魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第48話 繋がれぬ拳

「メガーヌ、アギト、もう一度言うぞ。大人しく投降してくれ。このままスカリエッティを放っておいたらとんでもないことになるくらいわかってるはずだ!」

 

 刀の柄に手をかけたまま、彼女らに言葉をぶつける。

 だが、メガーヌは首も振らずに言った。

 

「断るわ。私にも考えがある。今スカリエッティを裏切ったところで、最高評議会を野放しにしている限り奴のような人間がまた生み出される。腐ったものは根元から取り除かないと意味がないの。そのために私は上官と親友たちの仇(スカリエッティ)のもとに潜り込み、八年間準備と捜査を続けてきた――今さらここで止まるわけにはいかないっ!」

 

「お母さん……」

 

 悲しげな声を漏らすルーテシアを前にしても、メガーヌは曲げることなく戦う意思を見せる。

 チンクはその横に目を移し……

 

「アギト……お前も引く気はないのか?」

 

「おうよ! 姐さんが評議会って奴らを捕まえるっていうなら、あたしもそれについていくだけだ! 今の(ロード)・メガーヌと大儀のために、剣精アギト、この手の炎で押して参る!!」

 

 そう言い放つや、アギトはメガーヌの胸の中に入り込み、ともに「エンゲージ」と唱える。

 その瞬間、アギトと一体化したメガーヌの髪と瞳は橙に、バリアジャケットの一部は真っ赤に染まった。

 

 《融合(ユニゾン)》……やっぱりリインさんたちと同じ、古代ベルカの《融合騎》か。

 それに敵はあの二人だけじゃない――。

 

「――――」

 

 主たちに呼応するように、ガリューも腕から刃状の突起を生やし身を構える。

 どっちも接近系でかなり手ごわい相手だ。オレがどっちかをやるとしても、ルーテシアとチンクでもう片方を倒せるか?

 そう迷っていたところで――

 

《私がガリューを倒す。レツヤとルーテシアはメガーヌを食い止めてくれ》

 

《――っ!?》

 

 頭の中に直接届いてきたチンクの言葉に、オレとルーテシアは目を見張りながら彼女を見やる。

 

《ガリューは格闘型で間合いを取りながら戦えば、私だけでも十分勝ち目はある。だが、メガーヌは後方系の魔法も使える上にアギトと融合していてその力は未知数だ。ルーテシアが補助しながらレツヤが接近戦を仕掛けていくのが最良だろう》

 

《確かにそうかもしれないけど、大丈夫か? ガリューも何か隠し技を持っているかもしれない》

 

《いや、会話ができる使い魔と違って、召喚獣に魔法や技を覚えさせるのはかなり至難のはずだ。この前の戦いからしても魔法戦が得意ではなさそうだ。そうじゃないか、ルーテシア?》

 

《う、うん。ガリューのような甲殻虫は魔法を撃つより体の一部を武器にして戦う方が得意。それにお母さんの性格的に、苦手なことを覚えさせるより得意な戦闘法を伸ばしていくと思う》

 

 確かにそっちの方がメガーヌらしい。それに、さっきの話からしてガリューを鍛える暇もなかっただろうしな。

 

《わかった、チンクはガリューを頼む――だが危なくなったらすぐに下がってくれ》

 

 

「ふっ。甘く見るなよ。これでも入局6年。それに、昔戦ったSランク魔導師に比べれば可愛いものだ!」

 

 チンクは不敵な笑みを浮かべながら数本のスティンガーを掴む。

 そして旋空王から飛び降り、ガリューと刃をぶつけあった。

 

 それと同時に――。

 

 

 

「はあああっ!」

 

 オレは飛行魔法でメガーヌのもとまで跳び、加速の勢いを乗せた刃を振り下ろす。メガーヌは避けようともせず拳を引き――

 

『炎熱付加……』

「――烈火拳(れっかけん)!」

 

 刃と拳がぶつかった瞬間、オレたちの間で爆発が起こり火の粉が吹きすさぶ。

 頬や手足にかすった火粉の熱さに顔をしかめたところで、煙の向こうからメガーヌが飛び出してきた。

 

「はああああっ!」

「ぐっ――」

 

 炎を纏った拳を繰り出され、剣でガードするも勢いを殺しきれず、真後ろに飛ばされる。

 そこで建物の上を飛んでいた召喚虫(インゼクト)たちが細長い光線(レーザー)を放ってきた。

 だが――

 

「はああっ!」

 

 ルーテシアが放った紫色の短剣(ダガー)が光線に激突し、残りの剣がメガーヌの下へ飛ぶ。

 メガーヌは即座に左手に張った魔法陣を突き出して短剣を弾き、短剣を飛ばしてきた娘を見る。

 ルーテシアはそれに圧されず、毅然とした顔と目で母親を見返した。

 そこへ――

 

「――はあああっ!」

 

 メガーヌが気を緩めた瞬間、オレは刀を振りかぶってメガーヌに斬り掛かる。

 メガーヌは上体をそらして斬撃をかわし――

 

「このっ――喰らいなさい!」

 

 彼女は両腕を大きく開き、掌から出した炎を投げつけてくる。

 すぐさま火球をかわすも、その隙にメガーヌは大きく距離を取り、新たにいくつも火球を浮かべ、撃ち放ってきた。

 避ける暇はない。あったとしてもその隙を突かれかねない。

 なら――。

 

「――はあっ!」

 

 オレは刀を強く握り、縦に振り下ろす。その瞬間、炎はまっぷたつに割れ跡形もなく消失する。炎を生み出している魔力素を断ち切ったのだ。

 それを見てメガーヌは唖然と目を開く。その隙をつくように――

 

「チェーンバインド!」

 

 ルーテシアの声が響いた瞬間、下から鎖が伸び彼女の手足を拘束する。

 でかしたと思いながら、オレは刀を構えてメガーヌを睨み――

 

「はああああっ」

 

 縛られたままのメガーヌに向けて、オレは勢いよく突貫する。

 だが――

 

「かかったわね」

 

 メガーヌはにやりと口を吊り上げる。それを見て――

 

「危ない――レツヤ、よけて!!」

 

 下からルーテシアの叫び声が響き渡る。しかし、ここで止まるわけにはいかない。

 ルーテシアの叫びを無視して突進してくるオレを前に、メガーヌは縛られたままの右腕を腰だめに引き絞った。

 

 

 

 

 

 

「――であああっ!」

 

 いまだ刀を抜かず、柄を握ったまま棒立ちするミカヤに向かって、ノーヴェは光弾を放ちながら疾駆する。

 だが、ミカヤは身をよじって光弾をかわし、ノーヴェが間合いに入った瞬間目に留まらぬ速さで刃を引き抜き――

 

「――天瞳流・《水月》!」

「ぐっ――」

 

 躊躇なく繰り出された一閃をノーヴェは右手に嵌めた籠手(ガンナックル)でガードする。だが、攻撃を受け止めた一瞬の隙を縫うようにミカヤは二撃目を繰り出した

 

「――《二連》!」

「があああっ!」

 

 胴を打たれ、ノーヴェは鈍いうめき声をあげながら胸を抑える。しかしミカヤは攻めず、刀を収めながら冷静に彼女を見やった。

 

(体が硬いせいか手ごたえが感じられない。そのうえ、とっさに身をよじってダメージを抑えたみたいだ……深追いすれば返り討ちにあったかもしれない)

 

(あのガキより(パワー)は弱いが、技や練度は上をいってやがる。奴の姉弟子を自称するだけはあるな。だったら――)

 

 ノーヴェの足元から三本の黄色い道《エアライナー》が現れ、それぞれ異なる軌道でミカヤに向かって伸びてくる。そのうちミカヤから見て左側の道を疾駆しながらノーヴェが再び迫ってきた。

 それを見てミカヤはノーヴェと彼女が走る“左の道”に注意を向ける。間合いと遠近感を狂わせるためだろう、わざとジグザグにくねらせた道を走りながらノーヴェが近づいてくる。

 それに惑わされずミカヤは柄を握ったまま、じっと相手の接近を待つ。彼女がどれだけ迂回してこようと必ずこちらまで来るはず。射撃に注意しつつ間合いに入った瞬間を逃さなければどうという事はないはずだ。

 

 ミカヤの予想に違わず、ノーヴェは光弾を撃ちつつこちらまで迫ってくる。弾を避けながら、ミカヤは柄を強く握りその時を待つ。

 おそらくあと五秒――。

 

「…………」

 

 四、三、二、一。

 

「そこ――」

 

 ミカヤは声を発しながら刃を引き抜く。

 だがその瞬間、ノーヴェはあらぬ方へ飛び移り、刃を避けた。

 ミカヤはたまらず彼女の姿を追い、そして気付いた――いつの間にか自身の傍に()()()()()()が伸びてきていることに。

 

――しまった!

 

「でああああっ!」

 

 ノーヴェは威勢のいい掛け声をあげながら右腕を握り込む。

 そして刃を抜いたまま棒立ちしているミカヤの頬に拳を叩き込んだ。

 

「ぐあああっ!」

 

 重い打撃を喰らいミカヤは後ろにのけぞる。その隙を逃さず、ノーヴェはどてっ腹に拳を突き入れた。

 

「ぐあっ!」

 

 その衝撃で跳ね飛ばされ地面を転がるミカヤを前に、ノーヴェは迷うように顔をしかめるも心中で顔を振り、拳を構えなおす――が、そこでひっかかったような感触と不快感を覚え動きを止めた。

 ノーヴェは思わず自身の手先を見下ろす。そこで青色の縄が腕に巻き付いているのに気付いた。

 

「まさか――」

 

 呟きながらノーヴェは顔をしかめる。その先でミカヤは立ち上がりながら不敵な笑みを見せた。

 攻撃を喰らう代わりにバインドを仕掛け、ノーヴェの腕を封じていたのだ。

 

「こういう戦い方は好きではないんだが今は有事だ――このまま仕留めさせてもらうよ! はああっ!」

 

 ミカヤは柄を握ったまま体を前に傾け地面を蹴り上げて縛られたままのノーヴェに迫る。

 だが、ノーヴェはあえて体の力を緩めながら右腕を後ろに引き――。

 

――足先から下半身、下半身から上半身へ――“回転の加速”で拳を撃ち出す!

 

アンチェイン・ナックル(繋がれぬ拳)!!

 

 その瞬間、彼女の腕に巻き付いていた(バインド)は引き千切れ、解放された右腕から凄まじい衝撃波が放たれる。

 避ける間もなく、ミカヤの身体と苦悶の声は金色の衝撃波に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

「はあああっ!」

 

 拳を振り上げながら突進してくるギンガの拳をかわし、フォーティーン(スバル)は彼女のどてっ腹に拳を叩きつける。

 それを喰らって、ギンガはうめき声をあげながら真後ろに跳ね飛ばされた。

 ギンガは反動を利用して素早く身を起こしつつ、血反吐(ちへど)をぺっと吐き捨てながら足に装着しているブリッツキャリバーに視線をこぼす。それを受けてブリッツは宝石を点滅させながら応答を返した。

 

『Mach Calibur, no response(マッハキャリバー、応答ありません)』

 

――AIユニットをいじられてると見て間違いなさそうね。あの子に機能を止めてもらう手は使えなさそうだわ。早くみんなやフィルダーを助けに行きたいけど、今のこの子(スバル)が一番厄介――。

 

『Load cartridge』

 

 ブリッツキャリバーに呼応して、ギンガの両手に嵌められてるリボルバーナックルがカートリッジを吐き出す。

 それとともに左手首のスピナーがすさまじく回転し――

 

「リボルバーシュート!!」

 

 ギンガが振り上げた左腕から激しい衝撃波が放たれ、フォーティーンに襲いかかる。

 フォーティーンは「はっ」と鼻を鳴らしながら攻撃を避ける。その隙にギンガは足元から伸ばしたウイングロードを伝い、フォーティーンの真上まで移動する。上から攻められればフォーティーンとてただでは済まないはず。

 だが、フォーティーンはその場からギンガの前まで跳びあがり、勢いよく右腕を突き出す。

 ギンガは体の前にシールド(ディフェンダー)で張り、防ごうとするが――

 

「しゃらくせえ――」

 

 フォーティーンはカートリッジのロードとスピナーの回転で威力を上げた右腕を繰り出し、シールドを叩き割った。

 

「しゃあああっ!」

「ぐあああっ!!」

 

 シールドを叩き割った勢いのまま、フォーティーンはギンガの横顔を思い切り殴りつける。

 ギンガはよろめきかけながら空中へとウイングロードを伸ばし、フォーティーンから距離を取る。

 それを見てフォーティーンはにやりと口の端を吊り上げ、左手を伸ばした。それとともに彼女の左手が大きく形を変え、重砲型に変化した。

 

(まさか――!)

 

 

「ライフィス――バスター!!」

 

「きゃああああっ!」

 

 改造された腕から放たれた青色の砲撃《ライフィスバスター》を受けて、ギンガは悲痛な叫び声をあげながら吹き飛ばされる。

 さらにそこへフォーティーンが跳んできて、容赦なくギンガの体を蹴り落とした。

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