魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第22話 中将の狙いと思惑

 教会での会合から二日後。俺は午前半ばに七課隊舎を出て、首都の中央にそびえ立つ『地上本部』のビルまで来た。

 受付に所属と用向きを告げてからしばらくして、青い士官服を着た女性が姿を現す。

 茶髪を短く切り揃え、鋭い目の上に眼鏡をかけた、厳しそうな印象がする女性士官だ。

 

「御神三等空佐、お疲れ様です。機動六課隊舎よりご足労いただきありがとうございます」

 

「いえ、こちらこそお出迎えいただいてありがとうございます。オーリス・ゲイズ三等陸佐」

 

 敬礼しながら言葉をかけてくるオーリス三佐に、俺も敬礼と愛想笑いを返す。対してオーリスさんは無表情のまま敬礼を解きながら言った。

 

「硬くなさらなくても大丈夫ですよ。私と御神三佐は同じ階級ですから」

 

「いえ、それでもオーリスさんの方が目上ですから。オーリスさんが口調を崩してくれるなら俺も楽にできると思いますが」

 

「わかりました。ではお互い節度を保つという事で」

 

 オーリスさんはすげない返事を返しながら指で眼鏡を押し上げ……。

 

「三佐お一人だけですか? 副官もご一緒だと思っていましたが」

 

「副隊長は隊員たちの指揮と六課本隊や外部との折衝がありますから。無礼かと思いながら私一人だけでお伺いさせてもらいました」

 

 中将はあいつの事を嫌っているからな。

 心中で付け足した本音を見透かしたような顔で、オーリスさんは「そうですか」と返しながら奥の方に肩を向けた。

 

「ここからは私が案内させていただきます。御神三佐が着いたらすぐ連れてくるように中将から仰せつかっておりますので」

 

 それだけ言って、彼女はすたすたとエレベーターの方へ歩き始める。この様子じゃ挨拶と報告だけで終わりそうにないな、と思いながら俺も彼女の後に続いた。

 

 

 

 

「中将。機動六課から御神三等空佐がお見えになりました」

 

 オーリスさんがノックをしながら声をかけた直後にドアが真横に開き、部屋の奥から「入りたまえ」と野太い男の声が響いてくる。

 オーリスさんは「失礼します」と一礼しながら部屋を入り、俺も彼女に倣いながら執務室に入った。

 

 レジアス・ゲイズ中将の執務室は六課の部隊長室はおろか、提督時代のレティさんやリンディさんの執務室よりはるかに広い部屋だった。

 両隣には天井まで届くほど巨大な本棚があり、その中には無数の書物が入れられている。

 しかし、私物らしきものや見栄えをよくするための置物などの類はなく、本棚の他には執務机と面会用の一対のソファがあるのみだった。

 俺は奥に進み、机に腰掛けたままの中将に敬礼しながら口を開いた。

 

「機動六課・独立遊撃分隊分隊長、御神健斗三等空佐です。お呼びと聞いて伺わせていただきました」

 

「うむ、そこにかけたまえ」

 

 一言言って中将は手前のソファを顎で示す。言われたとおり出口側のソファに座ると、中将も席を立って対面のソファに腰を下ろし、その後ろにオーリスさんが立った。

 長方形の机を挟みながら二人と相対する形になり、背中に冷たい汗が流れる。

 そこへ――

 

「失礼します」

 

 ドアの開閉音と声が響いた瞬間、俺は反射的に立ち上がり、後ろを振り返る。

 そこにいたのは長い桃色髪の女性局員だった。彼女はカップを載せたトレーを両手に持ったまま、目をぱちくりさせながら俺を見返す。そして……

 

「あの……何か失礼を?」

 

「いえ、すみません。つい……」

 

 不安げに聞いてくる彼女に謝りながら、俺はソファに座り直す。

 彼女は気にしてないというように首を横に振り、俺たちの横に来てコーヒー入りのカップを置いてくれた。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 さっきの謝罪も兼ねて礼を言う俺に、彼女は微笑みを返しながら中将の前にカップを置き、中将も礼を言った。

 

「オーリス三佐は……」

 

「私は結構です。ここはいいからあなたは仕事に戻りなさい」

 

 オーリスさんに退出を命じられ、局員は一人分のカップを乗せたトレーを持ったまま彼女と中将、俺にまで一礼してから部屋を出て行く。

 ……彼女の気配、どっかで感じた覚えがあるような……。

 

「どうした、飲まんのかね?」

 

「いえ――いただきます!」

 

 怪訝そうな声で尋ねてくる中将に、思考を打ち消しながらカップに口を付ける。そんな俺を一瞥してから中将もカップを傾けた。

 重い雰囲気の中、それぞれカップを半分空にしたところで中将が口を開いた。

 

「すまんな、忙しいところ本部まで来てもらって」

 

「いえ、こちらの方からも中将にご報告したいことがありましたから。ちょうどいいところでした」

 

 もう少し整理する時間はほしかったが。という心中での補足に気付かず中将は「そうか」とうなずく。

 

「では、まず報告の方から聞かせてもらおうか。数日前はずいぶん活躍したと聞いておるからな」

 

 中将は皮肉げな笑みを浮かべながら尋ねる。俺は乾いた笑みを返してからカップを机に置き、数日前の件についておおよその事を報告をした。

 地下と空に現れたガジェット、それらを操っていた数人の戦闘機人《ナンバーズ》。そして……。

 

「レリックを狙う連中の中にいた“謎の召喚士”。彼女はやはり、メガーヌ・アルピーノとみて間違いなさそうです。メガーヌの一人娘、ルーテシア・アルピーノ三士も間違いないと言ってましたし、召喚士の方もルーテシアを見た時に動揺したような反応を示したそうです。ルーテシアやメガーヌ本人と関連がないと考える方が難しいかと」

 

「…………」

 

 メガーヌに関する報告を聞いて、中将は苦々しい顔で視線を落とす。

 だがそこへオーリスさんが口を挟んできた。

 

「ですがアルピーノ准尉は8年前、敵の拠点に突入した際に襲撃を受けて重傷を負い、その後敵に拉致されて生死不明となったはず。傷の深さや状況から考えて、彼女が生存している可能性があるとは思えませんが」

 

「その拠点は戦闘機人の製造プラントだった可能性が高い場所で、高度な技術を持つ違法研究者が関わっていたと思われます。メガーヌ――アルピーノ准尉も研究者から何らかの処置を受けて一命を取り留めた可能性があると私は考えています。それこそ戦闘機人かあるいは――」

 

「二人とも落ち着け! その召喚士がアルピーノだとまだ確定してはおらん」

 

 中将に一喝され、俺とオーリスさんは言葉を止める。その間を突くように中将は再び口を開いた。

 

「この前の事件についてはわかった。こちらからも君に話したいことがある」

 

「……何でしょう?」

 

 不承不承ながら尋ね返す俺に、中将は残りのコーヒーをぐいッと煽ってから言った。

 

「実はな……本部長や他の幹部陣と話し合った結果、やはり一度六課の運営に問題がないか確かめておく必要があるという事になってな。近日中に機動六課の査察を行うことになった。代表はオーリスが務める予定だ」

 

 中将の言葉を肯定するように、オーリスさんはこくりと首を縦に振る。俺は驚かず「そうですか」と返した。

 それは一昨日(おととい)はやてから聞いた事だ。俺が呼ばれたのもその査察が関係しているだろう。

 

「その前に御神三佐から六課の事を聞きたいと思ってな。どう思う? 君の目から見て機動六課は……」

 

 眼をギラリとさせながら尋ねる中将に対し、俺は眉根を寄せて考える。

 まったく問題ない……なんて言っても納得してくれないだろうな。実際いくつか問題はあるし。

 

「そうですね……前の会議で申しあげた通り、身内意識が高い傾向はいまだにあり、いくつか判断ミスや失敗をしかける場面もありました。ですが、危機的状況に繋がるような問題は回避しており、時間と経験を重ねていくごとにそうした失敗や問題も減ってきています。現時点で査察を行う必要はないと思いますが」

 

「……そうもいかん」

 

 中将は首を横に振り、厳かな声で否定する。思わず言葉を止める俺に中将は言った。

 

「確かに、六課も七課も大きな問題は犯しておらんようだし、レリックの確保など十分な成果もあげておる。……だが、地上も隊ごとに担当区域があってな。そこにレリックやガジェットの出現を理由にずかずかと割り込んでくる機動六課には、各隊から不満も上がっておるのだ。彼らを納得させるためにも、六課の運営や実情に問題がないか調べておく必要がある……わかるな?」

 

「……はい」

 

 俺は渋々首を縦に振る。

 確かに、いざ事件の発生を知り解決に出ようとしたところで、横から他の部隊が出てきて事件を片づけていってその後始末をさせられるだけというのは、現地の部隊にとって面白い話ではない。“海の部隊”に仕事と手柄を取られ、屈辱を覚えている隊員も多いだろう。

 しかし、彼らの中にガジェットやナンバーズに対処できる者がほとんどいないのも確かだ。

 そこから突こうか考えているところで、中将はおほんと咳ばらいをした。

 

「それで、本当に六課に問題はないのか? どの道、査察の際にオーリスたちが徹底的にあの部隊を調べ上げる。お前たち七課も含めてな。ここで正直に話しておいた方が身のためだぞ」

 

「――大丈夫です! 現在の六課や七課に不備や問題点はほとんどないはずです。多少改めなければならないところは出てくるかもしれませんが、組織の体制を大きく変える必要があるほどの問題は出てこないと思い――いえ、信じています!」

 

 言いながら、もう延期や中止を言える状況じゃなくなったなと観念した。ここでそれを言えば、やましい事があると言うに等しい。

 そんな俺の内心を知ってか知らずか、中将は「そうか」と鷹揚なうなずきを返す。

 そして彼はため息を吐き出し、三数えるほどの間を置いて言った。

 

「御神よ。儂はな、機動六課をこのまま捨て置くわけにはいかんと考えておる。地上で活動しておきながら本局に所属している部隊など、我々の存在を軽んじる存在に他ならん。君の分隊同様、六課も“陸”と“海”の合同で運用する部隊にするのが望ましい。

 具体的に言えば、“海側の部隊長”の傍に、同等に近い権限を持つ“陸側の副部隊長”を付け、それぞれの組織の意向を汲み取りながら動く部隊。それがもっとも理想的な形だと思うのだが……違うか?」

 

「それは――」

 

 俺は言葉を詰まらせる。確かにそれが現状でもっとも“陸”と“海”の軋轢を生まない体制だ。先の苦情も陸側の人間が調整や交渉に入る事で収めやすくなるだろう。

 しかし中将の言う“陸側の副部隊長”というのは……まさか。

 

「まさか、俺にその“副部隊長”……八神の目付け役をしろと?」

 

 そう訊ねると、中将はうむと言いそうな頷きを返す。

 

「階級的にはオーリスでもいいんだがな。オーリスもそろそろ儂から離れた場所で、自分の力量を試してほしいと思っておる。だが、今は《アインヘリアル》の建造の指揮にかかりきりで六課に手を煩わせている暇がなくてな。そこで彼女と同じ階級の君に、八神の補佐役を任せてみようと思ったのだ。君は元々、六課の副部隊長に就く予定だったのだろう。それを今実現させるだけの話だ。少々権限は高くするがな。その権限で八神たちを抑えつつ、我々と六課の橋渡しをしてほしいと考えておる」

 

 その前振りが六課の強制査察とはやての査問か。

 はやてを査問にかけてしまえば、彼女の権限は縮小せざるを得なくなり、本局や教会も横槍を入れにくくなる。そこへ俺を副部隊長に据えて、バックにいる中将(地上本部)が六課を動かす体制を作るというわけだ。

 

「保有制限は? 俺の現在のランクはAAAクラスです。現在の六課本隊にAAAを入れる空きはありませんが」

 

「そんなもの、六課の中から余分な者を元の部隊に戻せばいいだけだろう。有用な者は本部(こちら)に異動させてやってもいい。やりようによっては現在七課にいる者たちも六課や本部に移す事もできるぞ」

 

 確かにそれなら六課と七課は名実ともに一つの部隊になり、あいつらの希望も叶えてやれる。よそに移された面々も能力を考えれば冷遇はされないだろう。

 しかし、彼らも裏方を含めほとんどが“預言”に対処するために用意した人材だ。それを徒に他の部隊へ移すのはまずい。

 

「中将……お言葉ですが、話が飛躍しているように思えます。まだ六課に問題があると判明したわけではありません。それに体制を変えようとしてできた隙を、敵が狙ってくる可能性は十分あります。まず六課を査察して、中将が危惧されている問題点や不備がないか調べてからでも遅くはないと思いますが」

 

「……そうか」

 

 中将は納得したような返事を返しつつ、同時に失望の色を含んだため息を吐き出す。これは最悪決裂も覚悟した方がいいか?

 ならばせめてここで――。

 

「中将、私からもいくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか。AMFへの対処と『公開意見陳述会』の警備についてお聞きしたいことがいくつか」

 

 そう尋ねた瞬間、中将は不愉快そうに目を吊り上げる。額から冷たい汗を流しながら窺う俺に、中将は「言ってみろ」と告げた。

 

「AMFを使う無人兵器、ガジェットの危険性については四年前から報告し、二年前からそれに対処するための訓練と電磁武装の投入を申請していますが、中将と本部長は却下し続けてきています。その理由を今一度聞かせてもらえないでしょうか」

 

 そう訊くと中将はふんと鼻を鳴らし……

 

「確かにAMFやガジェットは厄介だ。それは認める。だが、君たちが求める訓練や武装を全隊員に施そうと思えば、馬鹿にならんほどの費用が掛かるし効果が出るかもわからん。それならAMFが通用しない武器を開発した方が確実だ」

 

「それが《アインヘリアル》……?」

 

 その言葉を口にする俺に中将はこくりとうなずく。

 

「そうだ。地上で用いられている武器の中では最強の威力と威容を誇る。これの前ではAMFもISも役に立たん」

 

 AMFの対応予算を渋っている理由はそれか。

 そう察しを付ける俺を前に、中将は鼻息荒く力説を続ける。

 

「本局の連中は『質量兵器』にあたると言って反対しているが、使われるエネルギーや砲弾は魔力によるもので、分類上は魔導砲の域を出ておらん。そもそもAMFが悪用されているというのに、魔力以外の力を認めないなどと言ってる場合か。質量兵器を投入すればガジェットなど問題なく鎮圧できておるわ!」

 

 そこは否定できないな。物理攻撃や強力な威力の砲撃ならAMFも役に立たないわけだし。なにより俺もレオーネさんに同じ疑問をぶつけたことがある。

 

「それに三佐や部隊長たちの故郷のような魔法が普及していない世界では、火器や核兵器と呼ばれる物理兵器が使われているそうですね。特に核兵器は現地世界を滅ぼす威力を持つと言われているようですが、核兵器が開発されてから数十年の間そのような危機に陥ったことはないみたいですね。むしろ抑止力として大国同士の戦争を防いでいる側面もあるとか。それを考えれば、質量兵器も危険なだけのものとは言えないのではないでしょうか」

 

 オーリスさんの指摘に反論できず俺は押し黙る。地球と関わりもないのに詳しいな。このやり取りを予想して調べたのか、もしくは質量兵器導入の一助にするために調べてきたのか。

 

「わかりました、教えていただきありがとうございます。ではせめて『公開意見陳述会』の警備の強化、それはどうでしょう? あちらには地上本部や本局の代表はもちろん、協力企業や団体、ミッド政府の要人も訪れてくる予定です。そこを敵が狙ってくる可能性は十分ありますし、警備を強化するに越したことはないと思いますが」

 

 AMF対策から陳述会に矛先を変えて強く訴える。だがそれにも中将は首を横に振った。

 

「ならん。陳述会の警備は例年通りで充分だ。これ以上人員を増やしすぎると、街の巡回など通常の任務に支障をきたす。敵も逆にそちらを狙う可能性があるのではないかね」

 

「それは――」

 

 一理ある。いや、通常なら俺もそちらの可能性も含めて考える。だが……

 

「まさか、君も例のシスターの“預言”を真に受けておるのではなかろうな? 地上本部や管理局システムが崩壊するとかいう、なんの根拠もない占いを――」

 

「お言葉ですが、グラシア少将の技能は各次元から集めてきた情報(データ)から未来を予測する能力で、信憑性は高いと保証されています。近年はベルカ語に詳しい協力者も得られて予測の精度も上がったみたいですし、占いだからと一蹴できるものではありません」

 

「むっ……」

 

 そこまで言うと、中将は腕を組み考えながらオーリスさんを振り返る。それに対して、オーリスさんはうなずきながら中将に言った。

 

「三佐の仰る事も一理あるかと。ここはグラシア少将の能力を利用して、地上本部の堅牢性と地上部隊の対処能力を内外に知らしめるべきではないでしょうか」

 

 オーリスさんにまでそう言われ、中将はしばらく考え込んでから……

 

「わかった。今一度警備体制を見直しておく。ただし、やはり大きな増員はできん。陳述会だからといって街の治安維持を怠るわけにはいかんからな。不服ならお前たちや六課も会の警備にあたれ」

 

「はい。それはすでに八神部隊長に具申しているところです。預言を抜きにしても陳述会が狙われたら大事になりますし、我々も警備に加えていただければ」

 

 意図せず中将から警備参加の話が出て、俺は身を乗り出す勢いで参加を申し出る。『警備の邪魔をするな』と蚊帳の外に置かれる可能性もあったからな。

 それにこれ以上中将の方針に異を唱えれば、査察が厳しくなったり後見を停止される恐れがある。ここらが落としどころかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 それから幾度か言葉を交わし、地上局員と同伴させたうえで健斗を見送った後、レジアスはソファにもたれかかる。

 そして二分ほど経ったところでオーリスの方を振り返り、言った。

 

「オーリス、査察の際は分隊も徹底的に調べろ。問題があれば御神も査問の対象に入れる」

 

「よろしいのですか? 六課の実権を奪わせるために、分隊についてはある程度目こぼしする予定でしたが。それに彼には“あの人”を助けていただいた恩が……」

 

 オーリスが訊ねると、レジアスは首を横に振りながら吐き捨てる。

 

「今日の言動を聞いて確信した。あの小僧は今も八神たちに通じておる。ゼストの件は感謝しているが、これ以上小僧たちの好き勝手にさせるわけにはいかん。スカリエッティは戦闘機人と人造魔導師の製造ノウハウを作らせた後で、儂らが捕まえる事になっておるのだからな」

 

 そう息巻いてレジアスはコーヒーをあおり、一言付け足した。

 

「それに、そろそろ“あの戦闘機人”も返してもらわねばと思っておったしな」

 

「……」

 

 それを聞いてオーリスは物憂げな表情を浮かべるが、迷いを振り切るように表情を引き締め、顔を上げながら言った。

 

「中将、クライスラー議員との会食の時間が迫っています。アインヘリアル建造に関する資金援助の話もありますので、そろそろ準備を」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

 中将の部屋を出た後、俺はコーヒーを淹れてくれた女性局員と一緒に出口へ向かう。

 以前までなら食事に誘われるところなんだが、それがないところを見るに相当機嫌を損ねてしまったらしい。

 もう少しうまい言い方があったのではないかと考えながら歩いているところで、懐からピピピと電子音が響いた。

 着信元はリインからだ。

 

「すみません。部隊から連絡が来たみたいで、ちょっと失礼します」

 

 そう言いながら俺は局員と距離を取り、デバイスに顔を近づける。そこからリインの声が響いた。

 

『隊長、リインフォースです。今大丈夫でしょうか?』

 

「ああ。ちょうど今、中将との会見が終わって帰るところだ。何か問題でも起こったか?」

 

『いえ、こちらの方は何も。ただ108隊……ギンガから六課に連絡がありまして。レリック密輸に関与している疑いがある容疑者が判明したそうです。用事が終わったらすぐに戻って六課部隊長室に来てほしいと、八神部隊長が……』

 

「なに、本当か?」

 

 俺の言葉にリインは「はい」と返す。それを聞いて……

 

「わかった。すぐそっちに戻るから部隊長にそう伝えてくれ」

 

 そう言って俺はデバイスを切り、局員にお礼と別れを告げ、すぐに出口へ向かう。

 

 

 

 その後ろで局員がニヤリと口を歪めている事にも気付かず。

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