落第騎士の備忘録   作:悪事

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 一巻における癒しエピソードのショッピングモール編、前編。
 今回は箸休め兼平和なノリでやっていきます。



十話

 

 

 湯舟を出て髪から水気を拭った黒鉄珠雫は自分のベッドへ、掴み上げたまくらを何度も叩きつける。小さな頬を膨らませて、これでもかと不満を叩きつける。だが、魔力で膂力を強化していない珠雫の可愛らしい八つ当たりは、叩きつけるたびに部屋を深く揺らす程度で済んでいた。

 

 ルームメイトである有栖院凪、アリスと呼ばれている心は乙女の青年は温和な微笑みを湛えたまま風呂上がりの珠雫へドライヤーをかけ、髪を梳いていく。

 

(そういえば、あの南郷寅次郎に弟子入りしてたんだものねぇ)

 

 これで、もし魔力の強化有りでまくらをベッドに叩きつけていたら、床をぶち抜いて直下の部屋まで大穴を空けていたかもしれない。

 

「……あんの雌豚(めすぶた)

 

「あらあら、せっかくお風呂でさっぱりしたのに、随分ご機嫌ななめねぇ」

 

 珠雫の様子を見るに、お兄さんのルームメイト、ステラ・ヴァーミリオンのことで何かがあったのだろう。いや、正確には皇女様ではなく、兄の黒鉄一輝が関係しているはずだ。何故なら、珠雫がお兄さん以外のことで感情を露にすることは考えにくい。

 

「件の皇女様にお兄さんとのお話の邪魔でもされたの?」

 

「もっと悪い……せっかく、勇気を出してお兄様を明日の映画に誘ったのに、あの炎上女。“まだこの国のことを知らないから案内してほしい”なんて白々しい真似を。ねぇ、アリス、日本海側と太平洋海側、どっちがいいと思う?」

 

「えっと、それはデートに行くなら何処がいいかって話?どこにステラちゃんを沈めようかって話なら、国際問題になるからやめておいてね」

 

 拗ねた子供らしい表情のまま珠雫が口にした内容に私は背筋を冷やした。うっかり太平洋側とか答えていれば、ステラちゃんが海の藻屑になりかねない。若くしてAランク騎士に至った少女たちが戦うとなれば、学園もとんでもないことになる。

 

 何より──。

 

「恋する乙女はそんな物騒なことしないものよ」

 

「恋は戦争ってフレーズをどこかで聞いたけど?」

 

「ガチ目の戦争になるからダメ」

 

 う~、と不満そうな顔をする珠雫も大分、柔和になったものだと私は感慨にふける。意識を失った彼女を保健室で預かり、人見知りかつ警戒心たっぷりだった珠雫にココアを勧めたりして、やっと会話が成り立った入学初日が懐かしい。

 

 これは自分が異性的な態度をしていないことと、珠雫が初めて出会うタイプの人間であることに起因しているのかもしれない。お兄さんを放逐した家の人や、一般的な男性女性と自分は少々異なる点がある。それが珠雫のなんらかの琴線に触れたことで、どうにか今の関係を築けたのだろう。

 

 好かれようという努力はあった。けど、まったく意図していなかった今の珠雫との関係をアリスは何となしに好ましく思っている。たとえ行き着く果てが破綻しか待っていないとしても──。

 

「ねぇ、アリス」

「どうしたの?」

 

「やっぱり、実の兄が好きな妹っておかしいと思う?」

 

 

 これは珠雫の甘えだろう。珠雫も一般的な道理や倫理は十分、理解している。それでも、敢えて疑問を呈したということは、世間にはびこる一般論以外の答えを出してほしかったのかもしれない。

 

 一般論だけでお茶を濁すという回答もできたが、私はそれを選ばなかった。

 

「愛の前で正解不正解を考えるのが間違いよ。そんなこと考えてる暇があったら、キスの一つでもするべきね」

 

「……ごめん、アリス。貴方はそう言うと思って、知った上で質問した。分かったうえで、こんな情けない質問を」

 

「どうして?弱気になる必要なんてないし、情けないなんて卑下することもないじゃない。たった一人をそこまで強く想うことが情けないなんて誰にも言わせない。もちろん、貴方自身にもね?胸をしゃんと張りなさい。素敵よ、珠雫の想いは」

 

「ありがとう。ええ、そうよ。誰にだって、それこそ神さまにだって“お兄様を愛してること”を否定させない。わたしは黒鉄一輝を愛してるんだから!」

 

「まぁ、あの浮世離れした彼が、“妹”を“女”として見ているかは怪しいけどねぇ?」

 

「ア~リ~ス~、励ますなら最後まで調子の上がることを言ってよ!」

 

「や~ね、それじゃあただの太鼓持ちじゃない。珠雫もさっき言ってたでしょ?恋は戦争だって?武力行使はナシにしても、戦力の分析と戦略の熟考はよーくしないとね」

 

 アリスは敢えて微笑みながら、珠雫にとって厳しい分析を提示する。珠雫もその辺は正確に理解していることだろう、兄を愛するということの異質さを十分に知る彼女のことだ。知ったうえで、なお愛を貫こうとする珠雫に、アリスは自分でもどうかと思うほど肩を持ち始めていた。

 

「それで言ったら、ステラちゃんの方がまだ乗り越えるハードルが低いんじゃないかしら?身分って壁はそれなりに高いけど、一輝の強さなら何処の国でも、軍でも好待遇で迎え入れてくれるはずじゃ」

 

「それはないわ」

 

 珠雫の声と表情から熱と感情が抜け落ちた。さきほどまで感情豊かに愛と恋を口ずさんでいた少女の顔は、凍り付いた否定と拒絶の無表情を張り付けている。ゾッとするほど空虚な声の断定にアリスは、今の声を発したのが本当に珠雫なのか信じられずにいた。

 

「あの男、“黒鉄厳”がいる限り、お兄様の本当の自由はないでしょう」

 

 黒鉄厳と聞いて、その名前が国際魔導騎士連盟、日本支部の局長を務めている男性のものだと即座に結び付けた。遅れて、“黒鉄”という姓が、珠雫や一輝と同じことを理解する。

 

 年齢から考えれば、珠雫たちの血縁。いや、父親ということになるのだろうが、珠雫の無表情と冷え切った凍え死にそうなほど怜悧な殺意は血を分けた人間に対するものとは、どうやっても結び付けられない。

 

「だから、いつか──。私は、あの男を」

 

 珠雫はそこで言葉を閉ざす。聞いてはいけないことは誰にもある。これはその類いだろう。アリスは目を伏せ、ヘアケアを終えたためドライヤーのスイッチを落とした。

 

「はい、終わったわよ」

 

 ハッと珠雫は我に返ると、呆然として自分の髪を撫でつけてみる。しゃらしゃら、と鈴の音色のごとき音を出して細かく踊る銀色の髪。珠雫はアリスに手入れされた髪質の変化に、無言で感動していた。

 

 あどけなく喜んでくれる珠雫の反応は嬉しいが、今日はこれだけで終わらせるわけにはいかなかった。私は自身の机の中から幾つかの化粧道具を取り出す。

 

「今は、まだ来てない“いつか”より、明日の作戦会議でもしましょう?明日のデートのために珠雫をこれ以上ないってくらいにコーディネートしてあげるから。男の理性をとろけさせるなら雰囲気は柔らかく穏やかで、装いは甘く可愛らしいものでいかないと」

 

「……そうね、わたしにはアリスがついてるんだもの。あんなお邪魔虫がいたって、絶対に負けないんだから」

 

 珠雫の瞳に、負けん気の熱と慕情の火が点く。それに安堵して、化粧ポーチから珠雫に合いそうなコスメを選んでいると小さな少女は一つ提案をしてくれた。

 

「ねぇ、明日の映画、アリスも一緒に行かない?」

 

「あら、お邪魔虫を増やしちゃってもいいのかしら?」

 

「いいのよ、あの雌豚がついてくるって時点でデートは台無しだもの」

 

「そうね、それならお言葉に甘えましょうか。珠雫自慢のお兄様とは、ちゃんと話したいと思ってたし、あんなイイ男なら私が狙ってみるっていうのも」

 

「アリス?北極海と南極海、どっちがいいかしら?」

 

 珠雫の脅し文句でステラちゃんより遠い場所()に遺棄されそうになっていることから、珠雫の中で自分はステラちゃんより女子力が高いこと、恋敵として脅威度が高いというのが垣間見えた。

 

 両手を挙げての降伏(ホールドアップ)が間に合わなかったら、果たして自分はどちらに浮かんでいただろうかと考えながら、可愛らしいルームメイトのデートの準備で一晩を賑やかに明かしていった。

 

 

 

 

 

 

 破軍学園、正門。普段、通学の際は立ち止まることなく通過するだけの場所で、黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンはあと二人の男女との待ち合わせのため佇んでいた。

 

 

 わたしはよくウチで使ってるブランドの純白のブラウスを着こみ、日本に来てから届いた春らしい明るい色合いのカーディガンを羽織っている。ただ、問題はイッキの服装の方だった。下ろしたての白いYシャツに黒のスラックス。他の小物系は身に着けていないようでシンプルではあるが、イッキが着るとシックなモノトーン調で纏めたように見える。

 

 

 似合ってないわけではない、でも白黒の色彩で服を纏めているのがどうにも納得いかない。だって、それはシズクのイメージにどんぴしゃだからだ。白銀の髪、漆黒の霊装(デバイス)、たびたび模擬戦で苦渋を舐めさせられたシズクの姿が今のイッキの服装と被ってしまう。大体、白と黒だけの地味なファッションはいかがなものか。

 

 もっと、差し色にこだわるとかできたでしょうに。

 

 具体的には、赤いネクタイとか、赤のチョーカーなんてのも……。

 

 

「良かった、今日は絶好の行楽日和だねぇ」

 

 すっごいぽやぽやとした彼の声で、私は毒気が抜かれてしまったのを自覚した。

 

 それにしても──。

 

 

 イッキの方をちらりと流し見て、あらためて違和感を認識する。今、此処でのほほんと目を細めている青年と、模擬戦で熾烈な連撃、攻撃の雨あられを放つ超然とした剣士。それがどうにも私の中で繋がらない。こうして戦場でもなんでもない平凡な日常の中にいる彼は、そのまま平和の中で埋もれていきそうなほど、恐ろしさや脅威というものを欠片と感じさせない一般人そのものだ。

 

 だが、ひとたび模擬戦であれ、戦いの場に臨めば、人格どころか魂までも切り替わったと誤認しかねない絶技を修羅さながらに見舞ってくる。二重人格というには違和感が残り、同一人物と断ずるには首を傾げてしまう。私は日本に来て、最初に己へ土を付けた男の子のことがまだ分からずにいた。

 

「それにしても驚いたよ。ステラも珠雫と同じ映画が見たかったなんて。やっぱり、二人は仲がいいのかな?」

 

「あのね、わたしが今日、映画を見に行くって言ったのはイッキの身の安全と学外の風紀を守るためなんだから。映画館なんて暗いとこに連れていかれたら、どんな危ない目に遭うか。その辺の事、ちゃんと分かってるんでしょうね?」

 

「映画館って、映画を見るためだけの場所だよね?そんなおっかないことが起こる場所だとは思えないんだけど……。じゃあ、遊園地とかだったら、ステラはなんの心配も要らなかったのかな?」

 

「ダメよ、遊園地なんて!そんないかがわしいとこに行ったら、どうなることか……」

 

「うん、とにかくステラは遊園地に行ってる人たちに謝った方が良いと思う」

 

 イッキはステラのだいぶヒドイ遊園地への印象に何とも言えなさそうな顔で苦笑している。ただ、ステラの方にも言い分というものがあった。

 

「ほんと~に危機感が無いわね。いい?本当に危ないのは危険を危険と感じられないお気楽な平和ボケなの。さながら、ライオンの前にテリヤキソース被ったカモみたいに油断して、ぱっくりいかれてもおかしくないってことを自覚なさい!」

 

「それをいうなら、ネギを背負った鴨では……ステラは心配性だなぁ、珠雫のあれだって、四年ぶりに会って感極まったからやりすぎたと言っていたし、深く気にすることはないと思う。あと、遊園地といかがわしいことを結び付けるのは、ちょっと気にした方が良いと思う」

 

「うっさい!遊園地のくだりはもういいの!」

 

 ホンットに油断と隙しかない!大体、珠雫の態度が変わったのだって、距離を詰め過ぎてドン引かれないようにするのが目的なのだ。そんな見え見えの考えをイッキは読めていないというのだから、頭が痛くなる。

 

「シスコン……」

 

「う~ん、確かに珠雫は大切な妹で四年間、連絡もせず離れていたから、思い入れはちょっと他の人より強いのは自覚するところだ。でも、よく考えてくれ。珠雫は黒鉄の血縁で、完璧に妹なんだ。珠雫が異性として僕を認識するわけないだろう」

 

「ふ~ん、“シズクが”ねぇ?じゃあ、イッキはどうなのよ!」

 

「……どうって、何が?」

 

「だ、だから、そのイッキはシズクのことをどういう風に……」

 

「ああ、子供が欲しいかってこと?」

 

 私の中で時間が凍り付いた。とんでもない暴投を投げてきたイッキの顔は、普段通りの何考えているのかよく分からない顔をしている。少なくとも、性的なニュアンスではなく事実をどう認識しているかという確認のためのセリフなのは理解できた。

 

 あと、話しぶりからシズクへのインモラルな感情がないことも分かりはした。

 

 でも、それにしたってデリカシーが無さ過ぎ!

 

「い、いきなりそんなド直球な話に入るな~!!」

 

 私の咆哮と共に火の粉が舞う。燐光を発し、周囲に舞い散る燈火の欠片は、舞い散る桜の花弁に見えた。けれど、焔色の花弁は次の瞬間、白銀の雪花へと変じる。舞う火の粉が異なる法則に支配を上書きされ、凍氷の六華(ダイアモンドダスト)へと転じる。

 

 冷気の差し向けられた方へ私は振り向いた。

 

 刹那ほどの時間もかけず、熱に彩られた世界を反転させた魔術の使い手は、気の毒に思うほど真っ赤な顔をして、長身痩躯の男子を連れて現れた。

 

 

「お、おお、お待たせしました。おにいさま……」

 

 周囲を通り過ぎる人々、そして私やイッキは、この場に参じた少女の美しさに圧倒される。真っ赤に色づいた頬と桃色に染まる唇。白銀に煌めく髪は、この世の何よりも清らかで白い美の実在を証明する。

 

 シズクの纏う服装は、白銀の髪とコントラストを描くような漆黒のゴシックロリータ。小柄で愛らしい体躯のシズクによく似合う装束であり、ビスクドールを思わせる彼女の雰囲気にピッタリ過ぎる。

 

 何より普段と明らかに違うのは、薄っすらと施された化粧にあった。まぶたに薄く塗られたアイシャドウ、まつげはふんわりと綺麗に弧を描き、唇はシズクの肌の白さを際立たせる彩度の紅が差されている。まぁ、顔が真っ赤になっているので、ルージュだけは効果半減みたいなとこだが……。

 

「やぁ、珠雫。今日はなんだか、とっても綺麗だね」

 

「はい!あ、ありがとうございます……それで、お兄様は何人くらいがよろしいでしょうか」

 

「……何人?」

 

「ええ、野球チーム(九人)くらいでしょうか、はたまたサッカーチーム(十一人)くらいでしょうか。その、えっと、私、頑張ります!」

 

 珠雫の意図するところが分からない一輝は、妹が何を指しているのかを当てようと推量を働かせてみる。それでもさっぱりわからず、同じ女性であるステラに助け舟を求めようとしたら、ステラ山がまた噴火した。

 

「ず、ズルイ!明らかに素人技じゃないでしょ、そのチーク!さてはスタイリストを雇ってしてもらったのね!」

 

「──違いますから。そんな何処ぞのお姫さまと一緒にしないでください。これは私のルームメイトにやってもらったんです」

 

「というと。なるほど、これがアリスの腕前か」

 

「うふふ、二人がそんなに驚いてくれたのなら、私も鼻が高いわね。まぁ、もっとも最初に驚いちゃったのは珠雫の方なのだけど」

 

「あ、ああ、アリス!?」

 

 “じょ~うだんよ~”なんてひらひらしながら珠雫のぽかぽかパンチを避ける長身の男性、有栖院凪は温和な笑みと共に軽やかなステップを踏んでいる。有栖院凪、他の女生徒や同級生からアリスと呼ばれる男のレディだ。矛盾するようだが、事実は事実なのでそういうものと認識するしかない。

 

 珠雫のルームメイトで一輝がたまに開催している合同訓練でも顔を出す性別と性格が合致しない紳士兼淑女というのだけは周知されている存在。

 

「うん、仲良きことは素晴らしき哉、だね」

 

「イッキ、わたし偶にアンタの目がどういう構造してるんだか、すっごい気になるときがあるの。目の付け所が違うって意味じゃなくてね」

 

「褒めてる?」

 

 ふん、とそっぽを向いた私と入れ違う形でアリスがイッキの傍に近づき、自然に会話へ交ざってくる。

 

「あら、私の美しさのことでも話してた?」

 

 前言撤回、なんか不自然なことを言ってる。

 

「珠雫と仲良しだねって話をしてたんだ。あの人見知りの珠雫がこうも胸襟を開き、心を通わせてくれる人と出会えた。アリス、君との出会いは僕にとっても僥倖というものだ。今後も珠雫に良くしてやってくれると嬉しいよ。ウチは兄がいても、姉というのがいなかったから。女性の悩みというのはどうも疎くて」

 

「ふふ、感謝は私の方だってしたいくらいよ。こんな可愛い妹分ができたんですもの。それに一輝も、珠雫も初対面で私の性別に慣れてくれる人たちだからね」

 

「ウッ……」

 

 ステラはアリスの言葉にささやかな後ろめたさを覚えた。初対面のとき、アリスの性別のことで取り乱した記憶がフラッシュバックし、ステラの心の柔らかいところに突き刺さる。実際、アリスは初対面のときのことを引きずったり、気にしたりはしていないと思う。

 

 しかし、だからこそステラの中では解消できない後ろめたさが存在していた。

 

「別に大したことじゃないよ。アリスは身体が男性でも在り方は女性というだけだろう?そんなの“見れば分かるよ”」

 

「──イッキ、そうよね、アンタはそういうヤツだものね!」

 

「私は男とか女とか、どうでもいいです。人間という時点で等しく嫌いですので」

 

「……シズク、そういえばアンタはそういうヤツだったわね!!」

 

 ステラのベクトルが180度は異なるセリフにアリスがクスクスと笑い出し、場の空気が和らいだ。全員が揃ったこともあり、ステラたち四人は今日の目的地であるショッピングモールへと移動していく。

 

 

 

 

 

 ステラたち、三人の女性陣が女性特有の会話をして、気まずそうにしている一輝はふと先ほどのステラとの会話でおかしな部分があったことを思い返していた。

 

 いわく、ステラは肉体的性別が男なのに、女性らしさがあるアリスを異質なものと捉えていた。一輝にはそんなことで悩む意味が分からない。答えは至極、簡単な事なのに。

 

 

 

 一目見て分からないのだろうか?

 

 “有栖院凪を斬ろうとする場合、男性を斬る工夫よりも女性を斬る工夫の方が当てはまりやすい”。

 

 つまり、彼女の肉体構造は男性でも、在り様は女性ということだ。ならば、アリスは女性と認識できる。

 

 不思議だ。

 

 嗚呼、本当に不思議だ。

 

 どうして、こんなにも分かりやすいことが分からないんだろう?

 




 備考:黒鉄一輝について

 黒鉄一輝の見る世界は、常人の見るそれとは明確に異なる。斬撃と切断の窮極に魅入られた彼の視る森羅万象は斬撃の最適解が星々のように認識されているという。かつて、この領域に入門できたのは、残った命(すべて)を燃やし尽くし覚醒に至った“英雄”黒鉄龍馬と、封印より蘇った“暴君”アダムス・ゲーティアの二名だけである。


 そして、その二人は魔剣に敗北した過去の残影に過ぎない。

 “英雄”と“暴君”は既に死亡している。

次に投稿するかもしれないエピソードについて

  • ラスベガス水着剣豪七色勝負
  • 本作一輝VS原作一輝
  • エーデルワイス戦
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