このお話を読んで、来年より始まる予定の長編を楽しみにお待ち頂けますと幸いです。
今回はあらすじにもあります様に……新年に制作予定の長編へ向けて、ちょっとした短編を投稿しようと思います。それ故にガルパに実装済みのキャラは名前のみ……出しても少しにして、本編はまだガルパに来ていないキャラで、尚且つ僕が新規バンドの中で一番性癖に刺さった子をメインにお届けします。
それでは、本編スタートです。
後書きにお知らせももしかしたら載せるかもなので、宜しければ最後までご覧頂けると幸いです。
「そう言えばふと思いましたけど、先輩って基本誰に対しても優しいですよね」
「え、どしたの急に」
僕は自分の隣に座っている少女から、唐突にもそんな事を言われてしまった。僕としてはいつもの事と割り切ってはいるが、どうやらこの少女から見れば、少し意外だったらしくて。
その言葉を投げかけて来た少女は、鮮やかな金色の髪を短く切り揃えており、服装は以前まで僕も通っていた花咲川学園の冬服を規定通りに着こなして居た。
そして今は椅子に座っているから見えて居ないが、その下には黒いタイツを履いている。本人曰くこれが標準装備との事らしいのだが、もう直ぐ暑い夏もやって来ると言うのに、それは如何な物だろうかと思うのが本音だ。
「学内ではまだ噂になってるんです。先輩が居た時の学校はすごく賑やかだったのに、その人が卒業して暫くしたらまた元の雰囲気に戻ったって」
「まあね……。ほら、花咲川って元女子校だから、その中に男子生徒が一人でも居ると物珍しさが勝って、人集りもできるんだと思うよ。でも、やっぱり昔からあったイメージは崩しちゃいけないと言うか。だからこそ、卒業式を行なう前に理事長にお願いして戻して貰ったんだけど」
「なるほど、そんな事があったんですね……」
そんな事を話しながら、僕とその後輩の少女は雑談を続けていた。と言うより、誰が好き好んで女子校に転入しようと思ったのかが謎だけれども(なお、僕の場合は半ば強制的でした)。
僕と今現在雑談をしているのは……
近頃人気急上昇中のアイドルユニット──『sumimi』の1人であり、それと併せて仮面を着けて演奏をすると言う……今までに無い様なコンセプトを掲げたダーク系ガールズバンド──『Ave Mujica』のギターボーカルを担当している(たぶん顔はもうバレてるかも)。
後者で活動をしている時は『ドロリス』と言う、また別の呼び名があるのだが……これは、またの機会に語らせて貰おう。
先にも述べた通りに、彼女は花咲川の高等部に通っている都合上……僕とは学校内で直接関わる事は無いものの、立場上で言えば後輩の位置関係となる。だからこそ、先のやり取りでもあった様に『先輩』と言われるのはまだ自然なのだが……。
「それにしても先輩」
「ん?」
「私は構いませんよ、遠慮せずに話しかけて来てくれて。寧ろ嬉しいくらいです。ですが、先輩の方からはあまり声をかけてくれないので、どうした物かと……」
「あ、ああ……ごめん。気を付ける」
初華から飛び出した唐突な言葉に、僕は胸の辺りが痛む感覚を覚えた。と言うのも、今朝自宅を出る前に、
ちーちゃんとは通う大学こそ違っても、普段から一緒に居る事には変わりないので、今日の様に小言を貰ってしまうのも少なくない。だからだろうか……今こうやって話してはいるが、何処で彼女のデッドラインを踏み抜くか、僕も分からないのだ。
盗聴器等を使って聞いている……なんて線は本当は考えたくないが、万が一と言う事もあるので、神経を尖らせる事となっている。
「……先輩!」
「はっ…! ご、ごめん初華……何?」
「やっと答えてくれた……。さっきからずっと上の空の様な状態でしたよ。大丈夫ですか?」
「……すまない。いつものだ」
初華にはそう言って軽く謝り、再び目の前の画面に視線を落とした。
今現在僕が取り掛かっているのは、パスパレのメンバーに向けた練習メニューの通達だ。ひと月ほど前に新任でプロデューサーが来たとは言っても、依然として練習方針等は僕も考案する方向で変わり無いので、僕が不在の間はその新任の人に連絡アプリ等を使って内容を伝えて、それを彼女たちに熟して貰うと言う形になっている。
ただ……それをする関係上、仕事が終わっても初華を待たせてしまう羽目になるのは、心の底から申し訳ないとは思うが。
そして数分後。
「……よし、こんなもんかな……っと!?」
「ふふっ、お疲れ様です。先輩。息抜きがてら、飲み物でもどうぞ」
「ありがとう、助かる。いくらだった? 払うよ」
「私からの気持ちです。お気になさらず」
「そっか。なら、頂こうかな」
つい先程作業を終えたばかりの僕へ、初華は飲み物を渡して来た。この数分の間に何処へ……と思ったのだが、休憩室にある自販機で買って来たとの事で。
……全くもう。疲れてるのは初華だって同じだろうに。
そしてそんな時に買って来るのが麦茶って……ほんと、関わり始めてまだひと月かそこいらでしょ? 何処まで見抜かれてるのって話だよ、本当に。よく気が利いた後輩だよ……初華が僕と同じ校内に居たら頼りたくなるね。
「……時間も良い頃合ですし、切り上げましょうか」
「そうだね。僕はこのまま帰るけど……初華は?」
「私もそうします。ですが……」
「ん? 何……ちょぉっ!?」
僕がそう言って反応を返しきる前に、初華が此方へ身を乗り出して来た。こ、コイツ……っ! もしかして最初からそのつもりで……!?
「関わり始めた時期は遅いですが、それなりに先輩の頑張り様は知っています。けど、パスパレの事もして、私たちの事も……なんて、身体がいくつあっても足りません。私が目を離したら、一体何を仕出かすやら」
「そ、そんな事しないよ大袈裟な……。それに、もう僕だって大学生だよ? 初華より歳は重ねてるんだ、自分の事くらい管理はでき『じゃあ、今し方鳴っているスマホの着信は何ですか?』……え?」
彼女にそう言われてスマホを見てみると、そこには短く一文字だけ『彩』と表示されていた。大方次のレッスンの時は来れるのか、とか……或いはお仕事の連絡が入ったから一緒に行こう、と言った感じだろうが。
兎も角、初華のこの勘の良さには目を見張る物がある。
……未だにジト目は解かれてないし、かと言って当たり障り無い言葉で凌ごう物ならば、履歴を見せろとせがまれるかもしれない。……なら。
「……先輩。私は先輩に頼りっきりになってしまうのは、嫌なんです。お互いに頼って頼られて、それが担当アイドルとマネージャーの関係じゃないんですか?」
「そ、それは……」
「それに。私と居る間は、絶対に他のアイドルに目移りさせませんから」
……あー、これはもう……詰みですね……。
「……わかった。じゃあ、親御さんに連絡はしててね」
「……っ、はい!」
そう言うや否や、初華は僕から少し離れてスマホを操作し始めた。彼女の親御さんがどう言う人なのか未だにわからないが……少なくともこう言う事に関しては、容認しているんだろう。でなければ、アイドルユニットの1人として活動している事にも批判をして来たのだろうからね。
そして少しした頃、初華から承諾の旨の話が出たので、僕は彼女を連れて事務所を後にし、スーパーでの買い物を済ませてから自宅に帰宅する事となったのだった。
「……先輩、ここに一人暮らしって本当ですか?」
「うん、そうだよ。まあ、ここは元々住んでた所だから」
「そ、そうなんですね……」
「さっ、入って。荷物を置いたらご飯にしよ」
僕はそう言って初華を家に招き入れ、部屋の場所を軽く教えた後に夕飯の支度を始めた。材料に関しては途中のスーパーで買い足して来たので、作り置きをもし仮にしたとしても足らせる事が可能だ。
「先輩、部屋着に関しては適当に選んでも良いですか?」
「うん、好きなの使って良いよ。初華の背丈なら今の僕の服のサイズとそこまで変わらないだろうし」
「ありがとうございます」
途中で2階から聞こえて来た質問に答え、僕は料理の手を進め続けた。……よし、今日はいつものメンバー以外のお客さんが来てるんだ、これにしよう。そう考えた僕は、キッチンの上の棚の扉を開けて、そこから四川風回鍋肉の素を取り出した。
回鍋肉とご飯だけだと、バランスの問題もあるので……その傍らでは味噌汁も作っているのだけれども。
そんな事をしていたら、着替えを済ませた初華が降りて来たので、彼女に手伝いをする様に軽く指示を出して、夕飯を作って行った。そしてそこから少しした後。
「おぉ……」
「いつも頑張ってるからね。これを食べて力をつけよう、って事で」
「ありがとうございます。見ているだけで食欲がそそられて来ますね」
テーブルの上には、如何にも出来たてと言う様相の回鍋肉や味噌汁にご飯が載っていて、初華の零した言葉にも納得が行く位だった。……まあ、これは作り置きが出来るので、全て食べきらなくても大丈夫ではあるのだが。
「それじゃあ……」
「はい」
「「いただきます」」
食前にはお馴染みの挨拶を済ませて、僕たちは夕飯を食べ始めた。座っている位置としては初華の対面に僕と言う感じなので、彼女の食べている様子が目に入るのだが……。
「……すごく美味しいです。こんな手料理を毎日食べれる人が幸せに思えるくらいですね」
「(食べ方めっちゃ綺麗……)」
恐らく初華の両親が一から教えたからだと思うが、彼女の食べている様が……まるで一本の動画を見ている様だった。箸や器の持ち方や食べ方は基本的なテーブルマナーとして遵守されるのが普通だが、それが初華の場合だとより目を惹き付けられるのだ。
……ほんと、よく出来た後輩だよ……。
それを言ったら彩と日菜なんて、大食い気質なのかバクバクと遠慮無しに食べるし……同じアイドルでもここまで違うのか、とビックリさせられるね。
「ん、どうしたんですか? 先輩。私の顔に何か着いてるんですか?」
「あ、ああ……あまりにもキレイだから、見惚れてた」
「!? ……先輩って、そんな事を平気で言いますよね……勘違いしたらどうするんですか(……私だけにだったら、全然構いませんが)」
「ん、何か言った?」
「……なっ、何でもありませんっ」
思った事を言ったら怒られたし、挙句無視されたし。
こっちに帰って来てからと言うものの、女の子の一挙一動には解らない事が多すぎるよ……。まあ、自分と同じじゃないから仕方ないけど、さっきのに関しては理不尽過ぎる気がしない?
そんな事を思いながらも、夕飯を食べ終えた僕たちは片付けを済ませて、ソファに座って寛いでいた。
「それにしても……本当に先輩って、何に対しても手を抜きませんよね。一人暮らしなら、少し気が緩んで何処かガサツになりがちですけど」
「自分の出来る事で甘くなりたくないんだよ。初華の事だってそうだし、sumimiも、パスパレも。自分に出来る精一杯を全うするだけ。それが最大限の礼儀って物だから」
「……ありがとうございます。こんな私なんかの為に、色々してくれて」
「気にしないで。初華だってさっき言ってたけど、お互い頼って頼られて……それが担当アイドルとマネージャー、引いてはそれが仲間ってモンでしょ?」
僕は初華にそう言って、彼女の頭を撫でる事にした。
その行動に最初は驚き気味な初華だったが、少ししたらその心地良さに身を委ねた様だった。眼まで確り閉じているので、もう夢見心地な状態なのだろう。直前まではお仕事だったから、仕方ないと言えばそこまでだったが。
「……お風呂入れて来ようかな。……っと?」
「ん、んんっ……さつき、せんぱい……。むにゃ…」
「……もう少し時間を置いてからにするか」
立ち上がろうとした僕を、まだ寝惚けているのか……初華が僕の服の裾を掴んで引き留めて来た。その様はすごく気持ち良さそうで、行動を起こそうとしている人の気分を阻害する、まさにそれだった。
……仕方ない。もう少し甘えさせますか。
そんな事を考えた僕は、ソファに座り直して薄い毛布を初華にかける事にした。ちなみにこれは余談にはなるのだが、あの後二人揃って熟睡してしまい、お風呂どころか歯磨きすらも深夜に近い時間にする事になってしまったのはまた別の話だ。
「(先輩の事は誰にも渡さない……。見てて下さいね、先輩の隣に立つに相応しい女になってみせますから)」
今回はここまでです。如何でしたか?
このお話は長編までの準備段階なので、複数話書く事はしませんが……もしご要望があれば、そっち方面の話も書く……かもしれません、とは先に言っておきます。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
これは告知事項なのですが……新年にAve Mujicaも絡ませた長編を掲載予定なので、既存作品の投稿スピードをまた少し下げるかもしれません。長期で更新出来ていない作品は、また暫く更新の音沙汰が無い危険性がありますので、ご了承下さい。
そして、その新しく書く作品では、今までは良い役回りだったキャラであっても、かなりキツイお返しが飛んで来る可能性がありますので、そこら辺に気をつけて読んで貰えたら嬉しいです。