魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
「レツヤ、背中向けて」
「お、おう……」
ルーテシアに言われるがまま、オレは彼女に背中を向ける。それからすぐ、ルーテシアは泡立てたタオルを背中に押し当て、ごしごし擦り始めた。
それからしばらくの間、ルーテシアは黙々とオレの背中を洗い続ける。隣ではしゃぎ声をあげながら御神さんの背中を洗ってる雫ちゃんとは対照的だ。
――っていうか御神さんもまんざらじゃなさそうに微笑んでるし。オレたちとは態度が違いすぎるぞ。姪っ子にはダダ甘かよ!
「レツヤ、痛くない?」
「ああ、大丈夫だ……」
内心で上司に突っ込みを入れるオレとは裏腹に、ルーテシアは淡々と背中を洗いながらそう尋ねる。
それからまたしばらく背中を洗われて……。
「背中、洗い終わった」
「ああ、ありがとう。じゃあ……」
オレは礼を言いながらタオルを受け取ろうとする。
だが――
「じゃあ次は前洗うから、こっち向いて」
「――!?」
まさかの一言に思わず目を剥く。
――さすがにそんなことさせるわけにはいかねえぞ!
「い、いや、前ぐらい自分で洗う! オレはもういいからルーテシアも自分の体を洗えよ」
「……そう? この前のお礼に洗ってあげようと思ったんだけど」
その一言にオレは片眉を上げながら尋ねた。
「この前のお礼って……もしかして初出動の時の事か?」
「うん。レツヤのおかげでインゼクトのかたきもとれたし、私たちが生きているのもレツヤのおかげかもしれないから」
「いや、それを言ったらオレだってルーテシアに助けられたし、ルーテシアがいなかったらガジェットだって倒せなかったかもしれない。お互いさまだよ」
そう答えると「それもそうか」という返事が返ってくる。
これでいらない恩を着せられずに済んだし、体を洗われる心配もなくなったと安堵していると……。
「ルーちゃーん!」
横からキャロの声が聞こえてそちらを見るも、バスタオル姿のキャロが見えてすぐ目をそらす。そこでエリオと目が合い、『お互い大変だな』と苦笑を交わす。
一方、キャロはオレや御神さんを気にするそぶりもなく、ルーテシアに声をかけてきた。
「向こうに子供用の露天風呂があるんだけど、ルーちゃんもいかない? あっ、レツヤさんと隊長さんたちもよかったら。12歳以上の人は入っちゃいけないって書いてありますけど、保護者や兄弟なら入れますから」
「うん。じゃあ体を洗ってから行く。レツヤと隊長は?」
「俺はパス。さすがに二十の男が行くのはまずいからな。雫は?」
「ししょーがいかないならわたしもパス!」
御神さんの言葉を真似ながら雫ちゃんも首を横に振る。そしてルーテシアとキャロたちはじっとオレを見た。
「えーと……じゃあオレも……」
『行かない』と言いかけた途端、ルーテシアの反応が頭に浮かび言葉を止める。
同い年どうしせっかく仲良くなってるのに、ここでルーテシアが『レツヤが行かないなら私も行かない』なんて言えばキャロたちとの距離が遠くなってしまうだろう。
今後の任務とルーテシアの事を考えるとそれはよくない。ここは……。
「……じゃあオレも一緒させてもらおうかな。先に体を洗うから少し待っててくれ」
「はい! わかりました!」
元気のいい返事を返しながらキャロはじっと待つ。恥ずかしいなと思ったところで、エリオが「もう少し離れたところで待とう」と助け船を出してくれた。
そんなオレたちの横で――
「青春だなぁ。ガキの頃を思いだすぜ」
――大きなお世話だ! ってか、あんたもどんな子供時代を送ってたんだ!?
呑気そうにつぶやく上官に突っ込みを入れながら体を洗った後、キャロたちとともに露天風呂に行くと――
「――れ、レツヤ! なんでお前までここに!?」
「レツヤも来たんだ」
「あっ、フェイトさん、アルフ! チンクさんも!」
露天風呂の前にいたフェイトさんたちを見つけ、キャロは嬉しそうに顔をほころばせる。
一方、思わぬ遭遇にチンクは赤面しながら体を隠し、オレもすぐに目をそらす。
そんなオレたちの横で……
「隊長たちとチンクも露天風呂に入りにきたの?」
ルーテシアの問いにフェイトさんは「ううん」と首を振り。
「やっぱり久しぶりにエリオとキャロといっしょに入りたいなって思って呼びに来たの。ルーテシアとレツヤも
「いやいや、さすがにまずいですって! やっぱりオレは男湯に戻るからルーテシアは向こうに行って――」
ルーテシアを任せつつ、オレは慌てて戻ろうとする。そこで――
「おーい! ルーテシア、忘れもんだぞ……」
男湯の方からアヒルの玩具を持ちながら御神さんがやってきて、フェイトさんと鉢合わせになり揃って石像のように固まった。
二人ともさすがに同年代に見られるのは恥ずかしいらしい。
その後すぐ、ロストロギア発見の報せを聞いて銭湯を出ることになり、御神さんとフェイトさんもぎこちない様子を見せながら出動準備をしていた。
リインさんとはやてさんがやや不機嫌だったのは気のせいではないだろう……。