魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

42 / 84
第32話 陳述会前夜

 9月11日 PМ19:14

 機動六課隊舎・ロビー。

 

「……というわけで、明日はいよいよ公開意見陳述会や」

 

 真横に整列したフィルダー(オレたち)とフォワードの前で、八神部隊長は告げる。オレたちは背筋を伸ばしてじっと耳を傾けていた。

 

「明日14時からの開会に備えて現場の警備はもう始まってる。なのは隊長とヴィータ副隊長、ツヴァイ曹長とフォワード四名はこれから出発してナイトシフトで警備開始。アインス二尉とフィルダー三名とギンガも一緒に行ってもらうけど、御神分隊長、構いませんね?」

 

「はい。元々その予定です。このまま一緒に連れて行ってやってください」

 

 頷きながら答える御神さんに、はやてさんも頷きを返し、再びオレたちに向かって説明を続けた。

 

「私とフェイト隊長、シグナム副隊長と御神分隊長は明日の早朝に中央入りする予定――それまでの間よろしくな」

 

「はいっ!」

 

 部隊長にオレたちは勢いよく返事を返し、屋上のヘリポートに向かう。

 その途中でマリエルさんと合流し、さらにヘリポートまで駆けつけてきたヴィヴィオとなのはさんが別れをかわしたのち、オレたちはヴァイスさんが操縦するヘリに乗りこんだ。

 

 

 そのヘリの中で……。

 

 

「それにしても、ヴィヴィオ本当になついちゃってますねー」

 

 ヘリが飛んですぐ漏らしたスバルの一言に、ティアナも「まったく」とうなずく。それを聞いてなのはさんは恥ずかしそうに顔を伏せながら返事を返した。

 

「そうだね。結構厳しく接してるつもりなんだけどな……」

 

「確かに厳しいと思うけど、あの子のためにしてるっていうのが伝わってるんだと思う」

 

 ルーテシアが漏らした一言に、キャロも「そうですよ!」と告げる。それを聞いてなのはさんは微笑みを浮かべる。

 そこへツヴァイさんが彼女の元へ飛んでいきながら言った。

 

「もういっそ、ほんとになのはさんの子供にしちゃったらいいんじゃないんですか?」

 

 それを聞いて、なのはさんは少し寂しげな笑みを浮かべ……。

 

「あの子を受け入れてくれる家庭探しはまだまだ続けるよ……いい受け入れ先が見つかって、ヴィヴィオがそこに行くことを納得してくれれば――」

 

「……納得すると思えませんが」

 

 思わずそうつぶやくと、なのはさん以外のみんなはうんうんと首を縦に動かす。

 それを見てなのはさんはどぎまぎしながらも――

 

「そりゃあ、ずっと一緒にいられたらうれしいけど、本当にいい行き先が見つかったらちゃんと説得するよ! ……いい子だもん。幸せになってほしいから」

 

 足元へ視線を下げながら、彼女は悲しそうな声を漏らす。

 そしてなのはさんは思い出したように「そうだ」と言いながら、アインスさんに顔を向けた。

 

「アインスさんと健斗君、どこかから養子を貰う予定だって言ってたよね。ヴィヴィオも少しずつ健斗君に心を許し始めてるし、子供が見つかればはやてちゃんも二人の結婚を許してくれると思うんだけど……どうかな? ヴィヴィオをアインスさんと健斗君の子供に……」

 

「…………」

 

 その問いにアインスさんは難しい顔で考え込みながらも、首を横に振った。

 

「確かに落ち着いたら養子になってくれる子を探す予定ではある。養子になってくれる子供が見つかれば、主はやても私と健斗の婚姻を許してくれるかもしれん。……しかし、それはあくまで私たちの都合だ。そんな都合で望んでもいない子を無理に引き取るわけにはいかん。できれば本当に私たちを必要としてくれている子を家族として引き取りたい……それが健斗と私の希望だ。――だが、ヴィヴィオはそうではない」

 

 その言葉に対して、なのはさんはうつむきながら「うん」と答える。

 確かに、この間の件で御神さんとヴィヴィオの溝は少し埋まったけど、いまだにヴィヴィオは御神さんを苦手にしているし、御神さんもあの子に遠慮している節がある。そんな状態のまま、御神さんたちに引き取らせてもお互い息が詰まるだろう。

 

「あの子に関しては、私たちより高町の方が適任だろう――お前なら“あの子のパパ”を作ってくれる見込みも一応あるしな」

 

「えっ! ――ぱ、パパってなんのこと!?」

 

 アインスさんの言葉になのはさんは顔を赤くしながら聞き返す。それに対してアインスさんは意地悪な笑みを浮かべながら言った。

 

「こんなところで名前まで出す気はない……だが、お前もそろそろ先の事について考えた方がいい。このままだと、お前もあいつもあと6年は独り身のままで過ごす羽目になるぞ」

 

「~~!」

 

 その言葉になのはさんは顔を赤くしながら言い返そうとするが、結局何も言い返せず――。

 

「ま、まあえーと……とにかく、ヴィヴィオの受け入れ先が見つかるまでは私が責任もって守っていきます――それは絶対に絶対!」

 

 誤魔化すように話を終わらせるなのはさんに、アインスさんは苦笑しながら……

 

「まあ、今はそれぐらいで十分だろう。ただ今の話も心に留めておいてくれ。健斗も心配しているぞ」

 

「は、はい……」

 

 おずおずとうなずくなのはさんを見て、オレや他のみんなは思わず吹き出す。

 そんな中、チンクはすぐに笑いを収め、寂しげな笑みでオレたちを見回していた。

 

 

 

 

 

 

『『聖王家』と『マセラティ王家』についての資料はさっき送ったので全部だ。《ゆりかご》の資料は少ないみたいで、まだ捜索に時間がかかる。すまない』

 

「いや助かる。サンキューユーノ。この礼はまた今度する」

 

 モニターに映っている無限書庫司書長に礼を言うと、彼は首を横に振りながらぶっきらぼうな口調で言葉を返した。

 

『いいよ別に。それが僕らの仕事だし、忙しい分給料は結構もらってるから』

 

「そう言うな。実はアリサからオールストン・シーのチケットを三枚貰ってな。そいつをやるから、今度なのはとヴィヴィオを誘って行ってこい」

 

『えっ? なのはとヴィヴィオって子と?』

 

 机から出したチケット三枚をひらひら揺らしながら言う俺に、ユーノは目を見張りながら聞き返してくる。そんな友人に俺は頷きながら言った。

 

「ヴィヴィオのことは知ってるだろう。今六課で預かっていて、なのはに懐いてる子」

 

『ああ、クロノから聞いてる。でもその子、フェイトにも懐いてるみたいだし、なのはとフェイトとヴィヴィオちゃんの三人に渡した方がいいと思うけど。君だってアインスさんとデートとかしたいだろうし、僕はいいからなのはたちかアインスさんに渡してきなよ――』

 

 相変わらず唐変木な友人に、俺はわざと大きな溜息を吐いて――

 

「お前なー、そんな調子じゃ一生なのはとはお友達どまりだぞ。お互い仕事についた途端滅多に会わなくなって、この前アグスタで再会した後も連絡一つとってないだろう。たまには遊びに連れてったりして距離縮めとけ。こいつはそのお膳立てだ」

 

 ユーノの前にチケットを置きながら言うと、ユーノもむっとした顔で反論してきた。

 

『大きなお世話だよ。だいたい、なんでまた僕となのはをくっつけようとするんだ? 誰かに頼まれたのか?』

 

 彼の口から出た問いに俺は首を横に振る。

 

「いや、俺の判断だ。このままなのはやお前さんが独り身で生涯を終えるようなことがあったら、高町家の人たちに顔向けできなくなるし、お前のご先祖様もあの世から文句を言ってきそうな気がしてな」

 

『“サニー・スクライア”か……そういえば前世の君と知り合いだったらしいね。両親の顔さえ知らない僕にはいまだに信じられないけど……』

 

 訝しそうな目を向けるユーノに、俺は手を振りながら――

 

「それはともかく、お前だってこのままなのはと友達で終わるつもりじゃないんだろう。ここは一発ドカンとぶつかってこい。万が一ダメだったら一本ぐらいおごってやる」

 

『一本って、お互いまだ未成年だろう。……まぁ、そこまで言うならもらっておくよ。陳述会が終わった後にでも誘ってみる』

 

「おう、そうしてくれ。明日はその陳述会の警備で早いから俺はもう休ませてもらうわ」

 

『ああ、お休み』

 

 挨拶を交わしながら通信を切り、シャワーでも浴びて寝ようとネクタイを緩めようとしたところで再び通知音が響き、俺は再び空間モニターを開く。そこには長い青髪と同色の本局制服を着た女性士官が映っていた。

 

『夜分失礼いたします。機動六課・独立遊撃分隊の御神健斗三等空佐様でしょうか?』

 

「はい、御神三等空佐です。失礼ですが、あなたは?」

 

 額に手を当てて敬礼しながら尋ねると、彼女も敬礼と笑みを返しながら告げた。

 

『申し遅れました。管理局本局事務部の三等陸尉、ヴェート・バラッツァと申します。急で申し訳ありませんが、明日の12時に本局へ来ていただけないでしょうか』

 

「えっ――明日の12時?」

 

 思わず聞き返す俺にバラッツァ三尉は「はい」とうなずく。陳述会が始まる時間とほとんど丸かぶりじゃないか!

 たまらず俺は三尉に向かって言った。

 

「申し訳ありませんが、明日は公開意見陳述会の警備があります。その後ではいけませんか?」

 

『申し訳ありません。“上”がどうしても明日、御神三佐にお会いしたいと仰っておりまして。地上本部の本部長からの許可もいただいています。そのうえで突っぱねられるおつもりなら、出頭命令という形で来ていただくしかありませんが……』

 

 本部長の許可も取ってあるか……そのうえ出頭命令まで出されたら、もう逆らうことはできない。

 

「……わかりました。ところで“上”というのはどなたでしょうか? 部隊長や後見人に報告する必要がありますので」

 

『ああ、失礼しました。三佐とお会いになりたいと仰った方々(・・)は…………』

 

 三尉の言葉を聞いた瞬間、俺は耳を疑い聞き返そうとする。だが――

 

『では明日、本局のF7区画の通信センターでお待ちしています。くれぐれも遅れたりなさらぬように』

 

 俺が言おうとする前に三尉が頭を下げ、同時にモニターが消える。それを見て俺は舌打ちを鳴らしながらリインやはやてと連絡を取り、本局から呼び出された事と指揮の引継ぎを伝えた。

 

 

 

 

 

 

 地上本部前の警備を開始して約六時間後。

 日付が変わって午後2時を回る頃、オレはルーテシアと一緒に外周部の一角を見張っていた。

 そこへ、水筒と三段に重ねた紙コップを持ってチンクが戻って来た。

 

「警備部隊からお茶の差し入れだ。飲むといい」

 

「ありがとう。いただくよ」

 

「ありがと」

 

 オレとルーテシアは礼を言いながら紙コップを受け取り、冷たいお茶を注いでもらう。残暑の暑さに参っていたところだったからとても助かる。

 

「どうだ二人とも、もう日が変わったが眠くなったりしていないか?」

 

「大丈夫大丈夫。夕方までぐっすり寝たしな」

 

「私も。キャロと一緒に寝たから」

 

 オレたちの返事にチンクは「そうか」と返す。

 ルーテシアも見違えるほど成長したもんだ。アグスタじゃ途中でリタイアしてリインさんと一緒に寝てたのに。

 そんなことを思い出しながらお茶を一口で飲み干し、ふうと息をつく。それを見てチンクは苦笑しながらもう一杯お茶を入れてくれた。

 二杯目のお茶を半分ほど喉に流し込み、二人も飲み終えて一息ついてるのを見ながら口を開いた。

 

「ところでチンク、この間言ってたこと本当なのか? チンクだけ地上本部に異動するって話」

 

 それを聞いてルーテシアはあっと声を漏らし、チンクは気まずそうに視線を下げる。だが、チンクはすぐに顔を上げ「ああ」と頷いた。

 

「本当はお前たちが六課に移る時に話すつもりだったみたいだが、隊長たちも私も言い出すタイミングがつかめなかった……すまない」

 

「いいよ。あのタイミングで言われたら六課か本部に怒鳴りこもうとして、また隊長に殴られるのがオチだし。それにチンクにとってはめでたい話だしな」

 

「そうだな……」

 

 言葉とは裏腹に、チンクは寂しげな声を返しながらお茶を口に運び、ごくりと飲み込んでから言った。

 

「後のことは姉上に頼んである。私よりずっと優秀な人だ。お前たちや隊長たちのフォローもうまくこなしてくれるだろう」

 

「そうか……」

 

 そんなことはないという言葉が口から出かかったが、ギンガさんの優秀さを知っていることと、今さらチンクにすがるような真似をするわけにいかないと思って、オレはそう返す。

 そして……。

 

「じゃあせめて、この機会に教えておくか。オレの“もう一つの名前”」

 

「レツヤのもう一つの名前……?」

 

 突然の一言にルーテシアは目を丸くしながら聞き返す。一方、チンクはああと言って……

 

「それなら隊長から聞いている。入隊させる隊員の身元調査くらいしているし、レツヤの父親のことは私も七課に入る前からちょくちょく耳にしていたからな(ウーノの警戒リストにも載ってたし)」

 

 チンクの言葉にオレは頷き。

 

「ああ。戸籍上(・・・)、オレの本名は『レツヤ・クライスラー』という事になってる。あの人の息子だと知られたらすり寄ってきたり逆に敵愾心を持つ人間が出てくるからな。許可をもらって母方の名字を使わせてもらってる。――でももう一つ、役所はおろか家族の前ですら滅多に使わない“本当の名前”があるんだ」

 

「本当の名前?」

 

 ルーテシアは思わずつぶやき、チンクも同じような顔でオレを見つめ返す。

 オレは深く息を吸い、吸い込んだ空気をごくりと飲み込んでから……告げた。

 

「『フィヨルス・(レツヤ)(クライスラー)・マセラティ』……それがオレの“本当の名前”らしい。信頼できる人間以外には絶対に教えるなって、親父からきつく言われている」

 

「マセラティ……それってまさか――」

 

 チンクが言わんとすることを察して、オレは頷いた。

 

「あのメイド屋敷で手に入れた11番目のレリックを掴んだ時に聞こえてきた言葉だ。正直あれが聞こえた時は爆発の事も頭から吹き飛んだな。もしかしたら、レリック事件やスカリエッティとも関係があるのかもしれない。もしもの時はその線から――」

 

 

「――あっ、レツヤ君!」

 

「お、ほんとだ。あいつまで警備に駆り出されてたのか」

 

 おもむろに名前を呼ばれ、オレもチンクたちも思わずそちらを見る。

 そこには十代後半の女性隊員と二十過ぎの男性士官がいた。

 あの二人は056隊の――

 

「先輩、隊長……」

 

 思わず呟きながら、元職場仲間を呆然と見る。そんなオレに先輩は懐かしそうな、隊長は嘲るような笑みを浮かべながらこちらに歩いてきた。

 

「久しぶりーレツヤ君。その子たちが今の部隊の仲間? 二人ともかわいいねー!」

 

「……」

 

「ど、どうも……」

 

 気さくに声をかける先輩にルーテシアはじっと見たまま一言も返さず、チンクはぎこちない会釈を返す。

 その一方で隊長は嫌みな目で二人を一瞥し、再びオレに顔を向けてきた。

 

「まだ局にいたのか。もう局員なんか辞めて親父さんの秘書という肩書でももらって遊びほうけてるのかと思ってたぜ」

 

「隊長のおかげで働きがいのある部署につかせていただきましたから。それに、うちの父親は自分のもとにいる人間は容赦なくこき使う人間ですし、使えない人間は息子でも遠慮なく切り捨てる人です。実の親とはいえ、あの人のところで働くよりどこかの会社に就職する方がよほど楽ですよ」

 

 皮肉三割本音七割で言い返してやると隊長は不愉快そうに顔をしかめ……。

 

「しばらく見ない間に口が回るようになりやがって……」

 

 と吐き捨ててから、隊長はルーテシアたちを見て再び笑みを張りつかせた。

 

「しかし働きがいのある部署ねぇ……初等科も卒業してないような女の子二人と一緒に見回りのお仕事とは――はっ、確かにある意味大変そうなところだな。仕事と一緒に子守りまでしなきゃならねえんだから。休憩中はままごとの相手でもしてやってんのかい?」

 

「――っ」

 

 その言葉と二人を指しながら笑い声を上げる隊長に、ぴくりとこめかみを引きつる。先輩もさすがにまずいと思ったのか――

 

「た、隊長。言いすぎですよ! 制服を着てるところを見るに、この子たちもちゃんとした局員みたいですし」

 

 オレと隊長の間に割り込みながら、先輩は何とか場を取り持とうとする。それに構わず笑い続ける隊長にもう一言言ってやろうとしたところで――

 

「やれやれ、新米だった頃のお前の世話は子守よりも大変だったんだがな……実力もないくせに口と態度ばかりでかいから子供よりタチが悪かった」

 

「えっ?」

「あん?」

 

 突然かかってきた声に先輩と隊長は怪訝な声を漏らす。隊長に声をかけたのは二人の半分ほどもない背丈の少女、チンクだった。

 

「久しぶりだな、アレン。108隊にいたころからまったく変わっていないようだな。私もゲンヤ三佐もお前の教育には苦労させられたものだ」

 

「……お、お前まさか、三佐のチビ娘か? いやしかし、あれから5年は経つはず。あいつの妹かなにかだよな?」

 

 信じられないものを見るような目を向けながらぶつぶつつぶやく隊長に対し、チンクは呆れの吐息をつきながら言った。

 

「チンク・ナカジマ――三佐のチビ娘本人だ。何なら明日すぐにでも三佐に確認してもらうか? それとも、ここでアレン隊長殿の新人時代の“活躍”ぶりを話してやるのでもいいんだが」

 

「い、いや、それは……」

 

 チンクに押されるように、隊長はじりじり後ずさりしながら言い訳を考える。ちょうどそこで――

 

「隊長ー! セオドアさーん! そろそろ戻ってきてください! 勝手に持ち場を離れようとした奴が出て――」

 

 向こうから056隊の隊員らしき男が声を張り上げる。見覚えのない奴だが、オレの後に入ってきた奴か?

 

「あ、ああ。今行く! ――そういうわけで俺は部下たちのところに戻る。お前たちはせいぜい邪魔をしないようにな。それとナカジマ、三佐にさっきまでの事は――」

 

「言わん言わん。そんな事に気を回していられるほどあの人も暇じゃない。それより早く部下のところに戻ってやってください、“アレン隊長”」

 

 しっしと手を振るチンクに「絶対だぞ」と念を押しながら、隊長は呼びに来た隊員の元へ走っていく。先輩も、

 

「じゃあ、私も行くから。今度なにかおごってあげるからその時にゆっくり話そう」

 

 と言い残して隊長の後を追い、オレたち三人が残された。

 

「……なに、あれ?」

 

 呆れを多分に含んだルーテシアの問いに、チンクも嘆かわしげなため息を吐いて答えた。

 

「昔、108隊にいた頃の後輩だ。さっき言った通り、あいつには私も父上もさんざん手を焼かされていてな。まさか奴がレツヤの上官だったとは……もう少し性根を叩き直しておくべきだったか」

 

 チンクのつぶやきにオレもあっけにとられる。

 まさか、あの人がチンクの同僚でナカジマ三佐の部下だったとは。意外なところに繋がりがあるもんだ。

 それに加えて、仲間を馬鹿にしたあの人に言い返そうとした自分にも内心驚きを感じていた。ルーテシアだけじゃなく、オレもあの頃よりずいぶん変わって(成長して)いるのかもしれない。

 

 

 

 そんな経緯を挟みながら本部前の警備を続け、そして夜が明けて六課からはやてさんたちが合流してさらに数時間後の12時。

 ミッド地上本部を会場とした『公開意見陳述会』が……それと並行するように本局にて、御神隊長と時空管理局の最上層部にして暗部ともいえる『最高評議会』との対面が始まろうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。