魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第16話 幻惑の銀幕(シルバーカーテン)

 キャロの報告と本部から指示をもらって30分後、オレたちとスターズ二人はほぼ同時に現場の路地裏に到着した。

 

「ルーちゃん、チンクさん」

 

「スバルさんとティアさん、レツヤさんも。すみません、お休み中に」

 

 オレたちを見つけてすぐ開口一番謝ってくるエリオにティアナは「いいわよ」と返し、オレも首を横に振る。そしてオレたちはキャロの抱えてる女の子を見た。

 長い金髪を下ろした5、6歳くらいの子で、ボロボロの布を纏っており、女の子自身もかなり汚れている。

 

「地下水路を通って、かなり長い距離を歩いてきたんだと思います」

 

 悲痛そうに推測を話すキャロの膝で眠る少女を見て、スバルは「こんなに小さい子が」とつぶやく。それに同意しながらも――

 

「レリックの封印処理は済ませたのか?」

 

「はい。あの後すぐキャロがやってくれました。だからガジェットに見つかる心配はないと思います……でも」

 

 エリオは言葉を切りながらレリックが入ってるケースを持ち上げる。そこからはケースに巻き付いていた鎖が手の形のようにほどけた状態でぶら下がっていた。これは……。

 

「ケースはもう一個ある……」

 

 ルーテシアの推測にオレとティアナがうなずく。そこで――。

 

「ごめん、お待たせ!」

 

 後ろから女性の声が響いてきて、オレたちはそちらを振り返る。そこには声の主であるなのはさんとフェイトさん、その後ろに御神さんとリインさん、さらにシャマルさんとツヴァイさんもいた。

 

「今からその子を診るわ。ちょっと貸して」

 

「あっ、はい。お願いします」

 

 シャマルさんはキャロから女の子を預かると、彼女をシーツの上に寝かせて救急箱から機器を取り出し、女の子の胸の上に当てる。

 それを何度か繰り返して……。

 

「バイタルは安定してるわ。危険な反応もないし……心配ないわ」

 

 シャマルさんはそう言って安心させるように笑みを向ける。それを見てオレたちとフォワードも安堵の息をついた。そんな中で……。

 

「…………」

「……」

 

 御神さんとリインさんは険しい表情のまま女の子を見下ろす。それを見て――

 

「隊長、副隊長、どうかしたんですか?」

 

「――いや、なんでもない。なっ」

 

「ええ。すまないな、休みの最中だったのに」

 

 御神さんとリインさんは誤魔化すようにそう言ってくる。それに気付かずチンクは「いえ」と首を横に振り、キャロも「大丈夫です」と答えた。

 

「ケースと女の子はこのままヘリで搬送するから、みんなはこっちで現場調査ね。フィルダーにもお手伝いをお願いしていい?」

 

「ああ。お前たちも構わないな」

 

 尋ねながらこちらを見る御神さんとなのはさんにオレたちは「はい」と答え、そのままフォワードとともに地下水路への入り口に向かった。

 

 

 

 

 

 

「なのはちゃん、この子ヘリまで抱いていってもらえる」

 

「あっ――はい」

 

 シャマルに頼まれ、なのはは女の子を両手で抱える。それを見ていると……。

 

《健斗……この少女、“あの子”に似ていないか》

 

 なのはたちに気付かれないようにリインが思念通話をしてくる。俺も彼女たちに気付かれないように、うなずきと返事を返した。

 

《ああ。だが、聖王家はベルカ平定後すぐに断絶したと聞く。赤の他人か親戚の子孫といったところだろう。……もっとも、本当に“あいつ”の子孫だとしたら、ベルカ自治領と教会を中心に大騒ぎが起きそうだが……》

 

 そう返しながらも女の子と彼女を抱くなのはを見て、8年前に“あいつ”が残した言葉を思い出した。

 

『あの人は遠くない将来、()()()()()()()()がお世話になるかもしれない人ですから』

 

 まさかと思ったその時――。

 

『ガジェットが来ました! 地下水路に数機ずつのグループ、総数50!』

 

『クラナガン南西の海上にも12機単位が5グループ現れました!』

 

 

 

 

 

 

 地下に入ろうとしたところでシャーリーさんとアルトさんの声が届いてきて、オレはティアナと顔を見合わせてうなずき、互いのチームメイトの方に顔を向けた。

 

「じゃあ束の間の休みだったけど休暇の続きは次の機会に取っておいて――今から一仕事いくぞ!」

 

 オレの掛け声に、ルーテシアとチンクはうなずきを返しながら待機状態のデバイスを取り出す。オレも懐から手を引き抜いて落葉を取り出した。

 

『Standby』

「セットアップ!」

 

 

 

 

 

 

 メガーヌはビルの上から“本命”が出てきた地下水路の方を見下ろす。そこで彼女の隣にモニターが現れた。モニターの向こうからスカリエッティの秘書、ウーノが告げてくる。

 

『六課のヘリに移されたケースと素体(マテリアル)は妹たちが回収しますから、メガーヌ様は地下の方をお願いします。アギト様はどちらに?』

 

「もう少しで帰ってこれるそうよ。それまで私とガリューでやるつもり。それより、私がマテリアルを取りに行った方がいいんじゃない。私の転送魔法なら簡単にその子を連れてくれると思うけど」

 

 メガーヌはそう申し出るが、ウーノは首を横に振り……。

 

『そう言ってくださるのはありがたいのですが、あちらには六課と七課の隊長たちがいます。メガーヌ様といえどさすがに危険すぎます。それよりも、地下にあるレリックを取ってきてほしいとの事です』

 

「そう。わかったわ」

 

 メガーヌは舌打ちしそうになりながらそう答える。さすがに自分のような外様に“本命”を任せる真似はしないか。

 実際、マテリアルとやらをみすみすスカリエッティたちに渡す気はない。あんな子供を違法研究者(マッドサイエンティスト)に渡すほど堕ちたつもりはないし、“あれ”はスカリエッティや奴のクライアントに対する強力な武器になる。

 そう思って先手を打とうとしたのだが、これ以上言える空気ではなさそうだ。

 

『協力が必要でしたらお申しつけください。最優先で実行します』

 

「ええ、当てにしてるわ」

 

 メガーヌの思惑に気付いているかそうでないのか、ウーノは素知らぬように一礼しながらモニターを閉じる。

 それを一瞥してから、メガーヌは手袋型デバイス《コロニス》を填めている両手のうち、右手の方を持ち上げる。するとコロニス全体に白色の光が走り、宝石部分から黒い繭のようなものが出てきた。

 メガーヌはそれを掴み取り――

 

「ガリュー、お仕事の時間よ。そろそろ起きなさい」

 

 そう呼びかけると、繭はたった今目覚めたように四つの眼を開く。それを見てメガーヌはにやりと笑みを浮かべながら足元に召喚陣を浮かべ、それらとともに姿を掻き消した。

 

 

 

 

 

 

 バリアジャケットを着てすぐ、オレたちは少女が出てきたというマンホールから地下水路に入り、そこを走り抜ける。そこで念話が届いてきた。

 

《こちら、ギンガ・ナカジマ。八神二佐から許可をもらって、私も捜査に参加することになりました。指示をお願いします》

 

「――ギンガさん、お久しぶりです!」

 

 ギンガと名乗る女の人の声に、ティアナは驚きながら返事を返す。その様子と“ナカジマ”という名字に反応して、オレはチンクとスバルを見た。

 チンクはうなずき――

 

「私とスバルの姉だ。階級は陸曹、父とともに陸士108部隊に勤めている」

 

「あたしにとってはシューティングアーツの先生でもある。チンク姉も誘われてたんだけど断っちゃって……」

 

「他意はない。私には今の戦い方の方があってる」

 

 そう言ってチンクは気まずそうに顔を背ける。それに目もくれず、ティアナはギンガさんにF94区画に向かうように指示を出していた。

 上官相手にきびきびと……やっぱり大した人だな。これで凡人なんて自虐しすぎだろう。

 

 そこでキャロが填めている『ケリュケイオン』と、ルーテシアの『アスクレピオス』が光を放ち――

 

『A movement reaction perception, Six gajet drones(動体反応確認。六機のガジェットドローンです)』

 

『Check the same number of gajet from different directions(別方向からも同数のガジェットを確認)』

 

 それを聞いてオレはティアナに向かって――

 

「オレたちはここでガジェットを片づける。フォワードは先に行ってレリックを回収してきてくれ」

 

「――わかった。無理そうだったらすぐに退いて。あたしたちだってガジェットぐらい倒せるから」

 

 ティアナは一瞬迷いながらもすぐにそう言って先に向かう。オレたちは彼女たちの殿(しんがり)を守るようにこの場に留まり、迫りくるガジェットを待ち構えた。

 

 

 

 

 

 

「スターズ01、ライトニング01、ともに二グループ目を撃破――順調です」

 

「スターズ02とロングアーチ02(ツヴァイ曹長)も一グループ目撃破です」

 

 六課本部の指令室でアルトとルキノは戦況を報告する。優位に進んでいると聞いて、はやてはその隣に立つグリフィスと笑みを向け合うが……。

 

「――航空反応増大! これ、嘘でしょう……」

 

 モニターを見上げてアルトは思わず弱音を漏らす。そこには先ほどの三倍以上のガジェット反応が表示されていたからだ。それを見てグリフィスは「なんだこれは?」とつぶやいた。

 

「波形チェック、誤認じゃないの?」

 

「問題出ません。どのチェックも実機としか」

 

「なのはさんたちも目視で確認できるって」

 

 シャーリーの確認にルキノとアルトは無情な事実を告げる。ガジェットの数と思わぬ出来事に、アルトは口調を保つことさえできずにいた。

 

――まさか、あれは《IS》!? とうとう《ナンバーズ》が現れたんか。あの女の子はそれほど重要なものっちゅうこと?

 

 はやてはしばらくモニターを睨み、減る気配のないガジェットを見て席から立ち上がる。それに気付いてグリフィスは彼女に顔を向ける。

 はやても彼の方を向き……

 

「グリフィス君、ここをお願いできる。私は現場に行ってくる」

 

「はい、お任せください」

 

 頼もしくうなずく副官にはやては笑みを返し、指令室を出て行こうとする。だが――

 

『待ってください、部隊長』

 

 その声を聞いてはやては足を止め、再び前を振り向く。そこには部下にして幼少以来の幼なじみにあたる、オッドアイの青年の姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

「うふふ……」

 

 無数のドローンや“ダミー”と戦う魔導師たちを眺めて、女は馬鹿にするような笑いを漏らす。

 “Ⅳ”の刻印が入ったノーヴェと同じウェットスーツの上に毛皮付きの白いコートを羽織っており、茶色い髪を二つの三つ編みに分け、スカリエッティと同じ金色の瞳の上に丸い眼鏡をかけた女だ。

 

「クアットロのインヒューレントスキル――《幻惑の銀幕(シルバーカーテン)》。嘘と幻の幻影(イリュージョン)と一緒に舞ってもらいましょう」

 

 

 

 

 

「――はああ!」

『Accel Shooter』

 

 なのはとフェイトはガジェットに向けて砲撃魔法を撃ち放つ。それを喰らって多くのガジェットが爆散する中、あるガジェットはかすかに透けただけでそのまま二人のまわりを飛び回る。

 フェイトはそれを見て……。

 

「幻影と実機の構成編隊……」

 

 そう見抜いたところでガジェットは無数の誘導弾を放ってきて、なのはは球型のバリア(オーバルプロテクション)で自身とフェイトを覆い、弾を防いだ。

 相方(フェイト)と背中を向け合い、ガジェットを睨みながらなのはは言葉を零す。

 

「防衛ラインを割られるほどじゃないけど、ちょっとキリがないね」

 

 フェイトはうなずき。

 

「ここまで派手な引き付けをするってことは……」

 

「地下かヘリの方に主力が向かってるのかもしれないね」

 

 その推測に再びうなずきながらフェイトは言った。

 

「私が残ってここを押さえるから、なのははヴィータと一緒に」

 

「フェイトちゃん!?」

 

 なのはが叫んだところでガジェットが弾を放ってきて、フェイトは砲撃を放って弾とガジェットを撃ち落とす。そして再び相方に言った。

 

「私たちとヴィータでもリミット付きじゃまだまだ時間がかかる。限定解除すれば私一人でも広域殲滅でまとめて落とせる」

 

「でも地下はフォワードとフィルダーが向かっているし、健斗君とアインスさんがヘリを守っているはずだから――」

 

 なのははそう言うものの、フェイトは首を横に振る。

 

「なんだか嫌な予感がするんだ。せめてヘリの方に誰かが行かないと――」

 

 

『――なら、ガジェットの方は俺に任せてもらおう』

 

 その声を聞いた途端、フェイトは言葉を止め、なのはも目を見張りながらあたりを見回す。

 そして――

 

「――健斗君!!」

 

「健斗! アインスと一緒にヘリを守ってたはずじゃ――それにその姿は!?」

 

 向こうの上空にぽつんと浮かぶ健斗の姿を見て、なのはとフェイトは驚愕の声を上げる。彼の髪は銀色に染まり、彼女たちからは見えないが、右目も赤くなっていた。

 

『こちらナハト01、ガジェットは俺が片づける。この状態なら限定解除の必要もない』

 

「で、でも――」

 

 なのはが言いかけると、彼女とフェイトの傍にモニターが浮かぶ。その向こうからはやてが言った。

 

『二人とも、ここは健斗君の言うとおりにしてもらってええ。嫌な予感がするのは私もおんなじや。空は健斗君に任せて、なのはちゃんとフェイトちゃんはヘリの護衛、ヴィータとツヴァイは新人たちと合流してケースの確保を手伝って……ええか?』

 

「――了解!」

 

 部隊長の指示に、なのはとフェイト、ヴィータたちは声を揃えて返事を返す。

 そして各々の持ち場に飛んでいく彼女らをちらりと見てから、健斗は口を開いた。

 

「オペレーター陣、コントロールの手伝いを頼んでいいか。()()()じゃちょっときつい」

 

『はい、任せてください! アルト、ルキノ、いいわね』

 

 シャーリーに続いて彼女の部下二人が『はい!』と応え、その後ろに座りながらはやてもうなずきを送ってくる。

 そこで俺の手元に茶色い表紙の魔導書――《夜天の魔導書》が転移してきた。(はやて)の承認があれば『サブマスター』の俺にも使うことができる。俺はそれを掴み取り――

 

「いでよ、闇色の刃。愚かな羽虫を撃ち抜く矢として降り注げ……」

 

 詠唱を唱えると魔導書の頁がめくれ、自身の前に身の丈以上のベルカ式魔法陣と、その四隅に調整用の小さなミッドチルダ式魔法陣が浮かぶ。

 

『スターズ01と02、ライトニング01、安全位置まで退避。着弾地点の安全確認』

 

『ティルフィングとのシンクロ誤差、調整終了。いつでも大丈夫です』

 

 ルキノとシャーリーの報告が届いた瞬間――

 

「いくぞ――《メギンギョルズ》!!」

『Brennen!!』

 

 ティルフィングを構えた直後、魔法陣から黒色の光線が放たれる。ガジェットは四方に動いて避けるが、ガジェットたちの中心に到達した瞬間、光線は破裂したように膨れ上がりガジェットを吞み込んでいく。

 その後も半分ほどのガジェットらしきものが残るが、あれはすべて“ダミー”だ。一応警戒する程度でいい。

 

「まだまだ撃ち込むぞ、標準を頼む!」

 

『はい!』

 

 シャーリーの返事を待たず、魔力を集める。その直後、魔法陣から二発目の砲撃が放たれた。

 

 

 

 

 

 

「うふふふ」

 

 消失していくガジェットと砲撃を放つ黒コートの騎士を見て、クアットロはおかしそうに笑う。

 

お話(愚王伝)に載ってたとおり、バカな王様ね。《ゆりかご》に撃たれて死んじゃった時から何も学習してないのかしら~。まんまと誘き出されたとも知らずに……くふふふ」

 

 “愚王”に向けて笑い声を浴びせてから、クアットロは自身の前にモニターを開いた。その向こうに映っている茶髪の少女に向かってクアットロは告げる。

 

「ディエチちゃん。狙い通り、愚王様がのこのこ現れたわ。融合状態だから旧型融合騎も一緒のはず。今、あのヘリにはお医者様とパイロットしかいないはずよ~」

 

『了解。すぐに撃ち落とす?』

 

「ああ、それはまだ待って。街中に落とすなってウーノ姉様に言われてるし、ディエチちゃん一人じゃ“あれ”を回収できないかもしれないから。私が行くまでそこで待っててちょうだい」

 

 クアットロの指示にディエチは『了解』と返す。それを聞いてクアットロは通信を切り、また口から笑い声をあげた。

 

「たっぷりドクターの玩具で遊んでなさい。その間に私たちはレリックと“王様”をゲットしちゃうから~。うふふのふ~♪」

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