▼今夏開催「超昂戦士と行く1泊2日豪華クルーズ船ツアー」は大好評。ルビーやレジェンド大活躍のシージャック奪還バトルを皮切りに、ダイビート食堂体験・トークショー・船上夏祭りなどなど、多数のレクでファンと戦士たちが触れ合うメモリアル2daysとなった。▼一方、ツアーを縁の下で支えた、閃忍ライカの奮闘。▼シージャック犯のラスボスに、ショータイムの護衛任務。▼イノリ共々、顔バレ厳禁の高難易度隠密行動のため、閃忍ライカは七変化。▼そして深夜、ライカは自らの未来に一つの重大な決断を下す。▼ファン感謝ツアー大成功の裏舞台が、今明かされる…?

1 / 1
※弊社SS「ひと夏のメモリアル! 超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー」の派生SSです。先に一読いただくと一層楽しめます。
※北海道テレビ「水曜どうでしょう」の企画「東北2泊3日生き地獄ツアー」のパロディSSです。登場人物(ライカ・イノリ・牧子・トキサダ)の言動が魔改造されているのはそのためです。
このような表現に抵抗がある読者様は、閲覧を控えることをお勧めします。


超昂どうでしょう 閃忍ライカ・1泊2日生き地獄クルーズ船ツアー

こんばんは、超昂どうでしょうです。

これまでコテージ建設&ジャングル観察・早朝エビチリクッキング・日本一長いバレンタインと、やりたい放題の当企画。

今回は第4弾、先日お届けしましたクルーズ船ツアーのメイキングをお届けします。

 

エスカルビーにエスカレイヤー、超昂閃忍ハルカ、神騎エクシールまで揃い踏みの豪華クルーズ船ツアー。

おかげさまで、バトルあり、お祭りあり、感動秘話ありの、参加者誰もが忘れ得ないメモリアルツアーとなりました。

しかし。その陰で。

顔バレ厳禁の悪条件下、もう一人の主役とも言うべき陰の功労者がいたことを、我々は忘れてはなりません。

そんな彼女の2日間の激闘、ぜひご覧ください。

 

 

 

 2023年8月某日(出航1日目) 11:49

 豪華客船「あとらんてぃっく・のあ号」

 クルーキャビン

 

「し…死ぬかと、思ったあ…げふっ…!」

「ライカは大げさ。手はず通りウミたちが助けた。大丈夫。」

最初のツアープログラム、シージャック奪還作戦のラスボス・紙袋閃忍ことライカは、スーパー戦隊に一度やられて巨大化する敵怪人のように、幽霊船でルビー&レジェンドに特攻をかまし…轟沈した。

アトラクションの昂奮冷めやらぬ観客が、今もデッキで超昂戦士たちに歓声を送る中、こっそりとライカの救命ボートは人魚衆に曳航され、やっとクルーズ船に帰ってきたところである。

 

ばんっ。

「ライカっ! イノリっ! 休んでるヒマなんかないわよっ!」

「おおっ?」「うげっ?!」

「次はお客さんのランチの給仕と片付け、その後は夕方のダイビートまつりの仕込み!

ディナータイムもお客さんとアカリさんたちの護衛任務でしょっ!

とっとと濡れた服を着替えて、食堂に来なさいっ!」

 

「あの、その前に一つ。」

「何よ、イノリっ? 任務に何か不満でも?」

「不満はない。疑問は一つだけ。

 お前…。お前、誰?」

 

部屋に飛び込んできたのは…紙袋の下忍(アトラクションのやられ役)。

 

「えっ…! …あっ、あああ〜〜っ!!」

 

 がばっ。

 

 脱ぎ忘れていたことに気づいた紙袋を、慌てて脱ぎ捨てた下には…

 

「ぷっ…クククっ…、ぶふっ…!」

「ライカー、平常心。心の上に刃を置くー…ぶふっ。」

「ま…牧子がっ…あの牧子がっ、紙袋…!!」

 

 かあああああっ……!!

 

「誰のせいで、こんなアホな紙袋、かぶらされてると思ってんのよおおおっ!!」

「ククク…だったら終わり次第、とっとと外せば良かっただけなのにい。気に入ってハマったから、ずっとつけていたかったんじゃないのー?

 お似合いですよお、紙袋下忍の牧子さーん。プークスクスぅー。」

 

 カチッ(怒)

 

「覚えてなさいっ! センニン科の人員配置は私の仕切りなのよっ!

 身バレNGのあんたたち2人には、とっておきの役割分担してやるんだからああっ!!」

 

 ばんっ! たたたたたっ…

 

「あっかんべー。身バレNGなら、そもそも行きませんっての。」

「ライカ、それはダメ。任務は頭領命令、サボったら後でフウカのお仕置き。

行くぞライカー。出撃でー、突撃だー。」

 

…?

「イノリ…あんた行くの??」

「イエス。アイム、センニン科。」

 

 イノリさん、やる気。

 

「い…いやいやいやいやっ、アンタ何でやる気になってんのよっ!

 ノロイのアンタがお客さんに顔出ししたら、この船たちまちパニックになるわよっ! 全員救難ボートに即ダッシュでしょうがああっ!!」

「むう…失礼な。ライカはライカで、紙袋の中の人ってバレたら危険。たちまちSOS、海猿出動待ったなし。」

 

 第2部主役は、揃って顔出しNGの危険人物だった。

 

「うがーーっ!! だからあたしは行かない方がいいのっ!」

 

 ぴっ。

 

「あの…イノリさん? そのカメラは…」

「ライカのサボり風景、ユーノに見せて報酬ゲット。」

「イノリいいいっ!! 相棒を売り飛ばすなああああっ!!」

 

 

 2023年8月某日(出航1日目) 12:41

 客船内 カフェテリア厨房

 センニン科 給仕活動開始

 

「…牧子。」「何よ?」

「どこの世界に、甲冑姿で給仕するバカがいるのよおおおっ!?」

他のセンニン科女子は、割烹着で厨房とテーブルをてきぱき行き来する。

そこに現れたライカさん…もとい、甲冑と兜の三日月前立て、眼帯をビシッと決めた伊達政宗さん。

 

「このツアーは世界一周ツアーの日本寄港日程なの。だから、海外セレブにわかりやすく日本をアピールする、アイコン役が要るんだって。」

「いやっ、いやいやいやっ! 企画の趣旨、変わってるじゃないのよおおおっ!」

 

 はっ。

 

「そ…そうだ、イノリっ、イノリは何役よっ?!」

 

 とんとんっ。…くるっ。「!?」

 

「泣く子はいねえがー。悪い子はいねえがー。」

 

 イノリさん…もとい、なまはげさん、登場。

 

「企画書では、武士に討伐される鬼役だったの。

イノリが鬼役じゃシャレにならないから、私の判断でなまはげにしといたわよ。

足りない稲わらの雨合羽は、積み込んだ米俵をほぐして、即興で私が作っておいたから。」

「おお…サンクスアロット。」

スタイリスト・英田牧子の名采配であった。

 

「オー、サムライ、モンスター、ジャパンファンタジー!?」

「アメイジング!」「ブラボー!」「ハラショー!」

 

ツアー客がダイビート食堂のメニューを超昂戦士たちと堪能する間。

陰の主役たちはコスプレで海外客を歓待していた。

 

(あ…あれっ、ライカちゃんと…イノリちゃんっ!?)

政宗さんとなまはげさんの正体に、アカリは仕草で気づくも、特に声を掛けることもできず…

(ライカー、任務がんばる-。)

(な…何よこのバカ任務はあああっ!!)

 

ライカさん、ご立腹。

 

 

 2023年8月某日(出航1日目) 14:31

 客船デッキ カーゴスペース(荷室)

 センニン科 祭り準備開始

 

「牧子っ、鉄板とプロパンガス、どこっ?!」

「あっちで試し焼き中!」

「滑車とロープ、ここね!」

「団子とお茶は飛ぶように注文入るわよっ! 見晴台にじゃんじゃん運び込んでっ!」

「牧子ーっ! あのバカ、どこ行ったのよおおっ!」

 

※あのバカ → ゲス顔ツインテール

 

「に…逃げやがったああああっ!!」

 

 

 同時刻 

 客船下層 1階 カジノスペース

 

「…ったく、やってられないっつーの。」

「ライカー、カメラ回してユーノに流すけど、いいの?」

「クククっ…。イノリ、これを見よ!」

 

 ぴっ。ぺかあああ…っ!

 

「おお…ゴールドカード?」

 ちらりと見える「TOKISADA IKUSABE」の打刻。

 

「何と、頭領公認でカジノで遊べるのだっ! ネオ上弦衆ボスの大役を勤め上げた功労者・ライカちゃんだけの特権っ! 堪能しなくちゃねえ~!」

「おお…頭領、学習能力ゼロ?」

 

※ここで説明しよう。かつて2人は任務で、闇カジノへ潜入した。

そしてライカは負けまくり、見事トキサダをおけらにしたのだった。

 

「イノリちゃ~ん。あたしは寛大なバディだから、チップ少し恵んであげる。安いレートでせいぜい楽しむことね!」

 

 ルーレットにポーカー、バカラにブラックジャック。

 ちゃりちゃりちゃりんとペイアウトのメダルが響くスロットマシーンが、ライカの射幸心をかき立てる。

 

(カジノ内は撮影禁止です。少々お待ちください。)

 

 同日 15:11

 

「うぐぐうう…!」

 

ライカさん、マイナス△ドル(書けない)

イノリさん、プラス200ドル

 

「イ…イノリさん? どのゲームで勝ったの?」

「近くの人のマネして

 コイン入れてレバー引いたら

 絵柄が揃ってコインがじゃらじゃら出た。」

(ビ…ビギナーズラック…恐るべし…!)

 

ライカは既にカードのチャージを1時間足らずで使い切っていた。

 

「…イノリ。」

がしっ。

「その勝ち額、あたしに預けなさいっ!

倍返しのライカちゃんを信じて、どーんと任せなさいっ!」

「ライカ…死亡フラグ…?」

 

(ライカさん、カジノ再挑戦中。)

 

 

 同日 15:59

 クルーキャビン(ライカの個室)

 

「ライカ…このドル札と、小銭は?」

「え〜…発表します。」

 ライカさん、自分の部屋なのにベッドに土下座。

「イノリさんの200ドルは、3ドルになりました。」

 

ライカさん、死亡フラグ回収。

 

「…倍返しの400ドル、返済プリーズ。」

「お…鬼いいいっっっ!!」

 

……

 

 同時刻 船内カジノ

 

「皆さん、ご協力ありがとうございました。」

変装を解いたディーラー…閃忍ツカサが一礼すると、客に扮した船員スタッフがぱらぱらと持ち場に戻る。

「日本領海でカジノの開帳はできないから、一芝居打ったけど…こんなに上手く行くものかしら…。

ま、頭領の負け分、少しは回収できたわね。」

 

フェイクのゴールドカードで負けさせ、熱くなったライカに自前の小遣いまで賭けさせる。

ツカサの作戦にハメられたことを、ライカは知らない。

 

 

 2023年8月某日(出航1日目) 17:11

 客船最上層 見晴台

 船上ダイビート祭り 屋台稼働開始

 

「はあ…勤労学生に戻りますか…。」

すかんぴんのライカさん、割烹着姿で独りごちながらお茶をボトルに注いでいく。

「…これ、センニン科の課外活動。無報酬。」

「わかってるわよっ!」

イノリ(債権者)にたしなめられると、督促のように聞こえてしまう。※自業自得です

 

そんな2人の、人前に出せないヤバい閃忍の仕事は…見晴台から団子を客に飛ばす仕事。

 

…飛ばす? 団子を?

 

かんかんかんっ。

…しゅたたたたっ。

呼び鈴代わりの板を木槌で叩くと、給仕(センニン科の同級生)が注文を受け、綱渡りでクルーズ船最上段の見晴台まで駆け登り、オーダーを通す。

「団子セットとお茶、5つずつ!」

「はい毎度っ。」

甘味を注文通り籠に載せ、滑車でするする下ろしていく。

まさに「空飛ぶだんご」。

前衛が装填した銃弾(だんご)を、狙撃手が百発百中でツアー客を次々と撃ち抜いていく。

 

「単品でみたらし12本、ごまとあんこ16本、お茶12杯っ!」

「その次、セット7、お茶11!」

 

……?

「ちょ…ちょっと? 何で注文が二重に来るのよっ!?」

商品受取が済んで空っぽの籠を引き戻すイノリの横で、ライカが狼狽える。

「だんごが空を飛ぶのが面白くて、お客さんが殺到してるのよっ! もう下は行列っ!」

「なっ…うげええっ!?」

 

顔色を変えてライカがデッキを見下ろすと…注文口には鈴なりの行列。

「おかしいでしょおおっ!?」

「いいから! どんどん注文捌かないと、お客さん怒りだすわよっ!!」

「う…うひいいいっっ!!?」

 

さらに3人目、4人目の給仕が綱渡りでライカに迫る。

ヤバい…ヤバいヤバいヤバいっ…!!

 

「イノリっ! 光の速さで引っ張れええっ!!」

「らじゃー。」

追い詰められると本領発揮のライカさん、注文をてきぱき並べて、どんどん滑車で送り出す。

 

だが注文ペースはとどまるところを知らない。

「早く出せよー。」

「注文まーだあ?」

大人は寛容に待ち続けるが、あいにく今回は超昂戦士に憧れるちびっ子たちも多数乗船。

 

がらんがらんがらん…がらんがらんがらん…!

 

「うっさーいっ! そんな叩くなああっ!!」

イライラがピークのライカ、思わず見晴台から外に出て叫んでしまう。

 

「ライカー、顔バレ。」

 

…えっ?

 

「…あの声…?」

「あのツインテール…!」

「ラスボスだ! ネオ上弦衆のラスボスだああっ!!」

「た…助けを、呼ばなきゃ…!」

「違うよっ! これはツアーの隠しイベントだ、きっと!」

「みんな、行くぞっ! 超昂戦士に頼ってばかりじゃダメだっ!

オレたちで今度こそやっつけてやるうっ!」

 

お客さんが口々に…デマがデマを呼び、ちびっ子たちは今にもライカ討伐に駆け登ってくる勢い。

 

「ぎ…ぎゃあああーーーすっ!?」

「よーし、ライカー。ちびっこたちを迎撃だー、反撃だー。」

「あんたまで出たら、パニック大炎上でしょーがっ!」

 

……

ライカとイノリの顔出しパニックを知るよしもなく、浴衣姿のハルカとキリカは遠目に微笑む。

「あっ…良かった。あちらの忍者屋台、大盛況ですね。

子どもたちもみんな笑顔で…楽しそう。」

「あの空飛ぶだんご、春霞さんがいたら、絶対喜んでたよね。」

「ええ、次のツアーがあったら、春霞さんやユカさん、初音さんも市民の皆さんと…。」

 

 

 2023年8月某日(出航1日目) 19:26

 客船センターホール

 ディナートークショー開始まで30分

 

「あ…危なかった…!」

「フッ…あのピンチをノーダメージで乗り切った。私の機転をライカは褒めていい。」

 

 【リプレイ▶】

 

「ど…どうすんのよ、このままガキんちょどもがこの見晴台まで登って来たら、祭りがパニックに…!」

 

 きゅぴいいいん。

 

イノリさん、ひらめく。

「ライカー、装身だー。」

「…え? ちょ…ムリっ、ダメっ、一般客に閃忍で攻撃はダメでしょうがっ!!」

「攻撃はしない。いいから装身。」

「え…えーーいっ、ままよーっ!

装身・天衣霧縫ぉーーっ!」

 

 しゃきいい…ん…!

 

ライカが変身したところで、イノリは。

 

 がばっ。

 

「…あんた、何かぶってんの…?!」

 

 どぼっ。

(ぐべっ…!?)…がくり。

 

当て身で卒倒させたライカに紙袋を被せ、イノリ…もとい、なまはげさん、下界に討伐宣言。

 

「わっはっはー。勇気あるちびっ子たちよー。

みんなの空飛ぶだんごを奪いに来た、紙袋滅忍の野望は、このなまはげが打ち砕いたー。

みんなが護り抜いた空飛ぶだんご、まだまだあるから安心して並ぶが良いー。」

 

 わああああーーっ!!

 

……

 

「フッ…我ながらナイスムーブ。」

「あたしへのボディブローはノーカウントかっ!!」

「ならば訂正。ありがとうライカ、君の尊い犠牲を我々は忘れない。さらばライカ、若き閃忍フォーエバー。」

「だから、相棒を雑に殺すなあーーっ!!」

 

「あんた達っ、壁の花はおしゃべり禁止!!」

「おおっ、牧子ー。」

 

 …壁の花?

 

「…何よライカ。文句あるの?」

「文句しかないわーーっ!! 何じゃあたしらのこの変装スタイルはあああっ!?」

 

 変装。

 

「テーブル付きの給仕でガードするのは、顔出しNGのあんたたちには無理でしょ?

だったらコレでやるしかないもの。」

 

 ライカさん、花嫁衣装(自前のブライド装身)。

 イノリさん、花瓶。

 

「クルーズ船のデッキとホールを1日貸し切る、ブライダルプランがあるのよ。ウェディングドレスのマネキン、ホール前のプロムナードにいっぱいあったでしょ?

今日は体験乗船のお客さん、タキシードとウェディングドレスでいっぱい歩いているから、あんたの装身なら自然に溶け込むわ。問題なし!」

「問題しかないわーーっ!! あたしはちんどん屋じゃ無いっ!」

 

「…そして私は壁の花。」

イノリは花瓶からひょっこり首を出し、どこかの傭兵のように顔を迷彩に塗っていた。

胴体はテーブルで隠し、花瓶に花を生ければ完成。

「何かあったら、机ごとダッシュしなさいよ。」

「…忍びとはー、心の上に刃を置いてー。」

 

「ライカ…ぷっ。」

「んがあーーっ!! 昼間の紙袋の仕返しかあっ!?」

「いや、ね…あんた、頭領に『わたしは壁の花で大いに結構』って言ったそうじゃない。どう、願いが叶った感想は?」

「…覚えてろ牧子。後で慣用句辞典でぶん殴ってやる…!」

 

ルビーとレジェンド、4人を囲むディナーショーは、誰もが話に耳を傾け、時に笑いがこぼれ、時に涙を禁じ得ない…誰にとっても素敵な時が流れた。

その最後方で、花嫁衣装の護衛と、花瓶に扮した護衛…しかもラスボス級の…がいたことなど、誰も気づいていなかった…はずだった。

 

「ねえ…。」「うん?」

「ホール出口にいたわね。花嫁衣装の紙袋さんと、花瓶やってたノロイの子。」

「ああ…隠れてるつもりだった…のかなあ?」

「私、思わず声かけちゃったわ。『頑張ってください』って…。」

「お前…隠れてるつもりの子に、それは無いだろ…?」

「ええ〜っ? だって、私以外も結構見つけて、みんなクスクス笑ってたわよ?」

 

 2023年8月某日 21:26

 クルーキャビン ライカの部屋

 ディナートークショー 警護反省会

 

「バ…バレてた、客に…。」

「ライカ…何でだろう? 

『頑張って』って言われて…同情半分で、笑われて…。

私はもう、明日センニン科のみんなと会うのが、辛い…」

「あたしも恥ずかしいーーっ! いっそ殺してくれええええっ!!」

 

……

 

夢のダイビートクルーズツアー、その光と影。

堂々たる主役級の閃忍・イノリとライカだが、彼女たちにとっては…ことごとくトンデモ羞恥に悶える、まさに生き地獄ツアーと化した。

 

…だが、この夜。

自らのあり方に迷い、道を今なお探す鈴森ライカが、今後のあり方に一つの決断を下す、重要な名ゼリフが生まれるのである。

 

それは明日の任務に備え、ライカもイノリもようやく心を落ち着かせ、浅くまどろむ深夜のこと。

窓もないライカのキャビンを訪れた、とある招かれざる来客が、夜の静寂を打ち砕くのであった。

 

 

 2023年8月某日(出航2日目) 01:56

 クルーキャビン ライカの部屋

 

「んん…ライカ、うるさい…」

「うるさくもなるわあーーっ!!

 イノリっ、この頭領、部屋から追い出して!」

 

 トキサダが、ライカの部屋に押しかけていた。

 そこに隣室からイノリ登場。

 

「さっきからこのド深夜に部屋に居座って、出ていこうとしないのよっ!!」

「ん〜…トキサダ頭領、夜這いの決定的瞬間…?

わかった。じゃあ、カメラ回すー。」

「そーうーじゃー、ないいいっ!」

 

上弦衆が頭領を追い出そうという、非常事態。

 

「観てますか、ユーノさん!

この人、頭領としておかしいんですよ!」

 

 ライカさん、カメラに向かって異議申し立て。

 

「私に限らず、上弦衆は頭領の命令に従って動くのが当たり前なんですよ! そうでなきゃ、死ぬかもしれない任務なんかできませんから!

そりゃあ、鈴森ライカいち個人としては、ムチャクチャな命令が出たらイヤな顔の一つや二つ、返しもしますよ!

とりわけ今日なんか、紙袋かぶってラスボスだの、伊達政宗だの空飛ぶだんごだの、最後は花嫁衣装で警護だの、もうめちゃくちゃ!

げんなり顔の一つや二つ、出ますよ普通!

でも、それだって上弦衆では普通のこと! 不満は不満で腹に収めて、明日もちゃんと任務にあたりますよ!

それなのにこの頭領、いちいちあたしの反応見て、ガチヘコみして! おかしいんですよ!」

 

上弦衆頭領のなすべきことを悟ったトキサダは、頭領の命に殉ずる覚悟の閃忍たちに報い、その迷いやわだかまりを断ち切ることが自らの責任だと自負するに至った。

そのまっすぐな思いで、今日いちばんの功労者にねぎらいを…とライカの部屋を訪れたのだが。

 

「この人、バカなんですよ!

こっちの気も知らないで、不満があるなら言え、

 

 『ライカ、腹を割って話そう』

 

…って言って、帰ろうとしないんですよ!」

 

トキサダの心遣いは、ライカには余計なお世話だった。

 

「不満とか! 言いたくても言えないこととか!

何もありません!…ってさっきからあたしは何度も言ってるのに!

何なんですか、その『不満が無いはずないだろう』って決めつけはあっ!!」

 

善意100%、ただライカの心の奥深くに寄り添おうと試みるトキサダだが、不幸なことにライカと見事にすれ違っていた。

 

「第一、『不満を隠したままじゃ任務にあたれないだろう?』みたいな大前提で話してくるのがおかしいんですよ、このヒト!

変に解消しようと割り込んで、ヤブヘビ上等みたいにヒトの気持ちに寄り添おうとして!」

 

そしてついに、あの一言が飛び出す。

 

「…わかりました。頭領、よく聞いてください。

 

 あたしは一生、上弦衆します。」

 

「…!!」

それはライカの決意の一言。

才能も使命感も足りない、痛いほど自覚しているその劣等感を飲み込み、それでも一意専心、閃忍の道を行くんだ…!

そんな、ライカの痛いまでの覚悟の表明。

 

…のわけがなく。

単に憔悴しきったライカさんの『こうでも言わなきゃ帰らないんですよ、このヒト!』という捨て身の一言であり。

 

「…やっぱり、言いたいことがあるんじゃないか。

 ライカ、腹を割って話そう。」

 

…その真意はトキサダには全く伝わらなかった。

 

「バカヤロおおーっ、帰れえええっっ!!」

 閃忍ライカ、深夜2時に頭領をバカ呼ばわり。

 

……

 

 2023年8月某日(出航2日目) 05:27

 閂市郊外 牧場バックヤード

 センニン科 警備準備中

 

「ライカー、よく寝た?」

 

 カチッ(怒)

「寝たわよ。たっぷり2時間。」

 

まだ陽も昇らない4時起床、後から観光バスで向かうツアー客に先行して、船外レクの警備にあたるセンニン科女子は牧場到着。

 

「酪農家はすごいなー。閃忍より早起き。」

「あのなあ…あたしらも今朝は、その朝に搾乳体験のツアー客をガードするの。偉さは平等。」

ライカの謎理論を尻目に、センニン科はほぼ全員ツナギに着替え、さながら農業高校。

 

「…牧子。あたしのツナギは?」

「はあ? 無いわよ。」

 

 ライカさん、ツナギ無し。

 

「…はあー? イジメか?」

「ライカだけじゃないわよ。イノリのも。」

 

 イノリさんも、ツナギ無し。

 

「ますますマズいでしょー! このノロイ差別者っ!」

「違うわよっ! あんたら顔出しNGペアは、こっち!!」

「…げっ!?」

「おお…?」

 

 

同日 06:48

船外レク「超昂戦士と酪農体験」スタート

 

〘ライカー。これも任務。〙

《…わかってる。うっさい。》

 

閃忍2人は、スタイリスト英田牧子渾身の逸品・等身大の牛に扮装。

ライカさん(前足)イノリさん(後足)は足並みを揃え、他の牛からぽつんと離れて遠巻きにツアー客を監視する。

 

《…紙袋やロッカーよりもキツい被り物があるとは思わなかった…。》

〘心の上にー、刃を置いてー。〙

《…あんた、そのフレーズで何でも許されると思うなよ…!》

 

ツアー参加者は、アカリ・沙由香・ハルカ・エリスと談笑しながら、代わる代わる乳牛の乳搾りを体験。

センニン科は牧場の作業員に扮し、万が一の敵襲に備えながら搾乳補助。

 

そして顔出しNGの第2部Wヒロインは、牛。

 

だが、牛のポジション取りは至難を極めた。

警護対象に近づきすぎると、こっちがツアー客に捕捉され搾乳されかねない。かと言って牛仲間に混ざろうものなら違和感アリアリ、牛の群れがパニックに陥りかねない。

どちらにも近寄れないライカとイノリは、広い牧場でぽつり孤立していた。

 

〘ライカライカー。これ護衛?〙

《あ〜…考えたら負けかな…。》

任務の意味がわからなくなってきた頃には、船外レクも終盤。搾ったミルクで神騎ミカフィールとアルデバランが焼いたミルクパイの試食を残すのみ。

《ふい〜…やっと終わるわ、このバカ任務。》

…じりっ。

《あとは船に帰って、解散式を見届けて終わり。》

ずずずっ…。

《基地に帰ったら、ひとっ風呂浴びて寝るかあ…??》

…ぐぐぐっ…!!

 

《…あの、イノリさん? 警護対象に、接近っ、しすぎっ…?!》

〘おお…思わず。〙

寝不足と空きっ腹のイノリがふらふらと(ライカごと巻き添えに)焼き立てパイのかぐわしさに釣られ、石窯に吸い寄せられる。

 

 ずりっ…ずずずっ…ぐぐっ…!

 

後ろから馬鹿力のイノリににじり寄られ、ライカの決死のブレーキも通じない。

《バ…バカなのっ!? 戻りなさいよっ、戻りなさいよおおおおっ!!》

ライカの決死の叫びも、声を張り上げたら身バレの自殺行為になるため、声を殺してささやくばかり。

 

 ざわっ…!

(な…何だ…?)

(こんな牛、居たっけ…?)

(ちょ…怪しくない?)

 

 ぴたっ。

 

石窯の真裏、班別に分かれたツアー客の衆人環視のもと、牛はようやく止まる。

ライカが胸を撫で下ろした、次の瞬間。

 

 ぐきゅるるるるるっ…!

 

「『【〈!!!〉】』」

 イノリの腹の虫が限界を叫ぶ。

〘おお…ハングリー。〙

《げえっ!? バレたああああっ!?》

 

「こ…この牛っ!」

「敵襲よ! 昨日の紙袋閃忍だわっ!」

「こ…怖いよおっ…!」

「ダメっ! みんな、勇気を出すのっ!」

「そうだ…みんなでやっつけるんだ!」

 

〘…少女たちは勇敢だった。〙

《う…うぎゃあああああっっ!?》

 

ぼこっ、ばきっ、どがっ、がすっ…!

 

《や…やめろっ、このガキどもおおっ!!》

「やめるもんかっ!」

「そうよっ! アカリさんだって、普通の女の子なのに闘って、エスカ・ルビーになったんだ!」

「私たちだって、この牧場を護れるんだあ!」

「しゃべる牛になんか、負けないっ!」

《だから早とちりすんなっ、このクソガキいいっっ!!》

〘頭領頭領ー、メーデー、メーデー。〙

 

袋叩きののち、ぎゅうぎゅうに締め上げられた牛。結局、後足が無線でヘルプを呼び、牧場の作業員(に扮した牧子たちセンニン科)に仲裁されるまで十数分、勇気ある未来の超昂戦士たちのサンドバッグとなり続けた。

 

「さすがダイビートクルーズツアーに来るだけのことはあるわね。女の子たち、みんなニチアサのプチピュアみたいだったわよ。

ライカ、イノリ、悪の牛魔神役お疲れさまっ。」

「牧子おおおっっっ!!!」

 

 2023年、晩夏。

 イノリは2度目の航海でちょっぴり成長し…

 ライカは海に沈めたい記憶が増えました…!

 

【エンドロール】

《出演》

 紙袋閃忍

   鈴森ライカ

 伊達政宗

   鈴森ライカ

 なまはげ

   戦部イノリ

 甘味屋台の娘

   鈴森ライカ(前衛)戦部イノリ(狙撃手)

 花嫁

   鈴森ライカ

 花瓶

   戦部イノリ

 

 ディーラー

   勝 司

 ツアーゲスト

   園崎アカリ/エスカ・ルビー

   高円寺沙由香/エスカレイヤー

   鷹守ハルカ/閃忍ハルカ

   エリス・エクシリア/神騎エクシール

   宝生キリカ/神騎キリエル

 

《スタッフ》

ツアープロデューサー

   クラリス・メルクーリ(NAU)

 

スタイリスト/ケデ(※)制作/牛制作

   英田牧子(月想館学園)

   (※)なまはげのワラ合羽

 

牛 操者

   鈴森ライカ(前足)戦部イノリ(後足)

 

ウェディングドレス制作協力

   高円寺さやか(DIE-BEAT)

 

カメラマン 戦部イノリ(ユーノへの告発専用)

 

協力 NAUクルーズ社

   月想館学園センニン科のみなさん

   あとらんてぃっく・のあ号船員のみなさん

 

スペシャルサンクス

   戦部トキサダ

  (DIE-BEAT長官/想破上弦衆頭領)

 

  「超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー」

   参加者のみなさん

 

制作著作 超昂どうでしょう制作委員会

 




…筆者の環藍河です。
悪ノリで書き続けているこのシリーズですが、ときどきこの筆者(バカ)に起こる発作みたいなものです。
…それでも最後までお読み下さったあなたに感謝。

リアル3周年にも間に合わず、中身も昨年の感動作(2周年記念「アカリの第二の誕生日」)とは真逆の、頭悪い系どたばたコメディ…。
※3周年記念SS「内緒のミニレター! 伝説は戦士から閃忍へ」はマジメ系です。よろしければご一読を。

さて、次回作は「バトル&ピンチ」系のマジメSSです。
まだプロット段階のため、読者さまはしばし待機。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。