魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第26話 新型戦闘機人(タイプセカンド)

 魔法陣から現れた長い赤髪のメイドを見て、健斗とリイン、レツヤたちフィルダーとミカヤは身を構える。

 メイドの右腕は長剣、左腕が銃の形をしており、体の中からは多量の魔力反応が漏れ出ている。明らかに普通のメイド――人間ではない。

 彼女を見てオレたちはすぐにバリアジャケットを身に纏う。

 

 

 一方、ドイスは目をすがめながら……。

 

――あれがスマグリンが造らせていた新型戦闘機人『タイプセカンド』か。“人型戦闘機械”の原点に戻った“全機械製の人型ロボット”。確かに体を全部機械で作ってしまえば、拒絶反応の心配や人間のように数十時間稼働させ続ける必要もない。そのうえ反動や副作用を気にせずレリックのような強力なロストロギアと融合させることもできる……それらの点では『タイプゼロ』や“私たち”より進んでいるわね。まぁ、その分機械ならではの弱点も肥大化しているんだけど――。

 

「いくぞドイス。ここにいたら巻き込まれてしまう。私と一緒に安全なところまで逃げよう」

 

 スマグリンはそう言ってドイスの腕を乱暴に引っ張る。その不快感と思索の邪魔をされた事に、演技抜きで彼女が顔をしかめたところで――

 

「させるか――!」

 

 

 

 

 

 ドリスさんが連れ去られそうになってるのを見て、オレは落葉()を手にしながらスマグリンたちの元へ跳びこむ。

 だが――

 

『ご主人様に危害を加える事は許しません』

 

 タイプセカンドと呼ばれた赤髪メイドはそう言いながらオレの眼前に現れ、互いに得物をぶつけあう形になる。

 そしてセカンドは光のない赤い眼でオレを捉え、左腕と一体化している銃を向けた。

 

「発射――」

 

 その直後、彼女の左手の先(銃口)が白く光る。それを見た瞬間、オレはすぐに真横へ飛ぶ。

 その直後、銃口から白い光線が撃ち出され、背後にあった壁を貫く。その光景と後ろからの轟音にひやりとした感触を覚えた。

 そこへ――

 

「はははっ! 好きなだけそいつと戦ってるんだな。ではさらばだ!」

 

 オレたちがすくんでいる隙にスマグリンはドリスさんを引っ張って外へ逃げていく。オレは「待て!」と声をぶつけるが、その前にセカンドが立ちはだかった。

 オレは彼女に刀を向けたまま――

 

「隊長、こいつはオレたちが食い止めます! 隊長たちはスマグリンを追ってください!」

 

「ああ!」

 

 御神さんとリインさんはうなずいて階段を飛び降り、スマグリンを追おうとする。だが――

 

『させません――』

「――!」

 

 セカンドは目にもとまらぬ速さで御神さんの前に現れ、彼と一太刀結ぶ。

 それを見て――

 

「健斗――はあっ!」

 

 リインさんは床に着地するとともにセカンドの側面へ跳び、両手に出現させた赤いナイフを投げつける。

 それに気付いた途端、セカンドは御神さんの刀を弾きあげて後ろへ下がる。しかし、リインさんが放ったナイフは針路を曲げてセカンドに向かう。だが――

 

『AMFシールド展開』

 

 セカンドは左手の前にAMFによる盾を展開し、ナイフを受け止める。魔力結合を解かれたナイフは爆発することなく、そのまま盾に弾き落とされる。

 さらにセカンドは左腕を掲げたまま、その先についてる銃口をルーテシアに向けた。

 それを見てルーテシアもすぐにバリアを張るが、セカンドの銃に比べて心もとない。

 そこへ――

 

「IS発動――《ランブルデトネイター》!」

 

 チンクが横から通常の魔法陣とは異なる(プレート)を纏ったナイフを投げる。それはAMFをあっさりくぐって、セカンドの左腕に刺さる。

 その直後、ナイフは爆発し、セカンドの左腕を吹き飛ばした。

 

「…………」

 

 セカンドは爆風の中から大きく後ろに跳んで距離を取る。彼女は無感情な瞳で先を失った腕を眺め……。

 

『左腕部、損傷――インヒューレントスキル(IS)による修復と強化を実行』

 

「なに――!?」

 

 思わぬ言葉にオレは驚愕の声を上げる。そんなオレたちの前でセカンドは左腕を掲げた。

 すると左腕の先に、チンクやナンバーズが使っているものと同じ(プレート)が現れ、室内にある貴金属や機械が吸い込んでいき、ガチャガチャと形を変えながら、より太さを増した砲銃へと形を変えた。

 

『……修復及び強化完了。ご主人様にあだなす敵を排除します』

 

 呟きながら、セカンドはさっきよりいかつくなった左腕をチンクに向ける。それを見てチンクは身を固めるが、そこへすかさず御神さんが飛び掛かった。

 

「はあっ!」

「――!」

 

 セカンドは素早く右腕()を振り上げ、斬撃を受け止める。そしてすばやく左腕を動かし、腕の先から伸びる砲口を御神さんに向けた。

 

「ちっ――」

 

 舌打ちしながら避ける御神さんに向けて、セカンドは先ほどよりぶっとい砲撃を撃ち放つ。その砲撃は御神さんがいた場所を飲み込むが、その直後、オレたちの横に御神さんが滑り込んでくる。

 固有技能を使って逃れたようだな。

 

 そう察した直後、セカンドの姿が消え、一瞬でチンクの眼前に現れた。

 

「――っ!」

「――ぐあっ!」

 

 掛け声なく振り下ろされる長剣をチンクはナイフで受け止めようとする。しかし、衝撃を殺しきれずチンクは真後ろへ吹き飛ばされた。

 

「この――」

 

 オレは激情のままにセカンドに向けて銃を撃つ。だが、セカンドの前にAMFの盾が現れ、オレの銃撃を防いだ。オレと入れ替わるようにミカ姉が刀を振りかぶり――

 

「晴嵐、斬り伏せろっ!」

『了!』

 

 魔力に頼らない斬撃はAMFを霞でも切るかのようにすり抜け、総師範(爺さん)が鍛え上げた業物は機械でできた腕をばっさりと斬り落とす。

 だが、セカンドは斬り落とされた右腕をあっさり手放しながら後ろへ退き――

 

『修復――』

 

 半ばまで斬れた右腕を伸ばした瞬間、腕の先にある金属類が再び吸い込まれていき、より物々しい大剣に変わる。

 キリがない。やはり本体を破壊するしかないかと舌打ちしたところで――

 

「構うな! 好きなだけ修復させてやれ! このままどんどん腕を破壊していくんだ!」

 

 ミカ姉の一言にオレたちは思わず彼女に視線をやる。より強化した武装メイド(セカンド)を前に、むしろミカ姉は勝機を見つけたと言わんばかりの笑みを奴に向ける。

 続いて御神さんも言った。

 

「シェベルの言うとおりだ。奴の腕を優先的に破壊しろ! 本体が後回しでいい!」

 

 その言葉にオレたちはようやく二人の意図に気付き、己が得物を向けながらセカンドと対峙する。

 

――成金趣味な持ち主の趣向で、屋敷の中はそこら中に金属類があふれている。だが、見栄えを意識したためか機械類は少ない。貴金属だけでごつい武器を造るのも限界があるだろうし、このまま攻撃していけば材料が底をついて再生できなくなるかも。

 

「――はあっ!」

 

 そう察したオレは刀を振りかぶりながらセカンドに迫る。セカンドは魔力弾を撃ってくるが、それをかわしながら奴に肉薄し――

 

「天瞳流、天月・絶!」

 

 オレの一刀で砲銃を備えた左腕が斬り落とされる。続けて右腕か本体を斬ろうとするが、セカンドはオレに向けて剣を振り下ろし、それを避けた隙を狙って下がりつつ部屋の貴金属を集めて左腕を再生する。そこにルーテシアが衝撃波を放ってAMFを破り、チンクの放ったスティンガーがセカンドの右腕を破壊し、セカンドは彼女らに砲撃を放ちつつ左腕を再生する。

 

 それを何度も繰り返しているうちにその時(・・・)は来た。

 

『修復――』

 

 セカンドは破壊された右腕を再生しようと部屋の隅に向かって腕を伸ばし、わずかに残った金属類が集まってくる。

 だが、腕は肘から少ししか形成されず、内部を晒したまま修復を止める。修復に必要な材料が底を尽きたのだ。

 セカンドは残る左腕を掲げて砲撃を撃とうとするも、その横に御神さんが現れ、彼女の左腕を斬り落とした。

 

 それを突いたようにオレたちは得物を失った彼女を取り囲む。無表情で先のない両手を眺めるセカンドに御神さんが言った。

 

「もう修復に必要な材料はない。おとなしく降参しろ。そうしてくれれば専門の機関で然るべき処置を施した後、もっと世の中の役に立てる仕事を紹介してやる」

 

 彼女にチンクたちのような人格がある可能性を踏まえて御神さんは説得する。

 しかし、セカンドは感情のない目で失った両腕とオレたちを見回してから……。

 

『両腕損傷、修復不可能……緊急プログラムに則り、“最終武装”を起動します』

 

 ”最終武装”? その名とセカンドから放たれる気配に悪寒を覚えた瞬間――

 

「みんな――そいつから離れろ!!」

 

 御神さんの怒声に、彼を含むオレたちは一斉に後ろに跳び、セカンドから距離を取る。

 その直後、ズンという耳障りな音ともにセカンドの両腕から“赤い光刃”が生えてきた。

 赤刃から漏れる魔力光、圧倒的な威圧感。これはあのロストロギアとまったく同じ――。

 

『最終武装『レリックブレード』起動……ご主人様にあだなそうとする敵の排除を再開します』

 

 そう言うや、セカンドは突然その場から消え、一瞬でオレの前に現れ、赤刃を振り下ろす。

 オレは反射的に剣を構え、セカンドと刃をぶつける。その力は前までの剣よりはるかに重く、少し油断したら刀ごと斬られちまいそうだ。

 

「はあああっ!」

 

 オレが苦戦しているのを見かねて、横からミカ姉が刀をぶつけてくる。その拍子にセカンドの刃が弾かれ、オレとミカ姉は彼女から距離を取る。

 そこにチンクとルーテシアが短剣を投げつけるが、セカンドは刃で、短剣を斬り払う。刃が触れた瞬間短剣は爆発するが、そんな衝撃どうともないようだ。

 セカンドは彼女たちに刃を向ける。その刃の先に赤い光が集まっているを見て――

 

「チンク、ルーテシア、二人とも離れろ! 撃ってくるぞ!!」

 

 そう叫んだ直後、刃の先から赤い光線が撃ち出され、チンクはルーテシアを抱きながら床を蹴るように真横へ跳ぶ。その直後、二人がいた場所を光線が貫き、後ろにあった部屋が崩れていく音がした。

 刃のくせにあんなものまで撃てるのかよ。あっちも前より段違いの威力になってるし。

 

「お前たち、そこから離れろ――デアボリック・エミッション!」

 

 リインさんが叫びながら手を掲げた直後、彼女の手の先から黒い球体が現れ、セカンドを飲み込む。

 リインさんは球体を抑えるように手を伸ばしながらその場に立ち続ける。

 だが――

 

『AMF出力上昇、同時に『レリックバリア』展開……』

 

 セカンドはAMFに加え、レリックによる赤いバリアで全身を覆いながら球体の中にたたずむ。

 そして刃状の両腕をリインさんの方に伸ばした。御神さんはそれを見て――

 

「まずい――フライング・ムーヴ!」

 

 彼が叫んだ直後、御神さんとリインさんはその場から消え、セカンドはそれに気付く間もなく赤い砲撃を撃ち出す。

 ちょうどそこで空中にリインさんと両手で彼女を抱えた御神さんが現れた。

 セカンドはAMFとレリックのバリアを纏ったまま、狩れそうな獲物を見定めるようにオレたちを眺めまわす。それを見てオレたちは慄きを覚えた。

 

――どうすればいい? リインさんの攻撃をしのぐほどのバリアを張り、近遠両方に対応した強力な武器を持ってるあのメイドロボを倒すには?

 

「レツヤ」

 

 そこでいつのまにか隣に来ていたチンクが小声で呼んできた。オレはセカンドに注意を向けたまま彼女に横目を向けて続きを促す。

 

「手を貸してくれないか。私とお前なら奴を破れるかもしれん」

 

「どういうことだ?」

 

 セカンドを向いたままオレは尋ねる。チンクも奴に注意を向けたまま言った。

 

「お前ももう知ってると思うが、私の武器は魔力をほとんど使っていないからAMFの影響をほとんど受けないし、ISも問題なく発動できる。だが、奴を倒すには少々火力不足だ。レリックを内蔵したセカンド自身を爆破するわけにもいかん。私のスティンガーでバリアを破壊する。その隙にお前がとどめを入れてくれ」

 

「わかった……けどいいのか?」

 

 あれは作りこそ違うが一応“戦闘機人”……チンクたちの妹といえるかもしれない存在だ。とどめはオレがやるにしても、奴を“破壊”するきっかけを作るなんて……。

 そんな迷いを見透かしたようにチンクは言った。

 

「案ずるな。局に力を貸すと決めた時から覚悟はしている。それに、あいつ(セカンド)自身もそれを望んでいるような気がするんだ。これ以上あんな男(スマグリン)に道具として使われるくらいなら……」

 

「チンク……」

 

「だったら私もやる。私たち(・・・)でも気をそらすことぐらいできると思うから」

 

 その声にオレとチンクは彼女の方を見る。見ればルーテシアとそのまわりを飛ぶ無数の羽虫(インゼクト)の姿があった。

 オレは覚悟を決めて隊長たちとミカ姉に顔を向け――

 

《オレたちが先陣を切ります。隊長と副隊長、ミカ姉は万が一のバックアップをお願いします》

 

 そう頼みこむと御神さんは厳しい目を向けながらもこくりとうなずき、リインさんとミカ姉もうなずきを返した。

 

 オレたちがやる――オレたち機動七課があの哀れな戦闘機人、『タイプセカンド』を止めてやる!

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