魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
第97管理外世界『地球』に来て半日以上経った頃。
いまだロストロギアは見つからないまま空はすっかり赤みがかってきて、八神部隊長の提案でオレたちは“銭湯”という入浴施設に行くことになった。
「いらっしゃいませー! 海鳴スパラクーアへようこそ…………団体様ですか?」
カウンターに立っていた女将は22人もの団体を目にした瞬間、ひきつった声で尋ねる。はやてさんはうなずいてからオレたち一人一人を指さし……*1
「えーと、大人16人と……」
「子供6人です」
フェイトさんが付け足した数を聞いて女将はその通りの数を記入しようとするものの、子供たちを見て硬直する。
ティアナはもしやと思って人差し指を伸ばし……
「えーと子供は、エリオとキャロと……」
「ルーテシアとツヴァイさんと……」
「アルフと雫……それから」
オレとティアナと御神さんはチンクとヴィータさんに指を伸ばそうとする。それに対して二人は不服そうに声を上げた。
「あたしは大人だ!」
「私もだ。
雫ちゃん以外の子供と変わらない背丈にもかかわらず大人だと主張する二人を見て、女将は……
「えーと――大人18名様と子供6名様ですね。こちらへどうぞ!」
突っ込まない方がいいと思ったのか、女将はそそくさと奥の方に手を向ける。
そんな中、はやてさんは懐から財布を出しながら言った。
「私はお会計してくから先行っててええよ」
その言葉に何人かが「はーい」と元気な声を上げる。恥ずかしさを抑えながら、オレも彼女たちとともに先へ進む。
それからすぐ二つ並んだ更衣室のドアが見えた。“男”と書かれてる方が男性用の更衣室で、“女”と書かれてる方が女性用だろう。爺さんに習ったおかげで日本語はなんとか読める。
「広いお風呂だって。楽しみだね、エリオ君」
「そうだね。スバルさんたちと楽しんでくるといいよ」
嬉しそうに声をかけるキャロにエリオはそう告げる。しかし、キャロは首をかしげて……
「エリオ君も一緒に入るんだよ」
「――えっ!?」
まさかの一言にエリオは顔を真っ赤にしながら――
「で、でもお互いいい歳だし、他の女の人もいるし――」
「うん。でもほら、ここ見て!」
キャロは壁に張られた注意書きを指さす。エリオは短く翻訳魔法の呪文を唱えてから、注意書きに目を通した。
「えーと……当店では男女一緒の入浴は――
キャロが言わんとすることがわかってエリオの顔が真っ青になる。そこへ――
「エリオはまだ10歳だから女の子と一緒に入っても問題なし! お姉ちゃんと一緒に入ろう♪」
「そうね。どのくらい成長したのか七瀬さんが隅々まで見てあげる」
「アリシアさん!? 七瀬さん!!」
突然アリシアさんに抱きつかれたうえに七瀬さんにまで絡まれ、エリオは戸惑いの声を上げる。特に七瀬さんの言動と視線は、性別が逆だったらアウトなレベルだ。
エリオはすがるような顔でフェイトさんたちを見るが……
「私も久しぶりだし、エリオと一緒に入りたいな」
フェイトさんもせがむような目でお願いしてきて、後ろのみんなも苦笑しながらうなずく。プレシアさんだけは悩ましげに娘さんたちとエリオを見比べていたが。
しかし、エリオはアリシアさんを押しのけて――。
「お気持ちは非常に嬉しいんですが――すみません! 遠慮させていただきます!!」
かわいい弟分に振られ、フェイトさんたちは「えー」と残念そうな声を上げる。エリオは彼女たちに謝りながら、逃げるように男用の更衣室に入っていった。
彼に同情しているオレに御神さんは何を思ったのか。
「レツヤ、お前はもう12だから女湯に入れん。俺やエリオと一緒に男湯だ。俺だってできればリインと入りたいが――」
「知りませんよそんなこと!! オレも先に入ってきます!」
たわけたことを言う上官に一喝して、オレも更衣室に入る。忍び笑いを漏らしながら御神さんも続いてきた。
その後ろから……。
「ねえルーちゃん、ちょっといい……」
「……?」
◆
「閉める時はこうするんだ……わかったか」
「はい、ありがとうございます」
ロッカーの開け方を教え教わりながら、御神さんとエリオは服を脱いでいく。一方その隣でオレは苦もなくロッカーを開け、今日一日着ていた服をはだいていく。それを見て――
「レツヤさん、このロッカーの使い方知ってるんですか? このせか――ここに来るの初めてって言ってましたよね?」
途中で言いなおしながらエリオが尋ねてきて、御神さんも興味深そうに目を向けてくる。脱いでるところを見られてるようで正直恥ずかしい。
「母方の実家がやってる道場に同じものがあったから、今さら教えてもらうまでもない。むしろオレが他の門下生に使い方を教えていたくらいだ」
「そうだったんですか」
エリオは感心したように相槌を打つ。そこで扉ががらりと開き――
「おじゃましまーす――あっ、エリオ君!」
弾むような声とともに、ぱたぱたという足音が
まさかと思ってそちらを見ると、バスタオル姿で片手をあげながらこちらに向かってくるキャロの姿が見えた。さらにその後ろには――。
「レツヤと隊長もまだここにいたんだ」
キャロに続くように、ルーテシアもぺたぺたと足音を立てながらこちらに歩いてくる。彼女もバスタオルしか身に着けていないにもかかわらず、恥じらう様子はまったくなかった。
「ししょー!」
「雫まで来たのか。何度も言ってるが俺は師匠じゃないぞ」
そう言いながらも、御神さんはまんざらでもなさそうに一糸まとわぬ姿で駆けてくる雫ちゃんを受け止め抱きかかえる。
あの子はいいとして……。
「ルーテシア、キャロ、なんでお前たちがここに?」
震える口を動かしてどうにかそう尋ねる。するとルーテシアは何でもないように言った。
「10歳までなら男女一緒に入れるって注意書きに書いてあったし、アリシアもそう言ってたでしょう。もう忘れた?」
「いや、それぐらい覚えてるけど」
キャロはともかく、ルーテシアが来るなんて思ってなかったんだよ!
心中でそう付け足したところで、御神さんは雫ちゃんを下ろしながら言った。
「落ち着け男ども、他の客に迷惑だ。この子たちを女湯まで引っ張っていくわけにはいかんし、もうこの際一緒に入っちまえ。お前らにとって女の子と風呂に入れる最後のチャンスかもしれんしな」
「「御神さん――!?」」
まさかの言葉にオレとエリオの声が重なる。一方、上官から許しが出たことでキャロは笑顔になり、ルーテシアはこくりとうなずきながら体に纏ったタオルに手をかける――。
「――それはさすがにまずいって!」
「一緒に入っていいから、せめてタオルだけはつけて!」
オレとエリオは目を隠しながら必死に頼み込む。そしてまた御神さんから注意を受け、この六人で風呂に入ることになった。