pixivより転載
薪の爆ぜる音で氷に咲く一輪の花は震える唇を開いた
「私ーー思わなかったんです。」
男はカップの冷めた紅茶を一口飲み机に置いた。
「アップルだけじゃないね、このフレーバーはシナモンと…ローズ?」
春も終わりの少し寒い朝。次のステージに向けての打ち合わせ自体は簡単なものだった。
氷上スミレはあの日、確かに挑戦に失敗した。それは自分のためであったし友のためでもあった。
そうしなければ真のクイーンではないと思ったから。そのためのレッスンは怠らなかったし自信もあった。
「スミレは怖がっているのかな、新たな舞台を?」
夢小路魔夜は肩のアランを軽く撫で怪訝そうな顔をした。
大空あかりはあの日、トップアイドルへの道を走り出した。
学園の空気は変わりファンたちの応援は益々熱が入っているのが嫌でもわかる。
そんな中、スミレは新たなスタートを切れずにいた。
「失敗が怖い…それだけじゃないんです。あかりちゃんに、みんなに追いつけないと思うと焦ってしまって…」
「ーー僕はね、ロリゴシックのドレスは強い女の子じゃなきゃ着て欲しくないんだ」
俯いた少女に男はシャドウのキツい目を空中のまま呟いた。
「ふふ、前にも同じことをユリカにも言ったんだ。彼女がまだ1年生の頃かな」
「東堂先輩も…?」
「芸能人にはよくあるスキャンダルさ、些細なね。それでも彼女は乗り越えた」
魔夜は重いマホガニーの椅子から立ち上がる。
「君がもし次のコーデに挑戦するなら、どんなだろうってデザインは色々出したんだけれど…」
「私、もう1度やりたいんです。このブルーエンプレスコーデで」
凛とした眼差しが男を刺す。
「そうだと思った。負けたまま黙ってる女王様なんてロリゴシックは似合わない」
もう目には涙はない。
「次は必ず成功する、それに新たな出逢いもある。最近、アイカツシステムの歪みが観測されているんだ。
まだ見たことのないアイドルたち…そこでも君はいばらの女王を歌い切れるさ」
「はい。挑戦したいって、ただのアピールじゃダメだってそう思わせてくれたのが、魔夜さんのプレミアムドレスだから」
力強い声で氷の花は続ける。
「次のステージはファンのみんなへの感謝祭にしたいんです。今度こそスペシャルアピールを成功させてあかりちゃんたちにも負けないって証明したいんです」
「うん、いい返事だ。ステージには僕にもアイディアがあるんだ。案をまとめてきたんだみてくれるかな?」
デザイナーはディーヴァに向けて話し始める。
氷上の花が新たな一歩を踏み出した。
了