魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第35話 本部防衛戦(1)

 ガジェットのもとへと跳び、刀でガジェットを切り裂いて、さらに奥にいるもう一体に向かって銃弾を撃ち込み、爆砕させていく。

 近くのガジェットをすべて破壊したところで、チンクは棒立ちしたままのクルーやカメラマンに向かって声を張り上げた。

 

「このままあっちの方まで逃げてください! そこにはもうガジェットはいませんから!」

 

「あ、ありがとう――」

 

 短い礼を言いながらクルーたちは出口の方まで逃げていく。それを確かめてからオレたちはガジェットやナンバーズの襲撃を受けている本部に目を移し、そちらに向かおうとした。

 だがそこへ――

 

「きゃああああ!!」

 

 あらぬ方から若い女性の悲鳴があがり、そちらに顔を向ける。この声はまさか――

 

「チンクたちは先に行ってくれ! オレもすぐに追いかける!」

 

「えっ、レツヤ、まさかお前――」

 

 チンクは言いかけながら片手を伸ばすが、それに構わずオレは一目散に悲鳴が上がった方へと向かった。

 

 

 

 

 

「く、喰らえ――!」

 

 杖を構えた陸士が襲い来るⅢ型ガジェットに向かって罵声とともに砲撃を撃ち放つ。

 しかし、彼が放った砲撃は透明なシールドに防がれ、あっさり霧散してしまった。

 それを見て隊長のアレンが叫んだ。

 

「どけ! 俺が止めてやる――バインド!!」

 

 アレンが手をつき出しながら呪文を唱えると、ガジェットのまわりに魔力でできた鎖が現れ、ガジェットに絡みつく。

 しかし、ガジェットのまわりにシールド(AMF)が発生した瞬間、部下が放った砲撃と同様、鎖状のバインドも粒子となって消えていった。

 それを見て二人の隊員が毒づく。

 

「くそ、バインドも効かないなんて!」

 

「“あいつ”がいりゃあ、こんな機械、技能で止められるかもしれねえのに――」

 

 それを聞いてアレンは不快げに頬を引きつらせ、

 

「弱音を吐いてる場合か! こんなボールもどきの一体や二体、俺たちで倒せなくてどうする!」

 

 鼓舞とも叱咤ともとれぬ檄を飛ばしながらアレンはガジェットに向かって、五発の魔力弾を撃ち放つ。

 そのうち四発はAMFによってかき消されるが、最後の一発がAMFを貫通し、ガジェットに小さな穴を空けた。

 それを見てアレンは『よし』と笑みを漏らし、隊員たちに畳みかけるように命じようと後ろを振り返る。

 だがそこへ――

 

「危ない! 隊長逃げて!!」

 

 後ろからかかってきたセオドアの声に、アレンはハッとして顔を戻す。

 ガジェットは右方向に大きく伸ばしたアームをしならせ、アレンたちに叩きつけてきた。

 

「――ぐあっ!」

 

 体を強く叩きつけられ、アレンたちは真横に弾き飛ばされる。

 地に這いつくばる彼らにとどめを刺そうとガジェットの砲口から青い光が漏れる。それを見てセオドアは杖を向け魔力弾を撃ち込むが、すべてAMFに防がれる。

 それを見てアレンたちは覚悟を決め、思わず目をつぶった――その時!

 

「“ストップ・ザ・シングズ”」

 

 幼さの残った少年の声が響いた瞬間、ガジェットは瞬く間に動きを止める。

 それを見て――

 

「まさか――レツヤ君!?」

 

「先輩、隊長、じっとしていろ!!」

 

 驚くセオドアと顔を上げるアレンに、そんな言葉を放ちながらレツヤはガジェットの元へ飛びこみ、アレンが空けた銃創に刀を突き入れ――

 

「天瞳流――天月!」

 

 レツヤが大きく腕を振るった瞬間、巨大なガジェットは真っ二つに切り割かれる。

 爆炎を噴きあげるガジェットの残骸を一瞥しながら、レツヤは鞘に刃をしまいアレンに声をかけた。

 

「隊長、いやアレンさん、大丈夫でしたか?」

 

「あ、ああ……」

 

 ばつが悪そうにそう答えるアレンに対して、レツヤは右手を伸ばす。

 しかし、そこまで世話にならないと言いたげにアレンは首を横に振って、地面に手をついて起き上がった。

 

「まさか、お前に助けられるとはな……一応礼は言っとく。仲間を守ってくれてありがとよ」

 

「……いえ。今はいっしょに本部を守っている身ですから……それにあんな去り方をしたとはいえ、オレにとって一緒に働いた仲間に違いありません」

 

 レツヤの言葉にアレンは気まずそうに顔を反らし、セオドアは感嘆の目をかつての弟分に注ぐ。

 そこへ――

 

「レツヤ、なにやってるんだ! フォワードも本部に向かってるところだぞ――」

 

 そこにチンクとルーテシアが駆けつけてきて、彼女らはアレンとセオドアを見て眉をひそめながらもその場に立ち止まり、視線でレツヤを促す。

 それを察したようにアレンは言った。

 

「早く行ってやれ。ここは俺たちだけで十分だ」

 

「……ほんとに大丈夫ですか?」

 

 レツヤの問いにアレンは強がるように腕を組み。

 

「妙なバリアに手こずってただけだ。さっきの戦いで弱点もわかったし、もう遅れは取らねえよ――だからさっさと行け。邪魔はするなって昨日言ったはずだぞ」

 

「――わかりました。アレン隊長とセオドア先輩、他のみんなもどうか無事で!」

 

「うん。レツヤ君たちも無茶しないでね!」

 

 激励をかける先輩(セオドア)や隊員たちにレツヤは頷きを返してから、チンクたちとともに黒煙が上がっている本部へと駆けていく。

 そんな元部下や同僚を見て、アレンは顔を歪めながらぎりっと拳を握った。

 

――くそ! なにが“邪魔はするな”だ。どう見ても邪魔をしてたのは俺たちの方だ! まさか、俺がクライスラーのガキに助けられるなんて――。

 

 

 

 

 

 

 本部の目前まで来たところでフォワードと彼女らを率いているヴィータさん、ツヴァイさんと合流し、オレは走りながら彼女たちに謝罪の言葉を飛ばす。

 

「すみません、遅れてしまいました!」

 

「いい、ツヴァイから状況は聞いてる。お前の能力の価値に気付かず追い出した連中を助けるなんて、お人好しな奴だ。それより本部の中から漏れてるガスに気をつけろ! 浴びた奴からどんどん気を失っちまってるみたいだ!」

 

 その言葉にオレたちは入り口まわりに倒れている局員たちを見る。わずかに痙攣しているところを見るに、みんな生きてはいるようだ。

 モニターに映るガスの分析結果を見ながらツヴァイさんが言った。

 

「ガスは致死性ではなく麻痺性。今、防御データを送るです」

 

 彼女がそう告げると同時に、オレたちのジャケットに白色の光に包まれ、すぐに消失する。これでガスを防げるようになったらしい。

 ヴィータさんはそれを見ず、はるか遠くの機動六課本部に向かって声を放った。

 

「通信妨害がきつい――ロングアーチ、聞こえるか!?」

 

『はい! こちらロングアーチ01。外からの攻撃はひとまず止まってますが、中の状況は不明です。AMFでサーチャーが停止しているみたいで――』

 

 シャーリーさんの報告を聞いてヴィータさんは大きな舌打ちをこぼす。本部の中には家族のはやてさんやリインさん、――しょっちゅう口喧嘩しているものの――仲のいいなのはさんがいるんだ。無理もないだろう。

 そんな彼女を嘲笑うように新たな報告が届いた。

 

『市街地上空から地上本部に向かって、数十機のガジェットⅡ型と飛行生物の群れがものすごいスピードで接近しています。先頭のⅡ型の上には例の“召喚士”が乗っていて――』

 

「――っ」

 

 メガーヌの出現にルーテシアは目を見張り、ヴィータさんはどちらに向かうべきか唇を噛みながら迷う。

 そこへ――

 

「副隊長、あたしたちが中に入ってなのはさんたちを助けに行きます! 副隊長と曹長はメガーヌさんを止めに行ってください!」

 

 おもむろにスバルはそう言ってヴィータさんを促す。その横でフォワード三人も頷きを返した。

 それに続いて――

 

「オレたちも行かせてください! オレたちも六課の一員ですし、オレたちの上官(リインさん)もあの中にいますから!」

 

 オレがそう言うと、他のフィルダーとギンガさんもヴィータさんを促すように頷く。そんなオレたちやフォワードを見てヴィータさんは首を縦に揺らした。

 

「わかった。上はあたしとツヴァイがやる。フォワードとフィルダーはそれぞれ別方向から会議室に向かってくれ! ――それと、こいつの事も頼んだ」

 

 そう言ってヴィータさんはティアナに向かって剣十字型の装飾物を放り投げる。ティアナは片手でそれを掴み取りながら頷き、本部の入り口へ向かう。

 それを見届けるとヴィータさんはツヴァイさんとともに空へ舞い上がり、『ユニゾン・イン!』と詠唱を響かせながらツヴァイさんがヴィータさんの中に飛びこむ形で一体化し、淡い橙色の髪と薄い水色の瞳に体色を変え、いつも着ているものを白く染めたバリアジャケットに身を包んで、空の彼方へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 ヴィータさんたちを見送って本部内に入ってすぐ、オレたちフィルダーはフォワードと別れ、彼女たちとは別の道からはるか上階にある会議室へと向かう。

 照明がすべて落とされ、見る影もなくぼろぼろに壊された通路に憤慨を覚えながら、ひたすら足を進めていると――

 

「――止まれ!」

 

 突然声を張り上げたチンクに、オレたちは反射的に足を止める。

 『なんだ?』と言おうとして彼女の方を振り返りかけたところで側面からヒュンヒュンという風切り音が聞こえてきて、オレは動きを止め、ギンガはルーテシアをかばうように横に張り付く。

 その時、音とともにブーメランのような形状の銀色の刃が横の壁を切り裂きながら飛んできて、刃は天井まで飛び、耳障りな破砕音を立てながらその上を通過していく。それを聞いてまさかという想像が脳裏をよぎった。

 

「みんな、すぐにここから離れろ――急げ!!」

 

 そう怒鳴ると三人は頷く間もなく、前へ跳び出す。

 オレも彼女たちに続こうとするが、地面から伸びた手に足首を掴まれた。

 

「お前は――?」

 

 脚を掴まれたまま声を上げるオレに、地面から頭を出した水色髪の女はニヤリと笑みを向ける。

 その直後、天井が崩れ、オレに向かって降ってくる。それを見てルーテシアたちが「レツヤ!」と叫んだ。

 それを耳にしながら、オレは“脚の気と力を抜き”、女の両腕から足を持ち上げる。

 驚きに目を見張る女にかまわず、オレは急いでそこから跳び上がり、仲間のそばに着地した。

 そこへ……

 

「ほう、あの状態から抜け出すとは……ダメージくらい与えられると思ったのだが」

 

 瓦礫に埋もれた場所の反対側から声がかかり、オレたちはそちらに顔を向ける。

 そこには短い紫髪の長身の女と、額まわりにヘッドギアを付けた長い桃色髪の女が立っていた。二人とも体のラインが浮き出たボディースーツのようなものを着ていて、両頬に一本ずつラインが入ってあり、紫髪の女の首元には“Ⅲ”と刻まれたプレートが、桃色髪の女の首元には“Ⅶ”のプレートが付けられている。

 さらに地面に潜っている水色髪の女は、この前レリックを取り合った時に現れた奴だ。

 

「チンク、久しぶりだな。お前が裏切ったと聞いた時から、こんな日がくるだろうと思っていたが」

 

「この前も見たけど、なかなか局員姿が板についてるじゃん」

 

「トーレ……セイン……」

 

 チンクは声を震わせながら二人の名を呼び、桃色髪の女に目を向ける。

 唯一呼ばれていない桃色髪の女は、手に戻ってきた刃を掴み取って告げた。さっきのはこいつの仕業か。

 

「はじめまして、ナンバーⅤ。“ナンバーVII”セッテと申します。ナンバーとは裏腹に、稼働してからまだ二週も経っていませんが」

 

 そう言って頭を下げるセッテに代わり、再びトーレがチンクに向かって声をかけてきた。

 

「ドクターからの命令だ。地上本部を襲うついでに、お前を連れ戻してこいとな。いい加減局員の真似事などやめて、こちらに戻ってこい」

 

「ああ、そっちのお友達も一緒でいいよ。人造魔導師の素体にタイプゼロ、ベルカ王族の末裔も研究材料に欲しいって言ってたから」

 

 セインの言葉にギンガさんとルーテシアは目を見張り、身を構える。それに遅れてオレも刀の柄に手をかけた。

 ベルカ王族の末裔……『マセラティ王家』ってやつのことか。

 

「むろん、断れば少々痛めつけてでも連れて行く。それが嫌なら四人ともおとなしく来ることだな」

 

 そう言って、トーレは紫色のエネルギー翼を生やした右腕を掲げ、その横でセッテもブーメラン状の刃を構え、セインも不敵な笑みを向けながら体を地面に沈め込んだ。

 チンクは硬い表情で身構えながら……。

 

「みんな、気をつけろ。中央の奴は《ナンバーⅢ・トーレ》。ナンバーズの実戦リーダーで、肉体面の力なら姉妹たちの中で最も強い。セインは厄介な能力を持っているし、セッテという奴も生半可じゃなさそうだ。油断しているとすぐやられてしまうぞ」

 

「ああ、さっき身をもって思い知った。気をつけていくぞ!」

 

 チンクに続いて呼びかけると、ルーテシアとギンガさんも頷きながら構えをとる。

 そんなオレたちめがけて、セッテはブーメラン状の刃を飛ばしてきた。

 

 

 

 

 

 

 一方、クラナガン上空。

 メガーヌはガジェットⅡ型に乗って、アギトはその横を飛びながら、分厚い雲の上を疾駆して空高くそびえる地上本部に向かっていた。

 

――あと少し、ここでレジアスを捕まえれば“あの日”の真実が分かる。あともう少しで――

 

 メガーヌがそう思った、その直後――

 

《こちら管理局。あなた方の飛行許可と個人識別票が確認できません。ただちに停止してください! でないと――》

 

「――この声」

 

 忌々しい同類を思い出し、アギトは顔をしかめる。それと同時に、雲の下から飛んでくる無数の赤い光弾が飛んできた。

 アギトは身をひるがえし、メガーヌはその場を跳んで光弾をかわしガジェットに着地するが、何体かのガジェットと召喚虫は被弾を受けた。

 それを見てアギトは顔を歪めながら無数の炎弾を浮かべ――

 

「ヤロウ――ブレネン・クリューガー!!」

 

 空中を飛ぶ光弾に向けてアギトは炎を飛ばし、爆発でかき散らす。

 しかし、銀色の弾(・・・・)は消えることなく、アギトたちに向かってまっすぐ降ってきた。

 

「――実体弾!? 避けろ姐さん!」

 

 しかし、メガーヌは右手をかざすと、その先に浮かべた魔法陣で易々と弾丸を受け止める。

 だがその後ろから、巨大な槌を持った少女が飛び出し――

 

「ギガントハンマー!!」

 

 少女――ツヴァイと融合した状態のヴィータはメガーヌに向けて、言葉通り重い一撃を打ち込もうとする。

 だが、彼女が槌を振るう直前に黒い召喚虫が迫り、鋭く尖った突起でヴィータの一撃を受け止めた。

 

「こいつは――」

 

《地下水路でメガーヌさんと一緒に戦っていた――》

 

 黒い召喚虫――ガリューは四つの赤く鋭い目でヴィータと、中にいるツヴァイを睨みつける。その視線と後ろを飛ぶ二人や召喚虫たちを前に、ヴィータは通常のサイズに戻したグラーフアイゼンを構えた。

 

 

 

 

 

 

 その頃、機動六課の隊舎でも……。

 

「そんな――多数のガジェットと高エネルギー反応三体が高速で飛来――こっちに向かってます!」

 

 真っ赤なアラート画面の下で、シャーリーはけたたましい警告音に劣らない叫び声をあげる。

 その背後で部隊長代理と交替部隊の指揮官も務めるグリフィスは、あらかじめ定めていた通りの命令を下した。

 

「待機部隊、迎撃用意! 近隣部隊にも応援要請!」

 

 矢継ぎ早に下される命令に、ルキノは「はい」と答えながら手間取ることなく各部隊に命令を伝える。

 その後ろでグリフィスは険しい顔と声でさらに告げた。

 

「総員、最大警戒態勢! バックヤードを含む非戦闘要員の避難も急がせるんだ!」

 

 その命令にアルトが応じ、隊舎内に避難指示を流す。

 

――まさか本部だけじゃなく、こんな所まで狙われるなんて。とにかく、ここは僕たちが守らないと!

 

 そう強く決意を固め、グリフィスはぎゅっと拳を握った。

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