魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第33話 最高評議会

 9月12日 AM11:55

 

『『公開意見陳述会』の開始まで、あと二時間近くになりました。本局や各世界の部隊代表による、ミッドチルダ地上本部および地上部隊全体の運営に関する意見交換が目的のこの会……波乱含みの議論となる事も珍しくなく、地上本部からの陳述内容について注目が集まっています。――今回は特にかねてから議論が絶えない、地上防衛用の迎撃兵器『アインヘリアル』の運用についての話も行われると思われ、本局や一部他世界部隊からの強い反発と議論の紛糾が予想されています。

 ここからは一旦別のニュースとコーナーを挟んで、開会予定の14時から再び現地のリポートと実況を再開させていただきます。

 次はスポーツのニュースです。現在開催中のインターミドル女子大会・クラナガン地区予選で、初出場のジークリンデ・エレミア選手が全試合ダウンなしKО勝利を収めて都市本戦に進出しました。同地区の大会には、出場4年目にして優勝候補と目されるミカヤ・シェベル選手と、同じく優勝候補のヴィクトーリア・ダールグリュン選手も出場していて――』

 

 

 

 

 

「では私はそろそろ、部隊長たちと一緒に中の警備に回る。お前たちは六課とともに外を警備してくれ」

 

「――はいっ!」

 

 会場となる地上本部の入り口の前で足を止め、そう告げてくるリインフォース・アインス副隊長にオレたちは威勢のいい返事を返す。

 リインさんは満足げな笑みを浮かべながら懐に手を入れ、銀色の装飾物を向けてきた。

 

「登録上だが一応私のデバイスだ。会議中は局員でもデバイスを持ち込めないことになっていてな。チンクにこれを預けたい――頼めるか?」

 

「はい。お預かりします」

 

 チンクは両手でリインさんのデバイスを受け取り、ぎゅっと握りこむ。

 会議中は誰もデバイスを持ち込むことができないか……。内部からのテロを防ぐための対策だと聞いているけど、会議に参加する本局の幹部への嫌がらせも兼ねてるのかもしれない。どっちにしろ、内部を守る人間からしたら身動きが取れなくなる恐れを生む悪法でしかない。

 しかもこんな時に限って――。

 

「さっき言った通り、御神隊長は本局に呼び出されたため来られなくなった。だが、私たち(七課)の役目は何も変わらない。六課と一緒にここを守りぬく――くれぐれも気を抜くなよ!」

 

「はい! 副隊長もお気をつけて!」

 

 胸の中に沸いた不安を打ち消そうとするように、オレたちは強い返事を返す。

 リインさんはオレたちに頷き返してから八神部隊長となのはさん、フェイトさんの元へ戻り、彼女らとともに地上本部の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 間もなく12時になろうという時間。

 俺は陳述会が開かれる地上本部ではなく、次元空間の真っ只中に浮かぶ『時空管理局本局』に来ていた。

 すれ違った知り合いと簡単な挨拶を交わしながら本局内を通り、ほどなくF7区画にある『通信センター』に到着した。

 

「ようこそおいでくださいました、御神三佐。本局事務部のヴェート・バラッツァ三等陸尉です。昨日は夜遅くに失礼しました」

 

 センターに入ってすぐ、ずっと俺を待っていたかのように入り口近くで直立していた青髪の女性局員――バラッツァ三尉は笑みを浮かべながら敬礼と自己紹介をしてくる。どこかで感じたような気配だと思いながら俺も敬礼を返し――

 

「機動六課から参りました、御神健斗三等空佐です。こちらこそ驚きのあまり失礼をしてしまい申し訳ありません。三尉が案内を?」

 

「ええ。呼び出したのはこちらの方ですし、“あの方々”も三佐の到着を今か今かと待ちわびていますから。どうぞこちらへ――」

 

 そう言って彼女を右腕をひの形に曲げ、隅に設けられたエレベーターを示す。俺はうなずき彼女とともにエレベーターに向かった。

 

 

 

 それからしばらくして、通されたのは30㎡そこそこの広い、だが机が置いてあるだけの簡素な部屋だった。机の上にはガラスでできた水差しとコップが置かれている。

 三尉は俺より先に部屋に入るや、すぐに机の上の水差しを持ち上げてコップに水を注ぎ、机の前に置かれた椅子を引いて座るように促してくる。

 それを受けて俺は部屋に入り、そのまま椅子に腰かける。そんな俺と入れ替わるように彼女は出入口の前まで下がった。

 

「私はいったん失礼させていただきます。モニターに呼び出しスイッチがありますので、代わりのお水がほしくなった時などは遠慮なくお申し付けください――それでは」

 

 そんな言葉を残しながら、彼女は一礼してドアをくぐって去っていく。

 その直後――

 

『ようこそ御神三佐。久しぶりの本局はどうかね?』

 

 自動式のドアが閉まるとともに、俺の頭上を取り囲むように3つのモニターが現れ、そのうちの一つ――“Ⅲ”の数字が映るモニターから声が響く。機械で変えたような、しかしテレビやネットの番組で聞くようなものとは違う重厚さのある声だった。

 

『忙しいところ足を運ばせてすまない。君の噂を聞いて是非一度話がしたいと思ってね』

 

 こちらの返事を待たず、“Ⅱ”のモニターから新たな声が漏れる。こっちも“Ⅲ”と同じ、機械で変えた無機質かつ重厚な声だった。

 俺は“Ⅱ”と“Ⅲ”、そして未だ沈黙を守る“Ⅰ”に向けて口を開いた。

 

「それは光栄ですね。しかし、今日はミッドの地上本部で公開意見陳述会が行われる日でして、できれば14時、いや13時半までに終わらせていただけると助かるのですが――」

 

 不満を示すようにわざと腕時計を見ながら告げると、“Ⅰ”のモニターから他の二人よりさらに重苦しい声が漏れた。

 

『“歴史”で聞いている話と違ってずいぶん生真面目だな。しかし、君一人抜けたところで大した支障はない。地上本部には内外ともに厳重な防備が敷かれておるし、今の管理局を襲う愚か者がいるとは思えん』

 

 確信に満ちた、というより疑う理由がわからないと言いたげに“Ⅰ”は断言する。

 そこでまた“Ⅱ”が言葉をかけてきた。

 

『然り。創設時は敵の襲撃を受けた事も度々あったが、いまや70以上の世界を管理下に置き、各世界から集めた選りすぐりの魔導師たちを抱える組織となった『時空管理局』に弓を引くなど、狂人でもなければ起こさんよ』

 

『その狂人に破れるほど管理局は脆弱ではない。それは十年近く局に身を置いていた君もよく知っているだろう』

 

「…………」

 

 “Ⅲ”の指摘に俺は沈黙と視線を返す。彼の言葉も一理あるし、“Ⅱ”が漏らした話から“ある推測”が湧きあがったからだ。だが、到底信じられない。

 ――公式的に時空管理局が創設したのは今から75年前。だがその頃にはすでに管理局は、敵対世界の鎮圧と平定を終えていて襲撃を受けるようなことはほとんどなかったはずだ。レオーネさんからもそんな話を聞いた事はない。

 

 となると、こいつらが言ってるのはその前――“管理局の前身組織”が立ち上がった頃。

 しかしとても信じられない。なぜならそれは今から百年近くも前の話だからだ。

 

 

『納得がいったかね? ではそろそろ話を始めよう。我々は『最高評議会』。普段は影から見守りつつ、必要に応じて局に対して指示と助言を行っている。便宜上、私が『評議長』を務めている。以後はそう呼んでくれたまえ』

 

 混乱している俺をよそにそう名乗る“Ⅰ”に続いて、“Ⅱ”は『書記』、“Ⅲ”は『評議員』と名乗る。

 それを聞いて、俺はさらに混乱を深めた。

 

 

 

 『最高評議会』。

 本局と地上本部のさらに上に位置する、“時空管理局の最高意思決定機関”。

 といっても、平時は局の運営と活動に口を挟むことはなく、その存在を知らない局員も多い――俺もヴェロッサに教えられて初めてその存在を知ったぐらいだ――。

 

 知っていても彼らの姿を見た者は誰もおらず、その正体は“謎”の一言に尽きる。

 75年の間ずっとその座に座り続けているとも、ひそかに何度か代替わりを重ねているとも、実は三提督のもう一つの姿とも言われているが、一番最後の噂に関しては三提督の一人、レオーネさんがきっぱり否定している。

 だとしたら、こいつら(評議会)の正体は……。

 

 

 

 動揺と戸惑いのあまりカラカラになった喉を潤すためコップに口を付け、一口で中の水を飲み干し。

 

「失礼しました。では評議長、早く話を始めていただけませんか。指揮官として現場に顔を出さないというわけにもいきませんし、レジアス中将や八神二佐と打ち合わせたい事もありますから」

 

 その訴えに“Ⅰ”――いや評議長は心を動かした様子も見せず、ただ一言呟いた。

 

『レジアスか……そういえば、君もあやつと知己だったな。実は君を呼び出したのもあやつ絡みでね』

 

「君も? まさか、あなた方も中将と……」

 

 その問いに評議長は沈黙を挟み、彼に代わるように書記と評議員が答えた。

 

『うむ、あやつの能力を買っていくつか仕事を任せている』

 

『その代わりにレジアスの昇進を速めてやったり、本局の“同志”を通じて海側の意見を握りつぶしてやったり、色々便宜を図ってやっておる。アインヘリアルの開発に手を貸してやったりもしたな。地上の一区画を守れるかどうかの大砲など正直どうでもよいのだが』

 

 ……やはり中将は評議会と繋がっていたか。しかも、かなり黒い付き合いみたいだ。地上部隊の現状が苦しいとはいえ、まさかこんな奴らと組んでいたとは……。

 

「それで、中将絡みで俺に用件とは? 俺は元々あちら側ですし、あの人の昇進や計画の妨害をするつもりはありませんが」

 

 もし妨害するつもりだったとしても、中将とオーリスさんだけで十分対処できる。あんたらが出てくるまでもないだろう。

 内心そう付け足しながら尋ねると、評議長はかぶりを振るような間を空けて否定した。

 

『……そうではない。レジアスには我々以外にも後ろ盾がいてな。そのせいか、我々に反抗心を抱いている節があるのだ――そう遠くないうちに飼い主(我々)の手を噛もうとするのではないか……そう思えてならん』

 

「まさか……そうなる前にレジアス中将を切り捨てるつもりだと?」

 

 その問いに嘆かわしげな溜息を吐き出す評議長に代わって、他の二人が答えた。

 

『もちろん、疑いがあるというだけで捨てるような真似はせん。我々に従順……協力的な姿勢を見せている限りは手元に置いてやるつもりだ……だが』

 

『だが、万が一のための備えは必要だ。そうでなくとも年齢的にレジアスが力を振るえるのもあと十年。そろそろ“後任”を考えねばならん。地上部隊をまとめる才があって、なおかつ我々に協力的な“同志”がな……そこで』

 

 そこで三人は言葉を止め、じっとりとした視線を向けてくる……ような感覚が襲ってくる。

 まさか……。

 

『御神健斗……いや、三百年の時を越えて蘇った《グランダムの愚王》ケント・α・F・プリムス。……レジアスに代わる“同志”として、我らと手を組むつもりはないか? その答え次第では君を新たな地上部隊の長に押し上げてやろう。働き次第ではどこか好きな世界を一つ統治させてもいい』

 

「なん、だと……」

 

 評議長の提案と彼の口から出た名を聞いて、俺は思わず素の口調でつぶやく。

 それに気分を害した様子もなく、評議長はじっと沈黙を保っていた。

 

 

 

 

 

 

 PM14:03

 ミッドチルダ・地上本部、会議場。

 

 地球で言う“講堂”のような形をした会議場にて、大勢の本局の幹部や地上部隊代表の前にそびえる壇上の横に壮年の士官が現れ、口元まで近づけたマイクを手に告げた。

 

「それでは時間になりましたので、ただ今より『公開意見陳述会』を開始いたします。本部長は急病で参加できなくなりましたので、その代理としてレジアス・ゲイズ中将に開会の挨拶をお願いします」

 

 士官が言い終わるのを待たず、レジアスは席から立ち上がり壇上へと歩いていく。

 そして壇の上に立つや、レジアスは原稿も持たずすらすらとした口調で挨拶を述べた。それを見て少なくない士官が、まるで最初から自身が開会の音頭を取ることを知っていたような振る舞いだと思った。

 

(余計なお飾りは不要か……ここで反対意見をねじ伏せて、アインヘリアルの導入を推し進める気みたいだな)

 

 

 

 

 

 

 

「しばらく見ないうちに偉そうになったもんね……昔はもう少し親しげのあるおじさんだったんだけど」

 

 とあるビルの屋上。

 眼前に浮かべたモニターの向こうで開会の挨拶を述べているレジアスを見ながら、メガーヌは零す。その横でアギトもレジアスを眺めながら尋ねた。

 

「姐さんの目的はこのヒゲ親父をふん捕まえる事だろう。けどいいのかよ? “あれ”を手に入れるのも目的の一つなんじゃ――」

 

 胸を叩きながら言う相棒にメガーヌは苦笑しながら答えた。

 

「仕方ないわ。あっちにはどのみちナンバーズの誰かが行くでしょうし。せめてこの機会を利用してレジアスを捕まえましょ」

 

『メガーヌ様』

 

 ふいにウーノが映るモニターが現れ、メガーヌとアギトは慌ててそちらを見る。それに気に留めず、ウーノは淡々と告げてきた。

 

『勝手ながら作戦の決行が早まりました――これより本部に攻撃を仕掛けます。今すぐにガジェットの転送の用意をお願いします』

 

 その言葉にメガーヌとアギトは顔を険しくする。どうやら自分たちの知らないところで何か工作をしていたらしい。作戦開始の前倒しはそれが関係しているようだ。

 だが――

 

――むしろ好都合だわ。早くあのおっさんから“あの時の事”を聞き出したいと思っていたし――。

 

 獰猛な笑みを浮かべ、メガーヌは手袋デバイス《コロニス》を嵌めた右手を高く()げる。

 そこに最愛の娘がいると知りながら。

 

「ヴンターヴィヒト――オブジェクト転送!」

 

 

 

 

 

 

 状況確認のため、あちこちで会議の様子を映したモニターを開かれる。

 オレたちもモニターを見上げて……。

 

「始まったみたいだな」

 

「ああ……」

 

 チンクの言葉にオレはうなずきと相槌を返す。

 その横でルーテシアは周りを見ながら言った。

 

「今のところ、味方以外の魔力反応は見つからないけど……」

 

「油断しないで! あと4時間以上もある。最後まで気を抜かずに警備を続けるわよ!」

 

 いつもと違って厳しい口調で釘をさすギンガさんに、ルーテシアのみならずオレとチンクも返事と頷きを返す。

 さすがの貫禄だな。これならフィルダーのリーダーの座を明け渡す日も近いだろう。

 ほんの少し寂しさを覚えつつそんなことを思ったところで――

 

 

「な、なんだこいつ!?」

「うわああっ!」

 

 突如あちこちから白色の召喚陣が現れ、その中から無数のガジェットが現れる。動力源(ジュエルシード)を失ったはずのⅢ型もいくつか紛れ込んでいた。

 それを見てオレたちはすぐにバリアジャケットに身を包み、武器を構える。

 そんなオレたちを嘲笑うように向こうのビルから漏れる光が見えた。

 

「あれはまさか――ヴィヴィオを乗せていたヘリを撃とうとした――」

 

 言い終える寸前にビルから茜色の光線が放たれ、地上本部の壁は黒煙を噴き上げながら崩れ落ちた。

 

 

――くそっ! 本当に陳述会を狙ってきやがった。しかも会議が始まってすぐに来るなんて。とにかく、急いで中へ行ってリインさんたちを助けに行かないと!

 御神さんも早く気付いて来てくれ! あんたの奥さんがピンチなんだぞ!

 

 

 

 

 

 

「ふふ……ふははははっ!」

 

 無数のモニターの中心で、スカリエッティは愉しそうな笑い声を上げる。

 そのモニターには襲撃を受けている本部、ガジェットに挑み倒れていく局員たち、その反対にガジェットを破壊しながら本部を目指すフォワードとフィルダー。そして、老人たち(最高評議会)と相対している御神健斗の姿が映っていた。

 

 彼を飼っているつもりの最高評議会さえまだ知らない。御神健斗と評議会を引き合わせた事も、機動七課の力を削ぐための策略にすぎないことを。

 

――まあ、彼が老人たちの誘いにどう答えるかも見物(みもの)ではあるがね。彼が評議会に降るという展開も面白そうだ。

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