魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第40話 No.XIV

「んっ――」

 

 腕から走る鋭い痛みに、メガーヌは思わず呻きを漏らす。

 そんな彼女に、ウーノは点滴用のチューブをしまいながら声をかけた。

 

「終わりました。もう起き上がられても大丈夫です」

 

「……」

 

 そう告げられ、メガーヌは憮然としたまま上体を浮かす。

 それを見て、ウーノは器具を片づけながら言葉を漏らした。

 

「いつもより消耗が激しかったようですね。今日はもう泊っていかれた方がよろしいんじゃないですか」

 

「アギトと融合しながら戦ったり、六課の指揮官から逃げるために長距離の転移をしてたからね。適当にだらけていれば回復するわ。私のことより、“王様”の世話や“新しい姉妹”の調整の手伝いをしなくていいの?」

 

 その言葉にウーノは苦笑を浮かべながら言った。

 

「“陛下”はただいまお休みになっています。“新しい妹”の調整もタイプゼロの検分を兼ねてドクター自ら行いたいとのことで、メガーヌ様の調整とお世話が今の私の仕事です」

 

「そう。じゃあそれが終わったからあなたはしばらくお休みね。また忙しくなるだろうし、今のうちにゆっくりしてなさい」

 

「ありがとうございます。ではせめてアギト様の元までお見送りを――」

 

 そんなやり取りをしながらメガーヌはベッドから降り、出入り口までウーノが先導しようとしたその時――。

 

『やあ、待たせたねウーノ。メガーヌも一緒か』

 

「ドクター……ええ。今ちょうど調整を終えたところです」

 

 モニターに浮かぶ主にウーノは報告しながら頭を下げ、メガーヌも『何の用?』と言いたげな視線を向ける。

 そんな彼女らにドクターことスカリエッティは上機嫌な笑みと返事を返した。

 

『こちらもちょうど今、『フォーティーン』の調整が終わってね。新しいナンバーのお披露目をしたいから皆を呼んできてくれ。――メガーヌもアギトと一緒にどうかな? 君にとってもあの子は親友の娘にあたるはずだが』

 

 スカリエッティの誘いにメガーヌはすげなく首を横に振り――

 

「結構よ。またアギトとあの子たちが諍いでも起こしたら、かえって作戦に支障をきたすでしょうし。私たちはおいとまさせてもらうわ」

 

『そうか、残念だ。“あれ(・・)”を地上に出すためにまた君の手を借りるから、その時までゆっくり体を休めてくれ』

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

 メガーヌが返事を返した直後スカリエッティが映るモニターが消失し、ウーノは「どうぞこちらへ」と告げながら出入口を示す。彼女の後を歩きながらメガーヌは最後の作戦に向けて考えを巡らせた。

 

――いよいよ“あれ”を出す時が来たのね。あれがあれば管理局にも勝てるだろうけど、同時に私とアギトも用済みになる。レジアスも失脚間近みたいだし、もうあのおっさんは放って“本丸”を攻めるしかなさそうね。とはいえ、私の転送魔法じゃ本局に行くことすらできない。となれば……。

 

 

 

 

 

 

「お待たせー!」

 

「遅いぞ、ウェンディ、ノーヴェ」

 

 遅れてきた二人にトーレは厳しい叱責を浴びせる。二人は駆けつけ、あるいは不機嫌そうに歩きながら……

 

「ごめんごめんっス。ちょうどノーヴェと一緒に体を洗浄してたところで」

 

「新入りのお披露目くらいあたしら抜きでできるだろう――ってか、そいつ使い物になんのかよ? あたしらがボコボコにした奴だぞ」

 

 ウェンディは愛想笑いを浮かべながらペコペコ頭を下げ、ノーヴェは鼻を鳴らしながら疑問と不満を含んだ声をぶつけるが……。

 

「トーレお姉様の助けを借りてなんとかね~」

 

「あんっ?」

 

 小馬鹿にしたような間延びした声に、ノーヴェは眉を吊り上げながらそちらを見る。そこには意地の悪い笑みを浮かべたクアットロが立っていた。

 クアットロは怯んだ様子もなく甘ったるい口調で続ける。

 

「ダメよノーヴェちゃん。お姉様への恩を忘れた挙句、自分一人で倒したような口を利いちゃ。あの幻術使いの手品を見破れたのだって、チンクちゃんから流れてきたデータのおかげじゃな~い♪」

 

 その言葉にノーヴェは思わずうっと唸り、ウェンディも苦笑を漏らす。

 

 地上本部での戦いでフォワードと呼ばれる四人組と戦った際、幻術使いことティアナは自分たちの姿を模した幻を無数も繰り出してきた。どの幻もかなり高度にできていて、ノーヴェとウェンディの“目”をも欺きかねないものだった。

 しかし、チンクから他のナンバーズに流れたティアナとの模擬戦のデータを元に“目”と解析システムを更新(アップデート)したおかげで、ティアナの幻術を見破り、さらにクアットロの指示で逃げる三人をわざと見逃し、スバル一人を孤立させ捕まえることに成功した。

 つまり、チンクは知らず知らずのうちにスバル誘拐の手助けをしてしまっていた、というわけだ。

 

「それにあの子、“ゼロ・セカンド”がもつIS《振動破砕》は、私たち戦闘機人の体内にある電子部品やフレームを破損させるほどの力がある。もちろん、対人や対物に対してもかなりの威力が出るでしょうけど」

 

「まさに“戦闘機人の天敵”……」

 

「だからゼロセカンドの回収を優先したわけですか」

 

 つぶやくオットーとディードにクアットロは彼女らを指さしながら「正解♪」と告げる。

 その横を歩きながらディエチがつぶやいた。

 

「管理局に潰された研究所が生み(造り)だした、“私たちのオリジナル”。ドクターの技術を真似したとはいえ、恐ろしいものを造る奴らもいたもんだね」

 

 それを聞いて一同は押し黙る。そこでノーヴェが再び声を発した。

 

「大丈夫なのかよ、そんな奴直したりなんかして。ここで振動破砕とか使って暴れられでもしたら、あたしらもドクターも一巻の終わりじゃねえか」

 

「大丈夫よ。ドクターの調整で記憶や感情を抑えて言うことを聞くようにしてるはずだから~……だから友好を深める必要なんてないはずなんだけど……」

 

 クアットロが訝しげに付け足したところで、トーレがひそめた声で「しっ、ついたぞ」と告げた。

 彼女らの目の前には『開発室』があり、一同は口と足を止める。

 その先頭でトーレは開発室の前に立ち、コンコンとドアをノックする。

 

「ドクター、ナンバーズ一同参りました」

 

 そう告げた途端、彼女らを招き入れるようにドアが真横に開き、スカリエッティの返事を待たずナンバーズは部屋に入る。すると……

 

「ちょうどいいところに来たね」

 

 奥から男の声がかかり、一同はそちらに顔を向ける。

 そこには自身ら(ナンバーズ)の主にして“父”たるスカリエッティと、メガーヌたちと別れ一足先にこの部屋についていたウーノがいた。

 さらに彼らの横には……。

 

「紹介しよう。彼女は君たちナンバーズのオリジナルたる《タイプゼロ・セカンド》。そして私の改修によって君たちの新たな妹となった――『ナンバー・フォーティーン』だ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 そこにいたのはナンバーズたちと同じスーツと黒いジャケットを着た、“スバルと同じ姿をした戦闘機人”だった。例によって首元には“XIV”の数字を刻んだプレートがはめ込まれ、両頬に黒色のラインが入っているうえに、瞳は金色に染まっている。

 それだけならいいのだが……。

 

 

「あんたらが他のナンバーズか……見覚えがある奴も何体かいるな……ああ、地上本部であたしをボコってくれた奴らだっけ――あの時は世話になったなぁ、“姉貴たち”!」

 

 彼女はトーレやノーヴェに当てつけじみた台詞とガンを飛ばし、他の姉妹にも敵意のこもった目を向けてくる。そんな彼女にナンバーズたちは慄きを通り越して、ただ啞然とした目を向けた。

 クアットロは彼女ら以上に青ざめた顔で――

 

「ド――ドクター、どういうことですの!? タイプゼロもセッテたち後発機同様、余分な感情を排斥するよう申し上げたはずですが――」

 

 戸惑いを隠せない様子で問いただしてくる彼女に対し、スカリエッティは可笑しそうに笑い。

 

「確かに最初は君が言った方針(プラン)どおりにいこうと思ってたんだがね……彼女の戦闘データやチンクとの訓練の記録などを分析した結果、彼女は感情が昂るほどスペックが跳ね上がるタイプらしいとわかったんだよ。そこで一部の記憶と情動を少しだけいじって逆に――()()()()()()()()()()()()()()ようにしてみたんだ」

 

「…………」

 

 そう言ってクククと笑うスカリエッティを前にして、クアットロは口をパクパクさせる。

 やはりこの方は根っからのマッドサイエンティスト(狂気の科学者)……クアットロを含め何人かのナンバーズが胸中でそうつぶやかずにはいられなかった。

 そんな中、いち早く戸惑いから立ち直ったセッテが疑問を発した。

 

「しかし彼女の名前ですが、なぜ『フォーティーン』なのでしょうか? 13番目なのだから“サーティーン”か“トレディ”と呼ぶべきでは」

 

 その問いに、スカリエッティは邪気の薄れた表情で答えた。

 

「君たちにも何度か言ったし、タイプゼロ・“セカンド”という開発コードからわかると思うが、タイプゼロにはもう一体、《ファースト》という先発機がいてね。引き取り先でも彼女の妹として育てられたと聞いている。だから“サーティーン”はいったん空けて、この子を“フォーティーン”と呼ぶことにしたんだよ。先発機も近いうちに回収してナンバーズに加える予定だからね」

 

「ちっ、くだらねえ。あたしが先発機をぶっ壊しちまったらどうすんだよ?」

 

 面倒そうに頭をかきながら尋ねてくるフォーティーンに、スカリエッティは冷笑を向け。

 

「おやおや、実の姉を壊す気でいるのかい。頼もしいような恐ろしいような。まあ、もしもそうなってしまったら13(サーティーン)は欠番としておこう。どの道彼女も私の技術で作られた作品に変わりはない。それぐらいの扱いはしてもいいだろう?」

 

「好きにしな。サーティーンだろうがフォーティーンだろうが名前なんかどうだっていい。ファーストもエースオブエースもみんなぶっ倒して『最強の戦闘機人』だって証明する。あたしの興味と目的はそれだけだ! ――まずはそこの姉妹たちからぶち壊していこうかな!」

 

 ガンっと自らの掌に硬い拳を叩きつけながら、フォーティーンはナンバーズに獰猛な笑みと視線を向ける。それを前にウーノ以外の姉妹が構えを取った。

 しかし、スカリエッティは仕方なさそうな笑みを浮かべながら首を横に振り……。

 

「やめてくれたまえ。ここで同士討ちをされては困る。――三日だけ待ってくれ。今から三日後に地上部隊と本局――時空管理局そのものと戦う機会を用意すると約束しよう」

 

「本当だろうな?」

 

「ああ。三日後、君の力を試すのにぴったりなオモチャが地上に配置される。そいつに君の力を思う存分発揮してくれ」

 

 その言葉にフォーティーンは「わかったよ」と返しながら両手を下ろす。それを見やりながらスカリエッティは他のナンバーズに顔を向けて言った。

 

「さて、その三日後の戦いに備えて我々はこれからやるべきことがある。クアットロ、ディエチ、そろそろ“王”がお目覚めになる時間だ。彼女の様子を確かめに行ってくれ」

 

「――うん」

 

「は~い、かしこまりました~!」

 

 ディエチはうなずき、クアットロはあざとらしく右手を伸ばす仕草をしてから部屋を出て行く。

 自身に似た声色を響かせながら立ち去る“姉”を、フォーティーンは冷たい目で見送る。そこへ彼女と同じ容姿をしたナンバーがフォーティーンの肩を掴みながら声をかけた。

 

「おい、あんま調子に乗んなよ。もし姉妹に手を出すような真似をしたら、あたしがお前を叩き潰す!」

 

 ノーヴェはそう言って肩を掴む手に力を込めるが、フォーティーンはその手を乱暴に払いのけ――

 

「はっ、なんなら今すぐやり合おうか。三日間このままってのも退屈だし、一体ぐらいいなくなっても支障は出ねえだろう」

 

 そう言い放つとフォーティーンはノーヴェとしばらく睨み合う。そこでウェンディが二人の間に割って入った。

 

「まあまあ、ノーヴェもフォーティーンも落ち着いて! 同じナンバーズ同士仲良くしましょうよ! 特に二人は同じ遺伝元から生まれた姉妹なんっスから!」

 

 それを聞いてノーヴェはふんと鼻を鳴らし、フォーティーンも鼻白んだように二人から顔を背け、スカリエッティに向かって言った。

 

「とにかく三日後だ。三日以内に管理局の奴らと戦わせろ! それ以上は待てねえ。そいつらのうち二・三体は壊しちまうかもな」

 

 そう言い残すと、フォーティーンはそのままナンバーズの間をかき分けて開発室から出て行く。いつでもかかってこいと言わんばかりに隙だらけの背中を晒しながら。

 そんな新妹を呆然と見送りながら、オットーとディードは視線と通話をかわした。

 

《また、とんでもないのが加わりましたね》

 

《ええ。メガーヌ様とアギト様が抜けたのは幸いでした。特にアギト様がいたらもっと面倒なことになっていたでしょうから》

 

 

 

 

 

 その三日後、地上部隊が開発した最新兵器《アインヘリアル》を相手に、『最強の戦闘機人』を自称するフォーティーンの力と恐ろしさが遺憾なく発揮されることになる。

 同時に古代ベルカを統一した“王”と彼女が乗る“翼”も……。

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