魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
メイド、それは仕える者。
メイド、それは
メイド、それは主の生活全てをサポートするフォーマルな守護者。
そう、これはただ一人のご主人様のため、命を懸けて戦う少女たちの超・コンバットバトルストーリーなのである!
※一部嘘や誇張表現が含まれています。
「リイン、なぜさっきからこっちにデバイスを向けている?」
「主から潜入中の記録を撮るように言われてますから。私のことは気にしないで仕事を続けてください」
そう言ってリインはデバイスを向け、側面についてる撮影ボタンを何度も押す。
本当に捜査記録のためだろうな?
「まさか俺がメイドの格好をする羽目になるとは……はやての奴め」
上司への文句とともにため息を吐き出す。するとリインはデバイスを構えたまま笑みを漏らした。
「そう言うな。結構似合ってるぞ。こうして見るとアリエルに似ている気もするな」
「腹違いとはいえ姉弟だったからな。っていうか、お前もそろそろ仕事してくれ。雇われたばかりとはいえ長引きすぎると怪しまれる」
俺のメイド姿を撮り続ける副官に釘を刺しながら、本棚に積まれている本をチェックしていく。
だがやはり、この部屋に密輸の記録はなさそうだな。怪しいとしたらスマグリンの寝室か書斎だが、新人メイドにそんなところの掃除や整理を任せられるはずもない。となったら――
「アインズさん、ミヤビさん、シーツの取り込み手伝ってもらいたいんだけど、どっちか来てくれない!」
足音が近づいた瞬間素早く本を棚に戻し、メイドがドアを開けた時には棚を拭いていたように振る舞う。リインもモップを動かしながら、愛想笑いを浮かべてメイドの方に顔を向けた。
「私が行きます。実家で洗濯物の取り込みをしていましたから。ケンナさん、
リインの言葉に俺はうなずき、彼女はメイドとともに部屋から出て行く
そして扉が閉まると同時に、俺はすぐに本棚のチェックに戻った。
来週までに査察の準備もしないとならないし、
幸い“目くらまし要員”もいるしな……。
Ⓒ
「な、なあ、やっぱり私たちが着てる服のスカート、短すぎないか? 隊長たちが着ている服はもっと長いのに……」
「私はこっちの方が動きやすくていいと思うけど。レツヤはどっちの方がいい?」
「オレに聞くなよ、一応男なんだぞ。っていうかルーテシア、人前でスカートつまむな。はしたない」
とは言うものの、オレも足がすーすーして落ち着かねえ。不採用だったらこんな服さっさと脱ぎ捨てるつもりだったのに、あの場で全員即決採用だからな。嫌でも当分メイド服を着なきゃならないわけだ。
胸中で愚痴をこぼしながら、二人と一緒に広間の掃除を進めていく。
オレたちも一応潜入捜査中なんだが、余計な事はせず怪しまれないよう真面目に仕事していてくれと言われている。まあ捜査しようにも、こんなところに密輸の証拠なんて置いているわけがないが……。
「チンクさん、昼食が出来たから配膳の手伝いをしてくれませんか!」
「あっ、はい! 今行きます! 二人とも、後の掃除は任せた」
淡藤色の髪を束ねたドイスさんというメイドに呼ばれ、チンクは彼女の元へ向かう。ドイスさんはつい最近雇われたメイドみたいで、オレたち、特にチンクの世話を焼いてくれている。
彼女らを見送るルーテシアを見てると、「なに?」と言いながら彼女はこちらを振り向いた。
「いや、普通にあいつと接してるなと思って。チンクって一応メガーヌ、さんの……」
そう言うとルーテシアはわずかにむすっとするが、すぐに表情を戻して言った。
「隊長たちの話だと、チンクがあの人を傷つけたわけじゃないみたいだから。あの後ゼストからも、チンクはスカリエッティって人に命令されただけだから恨まないでやってくれって言われたし」
「ゼストって、お前を引き取った人の事か?」
オレの言葉にルーテシアはうなずき。
「うん。あの人がいた部隊の隊長で、部隊壊滅の責任を取って管理局を辞めて私を引き取ったんだって。今はミッド北部の警備会社で働いてる」
ルーテシアはいつもより感情の入った声で伝えてくる。それにオレは「そっか」とありきたりな相槌しか返せなかった。
そこへ――
「おい君たち!」
後ろからかかってきた男の声に、オレたちはびくりとしながらそちらを振り返る。
そこにはこの屋敷の主人にして調査対象である、フラウド・スマグリンとメイド長が立っていた。
掃除を中断したまま話しているところを見られ、オレたちは身を固めるが、スマグリンは機嫌よさげな笑みを浮かべながら言った。
「ちょうどこれから昼食を摂るところなんだが、君たちも一緒にどうだね?」
「えっ、オ――わたしたちがご主人様と一緒にですか?」
オレの問いにスマグリンは大きく首を縦に振る。確かめるようにメイド長に顔を向けると、彼女もうなずきながら言った。
「はい。当屋敷では、ご主人様に指名されたメイドはお食事をご一緒させていただく事が許されています。勤め始めたばかりのメイドが選ばれることも珍しい事ではありません」
と言いながらも、彼女からは羨ましそうな様子など微塵も感じられない。賄いなんかよりはずっと美味いんだろうけど、太った中年親父といっしょじゃあなぁ。正直言ってオレも遠慮したい。
しかし、こいつの元で働いている以上そういうわけにもいかない。それにこれはチャンスじゃないか。スマグリンとオレたちが食事している間に、誰かが書斎とかを調べることができるかもしれない。
「み、ヤビさんとリインさんは?」
そう聞くとスマグリンは満面の笑みを向け――
「もちろん彼女たちも一緒だ。もう呼びに行かせている」
「そ、そうですか……」
オレはぎこちない笑みを返しながら、舌を鳴らしたい衝動を抑える。やはり都合よく隊長たちだけ別というわけにはいかないか。
「そういうわけでしばらく仕事を忘れて、皆で楽しく食事といこうじゃないか!」
そう言うなり、スマグリンはわっはっはっと笑い声をあげながらオレの肩を掴み食堂に体を向ける。そこへルーテシアが……
《ねえレツヤ、もしかしてこの人……》
《ま、まさか……ただのスキンシップのつもりだろ。不慣れな新人と打ち解けようとして……》
そう答えつつも、オレも同じ予感を覚え背筋がぞくりと粟立った。
◆
その後の昼食でスマグリンとともに食事を摂りつつ、御神さんとリインさんはさりげなく彼に探りを入れるものの、やはりこの程度でボロを出してはくれず、その代わりに午後からまた新しいメイドが加わる事が伝えられ、彼女の指導を頼まれた直後に昼食はお開きとなった。
なお、悪い予感は当たるもので、オレはスマグリンの一番近くに座らされ、終始彼に話を振られる羽目になった。
そして午後。
「じゃあ
勝気な女性っぽい口調で指示する御神さんに、オレたちは「はい」と答える。
そこで御神さんは口を閉じ……
《今夜、スマグリンが入浴した時か就寝した頃を見計らって、俺かリインが奴の書斎に忍び込む。お前たちは――》
御神さんがオレたちへの指示を伝えようとしたところで――。
「すみません。やっと学校が終わったところで」
「いえ、大丈夫ですよ。学業優先と聞いていますから」
入り口から若い女の声とメイド長の声が届いてくる。この声、聞き覚えがあるんだが、まさか……。
「おや、ちょうどいいところで会ったね。やっぱり君たちももう働いていたのか」
入口からやって来た“彼女”を見て、俺とルーテシア、チンクは目を見開く。
なぜならその人は……。
「ふむ。初めての方もいるみたいだね。私はミカヤ・シェベル。今日の午後から働くことになってる新人メイドで、四半日遅れの後輩という事になります。どうかよろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる黒髪の女性を見て、オレとルーテシアとチンクは唖然とし、彼女と初対面の御神さんとリインさんは戸惑いながらも返事を返す。
新しく来た新人メイドは、学生服姿でやって来た
自己紹介から30分後、スマグリンとの面接を終えたミカ姉はエプロンをつけた着物姿――俗に言う“和風メイド”の格好で降りてきた。
「なんでミカ姉がここに来てるんだよ? 偶然にしちゃ出来すぎだろう」
「いや、ルーちゃんからしばらくの間ここで働くと聞いてね。レツヤのメイド姿なんて面白いもの見逃すわけ――じゃなかった、かわいい“妹分”が心配で来たんだ。ありがとうルーちゃん。今度ソフトクリームでも御馳走するよ」
その言葉にルーテシアは「うん」とうなずく。そういやこの前ミカ姉、ルーテシアやチンクと連絡先を交換してたな。
記憶を辿るオレの前でミカ姉は続けた。
「本当はもう一人誘っていたんだが、『あたしがメイドなんかするわけねえだろう』って振られちゃってね。君たちにも紹介したかったんだが残念だ」
「ああ、そういや最近友達ができたって言ってたけど、その人のこと?」
オレの問いにミカ姉は「ああ」とうなずく。ミカ姉の友人にしてはガサツな口調だからもしやと思ったけど、やっぱりその人の事を言ってるらしい。
「まあそういうわけで、せめてレツミちゃんの晴れ姿を一枚――」
そう言ってミカ姉は懐から取り出した端末をオレに向けて、何回かシャッターを押す。
オレが二回ほど「やめろよ」と言ったところで、ミカ姉は撮影をやめて端末を操作しながら懐にしまった。まさか、その人にオレの
「じゃあ自己紹介と説明も終わったし、そろそろ初仕事といきましょうか。……ケンナさん、よければしばらくの間ケンナさんたちとご一緒させてもらってもいいですか? “あなたたちのお仕事”の件で私にアイデアがあるんですが」
ミカ姉の言葉に御神さんは目を見張りながらも彼女に頷き……
「わかった。仕事の合間に意見を聞かせてもらおう――《念話か思念通話は使えるか?》」
妙なところで言葉を区切る御神さんにミカ姉は頷きを返し、じっと見返す。彼の脳裏に一言送っているようだ。その直後、御神さんはまた頷きを返して、リインさんとミカ姉を連れて階段を登っていった。
それを見送りながら……。
「じゃ、じゃあオレたちも仕事を済ませちまおう。もしかしたら意外なところから手がかりが出てくるかもしれないし」
そう言うとルーテシアとチンクもうなずきを返し、オレたちもメイド仕事に戻った。
◇
その頃、スカリエッティたちが拠点にしている洞窟内の休憩室で。
「――んっ?」
懐から通知音が響き、ノーヴェは通信端末を取り出す。それを見て隣からメガーヌが、空中からアギトが顔を覗かせてきた。
「あら、誰かから連絡? もしかして、この前できた友達から?」
ナンバーズは体内に独自の通信手段があるため、端末などを必要としない。
そのためメガーヌはそう聞いたのだが……。
「友達なんかじゃねえって。いちいち絡んでくるから首都の様子を知るために利用してるだけだっての」
そう言い捨ててながらもノーヴェはまんざらでもなさそうに頬を緩め、たどたどしい手つきで端末をいじる。それを見てメガーヌは『素直じゃない子』と思いつつ、『だから信用できるんだけど』と付け足した。
スカリエッティに忠実なウーノや腹に一物抱えたクアットロはもちろん、他のナンバーズも内心が読みずらく、あまり踏み込んだ話はできない。
そんな中で、ノーヴェは考えてることが顔や仕草にはっきりと現れる子で、気を置かず話せる数少ない相手だ。むろん完全に信用してはいないが。だが、うまくいけば彼女からスカリエッティたちの動向を探る事もできるかもしれない。
そんな考えと単純にイジリがいがあるから、ノーヴェと親しくしているのだが……。
「――って、なんだこいつ?」
「どうしたの?」
ノーヴェの素っ頓狂な声に反応して、メガーヌとアギトは彼女が見ている端末の画面を見る。
そして、そこに映っている茶髪のメイドを見て、メガーヌは思わずぶっと噴き出した。その拍子にノーヴェの背中に唾がかかり――
「うわっ、きたねえな! なんだよいきなり?」
「ご、ごめんなさい、つい……ぷぷっ」
謝りながら口を押さえつつもメガーヌはまだ笑いを漏らし続ける。その上からアギトは尋ねた。
「姐さん、このメイド、知り合い?」
その問いに『気付いてないの』と内心呆れながらも、メガーヌは首を横に振る。
「いいえ、まったく知らないわ。なにこの写真?」
「さあ、今あいつが働いてる職場の同僚だって。事が済んだら詳しく紹介するかもってさ」
そう吐き捨てながらノーヴェは端末を閉じる。アギトももう興味をなくしたように端末から離れた。
そんな中、メガーヌは――
――さっきのメイドって、もしかしなくても“あの子”よね? 何かの事情で変装してるのかしら? それとも女装の趣味が……。もしかしたら将来は実質二人の娘持ちになんてことも……でも女装姿のあの子も結構かわいいし、それもありと思っちゃう! 母親として現在の敵として私はどうすれば――ぐぬぬっ!
「おい、メガーヌさんどうかしたのか? うんうん唸ったり悶えたりしてるけど」
「わかんねえ。時々あたしにも理解できない言動や行動とることあるんだあの人」
頭を抱えたり歯ぎしりするメガーヌを前にして、アギトとノーヴェはまったく同じ気持ちと疑問を抱いていた。