すっごい難産だったんだ。
あ、今回限りのオリキャラが出ます。そういうのが嫌いな方はご注意を。
「はぁ、面倒くさいですね。」
隠れている呪霊を帳が降りているからと隠れている場所ごと消し飛ばし、私は大きなため息を吐きます。京都校との交流会から早数ヶ月、私を待っていたのは目を覆いたくなるほどの任務の山でした。
どうやら交流会のあの場で特級呪霊とサシでやりあい、追い詰めていたのがいけなかったようで、交流会が終わってしばらくすると上層部にお呼ばれしました。
正直行く気なんて全くありませんでしたし、そんなことに付き合うなら自分を鍛える方がいいと当時は適当な理由をつけて断ったのですが、後日に五条さんが直接来て連れていかれました。
だから仕方なく上層部の話を聞いたのですが、まぁ酷いこと酷いこと。私のことは物扱い……、というか後継を産む道具としか見ていませんし、私を放置して誰の家に嫁入りさせるか話し始めますし、術式のことを無遠慮に聞いてきますし散々です。
そもそも話す義務なんて無いですし、嫁ぐなんて論外です。五条さんは上層部の彼らを腐ったみかんと呼んでいましたが、これを見れば納得です。
まぁ、全部拒否してきたのですがね。不敬なのなんだのとギャアギャア騒いでいましたが、知らぬ存ぜぬです。お前なんていつでも死刑に出来るなんて言われた時は思わず鼻で笑ってしまいました。
腐ったみかん達は勘違いしていますが、私は五条さんとの縛りで高専に入学しています。なので私の上は五条さん、それ以外はぶっちゃけ有象無象です。相手は呪術界のお偉いさん? あぁ、そうですか、それで?って話です。
そんな勘違い老害どもの相手を適当にこなし、今にも飛び出そうとするブロリー達の足止めと、部屋から追い出されていた五条さんへ要らぬ心配をかけないようにと老害達と話した内容を誤魔化した私は偉いと自分を褒めながら帰ってきたのですが、次の日から届き始めた私指名の依頼の山。近況から考えると確実に老害どもの嫌がらせでしょう。
おかげで虎杖くん達の依頼に同行出来ません。まぁ、五条さんから私が参加すれば虎杖くん達が成長しないと言われたのでどっちみち参加は出来ませんでしたが……。
そんなこんなで毎日ボッチで依頼をこなしているのですが、流石にイラついて来ました。こなしてもこなしても依頼は減るどころか増えるばかり、私の送迎をする補助監督も上層部の息がかかっているのかどこか私に高圧的です。
自分の腕に自信がある上層部はともかく、この補助監督は一体何を根拠にこんな上から目線になれるのでしょうか?不思議でなりません。
でもまぁ私は寛容ですので、補助監督が自分から今までごめんなさいと謝りたくなるまでボコボコにするだけで許してあげました。勿論傷なんて1つも残していませんし、術式や呪力を介さないただの腕力だけでコトを済ませたので仮に補助監督が周りにチクっても問題ありません。術式が発現してから今まで周囲の人間達に気付かれずにブロリー達のリードを掴み続けていた人間は伊達では無いのです。
しかしある日、ボッチだった私に同行者が出来ました。が、正直私は嫌な予感しかしませんでした。その予感は正しく、来たのは上層部の人間の息子でした。
彼も腐ったみかんを受け継いでいたのか、普通に腐ってます。しかも相当な勘違い野郎らしく、既に彼の脳内では私は彼のお嫁さんらしいです。初めに彼の口からそれを聞いた時は思わず「やだお前、気持ち悪い」と悟空と表情がシンクロしてしまいましたよ。
……もう五条さんに今の現状全部ゲロってやりましょうか?依頼の呪霊はすぐに祓えますし、1日にある程度依頼をこなせばノルマ達成ということでその後はボイコットしていますが、それでも我慢の限界が来ています。
なんて言ったところで上層部のこれは嫌がらせなので当然無くなりません。というかこの息子さんは大丈夫なのでしょうか? 私に来る依頼の大半は等級詐欺ですよ? いや、多分彼も分かっていると思うのですが、補助監督が彼を見て完全に予想外みたいな顔をしているので……。
……はい、全然大丈夫じゃありませんでした。ワームみたいな呪霊に頭をカプリされてマミってご臨終です。一応視界内にいれば助けるつもりでしたが、手柄が欲しいのか、それとも私に良いところを見せたかったのか、勝手に突き進んで喰われて死にました。即死なので仙豆を使ってもどうしようもありません。そもそも頭ごと持っていかれたので仙豆を食べれませんが。
そこからが面倒でした。息子が死んだことで親が大荒れ。そのことから彼の息子は完全に独断で来たのだとわかります。なのにあろうことか上層部は彼より階級が下の私に責任を取らせようとして来ます。ここまでくれば流石の私もプッツンします。
なので──。
「ふはははは!お前達が戦う意志を見せなければ、俺はこの屋敷を破壊しつくすだけだぁ‼︎」
「な、なんだよコイツ…! ふぉおぉ⁉︎」
「そろそろ私は悪くないって理解してくれましたか?」
「〜〜っ‼︎」
こうするしかないですよね。
現在地はとある屋敷。高笑いをしながらブロリーが屋敷に在留する護衛さんをラリアットで吹き飛ばしていくのを横目に見ながら私が掴んで持ち上げているのは今回の原因でもある腐ったみかんです。彼は必死に何かを話そうとしていますが、私に口を掴まれているせいでモゴモゴとするだけです。
自身を掴む私の腕に爪をたてたり、持ち上げられたことで畳から離れた足で私を蹴ったりしてきますが、呪力バリアに覆われた私には屁でもありません。術式も使っているようですが、出力が足りないのか呪力バリアを貫通出来ないようですね。
「あなたの息子は勝手に来て、勝手に死にました。自分の階級に合わない蛮行をしたただの愚かな人間です。なので巻き込まれた私は被害者です。ここまではお分かりですか?」
「いいゾォ!ブロリー!このまま奴らを消し去ってしま──ドゥアァ⁉︎」
「あ、親父ィ。ごめん!」
「いいゾォ…!」
護衛さんの吹き飛ぶ先にいたパラガスが護衛さんとぶつかり、共に吹き飛んでいく光景を見ながら、等級詐欺をされて死んだ呪術師の仲間に対して目の前の腐ったみかんが言いそうな言葉を話せば、彼は顔を真っ赤に染め上げました。きっと怒っているのでしょうが、私からも怒気を発せば忽ち彼の顔は青くなります。
「ふははは!流石親父ィと褒めてやりたいところだ‼︎」
「……やっぱ駄目。」
「ヘェアぁ⁉︎」
「今からあなたを離しますが、先に言っておきます。何処へ逃げようとも私はあなたの位置を把握出来ますし、すぐにその場へ行くことも出来ます。それから私はあなたを殺すことに何の躊躇もないです。」
一応脅しを入れてから彼を離します。事前に宣言していたからか、それとも老体とはいえ呪術師だからなのか、彼は尻もちをつくことなく畳の上に着地すると、素早い動きで私から距離を離しました。
「はぁ、はぁ、一体何が目的だ。こんなことをしてタダで済むと思っているのか?」
「目的は私に向けたくだらない嫌がらせと八つ当たりを止めること。それとタダで済むとは思ってますよ? だって私がここに来た証拠は何処にもありませんので。」
彼の問いかけに素直に答えます。すると彼は周囲を見渡し、苦い顔をしました。私の残穢があまりに少ないことに気付いたのでしょう。ブロリー達がいるので残穢は残ってますが、それぐらい処理するのは簡単です。
これでは私がここに来た証明を彼は出来ません。古い考えに囚われている彼の頭には無いと思いますが、念のため指紋や血などの個人を判定出来そうな証拠なども残してはいません。
なので後日に彼と護衛さん達が共に声高々と私がやったと叫んでも、証拠が無ければどうしようもないはずです。まぁ、適当な冤罪をふっかけてきたり、偽の証拠を作って拘束しようとしてきた場合は諦めて仕返しをたっぷりとしてから呪詛師にでもなりましょうかね。
「伝えることは全て伝えましたので私は帰ります。最後にもう一度言いますが、私はあなたの位置を把握出来ますし、すぐにその場へ行けます。あなた達がこれからも私や私の仲間にくだらない嫌がらせを続けるようでしたら、残念ですが次は土の中で永遠に眠ってもらうことになります。」
正直この場でやっちゃってもいいのですが、一応彼は呪術界のお偉いさんです。なので1度目は許します。私は寛容なので。
「ではさようなら、二度と私にその面を見せないようにしてくださいね?」
「ま、待──ぐふぅ⁉︎」
彼の静止を無視して死なない程度の力で彼の腹部をぶん殴ると、口から唾液や胃液などが混ざった透明な液体を大量に吐いて気絶しました。咄嗟に呪力で身体強化をしたようですが、この程度なら問題ないです。むしろ貫通しないか注意しないといけないレベルですね。
それと同時にブロリー達も屋敷にいた人達を全て気絶させたみたいなので、残穢の処理をしっかりと行ってから距離を離し、今度は悟空を呼んで瞬間移動で五条さんの元へ飛びます。
「ん? あれ?舞戸じゃん!どうしたのこんな時間に? もしかしてグッドルッキングガイの僕に──」
「これ読んでください。」
突然現れた私に特に驚いた様子がないどころか普通に話しかけてきた五条さんの言葉を途中で打ち切るように用意しておいた書類を差し出します。この書類には私が交流会からやってきた任務の内容や回数などが載っています。やるからには徹底的にです。
何々〜と何か良いことでもあったのか、笑顔で最初はそれに目を通していた五条さんですが、1枚目を読み終わる頃には表情から笑みが消え、無表情のまま書類をペラペラと読み進め、読み終わった頃には額に青筋が入っているように見えました。
「ちょっと僕、急用が出来たから舞戸は早く帰って休むんだよ。」
いつもの五条さんとは比べものにならないほど低い声で私に休むように伝えた後、五条さんはその場から消えました。
その次の日から、今までの量は何だったのかと言いたくなるほど私の任務は少なくなりました。まぁ、そうなりますよね。
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自分の教え子達が特級呪霊を祓ったという報告が入り、今年は豊作だと上機嫌だったところへ上層部から嫌がらせを受けているという舞戸からの報告を叩きつけられてキレた五条が行動を始めて早数日、任務の頻度が普通レベルにまで戻った舞戸はのびのびと任務をこなしていた。
舞戸が襲撃した上層部の1人も騒ぐことはなく静かにしている。舞戸の脅しが充分に効いたのか、五条から何かされたのか真偽は定かではないが、舞戸からすると静かなら何でもいいといった感じなので特に気にする様子はない。
それどころか聞かれたらそんなこともありましたねと半分忘れかけている。日々ブロリー達の突拍子な行動を事前に止めるべく意識を割いている舞戸からするとあのような些事に気を使う余裕はない。
ブロリーとベジータとパラガスがもう少し大人しくなれば周りを見る余裕が出来るのですがと心なしか遠い目をしながら、舞戸は岩盤をベジータに投げつけるという新たな岩盤浴方法を編み出したブロリーを見つめる。ぶっちゃけ最近の呪霊はブロリーとベジータのやり取りに知らずうちに巻き込まれて祓われているので舞戸はやることがないのだ。
実はこのブロリー達のやり取りは毎回攻撃範囲が広く、羂索が舞戸の監視として配置した呪霊もひっそりと巻き込まれて祓われており、そのお陰で舞戸の情報が思ったより羂索に届いていないファインプレーが起こっているのだが、舞戸達は誰もこのことに気付いていない。ちなみに今回の監視呪霊もブロリーが投げた3個目の岩盤に巻き込まれて祓われている。
「さて、呪霊は祓われましたし次にいきましょうか。」
投げつけられた岩盤がベジータを巻き込みながら呪霊が潜むとされる屋敷へ命中し、偶然岩盤に巻き込まれる位置にいた今回の目標である呪霊が消え去ったのを確認した舞戸は次だと踵を返す。背後では岩盤の山に埋まる無様を晒したベジータをパラガス達が爆笑しており、ベジータが笑うなとキレているのだが、舞戸からすると見慣れた光景だ。
ブロリーがベジータを引き抜き、そしてまた埋めるという行為に悟空親子が爆笑するなか、舞戸は次の任務には同行者がいるという情報に顔を顰めた。脳裏を過るのはマミった上層部の子の姿。
知らない名前をした同行者に頼むからまともであってほしいと舞戸は大きくため息を吐きながら、現場へ向かうのであった。
「来たか。」
「初めまして、今回はよろしくお願いします。」
次の現場へ舞戸が行けば、既に同行者は待っていた。かけられた言葉に舞戸は頭を下げて挨拶を行う。
その後の会話はそこそこに、2人は早速呪霊が確認された場所へと向かう。辿り着いた場所は寂れた小屋がポツンと建っている。
「わかるか? えーと……。」
「舞戸 砕です。舞戸とお呼びください。」
「わかった、俺のことはテンと呼んでくれ。それでだな──」
「小屋の呪力ですね。しっかりと感じています。」
小屋から漏れ出る呪力。その圧力を感じながらテンが試すように舞戸へ問いかけ、舞戸も頷くことで返答とする。
呪力の濃さなどから、呪霊の強さはかなりのものだと2人は確信した。しかし自分達を上回っているとは思わない。そのため迷いなく舞戸とテンは小屋へと歩みを進める。ちなみにブロリー達は初対面の人と任務だからと舞戸が再三伝えたためまだ大人しくしているようだ。当のブロリーは既にンンンンと唸り声をあげて我慢の限界がきているようだが。
テンが小屋のノブを握り、舞戸を見る。対して舞戸はこの人ってキチンと協調性があるんだなとすっごく失礼なことを考えながらも頷いた。舞戸の頭の中は失礼な考えでいっぱいなため、意識は全然戦闘に向けられていない。しかし一応やる気を見せるためか舞戸の右手からは呪力が漲ってスパークしており、その気になれば即座に気の刃が右手から出現するだろう。
そんな見た目だけはやる気満々の様子を見てテンは口角を少しだけ上げ、扉を開けるためにノブを捻る。しかしその瞬間、2人の背後の地面が盛り上がると共に弾け、中から蛇と人間が混じり合ったような呪霊が現れた。その呪霊の手は既に印を結んでおり、眼球の中に複数の眼球がある不気味な瞳はギョロリと舞戸とテンの姿を捉えて離さない。
「鬆伜沺螻暮幕。」
「呪霊…!」
失礼なことを考えて集中出来ていなかったせいで呪霊の存在にいつもより遥かに遅く気付いた舞戸は振り返りつつ伸ばした気の刃を振り抜く。しかし呪霊の方が早く、気の刃が呪霊を切り裂く前にその姿は霞のように消え、テンと舞戸は呪霊が展開した別空間へと閉じ込められた。
「領域展開か…!」
テンがそう呟くと共に対抗手段として簡易領域を形成。それと同タイミングで舞戸も自身を覆う球体のバリアを展開する。
呪霊の領域展開は驚いたが、舞戸からすると脅威足り得ない。ブロリーの攻撃も数発程度は防ぐこのバリアを破るにはそれなりのパワーが必要だ。更にバリアを展開したからといって舞戸やブロリー達の行動に制限がかかるわけでは無いので、敵からするとこのバリアはかなりのクソ技だと言える。
「入りますか?」
「いや、いい。」
「では私は呪霊を探しに行きます。」
元からあったかのように出現する鎌をそれぞれの方法で防ぎつつ、舞戸がテンへ声をかけるが、テンは短くそれを拒否した。その間にもテンは隠し持っていたナイフ型の呪具で危なげなく飛来する鎌を処理し続けているため、本当に問題ないのだろう。
なら自分は呪霊を祓うべきだと舞戸は呪霊が潜んでいるであろう領域の奥へと進もうとする。しかし──。
「いいなぁ、俺もやりたいです。」
ここでここまで我慢し続けていたブロリーが、ハジけた。
「領域展開ィイ。」
「……はぁ?」
舞戸から虎杖あたりが聞けば底冷えするような低い声が漏れるが、ブロリーは構わず言葉を紡ぐ。瞬間、呪霊が展開した領域がブロリーに飲み込まれた。
「何…?」
「やられた‼︎」
呪霊の領域が飲み込まれても、視界に映る景色は変わっていない。領域とはどういったものかを知っているテンはブロリーが領域の押し合いに勝つ瞬間を確かに見たため変わらない景色を訝しむ。
そして舞戸は徐々に領域内で響き始める音楽とブロリーの高笑いにブロリーがブロリーmadの中でどれを領域として展開したのかを理解し、ブロリーを止めるために特急で作った気弾を握りつぶしながら盛大に顔を顰めた。
「歌ってみたシリーズ! よりにもよって味方がいる時に…!」
ブロリーが領域として展開出来る中でも厄介さが上位に入るものを出された舞戸はこの領域内でのルールをテンへ説明するために駆け寄る。
「今からここのルールを説明します。時間がないため質問などは一切聞きません。いいですね?」
薄らと聞こえていた音楽がはっきりと耳に届くようになり、何か自分達に不利なことが起こり始めていると舞戸の表情から判断したテンは頷きで返す。
「この領域は現在、とある法則がかけられています。それを破れば攻撃されると思ってください。領域自体に必中などの効果は一切ありませんが、ブロリーさんが自力で必中にしてくるので簡易領域は無意味です。
ここでのルールは至極簡単、今流れている音楽のリズムに乗ることです。破れば主役のブロリーさんが直々に攻撃してきます。ですがリズムに乗っていても攻撃される時はされますし、他の人に向けた攻撃が流れてくる時もあるので油断はしないでください。」
舞戸の説明にテンは困惑しつつも頷く。知らない音楽のためリズムに乗るのは難しいかもしれないが、要はブロリーが攻撃してきた時のみ動けばいいだけだ。
「それと何かを喋りたい時もリズムに合わせてください。あとブロリーさんを倒そうとは考えないでください。これはテンさんではブロリーさんを倒せないとかそういうものではなく、今のブロリーさんは私の術式から出てくる式神ブロリーではなく、ブロリーmadの歌ってみたブロリーに寄っているため何が起きても基本倒せません。もしテンさんがブロリーとはそういうものと考えるブロリスト達のミームに打ち勝つ程の意志の強さを見せれば……いえ、何でもありません。」
舞戸は口に出かけた解決案を即座に否定した。ブロリストの正式な人数はわからないが、積み上げられてきたブロリーというキャラ像を打ち砕く意志の強さを目の前の人物がたった1人で出せるとは思えないからだ。一応舞戸も含めると2人になるのだが、舞戸はブロリストの1人であるためどちらかと言えばブロリーに力を与えている側である。
原作ブロリー、物語ブロリー、歌ってみたブロリーなど、数あるブロリーの姿があるなか、歌ってみたブロリーは正に無敵だ。その理由も単純で、歌っているブロリーがやられる描写なんて誰も望んでいないから。
「説明は以上です。ブロリーさんが歌い始めるとスタートですので、身構えてくださいね。あとブロリーさんに襲われた時はパラガスさんかベジータさんを盾にすることをお勧めします。」
「ゑっ?」
「ダニィ⁉︎」
早口で行われた舞戸の説明が終わり、最後に優秀な盾として2人を紹介すれば、舞戸の隣に出現したパラガスとベジータはコイツマジかと言いたげな表情で舞戸を見る。
「いいのか?」
「構いません。むしろブロリーさんからの盾としてこれ以上の逸材はいないでしょう。死んでも生き返りますし。」
パラガスをポッドに押し込めばブロリーはそこに誘導されるし、岩盤の前にベジータを突き出せばブロリーはラリアットをしなければならない。つまりこの2人はブロリーの行動をキャンセルさせることが出来るこれ以上ないほどの盾となるのだ。欠点は囮として使う前に勝手に岩盤浴していたりポッドごと潰されて投げ捨てられている可能性が高いことぐらいだろう。
次点でピッコロが来るのだが、彼は地面にわざわざ寝ころばせる必要があり、それに加えてすぐにその場から離れなければ高速で走ってくるブロリーからラリアットをくらう恐れがあるのであまり推奨は出来ない。
「曲は……あれですか、ここの曲ではないことは残念ですが、ネタ全振りのカオスが来なかっただけマシと思いましょう。ではテンさん、曲が終わるまで共に生き残りましょうか。」
流れてくる音楽から呪術廻戦一期初めのop曲だと判断した舞戸は、この世界に生きるテンでは知る由もない曲だということに軽く舌打ちをしつつ、破茶滅茶なものが来なかったことに安堵しながらテンの健闘を祈り、それと同時に領域全体に聞こえる大音量でブロリーが歌い始めた。
最初に犠牲になったのは勿論呪霊だ。この領域のルールを知らず、景色が自身の領域と変わらないことから先程と同じように印を結ぶ。しかし領域そのものが塗り替えられているため何も起こらず、思わず困惑の声を漏らした。
この時点でルール違反となり、呪霊の前にブロリーが出現。強烈なボディブローを呪霊に見舞う。ブロリーの拳を呪霊が躱せる筈がなく、拳は直撃して呪霊の胴体を容易くぶち抜いた。
呪霊はこの一撃で消え去り、この時点で領域が砕け散る。しかし領域がなくなり曲が強制的に終了されるのを嫌ったブロリーは舞戸の呪力を勝手に横取りして自身の領域を作り上げる。
作り上げられたのは新惑星ベジータの廃墟地帯。現れた自分の領域にブロリーは満足しつつ、パラガス達を殴ったり投げ飛ばしたりしながら再び歌い始める。それを遠くから舞戸とテンが眺めていた。
「ここまで距離を離せばひとまず安心でしょう。」
リズムに合わせて歌うように舞戸は流れ気弾を弾きつつテンに伝える。弾かれた気弾は後方で大爆発を起こしており、当たればタダで済む威力ではないが、舞戸は涼しい顔をしている。
「では私もブロリーさん達のところへ向かいます。出来るだけ被害を少なくしながら早めに領域を閉じるように努力はするのでテンさんも頑張って生き残ってください。」
そう言うとブロリーからぶん盗られた呪力量で縛りの条件は達成していたのか、舞戸は筋骨隆々の姿となってブロリーがいる方へ歩き始める。それをリズムがわからないため喋ることが出来ないテンは舞戸の変貌に驚きつつも腕を握ることで危険だと止めるが、舞戸は容易く振り解いてブロリーの方へ飛び出し──。
ぶん殴られて高速で戻ってきた。
殴られた勢いで縦に回転しながら吹き飛んできた舞戸は岩盤に突き刺さり、大きなクレーターを作り上げる。その際に舞戸はきゃぁぁぁと今の見た目に全く合っていない声を漏らしていたが、ブロリーからの攻撃でリズムに合わない音を漏らしても領域には音楽を彩るものとして捉えられるのかセーフのようだ。
明らかに耐えられる威力じゃないとテンが舞戸が埋まる岩盤へ駆け寄るが、次の瞬間には岩盤を吹き飛ばして舞戸は戦場へと戻っていく。
それを見たテンは舞戸の頑丈さに驚きつつ、あの式神を従えることが出来るならそれぐらいは出来るかと何処か納得した。
が、その納得は今度は体色が緑色の人物と重なりながら吹き飛んできた舞戸を見て簡単に揺らいだ。あれ?これ本当に大丈夫なのか?と。
その不安は見事的中し、舞戸を追い打ちするようにブロリーの気弾が多数迫る。1発目が着弾すると大爆発が起こり、その規模からこの場も危ないとテンは舞戸を心配しながらも逃走。徐々に背後へ迫る爆発に後先考えない全力逃走である。
それと同時にテンはこの依頼を受けたことを後悔していた。実を言うとテンは任務で此処に来たわけではなく、匿名の者からの依頼でこの任務に同行していた。そして本当の依頼は呪霊を祓うことではなく、舞戸の詳しい実力調査だったのだ。
舞戸の戦闘を見て、術師としての実力を見る。今までも何度も似たようなことをしており、今回も簡単な依頼だと考えていたのだ。
だがこれは何だ。爆発の中から飛び出した舞戸が片手に握っていた緑の男を投擲。男は飛んでくる気弾に当たって爆発に飲まれ、クソマァと悲鳴が領域内に響く。
しかし舞戸は意に介さず両手から自身へと飛んでくる気弾と同じものを生成し、迎え撃つように次々と発射。気弾同士はぶつかるなりその場で爆発し、空を彩っていく。
「(被害を少なくするより大きくしてないかこれ⁉︎)」
心の中でそう叫び、爆発で巻き上げられて落ちてくる瓦礫などから頭を両腕で守りながらテンは必死の形相で走る。恐らく今世でこんなに必死に走るのは初めてだろう。なんせ冗談抜きで命の危機だ。
瓦礫を呪具で斬り捨て、空の爆発によって発生した爆風に背中を押され、よろけて転けそうになりながらも何とか走り続け、やっとのことでテンは廃墟の一つに潜り込むことが出来た。
「あ〜う☆」
「⁉︎」
するとなんかいた。いつからここにいたのか、背後から気配もなく声をかけられたテンは己の尻に何故か危機感を感じつつも呪具を構える。しかしパラガスの顔を見て舞戸に紹介されていた式神だと思い出し、安堵の息と共に呪具を下ろした。
「ここから逃げたい。そんな顔だな。」
「‼︎」
パラガスはそんなテンの顔を見るなり、まるで心を読んだかのようにテンの内心を話す。それにテンは驚きつつも、舞戸の式神ならここから脱出する方法を知っているのではないかと思い至り、パラガスの言葉を肯定するように頷きで返す。
「腐☆腐、ならついてくるがいい。とっておきがあるぞ。」
パラガスはテンの頷きを見るなりニヒルと笑い、マントを翻して歩き出す。それにテンもここから逃げることが出来ると安堵の気持ちを抱きながらついていく。
その最中で先程までうるさいと感じてしまうほど鳴り響いていた爆発がいつの間にか止んでいることに気付き、一度状況を確かめようとテンは空を見上げた。
「うぐぅ、ごぉ、がぁ…!」
「うわ、お、お父さ──ぐぅ…!」
「悟空!悟飯!あと少し頑張れ‼︎」
すると親子と思われる2人の襟首を掴んで拘束し、歌うブロリーが繰り出す殴打の盾にするというスッゲェ非道なことをしている舞戸の姿が目に入る。親子は何とか逃げようとしているようだが、舞戸の拘束力が高い上に毎秒ブロリーに殴られて動きをキャンセルされているため逃げるに逃げれない。
さらに舞戸はリズムを無視して喋ることでペナルティを誘発。ブロリーを自分に引き寄せて攻撃は優秀な盾で受けて回避するという、タンク役を担っている。
「(あ、悪魔だ。自分の術式だとしても意思疎通が出来る式神をあんな扱いにするとは……。)」
その光景を見たテンはドン引きした。舞戸が従える式神はどれもこれも本当の人間みたいに感情や痛覚があることはこれまでのやり取りでおおよそ把握出来た。なのに容赦なく盾として使用するその精神はまさに悪魔だ。逃げようとする悟空達を無理矢理押さえつけているのもその考えを後押ししていた。
ちなみに舞戸は少しでもテンに被害が行かないようにこの行動をしているだけである。テンがいなければ今頃はとっくに被害が来なさそうなところへ避難している。
ならテンと共に曲が終わるまで避難で良いのでは?となるのだが、そうはいかないのが歌ってみたシリーズ。流れる曲にもよるがそのまま放っておけばブロリーは必ず領域全体へ高火力の攻撃を放つ。そうなれば舞戸はテンを守りきれない。なので前に出てブロリーの行動をある程度誘導しなければならないのだ。
そんな理由があることなんて知る由がないテンは、ブロリーの隙を突いて悟空達へ仙豆を食わせて全回復させてから再び盾として使用する舞戸を悪魔扱いしていた。
「着きましたぞ。此処でございます。」
これ帰ったらなんて報告すればいいんだろうと、善人の部類に入るテンが頭を悩ませていると、突然パラガスの顔がテンの視界いっぱいに広がる。それに対して思わず悲鳴が漏れそうになるが、呪術師のプライドで何とか声を漏らすことは耐え切った。
パラガスに向けて驚かすなと怒りたくなるが、思考に没頭して周囲に意識が向いていない自分が悪いとテンは自分を戒めた。そもそもこんな危険地帯で注意散漫になるとは何事だと己を責める。
あと少しで逃げれるのだから、それまでは集中しろとテンは己に言い聞かせ、周囲を見渡した。そしてすぐに見つけたとある物を見つめる。
「……何だこれは…ボール?」
「1人用のポッドでございます。」
崖の端に鎮座する物を見て頭に浮かんだ物体の名前を思わず呟き、ハッとした様子で自身の口を閉じるテン。やってしまったと慌ててテンは周囲を探るが、ブロリーが来る気配はなく、辺りを探る際にパラガスと視線があったことで自身に問いかけてきたと判断したパラガスが目の前に鎮座する装置の正式名称を口にする。
「……これをどうするんだ?」
「乗ればわかります。テン殿、あなたからどうぞ。」
どうやら上手く舞戸が引き寄せているらしく、ブロリーは来ないと理解したテンが念の為小声でパラガスに問いかけながらポッドに近寄ると、ポッドの扉が勝手に開く。中は近未来を思わせるような様相をしており、パラガスの言い方から推測するに何らかの乗り物である可能性が高い。
これに乗ればこの領域から逃げることが出来るのだろう。ただ、テンはこのポッドに乗りたくなかった。いや、普通は乗るべきだし、テンも逃げるためにここへ来たのだから乗る一択なのだが、先程からずっと扉が開いたポッドからお前は乗るなという圧がテンに届いている。
「なぁ、パラガス。先に乗ってくれないか?」
「ゑゑッ⁉︎ ど、どうしてそのようなことを?」
まぁ、操作の説明も欲しいしとポッドからの圧も後押ししてテンは何気なくパラガスへ言えば、パラガスは何故か尋常じゃない焦りを見せた。
その時点でテンからすると「んん?」となるのは当たり前だった。その引っ掛かりは次に「もしかして、コイツ何か隠してないか?」という疑念へと変わる。
「一応聞いておくけど、何か隠して──。」
「そのようなことがあろうはずがございません。さぁ、早くポッドにお乗りください、さぁ!」
「ちょっ、おまっ、力強っ!」
問いかけようとするテンを、顔から大量の汗を垂らすパラガスは焦り顔のまま背後からグイグイと押していく。これだけで何かあるとテンが確信するには十分なのだが、パラガスの力が強いため確信は出来ても抵抗が出来ず、身体は着実にポッドへと向かっていく。
呪力で身体能力を強化しても尚パラガスには勝てず、とうとうテンはポッドの入口まで押し込まれた。両手脚を広げて何が何でも入るまいと粘るが、それも長くは持たない。
もう大声で助けを呼ぶしかない。そう判断を下し、どうか生き残れますようにとテンが大きく息を吸い込んだその瞬間、ポッドの中から暴風が吹き、テンとパラガスの2人を吹き飛ばした。
「ぐぅ⁉︎」
「ドゥワァ⁉︎」
数メートル程飛ばされ、背中から着地したテンは思わず呻く。ポッドから吹いた暴風は一体何だったのか、そう考えながら周囲を見渡し、視界内に入ってきた光景に目を見開いた。
「お、お助けください‼︎‼︎」
テンの視線の先、そこにはまるでミミックのように動き出したポッドに下半身を食われているパラガスの姿があった。パラガスも食われまいと必死に抵抗しているが、ミミックポッドのほうが強いらしく、徐々に身体がポッドの中へと飲み込まれている。
やがて完全に飲み込まれたパラガスは諦めたような表情で座り、これだけは誰にも譲らないと早速ポッドの前に現れた笑顔のブロリーへポッドの覗き窓越しに視線を向けた。
「ブ、ブロぉぉおおうおうううおおう。」
この後どうなるかを理解したパラガスは、せめていつものセリフだけはと口を開くが、残念ながら曲の終わりが近いせいで巻きだと言わんばかりにパラガスは息子の名前を呼び終わる前にポッドことペチャンコにされてしまい、そのポッドもブロリーの雄叫びと共に領域の外へと放り投げられた。
その一連の流れを近くで見ていたテンは、どこか冷静な思考で確かに脱出は出来るけど現世からも脱出するじゃねーかと思わず脳内で力強くツッコミを入れた。
続けてそもそもなんで味方の領域でこんなに苦労しなきゃ駄目なんだと大声で愚痴りたくなるが、近くにブロリーがいるのでグッと堪えて後退りをしながら少しずつ距離を離していく。
だがそれもブロリーと目が合ったことで一時中断。何が来てもすぐに対応出来るようにと身構えるが、先程までのブロリーとは違って今のブロリーは落ち着いている様子を見せた。
そこで初めて鳴り響いていた音楽がだんだん静かになっていることにテンは気付く。そして音楽が鳴り止むと同時に領域が解け、ブロリーもそれと同時に姿を消した。
元に戻った景色を前に、テンは知らず知らずのうちに地面へ座り込む。遠くからブロリーを彷彿とさせる姿の舞戸が走ってくる様子を見て思わず口端を引くつかせ、それを誤魔化すように空を見上げ──。
「報告、どうしようか?」
見たものそのままで書けば信じてもらえなさそうな内容しか思い浮かばない今回の依頼に、思わず頭を抱えたのだった。
オリ主……本人的には呪術師から呪詛師になっても気にしないタイプ。五条に追われるのは厄介極まりないが、悟空がいれば何とでもなる。
ブロリーの領域展開で1番嬉しいのは物語系のブロリー。理由はブロリーが温厚なパターンが多いから。尚、ベジータを岩盤に押し込んだり、パラガスをポッドごと投げ捨てたりするのは温厚のうちに入るものとする。
えっ?ポッドが勝手に動いてパラガスを食べた? 何それ知らない、怖ぁ…。
テン……この後潔く見たままを報告書に書いて提出したが、やっぱり疑われた。いや本当に歌って踊って味方殴って戦ってたんですよ。
上層部……敗因は悟空の出現を許したこと。全員の呪力を舞戸に覚えられたため、どこに隠れてももう逃げれない。舞戸の術式は嫌だが、舞戸自身の身体能力などは高く評価して目をつけている。どうやって舞戸を取り込むか悪巧み中。
腐ったみかんの1つ……舞戸に報復するつもり満々だったが、行動する前に五条に肩ポンされた。
頭に縫い目がある匿名の依頼者……放った呪霊がすぐに消されるので術師側に入り込んでいる手の者を通じて呪術師に調査を依頼したが、余計舞戸のことが分からなくなった。
一度これを書き終わってから今まで音楽系を使ってなかったから念のため規約を確認したんだ。すると替え歌の使用は禁止されていた。
ふっ、後半の歌ってみたで笑いを誘う俺の計画は何もかもお終いだぁ。まぁ、規約の確認をしっかりしていなかった自分が悪いのですがね!……念の為確認しといてよかったぁ。