魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第27話 タイプセカンドとの決着、そして……

 AMFとレリックによる二重のバリアを張りながら、セカンドはオレたちを見回す。

 そんな彼女に向けて、ルーテシアとインゼクトが衝撃波を放った。

 

「――はあっ!」

「――!」

 

 セカンドは腕から生えた赤刃(レリックブレード)で衝撃波を弾き、彼女たちを見る。

 そこへ――

 

「はああっ!」

 

 注意がそれた瞬間、チンクは数本のスティンガーを指の間に挟みながらセカンドに向かって突貫する。

 

「IS発動――ランブルデトネイター!」

 

 チンクがつぶやいた瞬間、スティンガーの柄に円状の《(プレート)》が現れる。チンクはそれをセカンドに向けて投げつけた。

 

 その瞬間、スティンガーは爆発し、レリックのバリアに亀裂(ヒビ)が入る。そこでセカンドは刃を振り上げ、チンクに向かって真っすぐ振り下ろしてきた。

 チンクはすぐに後ろに飛んでかわすが、セカンドはもう片方の刃を向け魔力を収束させ、赤い砲撃を撃ち放つ。

 

「ぐあっ!」

「チンク!」

 

「かまうな――行け!」

 

 わき腹に砲撃を食らいながらも、チンクは声を張り上げる。

 逡巡を覚えながらも、彼女の声に押されオレはセカンドに向かって駆けだした。

 

――天瞳流・天月!

 

 天瞳流の走法で数メートル先にいる彼女の眼前に一秒で迫り、刀を叩きつけてヒビが入ったバリアを撃ち砕く。

 するとセカンドはオレに向かって刃を振り下ろしてきた。オレは刀を頭上に持ち上げてそれを受け止める。

 ――やっぱり重い。両手で刀を持っているオレに対し、セカンドは片手だけで容易く弾き返してしまいそうなほどの力をぶつけてくる。

 懸命に刃を押し返そうと力を込めているオレに対して、セカンドはもう片方の刃をむける。その先に赤い光を集めて。

 それを止めるため技能を使おうと口を開いた、その瞬間――

 

「はあああっ!」

 

 側面から放たれた黒い球弾がセカンドの腕に命中し、魔力光も霧散する。その向こうには両手を突き出しながら荒い息をついているリインさんがいた。

 彼女に一瞬目をやりながら、オレは刀を持つ手に力を込める。チンクたちや副隊長(リインさん)がくれたチャンスを無駄にしないために。

 

「おおおおおおおっ!」

 

 雄たけびを上げながら、渾身まで力を振り絞った瞬間、俺の刀がセカンドの赤刃を斬り裂いた。そして、オレはそのままセカンドの体に刀を――

 

「ぐあっ!」

 

 入れようとした瞬間、みぞおちに鈍い衝撃が走る。セカンドが脚を持ち上げオレの腹を蹴り上げたのだ。

 セカンドは無様にのけぞるオレを無感動な目で見下ろしながらもう片方の刃を振り上げる。間近に迫った“死”の予感に、目を閉じたい衝動に駆られた。

 

「はああああっ!」

 

 だが、そこに刀を持った和装束の女が飛び込んできて、セカンドの刃を受け止めた。

 

「ミカ姉!」

 

「ぼうっとするな! 立て! それでも私の兄弟子(・・・)か!!」

 

 ”妹弟子”の叱咤を受けてオレは我と戦意と取り戻し、刀を握りしめながら体勢を取り戻す。

 

 オレは3歳になってすぐ、爺さんから“身を守るすべ”の一つとして天瞳流の剣技を教わるようになった。ミカヤがうちの道場に来たのはそれから二年後、オレが5歳、ミカヤが6歳の頃だ。

 だからオレとミカヤは正確には“兄妹弟子”という事になる。年はミカヤの方が上だし、実力もすぐ彼女に追いこされたから、向こうからの提案で建前上は姉弟弟子という事にしてるけど。

 ――でも、オレにだって“兄弟子”としての意地ぐらいある!

 

 気を奮い起こした瞬間、俺は刀を振り上げ、彼女の頭に叩きつける。その衝撃でセカンドは二歩後ろに下がった。

 奴は体勢を立て直しながら赤く染まった片腕をオレたちに向ける。

 そこへ――

 

「フレース・キャノン!」

 

 真横から魔力弾が放たれ、セカンドの腕を吹き飛ばす。

 

「今だ! 行け、レツヤ!!」

 

「――はい!」

 

 彼の言葉を聞いた瞬間、オレは地を蹴り、セカンドに迫る。そして――

 

「行くぞ――天瞳流・天月二連!!」

 

 一撃目が勢いよく体に入り、セカンドの胴体に亀裂が入る。

 続けて二激目を打ち込むと、亀裂が大きく走り、セカンドの身体が真っ二つに割れる。

 そしてその中から、燃えるような輝きを放つレリックが現れた。その色は爆発の時に上がる炎のようで。

 ――このままじゃ爆発する!

 

「いかん! レツヤ、そいつから離れろ! レリックは俺が――」

 

 御神さんは荒げた声でそう命令する。だがオレは反射的に――

 

「“ストップ”」

 

 そう叫んだ途端、レリックは空中で停止し、輝きも止まる。オレはすぐにそれを掴み取り――

 

「止まれ、止まれ……」

 

 御神さんたちが叫ぶ中、火の中に手を突っ込んだような熱さと痛みをこらえながら、オレは”こいつ”に呼びかけ続ける。

 

「とまれえええぇぇ!!」

 

 するとふいにレリックは冷え始め――

 

『Erkennt die magischen Vibrationen und Stimmprofile der königlichen Familie von Maserati. Stoppbefehl an Kern Nr. XV wird akzeptiert(『マセラティ王家』の魔力波動と声紋を認識。コアNo.XVへの停止命令を受理します)』

 

 ――!?

 突然頭の中に響いた言葉にオレは熱さも忘れ、レリックに目を向ける。

 まさか……今の声はこいつから? それに“マセラティ”って……。

 

「おいどうしたレツヤ、そいつはもう大丈夫なのか――!」

 

 声をかけてきたミカ姉はオレを見た途端言葉を飲みこみ、信じられないものを見たような目を向ける。

 彼女ほどではないが、リインさんと御神さんも同じような目でオレを見ていた。

 

 

 後になって聞かされたことだが、オレの眼は高町さんとティアナたちの諍いを止めた時と同じく、()()()()()()()()()()()()()()そうだ。

 

 

 

 

『損傷甚大、動力(レリック)喪失……これ以上の戦闘は、困難…………』

 

 半ば首だけになった状態でセカンドはかすれるような言葉を漏らす。すると誰かが両手で彼女を持ち上げた。

 

「もういい。今日までよく頑張った……もう休んでいいんだ」

 

 そう言って、チンクは悲しげな顔をしながら首だけになった(セカンド)を抱きしめる。その瞳は涙で潤んでいた。

 それに対して……

 

『……感謝、します…………』

 

 チンクの言葉に反応したのか、それとも下賤な主から解放してもらったことへの謝意か、セカンドはただ一言そう告げて目を閉じる。それを聞いてチンクも口から嗚咽を漏らした。

 

「……」

 

 レリックとレツヤの変化に驚きながらも、それにすら気付かずすすり泣く仲間の様子をルーテシアはじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、スマグリンはドイスを引っ張りながら、車を停めてあるガレージを目指していた。

 いつもは運転手に屋敷の前まで車を回してもらうため、ガレージのような無粋なものは本宅から遠い場所に設けていたのだが、それが裏目に出る日が来るとは。

 まさか管理局が潜入捜査までして証拠を探しに来るとは思わなかった。違法魔導師によるテロ対策に奔走しているうえに、”海”に人手を持っていかれている地上部隊が、そんな真似をしてまで自分を追ってくるとは思わなかったのである。

 だが、裏を返せば管理局は自分を捕まえるための証拠をまだ手に入れていないという事。あの連中と屋敷を始末すれば何とかなるはず。

 念のためここは放棄して、別の世界に拠点を移すべきだろう。表と裏、両方の得意先である『ヴァンデイン』が根城にしているリベルタがいいかもしれない。

 

「諦めんぞ。“聖王の器”は向こうに渡ってしまったようだが、まだ《ゆりかご》が次元のどこかにあるはず。それを見つけ出し、どこかの富豪か権力者に売りつければ想像以上の金が手に入るはず……それを元手にどこかの世界を買い取り、次元中からメイドを集めて、長年の夢だったメイド王国を築くのだ――がはっ!?」

 

 決意を固めたその瞬間、背中から腹に何かが貫通し、大量の血が噴き出てガレージのシャッターを汚す。

 激痛と熱を感じながらスマグリンは自身の身体を見下ろし、そして見た。己の腹から細長い金属が伸びているのを。

 まさかと思い、スマグリンは後ろを見る。そこには不気味な笑みを浮かべながら自身の背中に張り付いている淡藤色の髪のメイドの姿があった。彼女の右手からは銀色の長い“爪”が伸びており、それがスマグリンの体を紙きれのように貫いていた。

 

「お役目ご苦労様です、ご主人様」

 

「ド、イス……なぜ、お前が…………」

 

 口から血を吹き出しながら、スマグリンはかすれる声で彼女に問いかける。それに対して、ドイス――いや、暗殺者は嗜虐的な笑みを浮かべたまま言葉を返した。

 

「レリックとその他の品々をこの世界まで運んでいただいて、本当にありがとうございます。“ドクター”もあなたの働きに感謝しているとのことです。私としてもあなたのおかげで“妹”と過ごすことができましたし。そのお礼に、管理局に捕まる前にここで楽にして差しあげましょう」

 

「ま、まさか、お前は――」

 

 暗殺者の正体を察するスマグリンを眺めながら、彼女は爪をねじる。その激痛に顔を歪めるターゲットに対して彼女は言った。

 

「申し遅れました。私はドゥーエ。ドクター・スカリエッティが製作した『タイプファースト』の“No.Ⅱ”にあたります。実は“ドイス”という名も、ある世界で『2』を意味していたんですよ」

 

「貴様……ぐおぉ」

 

 苦しむスマグリンの前でドゥーエは髪を金色に戻し、エプロンドレスに手をかける。だが、少し目を宙に泳がせて服から手を離し、淡藤色の髪のメイドに姿を戻した。

 

「冥土の土産に本当の姿をお見せするべきかと思いましたが、やはりやめておきましょう。十年前、協力してもらった司祭を始末した時、私の正体と姿を見せたらこの上ないほど絶望させてから死なせてしまう羽目になりましたから。あなたにとっても、大好きなメイドを眺めたまま死ぬ方が幸せでしょう。メイドを見ながら冥土(めいど)に……なんちゃって♪」

 

「ふ、ふざけ――ぐあああっ!!」

 

 スマグリンが文句を返そうとしたところでドゥーエは彼の心臓を握りつぶし、爪を引っこ抜いてそのまま地面に放り捨てる。

 スマグリンはなおもしぶとく生き続け、地面に向かって手を伸ばすが、そこで力尽きピクリとも動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 セカンドの後始末や屋敷の捜査をチンクとシェベルに任せて、俺たちはスマグリンを追って離れにあるガレージに向かう。

 もう車で逃げてしまったと思うが、解放されたドイスさんがいるかもしれないし、タイヤ痕などから逃走した方角くらいは突き止められるかもしれない。

 そう思ってここまで来たのだが……。

 

「――!」

 

 それ(・・)を見た瞬間、俺たちは思わず足を止め、彼だったものを見下ろす。初めて見る光景にルーテシアはひっと声を漏らし、リインの足元にすがりついた。

 

 そこにあったのは、大量の血を撒き散らしながらうつ伏せに倒れているスマグリンの死体だった。背中には二つ大きな穴が開いており、かなり大きな凶器で後ろから突き殺されたと推定できる。念のため脈や息を確かめてみたが、やはりもう生きてはいなかった。

 

「リインはここに残って陸士隊への連絡と現場検証の手伝いを頼む。レツヤとルーテシアはこのあたりをまわってドイスさんを探してくれ。ただし、少しでも危険を感じたらすぐに戻ってこい……ただものの仕業じゃなさそうだからな」

 

 リインとレツヤたちは「はい」と答えながら、指示通りに動く。

 そして照明魔法を点けてすぐ、スマグリンの指先にある何かを発見した。

 それは……

 

「“Ⅱ”?」

 

 それは血で書かれた二つの縦棒だった。

 これはまさか……。

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