

そうだ、ここは奴らの占領地。余計なことを考えてる場合じゃない。

 

前を覗けば、先導する1号車……自分が乗っているのと同じような改造車から、弓道部が矢を放っているのが見える。

 

明らかに矢を5本以上消費しているのは、緊張しているためか、手作りの矢に慣れてないためか、はてまた矢の殺傷能力が足りていないのか。

そんなんでも、一方的に攻撃できる状況なのには変わり無い。

 

 

しばらくすれば掃討は終わり、車列は再度進み始める___かと思えばまた止まり、今度はバックし始めた。

 

毎度のごとく、乗り捨てられた車が道を塞いでいたのだろう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

巡ヶ丘市立工業高校

街外れにあるこの学校は、あのすべてが一変した日、非常に幸運な運命を辿る。

 

街外れにあったために、ゾンビの襲来数が少なかった。

騒音対策のためか、山と田畑に挟まれた立地は、天然の要害となった。

人が多い教室等が、2階、3階に集中していた。

 

そして何より、ゾンビ達が比較的早く襲来した。

これが放課後とかならば、多くの生徒は統率を失い、対応が遅れに遅れただろう。

 

また、ゾンビパニック物が大好物な教員がいたことも大きかった。

彼は非常事態であることをいち早く察知すると、防火扉やシャッターで上階を隔離、被害を抑えることに大きく貢献したのだ。

結果、体育・実習中のクラス、1階で仕事をしていた教師たちに若干の被害を出しつつも、巡ヶ丘工業高校に集う大多数の人間が生存した。

 

 

 

……さて、前準備なく、ただの学校に生徒教職員(約200名)が閉じ籠もれば、一体どうなるのか。

ちなみに、近くのコンビニは既に空っぽだ。

 

「(もう待てんだ。水はともかく、食料がない。遠征用の改造トラックが完成しただけマシと思えよ。)」

「(だからって、こんな日に遠征しなくても。空模様か気圧計見れば雨が降ることぐらい想像できるでしょう。)」

「(それがいいんだって。雨が音をかき消すからな。)」

「(それはまあ、そうかも知れませんけど)」

 

立ち往生している中、小声で先生に理由を問い詰めるが、全くの正論で返された。理解ができるが納得したくない。いくらカッパ着ているとはいえ、隙間から水が染み込むし、動かなきゃ寒い。

ちなみに先生は、元自衛官らしく、雨の中平気そうにしている。ふざけんな。50代なら50代らしくしろ。

 

………いや、冷静になれ。いくら物事が進まなくとも、冷静さを欠けば進むものも進まない。

 

 

「(で、どうします?)」

「(どうしような……)」

 

 

こんな道中で駄弁っているのには理由がある。

ゾンビの数が多すぎるのだ。

 

巡ヶ丘学院高校、だったか?うちの学校とは少し距離があるが、お隣関係にあたる学校だ。

 

この遠征は目的の1つとして、市街地への前進拠点構築がある。立地的に、この学校は結構な優良物件と思われたのだが………

 

 

端的に表すならば、この学校は運が悪かったらしい。

群がるのは、制服を纏ったゾンビの大群。数えたくもないが、ほぼすべての生徒がゾンビ化してしまったようだ。

 

「(ここを制圧できればな……)」

「(無茶ですって、あんな数どうしろっていうんですかっ。大人しく別の場所にしましょうよ。なんだったらショッピングモールの一区画を拠点化したりすれば………)」

「(出発前に話し合ったろ。それはリスクが大きい。)」

 

大型商業施設なんて、他の生存者との争いの場になりかねない。

争うのは覚悟している。このご時世、みんなで仲良く一緒にとはいかないだろう。

しかし、仮にショッピングモールに拠点を構えた上で、争いに負ければどうなるか。繰り返すが、大型商業施設なんて、他の生存者との争いの場になりかねない。

 

自分らは、200人分の食い扶持を確保しなくてはならないのだ。食料の確保、輸送のことを考えれば、物資集積地的なものは必要だろう。

 

「(制圧する手はあるんだよな。……吹き飛ばすか?)」

「(……ペンキ缶ですか?あれ本気で使うんですか?)」

 

荷台の端っこを見れば、スプレーで真っ赤に塗られたペンキ缶が積まれている。側面には白文字で"爆弾"の文字。どこか近寄りがたい気配を感じるのは気の所為だろうか?

 

中身は肥料用の硝安、グラインダーで作ったアルミニウム粉に軽油、ダメ押しの金属片。中心には起爆剤として、化学室たダイナマイトが突き刺さり、起爆用の電線がバッテリーまで伸びている。かなり物騒なペンキ缶だ。暴発しないことだけを願う。

 

「(冗談だ。あんな怪しいものは使うべきじゃない。しかも使ったら、作った奴らが調子に乗りそうだしな。)」

「(ならなんで持ってきたんですか?)」

「(気付いたらあったんだよ。てか古村、お前も制作に関わったらしいな?)」

「(……少し口出ししただけですよ。)」

 

どっから情報漏れたんだ。

帰ったら協力者達もとい裏切り者を問い詰めるようと心に決め、改めて学校の校舎を見る。

 

遠目に見ても、校舎はかなりのボロボロ具合だ。そこらの廃墟がマシに見えるほど、多くの窓ガラスが割れている。そこかしこでゾンビと生者の乱闘が起きたのだろう。そして勝ったのはゾンビ側。目を凝らせば、中にはうごめく死体が…………ん?

 

「(生存者ですっ!3階の左端から2つ、いや3つ目の部屋っ………違う廊下か!?)」

「(落ち着けって………俺も確認した。向こうも気づいたな。)」

 

手を振り、懐中電灯か何かの光源を点滅させているのを見るに、明らかにゾンビではない。

それなりに離れているはずなのだが、このご時世に動く車、しかもはた目から見ても改造車だとわかる車は、とてつもなく目立つのだろう。

 

「(………田中、無線で1号車と3号車に多数決を取るように伝えてくれ。巡ヶ丘学院高校のゾンビを、掃討するか否か。)」

「(………やるんですか?マジで?)」

「(それをこれから決めるんだよ。)」

 

すなわち、助けるか否か。

 

冷静に考えれば、助ける意味は薄い。

自分らは自分らで精一杯だし、ここから見える範疇では、生存者はごく少数。相手取るは大量のゾンビ。リスクとリターンが割に合わない。

 

 

しかし、罪悪感がその思考を拒む。

 

思い出すのは、学校に籠城を決め込んだ初日のこと。

窓の先、運悪く体育の時間だったクラス。授業の準備か、あるいは片付け中で倉庫にいて、異常事態に気づくのが遅れた不運なやつ。そいつの叫びが耳に入った。距離があり、減衰していたが、手足から踊り食われる悲鳴が確かに聞こえていたのだ。

 

あのとき、こう思った。ああはなりたくないと。

同時に考えた。もう悲鳴は聞きたくないと。

 

コンパネの隙間から、割れた校舎の窓を覗き込む。

何人かの女子生徒が確認できた。中には小柄な子も見える。彼女らの悲鳴は甲高く、頭に残りやすいだろう。例え聞こえなくとも聴こえそうだ。

 

 

もう一度考える。こちらの人数と、想定されるゾンビの数。学校にいる人がほぼ全員ゾンビ化したとして、1人当たり何体倒すことになるか。無双ゲーのように上手くいくか?

 

思考の傍ら、疑問が頭に浮かぶ。

 

少し前まで、自分はただの一般人だったのだ。少なくとも人の死なんて、親族の葬式ぐらいでしか関わらない程度には。そんな人間が、見捨てるという判断をしていいのか?手を伸ばせば、届くかもしれないのに?

 

「(………先生、1号車と3号車からです。)」

 

無線を握っている田中が、おずおずと声を上げる。どうやら、考える時間は終わったようだ。

 

 

結果として、巡ヶ丘学院高校のゾンビ掃討が決定される。

 

 

____________

 

 

「(さて、どうしますか?そこらの家乗っ取って要塞化しますか?)」

 

ゾンビ共に知性らしい知性はない。高所に陣取って人間という餌を見せつければ、ほぼ一方的に殴れる。

おすすめは"つるべ戦法"だ。ロープの一端に縛ったコンクリートブロックを、誘引したゾンビにベランダから落とすだけ。積み上がった死体が足場にならぬよう気を付ければ、大きな効果を発揮する。これがなければ、工業高校は未だ1階の工作設備を使えなかっただろう。

 

「(………古林、その爆弾の危害半径ってわかるか?)」

「(え、大体20から30mかと。破片ならゆうに100は飛ぶと思いますが………まさか)」

「(教師として失格だけど………一度使ってみたかったんだ。爆弾。)」

 

 

 

 

 

後日、情報を漏らしやがった裏切り者はこうほざいたという。

"あの爆弾は役に立ったのでしょう?なら反省はしても後悔はしません!"、と。

 

教師一同の前で言いきったのだ。あいつは大物だろう。

1つ言うならば、目をそらさず言えばもっとかっこよかったと思う。

 




原作キャラを出せなかった………


巡ヶ丘市立工業高校は、自分の母校がモデルです。
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