魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
第97管理外世界『地球』・海鳴市。
オレたち『機動七課』は御神さんが乗る車で移動しつつ、この世界に流れたロストロギアを探すためのサーチャーを設置していた。ちなみに制服だと目立つため、今日は全員私服である。
そうして3時間近くが経過した頃……。
「もう12時か。そろそろどこかで昼飯でも取るか」
「そうですね。設置も順調に進んでいるようですし」
時計を一瞥しながら呟いた御神さんに、助手席に座るリインさんも合いの手を入れ、後ろに座っていたオレたちも思わず顔をほころばせる。作業中はともかく移動中はどうしても空腹を感じるが、菓子など持ってきてないし持ってきてたとしても仕事中にポリポリ齧るわけにもいかない(ルーテシアなら構わず食いそうだが)。
「なのはたちがいるかも知れないから翠屋は遠慮して、どこかの店に行くか」
「では近くにあるファミレスにしましょうか。ヴィータのお気に入りだったお店があるんです」
リインさんの提案に御神さんは軽い声で「じゃあそこにしよう」と頷く。地球に来るのが初めてのオレたちは黙ってそれを聞いているしかない。まあリインさんのお勧めならハズレってことはないだろう。
そんなやり取りをしている七課の後ろに、一台のバイクが迫っていた。
「対象たちを発見。噂の新人の子たちも一緒みたい」
メットからはみ出した金色の髪をたなびかせながら、薄茶色の学生服を着た少女がバイクに跨った状態で独りごちる。するとヘルメットに取り付けられたスピーカーから女の声が返ってきた。
『了解。そのまま彼らを追跡して、本人たちと確認したらすぐに捕まえなさい』
「
女はニヤリと口角を上げながらグッとペダルを踏みこみ、愛機の速度を上げ七課が乗る車に迫っていった。
「あれは――」
バックミラーを見上げて何かに気づいた御神さんが思わず声を漏らす。それと同時にけたたましいエンジン音が響き、後ろから制服姿の女が乗っているバイクが近づいてきた。顔まですっぽりヘルメットで覆っており、短い金髪の女ということしかわからない。
――まさかこの前列車を襲った、ガジェットを操ってる一味か?
身を固めるオレたちを嘲笑うようにバイクは車のすぐ右まで来て、人差し指ですぐ先の路肩を示しながら追い越し、先を走る。それを見て御神さんは仕方なさそうな笑みを浮かべながら言った。
「悪いがファミレスは中止だ。馴染みからの挨拶を無視するわけにはいかんし、“あっち”にも料理の腕のいい奴がいるんでな」
その言葉にリインさんも笑みを漏らしながら頷き、チンクもまさかと言いたげに目を見張る。そんな中、オレとルーテシアはこくりと首を傾げた。
……三人の知り合いか?
◆
それからすぐ、例のバイクに先導される形でオレたちが乗る車も路肩に停まり、オレたちは車から降りた。
女もオレたちの先でバイクを停めてヘルメットを脱ぎながら声をかけてきた。
「健斗、アインス、久しぶり! チンクとも一度会って何度か通信もしてるよね。覚えてる? あとの二人が新人さんかな?」
ヘルメットを片手に持ったまま朗らかな笑みを浮かべる彼女を見て、オレとルーテシアは唖然と目を見張る。
そこにいたのは“髪を短く切り揃えたフェイトさん”だったからだ。
エリオとキャロと一緒にいるはずじゃ……? それにあの人バイクなんか持ってきてないはず? それにあの服と髪型は――って、突っ込みたいところが多すぎるぞ!!
「アリシア、久しぶりだな。髪なんて切ってたからヘルメットを脱ぐまでわからなかった」
チンクは顔をほころばせながら彼女に近づき声を掛ける。アリシアと呼ばれたフェイトさんそっくりな女性も明るい笑みでチンクと握手を交わしながら言葉を返した。
「フェイトとかぶるし、バイクに乗ってるとどうしても邪魔になるからね。というより、あれれ〜チンク、しばらく見ない間に縮んじゃったー?」
「お前が伸びたんだ。それ以上このネタ言ったら怒るぞ」
そう言いながらもチンクは嬉しさの混じった顔でアリシアさんの脇を小突く。どうやら結構仲がいいらしい。
っていうか、いい加減タネ明かししてくれよ。その人は一体――。
「この人はアリシア・テスタロッサさん。フェイト隊長の……妹さんだ」
オレの心の声が聞こえたように、リインさんは紹介しながらも最後は言いづらそうに付け足す。そんな彼女の隣にアリシアさんが立って、薄い胸を張りながら口を開いた。
「はじめまして、私はアリシア。“フェイトお姉ちゃん”の妹
そう言ってアリシアさんは傍に立つ5階建てのビルを指さした。
◆
そんなこんなで、オレたちはアリシアさんに案内され、ビルの中にある『
店名からして彼女の家族がやってる店らしいが、結構大きいな。大手メーカーの系列店にしか見えない。もしかしてアリシアさんもフェイトさんも結構なお嬢様なのか?
「っていうかアリシア、なんで制服姿なんだ? 今日は土曜だろう……まさか補習?」
本気で心配してるように尋ねる御神さんに、アリシアさんは頬を膨らませ不満げな言葉を返した。
「高校に上がってすぐ補習なんかあるわけないじゃん。サービスだよサービス。この格好の方が
「おうアリシアちゃん、やっと来てくれたのか。今日は休みかと思ってしょげそうになってたところだぜ」
「あーごめん。今日は久しぶりに里帰りしてきた友達と遊ぶ予定なんだ。その代わりゲームコーナーですごいイベント見せてあげるから、もうちょっと待ってて」
「そうか、楽しみにしてるぜ」
常連らしい客はタメ口で話しかけても嫌な顔どころか笑顔で答える。っていうか顔まで赤くなってるし。下心があるんじゃないか?
そんな彼と別れを告げてからアリシアさんはオレたちを連れ、筒状のガラスに覆われたある端末の前に止まった。
「さっ、レツヤ君とルーテシアちゃんはこの『カードローラー』の中に入って。今日は特別にお代はサービスしてあげるから♪」
「……えっと」
端末もとい『カードローラー』に手を向けながら促すアリシアに、オレもルーテシアも戸惑いチンクや御神さんたちに顔を向ける。が……。
「入ってやってくれ。取って食われる
「じゃあ、お言葉に甘えて」
チンクの助言に一足早く決意が固まったのかルーテシアはカードローラーに近付き、画面内のパネルを押していくつかの質問に答える。するとカメラが起動し、ルーテシアを写しながらぱしゃりとシャッター音を鳴らした。
その直後、手元の取り出し口から一枚のカードが出てきた。それを手に取りルーテシアは驚きに目を見張る。
そのカードにはさっきの写真とは違う戦闘衣装を着たルーテシアの絵が描かれていたからだ。構図も表情もさっき撮ったのとは全然違い、下にはパラメーターらしき数字と説明文まで載ってる。
これは一体――?
「私たちのマ、お母さんが開発した『カード化システム』。撮ったものをカードにしてくれるの。このお店も少し前まではずっと小さかったんだけど、このカードローラーとカードを使ったゲームが大ヒットしてたくさんお金が入ったみたいでさ。それでお店を広げてゲームコーナーなんかも作っちゃったわけ。――さっ、次はレツヤの番!」
アリシアさんに押されオレはカードローラーの前に立たされ、ルーテシアのようにいくつかの質問に答えカメラを起動させる。そしてすぐ戦闘衣装を着たオレのカードが出てきた。
それを見て、アリシアさんは満足げな笑みを浮かべる。
「よし、これでレツヤとルーテシアも《ブレイブデュエラー》の仲間入りだね。というわけでさっそく――おい、デュエルしろよ」
アリシアさんは赤い目を鋭くして、獰猛な笑みを向けながらオレに告げる。
……えっ、なんで? っていうか“デュエル”ってなに?
◆
『ただいまから『ブレイブデュエル』が開始されます。『ブレイブデュエル』が開始されます。ステージ近くにいる一般ゲーマーとお客様は直ちに退避してください! 近くにいる一般ゲーマーとお客様は直ちに退避してください!』
真上の階にあるゲームコーナーに入った途端、店員らしき女性によるアナウンスが流れるとともに、鉄柵に覆われていた箇所から足場がせり出し、ライトやモニターが点灯する。
客を追いやるような真似していいのかと思いきや――
「アリシアちゃんのデュエルだー!」
「今日来てよかったーー!!」
客やゲーマーは怒るどころか、口々に喝采の声を上げる。それを見てオレたちはもちろん、御神さんやリインさんも呆れたような半目で彼らを眺めていた。
そんな中、アリシアさんがオレたちから離れ、かつかつと足音を立てながらステージに上り、マイクを片手に振り向きつつ高らかな声を上げた。
「諸君たちに問う! 戦いとは何か!?
人間は生を受けた瞬間、この世界を住処とした魂を宿す!
この世界は私達人間を閉じ込める牢獄! 死ぬまで出ることの許されない牢獄なのだ!
その牢獄の中で私達は自らの魂を守るために武器を持つ! 己の敵は
私達は守る者のために戦い、思想の異なる者と戦い、愚かな戦争という形で戦いの歴史は繰り返されてきた!
だが、皮肉にも勝者でさえ“世界”という牢獄から出ることはできない! ――しかし諸君! この『ブレイブデュエル』によって魂は解放される!
私達は世界という“牢獄”から抜け出し、ネットワークという“
「ウオオオオオオオオォォォッッッ!!」
「アリシア!! ア・リ・シ・アッ!!!」
アリシアさんが言い切った瞬間、ビルが揺れるほどの歓声とアリシアコールが響き渡る。
そんな中……。
「なに、これ?」
怒号にかき消され、聞き逃してしまいそうなルーテシアの問いにオレたちもつい頷きそうになる。その横から――
「カードアニメにハマってデュエル脳に染まったアリシアの情熱と、バカ親もとい親バカな店長の計らいと理解あるお客様、そして訓練されたアリシアファンによって成される
「相変わらず苦労してるようだな、“七瀬先輩”」
「健斗君こそ。アインスさんとチンクもお久しぶり。で、そこの二人が七課ってとこの新人?」
店員さんは御神さんと手を打ち鳴らし、リインさんたちに挨拶しつつオレとルーテシアを見て訊ねる。その問いに御神さんは頷いて肯定した。
店員さんも頷きを返し、笑みを浮かべながらオレたちに言った。
「初めまして。健斗君たちの友達で、この店でアルバイトとして働いてる
「初めまして、オレは――」
挨拶してくれる七瀬さんに、姿勢を正して名乗り返そうとしたその時――。
「さあ姿を見せよ――私に挑まんとする
アリシアさんが勢いよくオレに向けて人差し指を突きつけた瞬間、スポットライトが差し込む。その直後、他の皆は一斉にこの場から離れた。
「って、だからなんでオレなんだよ!? 御神さんやチンクとかでもいいだろう?」
オレはそう言いながらあの人たちを指すが……。
《すまん。二十近くにもなってこういうのはちょっとな……》
「あなたとお話したことはないはずですが」
御神さんは念話で謝り、ルーテシアは初めて聞く敬語ですっとぼけ、リインさんとチンクは視線を逸らし、七瀬さんはそそくさと作業に戻る。こいつら……。
「わかったよ! “デュエル”ってやつ受けてやる。カードゲームなら
これ以上立ちすくんでいても余計目立つだけだと諦め、カードを取り出しながら大股でステージに上がる。
そんなオレに対し、アリシアさんも不敵さと嬉しさが混じった笑みを浮かべながら数十枚の