魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
召喚士と彼女の連れのアギト、ガリューと対峙しながら、オレたちは武器を構える。
アギトはちらりと召喚士に目を向け……
《どうする姐さん。融合して一気に片を付ける?》
《いえ、あの数なら分散して数人ずつ叩いていった方がいいわ。アギトはお得意の炎射魔法であの子たちを分散させてちょうだい。何人かに分かれたところを私とガリューが片づけていく》
視線を返す召喚士にアギトはこくりとうなずく。アイコンタクトか念話で相談してやがるな。アギトと融合するつもりか、あるいは……。
「――はああっ!」
アギトはおもむろに天井近くまで飛び、魔法陣もなしに表した炎を握りこみ、オレたちに向かって撃ち出してくる。
オレたちは即座に後ろに跳んで炎を避けるが、その拍子にオレたちは二つのグループに分かれた。こっちはオレとチンクとエリオとスバル、あっちはティアナとルーテシアとギンガさんとキャロだ。
そこでガリューがティアナたちに突っ込み、彼女たちを守るようにギンガさんがガリューと拳をぶつけあう。
彼女たちがぶつかった途端、互いの魔力の拮抗による爆発が起こり、両者は後ろに弾き飛ばされた。
ギンガさんに加勢しようか考えていたところで――
「――はあっ!」
前触れもなく煙の向こうから殴りかかってくる召喚士を見てすぐ、オレは刀で彼女の拳を受け止める。
召喚士はすぐに拳を引き、一瞬ほどの間も開けず脚を持ち上げて刀を蹴り上げる。
なら――
「ストッ――ぐおっ!」
技能で動きを止めようとしたところで顔面を殴りつけられた。それを見て――
「レツヤ――このっ!」
「はああっ!」
チンクは
――くそ、もう少し“召喚士”らしく戦えよ! 格闘ができる後方型なんて反則だろう!
胸中で文句を飛ばしながら彼女の攻撃を避け続ける。技能を使いたくても避けるのがやっとで呪文を唱える余裕がない。
弱点があるとすれば、召喚士が小脇に抱えたままのケース。あれを抱えているせいで奴は片手と足しか使えないでいる。肉弾戦にしても魔法戦にしても片腕が使えないのは痛いだろう。
あれの中身を考えたら危険だが、うまくいけば……。
「――はあっ!」
召喚士はオレに手のひらを向けて衝撃波を放ってくる。オレは攻撃をかわしながら彼女に迫り、柄に手をかける。その一方で、召喚士も瞬時に拳を握り、腰だめに拳を構えていた。
「はああっ!」
「天月・霞!」
拳と刀がぶつかり、けたたましい金属音を発しながら互いに弾き合う。
その衝撃に刀を取り落としそうになりながら、オレはさらに足を踏み出し彼女の側面まで迫った。それを見て召喚士は目を見張り――
「まさか――」
オレの狙いに気付き、召喚士はすぐに腕を引き戻す。
それは焦りから来た“ミス”だった。後ろに下がるか、もしくは蹴りを繰り出してオレを遠ざけるべきだった。
その“ミス”にオレは内心ほくそえみながら愛刀を握り――。
「行くぞ、落葉!」
『応!』
「――《天月・二連》!」
「きゃあっ――!」
二激目が勢いよく
「ヤロウ、もうみんなまとめてこいつで――」
アギトは両手に炎を纏いながらオレたちに狙いを定める。だが――
「やめなさいアギト! あれに炎なんかぶつけたりしたら、ここにいるみんな木っ端微塵よ!!」
召喚士が放った一言にオレたちはびくりとし、アギトも動きを止め渋々という風に両手から炎を消す。その直後、彼女は何かに気付いたように上を見上げ――。
「姐さん、何か近づいてきてる! でけえ魔力反応だ!」
「――なんですって?」
アギトの報告に召喚士は上を見上げ、オレたちも彼女たちに注意しつつ頭上を探る。確かにかなりの魔力の持ち主が迫ってきている。敵か、それとも……。
「いくぞツヴァイ――うおりゃあああああ!」
荒っぽい叫びとともに天井が崩され、その上からヴィータさんとツヴァイさんが降ってきた。ツヴァイさんを見て召喚士と特にアギトは大きく目を見開く。
ツヴァイさんはそんな二人に魔法陣を纏った右手をかざし――
「捕らえよ、凍てつく足枷――《フリーレンフェッセルン》!」
彼女が唱えると同時に、召喚士とアギトの足元の水が巻きあげられ、瞬時に凍結する。
ただ一体取り残されたガリューのもとにも――
「どりゃああああっ!」
埃煙の向こうからヴィータさんが飛んできて、ガリューに巨大な槌を叩きつける。ガリューは腕でガードするが、抑えきれず後ろの柱を貫通し、壁の向こうまで吹き飛ばされた。
それを見てオレたちは唖然とする。
オレたちが苦労した敵を軽々と……技能なしじゃ到底かなわないな。
しかし、
そんなことを思ったり話したりしているオレたちをよそに、ルーテシアは何かに気付いたように召喚士たちを閉じ込めている氷に近づく。それに気付きチンクはすぐに叫んだ。
「おい、ルーテシア! うかつに近づくな。そこにはまだ――」
「いない……」
ルーテシアの一言にオレは「えっ?」と声を漏らす。それを聞いてヴィータさんははっとしたような顔でガリューが吹き飛んだ場所へ飛び、ツヴァイさんも手をかざして氷を消す。
そこに彼女らはおらず、床にぽっかり空けられた大穴だけが残っていた。ヴィータさんもガリューがいた場所をのぞき込んで大きな舌打ちを漏らす。
逃げられたと気付いた次の瞬間――。
「――な、なんだ?」
突然水路が揺れ、オレたちは辺りを見回す。そんな中、キャロとルーテシアは落ち着いた様子で口を開いた。
「地上から大型召喚の気配があります」
「たぶん、あの人たちのしわざ。ぐずぐずしてると生き埋めになるかも」
それを聞いてヴィータさんは――
「ひとまず脱出だ――スバル、ギンガ!」
「はい……ウイングロード!!」
スバルとギンガさんはうなずきながら五人分ぐらいの間隔をあけて地面に片膝をつき、床に拳を叩きつける。すると床に魔法陣が描かれ、天井に向かって青と藍色の道が伸びた。
「人数が多いから、でかいやつはちっこい奴を抱えながら行け。あたしも誰かひとり抱えて行ってやる。先頭はギンガとスバルに任せた!」
ヴィータさんの指示にギンガさんとスバルは「はい!」と答え、道を渡る準備をする。
だがヴィータさんの言う通り、人数が多すぎる。これじゃ全員渡り切る前に埋められちまうかも。あの召喚士たちも地上で手ぐすね引いて待ってるだろうし。
そう思った時だった――。
「待って」
ふいにルーテシアが声を発し、オレをはじめ皆が彼女を見る。
彼女は両手に填めているアスクレピオスを掲げながら言った。
「道を渡るより、私の召喚虫に乗った方が早いと思う。全員は無理だけど、何人かなら乗れるかも」
それを聞いた途端、オレたちは期待の目を彼女とアスクレピオスに注ぐ。その
その横で、ティアナはキャロに戦いの最中に落とした帽子を渡しながら“あること”を指示していた。
Ⓒ
砲撃魔法《グランギニョル》を打ち込む度、ガジェットは数を減らしていく。これで十隊は落としたから……。
『ガジェットⅡ型十編隊――いえ、あと八編隊まで減りました』
『消滅時のデータからの幻術パターンの解析、できはじめてます』
『観測隊への連絡では、複合識別作業は順調とのことです』
オペレーターからの届いてくる報告に内心舌を巻く。はやてが自慢するだけのことはあるな。他の部隊に比べて練度が高い。“あの人”にとっては苦々しいだろうが……。
『あと八隊や。健斗君、そのままお願い!』
「ああ、オペレーター陣、標準の手伝いと解析を頼む!」
◇
はやての指示とオペレーター陣の返事にうなずいて、健斗は残りのガジェットに砲撃を撃ち込む。それを地上本部の最上階で眺めている二人がいた。
「なんだ――いったい何事だ、これは?」
髭を蓄えた強面の士官――レジアス・ゲイズはモニターを眺めながら苛立たしげに尋ねる。彼の後ろから、眼鏡をかけた女性士官――オーリスが答えを返した。
「本局遺失物捜査部・機動六課の戦闘、そのリアルタイム映像です。交戦しているのは、かねてより報告のあるAMF能力保有の
「……ちっ、あの部隊絡みの話か」
機動六課の存在と数ヶ月前の報告会のことを思い出し、レジアスは不愉快そうに舌打ちを鳴らす。
数々の事件を解決した実績を持つハラオウン一家や聖王教会の代表として本局の幹部に名を連ねているカリム・グラシア、そして三提督の威光を借りて、地上の施設と人員を取り上げて設立された“海の部隊”。レジアスからすれば、そのような無法がまかり通るのが不思議でならなかった。
しかもあの部隊には、『J・D事件』の実行犯フェイト・テスタロッサと、無数の世界を滅ぼしてきた《闇の書》のプログラムたちが幹部として名を連ねている。あんな連中を一ヶ所に集めるなど、危険すぎるとしか言いようがない。
憤慨していたところで報告の続きが聞こえてきた。
「対処に当たっているのは六課の『独立遊撃分隊』の分隊長、御神健斗三等空佐」
その名前を聞いた途端、レジアスは目を剥きモニターを凝視する。オーリスが告げたとおり、そこに映っていた魔導師は、地上部隊の士官で今は独立分隊の分隊長を務めている御神健斗だった。
「御神――あの小僧まで出張ってきておるのか」
レジアスの問いに、彼に似た色合いの茶髪を揺らしながらオーリスは報告を続ける。
「彼らの役目は六課の支援と補助ですから。分隊の隊員たちも、六課隊員とともに地下にあるレリックの回収にあたっているとのことです」
「そうか……無事にすめばいいがな」
不安や危惧を抱きながらレジアスはため息を吐き出す。そんな上官にオーリスも同意の言葉を返した。
六課隊長陣とは違って御神健斗のことは低くない評価をしているし、それ以上に彼には返しきれないほどの恩がある。8年前、親友と彼が率いる部隊が危機にあった時、彼とあのデバイスが助太刀してくれたおかげで親友は命を取り留め、彼が率いていた部隊の被害も抑えることができた。
それに加え、管理外世界出身にもかかわらず地上勤務を希望し、こちらに来てくれたことにも好感が持てた。本局と切れたわけではないようだが、八神たちよりはまだこちら側に近い。
その彼に頼まれたのが、機動六課の内部に設立する『独立分隊』の承認と後見人の紹介だった。友人を救ってもらった恩に比べれば、それぐらいなんということはない。
それに上述の通り、六課は本局や教会の幹部が後ろ盾についていて、レジアスといえど理由もなしに六課の運営に口を出すことはできない。せめて地上側の人間を監視役に送り込みたいところだった。そんな中、地上の士官である御神健斗が提案した分隊の設立は、レジアスにとって“渡りに船”だったのだ。
そんな打算とせめてもの恩返しにと、レジアスは『機動七課』と呼ばれる独立部隊を認め、自ら後見人の一人となった。
しかし、懸念や問題がないわけではない。
御神健斗と六課の隊長たちは十年前に入局した同期で、特に部隊長八神はやてとは兄妹のように育ったと聞いている。今は一定の距離を取っているようだが、いまだに身内意識を持っている可能性は否定できない。
それに加えて彼自身にも問題がある。
御神は、八神はやてが保有している人型デバイスに懸想しており、いまだにあのデバイスの愛玩にうつつを抜かしているという。自分のような人間には想像するのもおぞましい行いだ。
(それに、これ以上六課に動かれるのもまずい。今“あの男”を捕まえられでもしたら……『公開意見陳述会』も迫っておるし、そろそろ潰しておくべきかもしれん。あの小僧なら小娘どもの弱みを知っているかもしれんな……)
そこまで考えてから、レジアスはオーリスの方を振り向いて言った。
「オーリス、近いうちお前に機動六課の査察に向かってもらう。一つでも問題点や失態を見つけたらすぐに報告するように。それと、事件が片付き次第御神三等空佐に連絡を入れろ。数日中に地上本部に出頭しろとな。これは地上部隊幹部としての命令だ。命令に背けば、分隊の後見の停止も考慮せざるを得ない。そう伝えておけ」
「はっ」
レジアスの考えを察して、オーリスは敬礼しながら返事を返す。彼女を背に、レジアスは顎に手を乗せてあれこれ思案しながら執務室へ戻って行った。