魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
「はあっ」
オレは刀を振るい、AMFごとガジェットを両断する。その横でもルーテシアが魔力波を放ってガジェットを貫き、チンクがガジェットにナイフを投げ、《IS》という技能で爆破させていく。
これでガジェットを全て片付けた――と思ったところで、奥から球体型のガジェットが現れた。
「Ⅲ型――列車で戦った奴」
あの時の事を思い出して、ルーテシアは顔をしかめながらガジェットに魔力波を撃ち込む。だが、Ⅲ型はAMFでルーテシアの魔力波を防ぎ、彼女に向かって二本のアームを伸ばす。
オレはすぐに両者の間に飛び込み、刀でアームを防いだ。
「ぐっ……」
アームを防ぎながらオレはガジェットを睨みつける。そこでガジェットのセンサーからピピッという音が鳴り、砲口が動き出す。それに気付いてオレはアームを弾こうと両手に力を込める。
するとそこへ――
「はああっ――!!」
突然破砕音が響き、そこから現れた青髪の女がブーツの底に取り付けられたローラーで、ガジェットに向かって突進する。
女に気付いた瞬間、ガジェットは彼女に矛先を変えて熱線を放つ。女は速度を右手を伸ばし――
「トライシールド!」
手の先に広げたベルカ式の防御陣で熱線を弾き返しながら、女はガジェットに迫る。そこで――
『Storm Tooth!』
彼女が填めている籠手型のデバイスが声を放つと、手首のスピナーが勢いよく回転し、左手のまわりに竜巻状の渦が発生する。それを纏わせながら彼女は左手を振りかぶり――
「はあああああっ!」
彼女が左手を叩きつけた瞬間、ガジェットにボディに大きな穴が開く。女はそのまま中心部に砲撃を打ち込み、ガジェットの中から動力と思われる“青色の宝石”を取り出しながら床に降りた。
オレとルーテシアはあっけにとられながらそれを眺める。そんな中、チンクが彼女に声をかけた。
「姉上!」
姉上――この人がチンクとスバルのお姉さんか。
彼女は再会した
「チンク、久しぶり。あなたたちが七課、いえフィルダーかしら?」
「はい、独立遊撃分隊所属のレツヤ・テンドウです。ギンガ・ナカジマ陸曹でよろしかったでしょうか?」
敬礼しながら問いかけるオレに、陸曹も敬礼を返しながら……
「ギンガでいいわ。スバルたち――フォワードはもう先に行った?」
「はい。レリックを回収しに、一足先に奥へ向かいました」
そう報告すると、ギンガさんは「そう」と言いながら水路の奥に目をやり、オレたちに顔を戻しながら言った。
「じゃあ私たちも行きましょう。ガジェットはもうほとんど片づけたはずだから」
ギンガさんの申し出にオレたちは首を縦に振る。そしてオレたちもギンガさんと一緒にレリックがある水路の奥へ向かった。
それから三分もしないうちに、オレたちとギンガさんは水路の奥に広がる『調整水槽』に辿り着いた。
数十本の柱に支えられているこの場所は、洪水などの水害を防ぐために設けられた水槽で、水路を流れている水は全てここに流れついているらしい。その片隅にフォワードたちが集まっていた。
彼女たちの先には女の子が運んでいたものと同じ、黒いケースが水面に浮かんでいた。
キャロは「ありましたー」と叫びながらケースに向かう。だが――
「待て!」
オレが叫ぶとキャロはびくりとしながら動きを止める。ちょうどそこで壁や柱を蹴る音が聞こえてきた。ティアナたちもその音に気付くが、怪しいものの姿は見えず怪訝な顔をしながらあたりを見回す。
だが、その音は確実にオレたち――いや、キャロとレリックに近づいている。
オレは懸命に耳と意識を集中させて――。
「はああっ!」
オレは宙へ跳び、虚空に向かって刀を振り下ろす。オレの刀はギィンという音を立てながら何かにぶつかった――いや、受け止められた。
その直後、オレの目の前の像がぶれ、剣のように鋭く伸びた突起で刀を受け止めている黒い怪物のようなものが現れた。
硬そうな殻を体中に纏い、背中に四枚の紫色の羽根を付け、羽根と同じ四つの赤い瞳を持ち、異形な体とは不似合いな紫色のマフラーを首元に巻きつけている、怪物としか言いようのない生物だ。
「何者だ?」
「……」
オレは問いかけるも、怪物は刀を受け止めたまま口を開かない。だが――
「まさかこの子は――ガリュー、ガリューなの!?」
ルーテシアが驚いた声で怪物に呼びかける。オレは鍔迫り合いを続けながら――
「ルーテシア、知ってるのか?」
するとルーテシアの方から「うん」と返事が返ってくる。ルーテシアが知ってる、しかも誰かが編んだマフラーを身に着けている――まさか!
「キャロ! 急いでレリックをティアナに――」
「残念でした~♪」
言いかけたところで女の声が響き、オレたちはそちらに顔を向ける。
そこには長い紫髪の女が立っていた。いつの間にかレリックが入った黒いケースを小脇に抱えている彼女を見て――
「返してください! それは――きゃあっ!」
ケースを取り戻そうとするキャロに、女は手のひらを向ける。
その直後、彼女の手のひらから白色の衝撃波が放たれた。それを喰らったキャロと彼女をかばおうとしたエリオが吹き飛ばされ、後ろの壁に激突した。
「キャロ! エリオ! てめえ――」
突然仲間を吹き飛ばされ、ガリューという怪物と得物をぶつけあったまま怒鳴り声を上げかけるが、彼女を見た瞬間言葉を飲みこみ、他のみんなも驚きに目を見張る。
そこに立っていたのは“ルーテシアそっくりの女”だったからだ。髪と瞳の色は全く同じ。というより、額に刻まれた文様と背丈以外はほとんど瓜二つと言っていい。
ホテルに現れた召喚士の特徴はあの後ざっと聞かされてたけど、ここまでルーテシアにそっくりだったなんて。――隊長め、また黙ってやがったな。
女はケースを抱えたまま、キャロたちに片手を立てて「ごめんねー」と謝る。その一方で、彼女に対しルーテシアは驚きと戸惑いのこもった声を発した。
「あなたは、もしかして……」
ルーテシアはそれ以上言えず口をパクパクさせる。そんな彼女を見つけて――
「あらあなた、私の小さい頃にそっくりね。ひょっとして親戚かしら?」
「――っ、私を覚えてない、の…………」
心底驚いたように聞き返す女に、ルーテシアは愕然とする。それを見て皆がルーテシアに同情の視線を注ぐ。そんな中、ティアナが銃を構え召喚士に向けた。
「悪いけど話は後よ。そのケースを床に置いてください! その中には危険なロストロギアが入っているんです。ケースを置いて両手を上げながら後ろに下がって。レリックの回収が終わったら、一緒に本部に来てもらいます。あなたにはこの前のホテル襲撃とレリック強奪未遂の容疑がかかっていますから」
真っ白な銃口を向けながら冷徹に言い放つティアナを前に、召喚士は臆した様子も見せずガリューに視線を向ける。
それを受けるや、ガリューはその場から跳びあがって蹴りを繰り出してきて、オレはすぐに後ろに跳んで蹴りを躱す。
「レツヤ――っ!」
ティアナは思わずオレたちの方に目を向ける。その隙に召喚士はティアナに迫り、彼女を殴りつけた。
思わぬ一撃を喰らってティアナは地面を滑りながら倒れこむ。そこへ――
「はあああっ!」
ガリューの後ろからギンガさんが飛び込んできて、青色の魔力光を帯びた籠手で殴りつける。ガリューは腕から伸びた突起で受け止めるが、威力を殺しきれず後ろに大きく下がる。
その隙に彼女はすぐさま上半身とともに銃を持ち上げ、召喚士に向けて引き金を引く。だが、召喚士は防御陣を張った腕を突き出して、ティアナの魔力弾を易々と弾き返した。
なら――。
「チンク、スティンガーを!」
「――っ!」
その一言で察してくれたのか、チンクは両手に魔法陣とは異なる“
チンクが放ったスティンガーは魔法陣にぶつかった瞬間爆発を起こし、彼女を守る魔法陣を粉々に撃ち砕く。間髪入れずチンクは二本目のスティンガーを投げるが、そこにガリューが飛び込び、殻で覆われた腕を突き出して主をかばう。爆発の衝撃で殻が剥がれ落ちるが、ガリューはほとんど無傷だった。
そこで――
「“ストップ”!」
「――っ!」
視界に収まった二人に向けて告げると、召喚士の女とガリューは揃って動きを止める。その合間にオレは銃を持ち上げ、召喚士に狙いを定めた。
「そこまでだ。これ以上抵抗するようならこいつを喰らうことになる。非殺傷設定だから死にはしないが――結構痛いぞ!」
召喚士の顔に銃口を向けて威圧するような言葉をぶつける。そんなオレを見ながら……
(一歩も動けない。こいつがドクターの言ってた“固有技能持ちの子”ね。それにナイフを投げてきた子が浮かべていた陣は……あの子が局に寝返った“裏切り者”か。寝返ったという表現は妥当じゃないかもしれないけど――)
《姐さん、遅れてごめん。すぐに助けるから、今から少しだけ目つぶってて――いい?》
召喚士はしばらくオレやチンクを見た後、こくりとうなずいて目をつむる。観念した……のか?
怪訝に思いながらオレは召喚士たちに迫る。そこに――
「スターレンゲホイル!」
オレたちの傍に赤紫色の炎が落ちた途端、視界が真っ白に染まり轟音まで響き渡って、オレたちは思わず目と耳をかばう。それに紛れてオレたちから遠ざかる二人の足音が響いた。
オレとティアナは召喚士たちに向かって発砲するものの、召喚士は魔法陣で、ガリューはもう片腕の突起で弾を防ぐ。そこで彼女たちの頭上から声が降ってきた。
「ったくもう。だからあたしが帰ってくるまで待っててって言ったのに。ガリューもそんな奴らに負けんなよー」
天井の隅に座り、足をぶらぶらさせながら声をかけてきたのは、四つに束ねた赤い髪の少女だった。下着のようなインナーに短い腰巻とブーツという露出の高い恰好で、背中には悪魔のような赤い羽根と尻尾がついている――小人ほどの大きさの女の子だ。上述の格好も小さすぎるせいで色気とは程遠い。
まさか、ツヴァイ曹長と同じ
訝しむオレたちをよそに、小人少女は召喚士たちのもとへ降りる。助けに来た相方に召喚士は笑みを作った。
「アギト、ありがと、助かったわ」
「へへ、どうってもんよ。ところで……」
アギトと呼ばれた小人はルーテシアに目を向ける。ルーテシアも硬い顔でアギトを睨み返す。
アギトはしばらくルーテシアと睨み合いを続けてから、気をあらためるように声を上げた。
「まっ、あたしが来たからにはもう大丈夫だ。《烈火の剣精》アギト様にかかれば、こんな奴ら敵じゃねえ! お前らまとめてかかってこいや!!」
どこからか上がった花火の前を飛び回りながら、アギトは威勢のいい叫び声を放った。