落第騎士の備忘録   作:悪事

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魔剣秘聞、七つの秘剣と七大魔剣。


二十二話

 

 

 剣神、黒鉄一輝は自分の身に何が起こったのか、困惑の中にいた。

 

 第四秘剣、蜃気狼(しんきろう)

 

 黒鉄一輝が固有技巧、秘剣の中でも最も取り扱いの容易で、数多の実戦で使ったそれの行使の後、急に足がもつれ、強かに転んだのだ。

 

 まるで、突如として身体が言うことを聞かなくなった、とでもいうべき事象。

 

 

 

 盛大にすっ転んだ一輝を眺め、魔剣、“黒鉄一輝”はため息をついた。

 

「終わりだよ、君にはもう何も残ってない」

 

「な、にが……」

 

 “一輝”の憐れみの声にせめてもの反骨心を抱き、一輝は立ち上がる。そのまま、剣を構えようとして──。

 

 

「あ、れ────?」

 

 

 どう構えればいいのか、分からなくなってしまった。

 

 

 いや、構えだけではない。足は、身体の重心の置き場、呼吸法だってもっと正しいものがあるはずなのに、どうすればいいのかが分からずにいる。

 

 一輝には、それと似たような現象を味わったことが以前に存在した。

 

 比翼のエーデルワイスとの死闘の後、彼女の超越の剣を見て学んでしまったがゆえ、一時的にだが基礎剣技や戦闘法に僅かな狂いが生じたこと。

 

 

 だが、今の状況は僅かな狂いどころの話ではない。これまで培ってきたもの全てが、生涯を賭した技がすべて、喪失している?知識としての記憶に留まらず、身体に染み込んだ武術の記憶までもが失われたという事実に一輝は、吐き気を覚えた。

 

「“劣化の太刀打ち”、って言うんだ。……第二の魔剣だよ」

 

「記憶が……なくなる?まさか、これが君の伐刀絶技(ノーブルアーツ)!?」

 

「──いやいや、僕の伐刀絶技(ノーブルアーツ)にそんなすごいチカラがあったら、剣技なんて横道にズレてたりしないよ。それに、そう特別なことをしたわけじゃない。仕組みは単純さ、君の剣技の流れを、連続性を乱しただけの話」

 

 剣の道を横道と言い放ったことに眉を顰めながらも、一輝は相手の言葉に耳を傾ける。そこに何らかの突破口の可能性を信じて──。

 

 

 

 何事にも上達の手段として効率的かつ一般的なものは、己よりもその分野に長じた、ないし特化した者の技を見ることが挙げられる。それが上達の近道であるし、より優れたものを見ることで自分の技巧、経験に落とし込む過程が、運動、武術、芸術など様々な分野で必須とされる。

 

 代表的なモノで囲碁の教練方法に指導碁と呼ばれるものがある。

 

 学び手の技量を把握したうえで、効率よく最善手を打たせる、研究のため打ち手を誘導する行為。将棋、チェス、それぞれにも似たような概念はごく一般的だ。

 

 

 魔剣たる“一輝”は、この極致を五歳の時点で獲得していた。相手にどのように打ち込み、また捌かせ、弾けば上達するのか、逸脱の読みと認識を持つ一輝にとって、相手を上達させるための指導剣は初歩の初歩として理解している。

 

 

 だが、一輝はそこから先に踏み込んでしまう。如何にすれば、相手の技巧を、センスを、経験を無為にせしめることが出来るのか。その無邪気でありながら悪辣極まる思い付きは、指導をするよりも容易く実現が叶った。丁寧に組み上げたモノ、慎重に余分を取り除き先鋭化させたモノ、積み重ねて纏まったモノ、それを壊すのは創ることより容易く……。

 

 残酷なほどに手軽だった。

 

 

 仕組みは単純だ、相手の戦闘法に類似した動きをとり、そこから意図して下手、未熟な動作を実行する。ただ、下手に動けばいいということではない。一連の動作の直前に、技巧の極致ともいえる巧みな挙動を織り交ぜる。それから相手が学び、その学びに劣化(烈火)を仕込むのだ。

 

 相手の身体能力的に無理のある動作、感覚を歪ませるためのリズムでの打ち込み、視野を狭めるための誘導、相手の認識、経験則を崩すための無駄な挙動。

 

 不可視の燎原火、相手の技と世界観、才能を根底より打ち崩す非道にして無道の技巧。“第二の魔剣、劣化の太刀打ち”、七つある魔剣の中で“一輝”が最も使い慣れた剣技でもある。

 

 

 劣化の度合いは、実は“一輝”にも分からない。たった数合で全ての経験値を無くした者もいれば、三十と剣戟を重ねて、ようやくという猛者もいる。影響しているのは、観察力あたりと相手の才覚の底値だと思うのだが、詳細については“一輝”さえ知ることはない。

 

 というより、知ることに意味が見いだせていないのだ。

 

 

 確かなことはただ一つ、劣化の太刀打ちを凄絶と受けて諦めに崩れ落ちなかったのは、“英雄、黒鉄龍馬(サムライリョーマ)”のみだということ。

 

 

 

 

 

「あ、あぁ、あ……?」

 

 唖然と、どのように構えればいいか迷う一輝の立ち姿──。

 

 もう、壊れてしまったかと“一輝”は少しだけ残念な気分になった。

 

 自分と似た形、戦闘法、此処まで来ると境遇も似ているような気がするが、世間話をできる間柄でもない。

 

 

 決着だ、もう意味はないが、せめてもの情けとして一刀で片を付けようと“隕鉄”を大上段に構えた時、眼前の男の目に燃える熱に“一輝”は目を惹かれた。

 

 

 

 

 

 “──まだだ”。

 

 劣化に焼かれ、灰燼と帰した過去の記憶、時間。それでも残り火となるものはある。戦いの記憶だけではない、鍛錬により出会った人々、繋いだ絆、戦闘とは関係の浅い思い出たち。それが今の一輝を辛うじて支えている。

 

 

 鍛錬の中で共に笑った人がいた。

 

 戦いの中で相手の抱える事情を知った。

 

 劣等感も、怒りも、憧憬も、喜びも戦闘には意味がない。

 

 否、無意味などではなかった。

 

 ──全てに意味があったのだ。

 

 

 考え、対策、実行、検証を重ねていく。

 

 刀の持ち方、脚の位置、立つときの姿勢、刃を振るうときの重心の位置。

 

 以前の戦い方の記憶が薄っすらと残っている。少し前とは雲泥の差、素人同然の刀の持ち方に構え。でも、これが自分の始まりだった……懐かしいとさえ思える。

 

 

 錆びついた技巧に熱を灯す。

 

 まだ熱を持つ赤く、紅く残る情熱だけが今はただ一つの道しるべだった。

 

 

 剣神でもなく──

 

 七星剣王でもなく──

 

 無冠の剣王(アナザーワン)でもなく──

 

 落第騎士(ワーストワン)ですらない──

 

 

 

 ただ、悔しいという思いだけが熱を持っていたあの頃の【黒鉄一輝】として。

 

 

 悔しさは、まだ自分が諦めに屈していない証明だと、言ってくれた大人(祖父)がいた。それだけを支えにひた走り、多くの友人と好敵手、同胞たちに恵まれた。

 

 

 “諦めたくない”という思いが、未来を創った!

 

 

 

 劣化した中で自分の剣を一から組み上げる、黒鉄一輝という剣に支えられ、剣と共に多くの人たちのために生きてきた軌跡を辿る。

 

 

 錆びついた剣技が、意思という熱に灼かれる。

 

 何もかも失った一輝が、再び走り出すための一歩を踏み込む。

 

 

 “秘剣、再創”

 

 

 

 不手際な、未熟な、無様な格好で一輝が走り出す。足運びはかつてと比べれば、憐れに映る。技術など無い、ただ我武者羅なだけ、真剣なだけ、諦めてないだけだ。魔剣、そう呼ばれた技術の特異点たる怪物にとって歯牙にかける価値すらない素人同然にまで堕ちた存在。

 

 

 片手間に、息を吸って、吐くより早く命を奪える。

 

 

 “取るに足らない、相手だ”。

 

 “生命活動を停止させるのなんて、赤子の手をひねるよりも簡単だ”

 

 “僕が触れれば、あっけなく壊れてしまう”

 

 

 だが、それらの事実に反して、“一輝”は牙を剥いて凶暴に笑ってみせた。

 

 魔剣の裡にあった心情は、歓喜のみ。

 

 未熟に燃え盛る克己心を。

 分不相応な夢に手を伸ばす愚かさを。

 諦めを踏みつけて一歩を踏み出す者を。

 

 “一輝”は決して嗤わない。

 

 

 諦めず、礼を失さず、真剣に自分と向き合う敵手こそ“一輝”が求め続ける強敵の絶対条件。落第騎士、いや剣神、黒鉄一輝はまさに全てに該当する真の好敵手、尊敬に能う“騎士”である、と確信に至ったとき、“一輝”は歓喜に震えた。

 

「そうだな、そうこなくちゃ、それでこそ──!!」

 

 

 “一輝”の魂も熱く、燃える火が回る。

 

 此処からが本番だと互いが言葉もなく理解した。

 

 それまでの気勢の欠けた動きとは一線を画す超越の軌道で魔剣が迫る。神速で振るわれた隕鉄の一刀、堕ちた剣客、黒鉄一輝は無様なことに動体視力の基礎スペックと反射神経に頼り、闇雲な防御に命を賭ける。大きく弾かれ、一輝が瓦礫の山を滑落していく。落ちた先は、生涯で最も熱い夏を過ごした思い出の場、七星剣舞祭のリングの上だった。

 

 

 リングに叩きつけられ、次の息を吐けなくなった一輝の頭上から“一輝”が頭蓋を踏みつけようと降ってくる。一輝はどうにか転がって、隕石めいた踏みつけを回避する。

 

 

 大きな破砕音が鳴り、リングへ蜘蛛の巣状の罅が広がった。

 

 着地した“一輝”は、油断なく一輝の剣を見つめる。

 

 剣技はまだ回復していない、未熟で錆びついたまま──。

 

 しかし、悠長に相手の技量の回復を待つほど、魔剣も慈悲深くない。というよりも、それは戦闘者として相手への侮辱だ。仕留められる好機をだらだらと逃し、加減と手心を加える戦いを、真剣勝負などと言えはしまい。

 

 

 一刀の下に痛みなく決着を付けようとした時、“一輝”は相手の取る行動に唖然として、思わず決着の一撃を入れることを忘我してしまった。

 

「──そう来るか」

 

 

 

 一輝は、相手の第二の魔剣の正体に見当を付けつつあった。要するに、魔剣の技巧を記憶野に焼きつけ、強く印象付けることで敵の技術体系を根本から崩しているのだろう。恐ろしい、なんと凶悪、としか言い表せそうにない。

 

 “劣化の太刀打ち”を受けた以上、一から剣技を組み直すのが正道の攻略法だ。錆びついた技術というものはそう易々とは戻りはしない。

 

 

 一輝は知らないことであるが、第二の魔剣を受けた黒鉄龍馬は“一輝”の指導剣により元の剣技以上にまで剣腕を回復、進化させたうえで魔剣と対決し、屠られている。

 

 “一輝”の予想下で剣技を回復させても、それは魔剣の想定の範疇を脱することは叶わない。

 

 

 一輝に残されているのは正道とは異なるアプローチ、邪道の選択肢だけだった。必要なのは痛みに耐える忍耐と失う覚悟。一歩間違えば、戦闘続行さえ困難になる荒業だが、今のままでは戦闘以前の問題だ。

 

 

 ゆえに、秘剣の使い手は静謐な面持ちで息を吐き切り、刀を逆手に持ち変える。一輝のすることに予想がついた“一輝”は唖然とその愚行を見ることしかできない。

 

 一見すれば、諦めたとも思える行動だが、彼の目にはそんなものは微塵となく諦めまいとする強い信念が煌々と火を焚いていた。

 

「……誰にも、僕の積み上げてきた剣(アイデンティティ)に触れさせない」

 

 

 一輝は逆手に持った陰鉄の柄で──。

 

 自身の左眼球を一息に叩き潰した。

 

「がっ、ぁぁぁあぁぁ!!?!」

 

 灼熱と走る痛みが脳髄を攪拌し、粉々と粉砕する。

 

 思考は滅茶苦茶になり、平衡感覚が混沌に沈む。この痛みの濁流に耐え、一輝は“正しい構え”で剣を持ち直す。歩幅は正常、息遣い、剣の振るい方まで狂いなく思い出せる。知識としての記憶に留まらず、肉体に刻まれた記憶も正常な状態に移行。

 

 

 “落第騎士”でさえなかった黒鉄一輝は、喪失を体験しながらも──。

 

 今、再び、積み重ねた剣の果て、“剣神”としての自分を取り戻したのだ。

 

 左の瞳を無くし、隻眼となった一輝は滔々と“一輝”へ語り掛ける。

 

「ようやく理解できたんだ。君の第二の魔剣、“劣化の太刀打ち”は視覚と触覚を通じて、脳の記憶と肉体の記憶の歯車を狂わせる術理。なら、一度、君の剣戟よりも強い衝撃を与えて、それらを上書きすればいい」

 

 言うは易いが、行うなぞ狂気の沙汰だ。

 

 医療技術が異常に発達した現代において、四肢の欠損や神経系の重傷は、よほどのことが無い限りiPS再生槽(カプセル)で完治できる。だが、それにしたって、いきなり眼球を潰すとは“一輝”も思いつかない。

 

 そこで“一輝”はなんとなく理解した。たぶん、技量では己が勝っているが、死に瀕した経験は相手の方が上だろう、と。もしかすると、実際に何度か死んでるやもしれない。まぁ、こうして目の前で生きてるのだから、勘違いかもしれないが。

 

「──乱暴なやり方だなぁ。君、壊れた人やモノは叩いて直すタイプ?」

 

「モノならきちんと修理して、人なら褒めて治すタイプさ。でも、叩くことでしか状況を打開できないなら、やむを得ず叩いてしまうのが僕という人種なんだろうね。……きみは?」

 

「ノリと状況次第だけど直そうと叩いて壊すタイプ。まれに治すこともあるよ」

 

「それはまた……随分と」

 

 一輝の呆れた顔つきに“一輝”は恥ずかし気に苦笑してみせた。だが、視線は油断なく、一輝に向けられ、寸毫の隙も晒していない。

 

 両者は此処が土壇場、最後の大一番。

 

 クライマックスと呼べる展開であることを直感する。

 

 

 剣神と魔剣、二人の逸脱の域に達した剣客が刃を鋭く構える。極限まで剣技と体術を錬磨した両者は、ごく自然に呼吸と構えが類似していった。

 

 そして最後の展開、勝負の分水嶺となる状況下に二人は──。

 

 鏡写しで抜刀術の構えを取る。

 

 

 勝負の決め手として二人が選んだのは居合抜き、抜刀の術理。しかし、居合といっても全くの同一ではなく異なる点は存在する。

 

 剣神、黒鉄一輝は陰鉄を脇腹から腰だめに回し、刀の根本を左手で掴んでいる。

 

 左手は全力で刀身を握りしめ、鍛錬と研鑽により、厚く硬くなった一輝の手のひらに一条の血の線が引かれた。異形の抜刀術を想像させる姿勢。抜刀術の要たる鞘こそないが、それは紛れもなく居合抜刀の構え。反発力と反動を最大限に活用した一輝が構築した最速の最適解。

 

 片や、魔剣は漆黒の刀身を黒塗りの(さや)に納めた状態から、上半身を前方へ倒れ込む寸前で姿勢を固定。

 

 両の足を大きく、縦へ開け広げている体勢からは前進の意図しか見えてこない。地面に膝を付いてはいないが、似た体勢としてクラウチングスタートが挙げられる。刀の(つば)に左手の親指を当て、右の手は弛緩して柄に乗せられた状態。

 

 

 両者は分かっていた。

 

 次の一刀こそ自分が、相手が、誇る最強の剣技である、と。

 

 

(つい)の秘剣、追影。……来い、魔剣遣い。僕の最強(最弱)を以て、君の最弱(最強)を打ち破る」

 

「来い、ね。来ないと使えない術理でそういうわざとらしいこと言うのは、なんだか挑発されているようだけど……いいさ。真っ向から、僕の魔剣が君を打ち破る。いいかい、七番目だ。これから振るうのは第七の魔剣、銘は太刀()影。それだけ覚えて、散るがいい」

 

 

 “一輝”が静かに膝を曲げ、力を溜める。一輝の間合いへ一足飛びに侵入し、そのまま最速の居合抜きで切り伏せる心胆なのだ。どくり、どくりと体内を巡る拍動が音を立てる。研ぎ澄まされた鋭敏な知覚は互いの心臓の音を察知し、自然とそれが同期し始める感覚を味わう。

 

 

 共鳴する鼓動、勝負を分け、運命を決めるのは次の一瞬だろう。

 

 魔剣も、剣神も、牙を剥いて笑みを浮かべる。だが、その笑みは嘲笑ではなく、強者と認められる相手と剣を交えられることの歓び。

 

 相手の壮絶な覚悟を嗤うまい、傲りも慢心もなく今はただ純粋な喜びを。

 

 相手の居合の構えから、敵がこれから先に取る動作分岐(パターン)を予測。打ち破るべきは未来に立ちふさがる存在。

 

 

 たった一瞬、永劫とも錯覚するほどの刹那、全力で自分を使い尽くせ。

 

 此処が正念場と心得ろ。

 

 敗北のイメージを打ち消せ、積み上げてきた武を進化させ、剣の神髄へ沈んでいく。

 

 常道(セオリー)など今は邪魔なだけ。

 

 抜き放たれた光の中、魂の熱は際限なく上がり続ける。

 

 最弱(最強)の自分を使い尽くせ、研ぎ澄ますは心。

 

 一撃……そう一撃で突き破る。

 

 

 

 ──刻は来た。

 

 

 魔剣、“黒鉄一輝”が駆けて、敵手の間合いへと吶喊。そして、左手の親指が鍔を弾き、それと連動して右手が霞み、消失したと思うほどの速度で漆黒の太刀を抜き払った。対する剣神、黒鉄一輝は伐刀絶技(ノーブルアーツ)の行使に踏み切る。黒鉄一輝の固有技能、全力を超えた全霊、自分を使い尽くす自己強化の極致、“一刀羅刹”を。

 

 ──間合いへ飛び込んできた敵への迎撃。

 

 ──迎撃と呼応する形での“一刀羅刹”の行使。

 

 終の秘剣を行使する上での条件は満たされている。今ここに騎士の才覚無くして黒鉄一輝を七星の頂へと至らせた最強の秘剣が放たれる。

 

 だが、対する第七の魔剣もまた最強を疑う余地はない。魔剣が親兄妹、恋人にさえ徹底して秘匿した剣の最高速度。剣士が最も隠すべきと断じた剣速の最高値を此処に開示される。

 

 

 剣神が愛する者のために至った究極の一刀、(つい)の秘剣、追影。

 

 魔剣の慕った者を屠りし窮極の一刀、第七の魔剣、太刀()影。

 

 

 何処までも似通い、何処までも異なる抜刀の剣がほぼ同時に放たれ、風の魔人が構築した異空間を大きく揺らし、剣戟の火花がひときわ鮮烈に(またた)いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────魔剣の話をしよう。

 

 

 いや、これは根底を覆す論法なのだが。

 

 

 

 そもそも“黒鉄一輝”とは本当に剣士だったのか──?

 

 

 

 

 




 備考:黒鉄一輝について

 第七の魔剣の正体を此処に語る。

 第七の魔剣、太刀影は二段階の居合抜刀術である。まず、居合によって為された影すら絶つほどの速度の一刀が相手を斬り伏せ、その速度を緩めず、瞬時に逆手に持ち帰ることで一撃目の最速を更に凌駕するほどの速度で二段目の斬撃を放つことを可能とする。これこそ魔剣が最も秘め隠す七番目の魔剣の正体に相違ない。


 一切の異能に因らず純然たる物理法則の下に行使されながら、運命と因果を狂わせる理外の居合抜刀術である。

次に投稿するかもしれないエピソードについて

  • ラスベガス水着剣豪七色勝負
  • 本作一輝VS原作一輝
  • エーデルワイス戦
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