魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
「うまっ――リニスさんの食事ウマいっすね!」
「あらあら、お上手ですね。お代わりもありますよ」
おだてたつもりはないのだが、リニスさんは上機嫌そうにチーズリゾットのお代わりをよそってくれる。反対にアリシアが頬を膨らませながら――
「もう、そろそろ私が作ったポテトフライも食べてよ~。デュエルに勝ったご褒美に腕によりをかけて作ったんだから!」
「はいはい。もう二口ぐらいリニスさんのリゾット堪能したら――」
「レツヤ君、アリシアが丹精込めて作った料理を食べたくないと言うのかしら?」
「と思ったけど、そろそろアリシアが作ってくれたポテトフライが食べたくなってきたなぁ」
プレシアさんの凍てついた声が耳元に届いた瞬間、歪な形のポテトフライに箸を伸ばす。そして意外としっかりした味に思わず目を見張り、噛み締めるように味わってから感想を零した。
「うまい。旨味が出ているしパサパサしてて食感もかなりいい」
「うん。予想外だけど美味しいと思う」
「でしょ! リニスやエイミィとかから教わってるんだから! 翠屋に行った時に桃子さんにも教わってるからお菓子もある程度は作れるよ!」
ルーテシアの皮肉に気づかずアリシアは誇らしそうに胸を張る。
そこで――
「予想外といえばレツヤの熱中ぶりにも驚かされたけどな。カードアニメの主人公みたいだったぞ」
「んぐっ――」
チンクが放った一言に思わず喉を詰まらせる。それに気づいてリニスさんが差し出してくれた水で喉元につっかえたフライを流し込んでいる最中にルーテシアが言った。
「ミッドに帰ったらお父さんにお願いして、ユウなんとかに改名したら。その方が似合いそうだし」
「よせよせ。レツヤにその名は荷が重すぎる。攻撃力5000や10000のキャラでもドロー1回で倒す主人公につけられる名だからな」
御神さんの一言にルーテシアは引き気味に「そう」と返しながらリゾットとともに意見を呑み込む。
そこでまた御神さんが声を上げた。
「もしやアリシア、お前がバイクに乗りだしたのも“あの作品”の影響か?」
その問いにアリシアはごまかすどころか首を大きく縦に振り。
「もっちろん! 『ライディングデュエル』をやってみたくてさ。速攻で免許取ってバイクも買って、ママに頼んでオートパイロットモードとデュエル装置も取り付けてもらったんだ」
おいおい、バイクに乗りながらカードゲームってツッコミどころ満載なんだが。立ってキャラの出し合いするだけでも常識外れだったのに。
突っ込んだところでアリシアは「でも」と肩を落とし、
「走行中にデュエルするには事故を防ぐために近くにある車全部にオートパイロットモードを付けるか、デュエル用バイクだけで走れる道が必要だって。さすがにママでもそこまではできないみたい」
その言葉と残念そうに首を振るアリシアに対し、プレシアさんは複雑そうな顔を見せる。
ミッドの技術者だったこの人ならオートパイロット装置ぐらい簡単に作れるんだろうけど、玩具屋の店長がそんなもん売り込みに行ったってどこのメーカーも採用してくれるわけがない。100歩譲って採用されるような奇跡が起きたとしても、走行中にカードゲームなんて
それぐらいデュエルできるバイクなんて造る前に気付け!
「私が所用で海鳴を離れている隙にやらかしてしまいまして。フェイトがいれば止めてくれたんでしょうけど――まあ我が主一家の残念ぶりはともかく、落ち着いたところでそろそろ自己紹介しましょう。私はリニス・ランスター。プレシアに作られた猫型の使い魔で、今はホビー・テスタロッサの副店長とテスタロッサ家の家政婦もどきをしています。よろしくお願いしますね」
「ランスター?」
席につきながら自己紹介するリニスさんの名字を聞いて、ルーテシアは怪訝そうな声で復唱する。オレももしやと思って尋ねた。
「もしかしてティーダさんやティアナと関係がありますか? 同じ名字の人が六課や地上本部にいるんですけど」
「いいえ、その人たちのことはフェイトから聞いてますけど、特に繋がりはありません。“ランスター”というのもこの世界に移住する時に適当に思いついた名前です……なぜか懐かしいような感じがするんですけどね」
淡い笑みを浮かべながら付け足すリニスさんを見て、もしやという想像がよぎった。
もしかしたらリニスさんの元になった猫は、ティーダさんたちの両親や親戚が飼ってたペットだったのかもしれない。子供が生まれペットを育てる余裕がなくなって山に離した後にテスタロッサ家に拾われたとか、そんな背景があったりしたのかも。
「私はさっき自己紹介したよね。アリシアの同級生で、その縁でこの店で働いている七瀬です。君たちのことは隊長さんからかねがね聞いてるわ」
紫髮をポニーテールに結んだ店員――七瀬さんは改めて挨拶してくれた。その隣には……。
「どうも♪ アリシアと七瀬ちゃんの“元”同級生で御神先輩たちの後輩だった
あの後結局リニスさんに捕まって一緒に昼食を摂ることになったリホさんは自己紹介と同時に、星が飛びそうなウインクをしながら自身の動画を宣伝する。それに対しルーテシアが探るような顔で問いかけた。
「ミッドで見られる動画チャンネルをやってるということは……リホもミッド人?」
「いいや。れっきとした地球人……のはずだ。いつの間にか他の星や他次元の電波を送受信する技術を覚えたようでな、魔法は使ってないみたいだし無害そうだから
「御神先輩ったら不穏な言い方しないでくださいよ。さすがに管理局や銀河警察に睨まれないよう注意はしてますよ~」
手をひらひらさせながら笑い飛ばすリホさんに、御神さんは肩をすくめながら食事を口に入れ、しばらく咀嚼してから彼女に尋ねた。
「ところで卯敷、お前まだ向こうにいる気か? 向こうの学校の校長はいい噂を聞かんし校舎が半壊するような騒動も起こっていると聞いてる。悪いこと言わんから聖祥に戻ったほうがいいぞ。今ならまだ退学取り消して休学扱いにしてもらうこともできるだろう」
「いいですよ~。ようやく噂の先輩たちと接触できて、面白そうな
からかい交じりの誘いに御神さんは難しい顔をしながら、
「事件とやらの危険度を調べに行くぐらいはするかもしれん」
とだけ言った。結構ヤバい案件なのか?
そこで最後に残った、この店の店長にしてテスタロッサ家の家長でもある黒髪の女性が口を開いた。
「申し遅れたわね。私はプレシア・テスタロッサ。フェイトとアリシアの母親よ。ミッドチルダ出身の技術者だったけど恥ずかしながらあそこにいられなくなってね、今は地球に移住して玩具屋の店長をしているわ」
「技術者……もしかしてティミル博士が言ってた友人ってプレシアさんのことですか? 七課の演習で使うゴーレムやガジェットの開発やオレたちが使ってるデバイスの調整をしてくれてるって聞きましたけど」
オレが言うとプレシアさんは口元に人差し指を立てながら付け足した。
「あくまで外部協力者としてこっそり参加してるだけよ。六課でもほとんど知られてないから
「ここでならいいの? 六課どころかミッドにも関係ない人たちが混ざってるけど」
ルーテシアは尋ねながら七瀬さんとリホさんを見る。それに対して二人は気分を悪くすることもなく、
「私たちはアリサさんとすずかさん同様、テスタロッサ家のことは色々知ってるから」
「私なんてミッドの技術を
七瀬さんとともに笑いながら答えるリホさんに「ほどほどにしとけよ」と御神さんが小さく忠告する。
「アルフは留守ですか? 姿が見えませんが」
リインさんの問いにリニスさんが答える。
「あの子はハラオウンさんの家に行ってカレルとリエラのお世話をしてるはずです。今の形態で働かせるわけにいかず、私たちの家では退屈してばかりですから」
その話を聞いてカレルとリエラとは誰だと疑問が沸いたが、リインさんはすぐさま地球に住んでる管理局のお偉いさんの子供だと教えてくれた。両親はクロノとエイミィというらしい。
「じゃ、自己紹介もご飯も済ませたし、休憩時間が残ってるうちに私たちの家も案内してあげる! お店のすぐ近くにあるから。健斗、アインス、いいでしょう?」
「おう、1時までには戻ってこいよ」
忠告する御神さんとその隣に座るアインスさんに返事を返しながら、オレたちはアリシアとリホさんについていく。
そしてリニスさんは食器を洗いに七瀬さんは食後のコーヒーを買いに出て、休憩室には御神さんとリインさんとプレシアさんが残された。
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「じゃあプレシアさん、ちょうどいい機会なので聞かせてもらいます。十数年以上前、《プロジェクトF》の研究でスカリエッティの元にいた時のことを」
「いいわ。あれから直接会ったことはないし、正直私も信じられないけど……」
プレシアさんは端末に映った、当時のスカリエッティの映像を眺めながら頷く。
そこには