魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第4話 初訓練

 七課に配属されて二日目。

 朝食を終えてすぐオレたちは訓練着に着替え、隊舎から少し離れた海岸にやってきた。

 そこにはすでに御神隊長とリイン副隊長が待っていた。二人はオレたちと違って陸士服を着ている。

 そしてさらに二人の隣には、女の人が二人立っていた。どちらも眼鏡をかけていて、短い緑髪の女性は青い本局制服と白衣を着ており、もう一人の亜麻色髪の女性はラフな私服を着ていた。

 どういう人たちだろうと思ったところで、チンクが目を見張り――

 

「――マリエルさん!」

 

「チンク、半月ぶり! 元気にしてた?」

 

 マリエルという緑髪の女の人は、チンクに向かって手を振ってくる。彼女に向かってチンクは頭を下げた。知り合いか元同僚といったところだろうか。

 御神さんが口元に手を当てながらごほんと咳ばらいをすると、チンクとマリエルさんは口を閉ざして彼の方を見る。オレとルーテシアもそれに従った。

 

「じゃあ今日から訓練と行くが、その前にこの部隊に協力してくださる協力員を二名紹介させてもらう。――お願いします」

 

 御神さんが目配せすると、マリエルさんが一歩進んで口を開いた。

 

「本局技術部の技術官、マリエル・アテンザです。六課と七課の協力員として、みんなのデバイスのメンテナンスや整備を担当します。みんなはマリーって呼ぶから、よかったらそう呼んでね!」

 

 そう言いながら笑いかけるマリエルさんに続いて、亜麻色髪の女性がその場に立ったまま口を開いた。

 

「民間の技術者、クレッサ・ティミルよ。マリエルさん同様ここの協力員として、演習用のターゲットの作成を担当することになったわ。今日、本当はモニター越しで見学するつもりだったけど、昨日から息子夫婦と孫が来ていてね、あの子たちにここの様子を見られるわけにいかないから直にお邪魔させてもらうことにしたわ」

 

 そう言って腕を組む彼女を見ながら、オレは内心この人何歳なんだと首をひねる。見た目だけなら30代半ばといったところで、とても孫がいるようには見えない。

 そんな事を考えてるオレの横で、今度はルーテシアが声を漏らした。

 

「クレッサ……もしかして傀儡(ゴーレム)研究の第一人者、クレッサ・ティミル博士?」

 

「知ってる人か?」

 

 オレが尋ねるとルーテシアはこくりとうなずく。

 

「うん。授業中のVTRやミッドチューブで何度か見たことがあるから。召喚士として傀儡(ゴーレム)には興味もあったし」

 

「そう。そう言ってくれる子に会えて嬉しいわ。近頃は異世界のロボットが人気で、傀儡(ゴーレム)に興味を持つ子は少なくなったって聞くから」

 

 まんざらでもなさそうにティミルさんは言葉を返す。そこで再び隊長が口を開いた。

 

「すみません、話はまた後にしてください。――そろそろ訓練に入る。リインフォース副隊長、“ステージ”の用意を」

 

「――はい!」

 

 リインさんは答えながら自分のまわりに出現させたコンソールを軽快な手つきで操作する。すると海の上に浮かぶパネルの上に、都市のような空間が浮かび上がった。

 

向こう(六課)の教導官が監修した《訓練用空間シミュレータ》だ。それにティミルさんと“もう一人の協力員”に手を加えてもらった。あそこで実戦訓練をしてもらう――わかったらステージに上がってくれ。時間というものには限りがあるんでな」

 

 御神さんの指示にオレとチンクは「はい!」と答え、ルーテシアは無言のまま海上の道を走ってステージに向かう。

 そんなオレたちの後ろで……。

 

「リイン、このまま“目標(ターゲット)”の準備も頼む。今回は20機」

 

「はい。動作レベル、攻撃精度ともに“3”でいいんですね」

 

 リインの確認に健斗は頷き……。

 

「ああ、まずはそのぐらいでいいだろう……ただし、チンクと戦いそうな機体だけは“5”に設定してくれ。あいつはガジェット戦に慣れてるからな」

 

「はい、わかっています」

 

 

 

 

 

 海上に再現された都市に辿り着き、オレたちはそれを見渡す。ホログラムらしいけど、建物は触ることができるし、感触も本物としか思えない。

 あちこち確かめているところで突然、オレたちの前の道路に円状の魔法陣が現れ、そこから楕円上の機械が現れる。そこで御神さんの声が響いた。

 

『そいつらは数年前から度々出現するようになった、《ガジェット》という魔導機械だ。10分以内にそいつらをすべて捕獲、または破壊すること。できれば三機は捕獲するように心がけてくれ。それをクリアできるかどうかも、六課転属の判断材料にさせてもらう』

 

「ガジェット……」

 

「あれを10分以内に全部破壊」

 

「しかも最低三機は捕獲か……」

 

 ガジェットってやつと対峙しながら、オレたちは御神さんが言ったことをそのまま口にする。そこで何機かのガジェットが青いレーザーを撃ち出してきた。オレとチンクはその場から跳躍してかわし、ルーテシアは右腕を突き出しバリアを張って弾を弾き、そのまま伸ばした人差し指から紫色の光線を放つ。

 しかし、光線はガジェットの前に張られた透明のシールドに遮られた。

 驚いて目を見開くオレたちを尻目に、ガジェットは背中を向けて逃げようとする。オレはすかさず銃型デバイスを構えて――

 

「はあっ!」

 

 ガジェットに向かって引き金を引いた瞬間、橙色の魔力弾が撃ち出される。しかし、オレが放った魔力弾もガジェットのまわりに張られたシールドに打ち消された。

 

「これは……」

「魔力が、打ち消されてる?」

 

 ルーテシアとオレが思わずつぶやいたところで、再び頭上から御神さんの声が響いた。

 

『その通り。確認されている限り、すべてのガジェットには魔力反応を打ち消す《アンチ・マギリング・フィールド(AМF)》という防護魔法を発生させる装置が組み込まれている。それのせいで生半可な攻撃は全く通用しない』

 

「AМF……大型の装置でないと発生させられないはずなのに」

 

 表向きには存在しないとされる『小型AМF発生装置』に慄きを覚える。

 そんな中、チンクは次々に数本のナイフを取り出し、「はぁっ!」と掛け声を漏らしながらそれらをガジェットに投げつけた。魔力でできた武器とは違う()()()()()()はあっさりAМFを通り抜け、ガジェットにあたる。しかしあんなもの、鋼鉄でできたガジェットに通用するはずがない。

 だが、ナイフがガジェットにあたった瞬間、チンクは左手の先に見た事のない《陣》を浮かべ……

 

「IS発動――《ランブルデトネイター》!」

 

 唱えながらチンクが右手の指を鳴らした瞬間、ナイフは爆発し、ガジェットは大破した。

 チンクはさらにナイフを取り出しながらオレたちを振り返り――

 

「レツヤ、ルーテシア、ぼやぼやするな。ぼうっとしていると私がすべて破壊してしまうぞ!」

 

「あ、ああっ!」

「――」

 

 その言葉にオレとルーテシアは気を取り直す。まだ19機ある。ここで彼女に後れを取るわけにはいかない!

 

 

 

 

 

 

「やっぱりあの中じゃチンクが一番実戦慣れしてるね。六課転属に一番近いのはあの子かな?」

 

 モニター越しに訓練を眺めながら、マリエルさんは感嘆の声を漏らす。数年間チンクを診てきたこともあって、彼女の声には嬉しそうな響きも感じ取れた。そこへ隣からティミルさんが口を挟む。

 

「それもあるでしょうけど、《IS》というAMFさえ通用しない能力とあの子自身の身体能力も大きいでしょうね。あの子と他の二人を同じ条件で競わせるのはアンフェアじゃないかしら」

 

 俺の方を向きながら言うティミルさんに、俺は向こうの様子を見たまま答えた。

 

「それぐらい考慮に入れてますよ。撃破数以外にも魔法や技能の使い方も見て判断するつもりです。ただ、ここでチンクに完全に遅れをとっているようでは、レツヤとルーテシアを戦力に数えるのは難しいとも思っています」

 

「手厳しいわね。同感だけど」

 

 俺の考えに対して、ティミルさんは納得したように首を縦に振る。

 この先起こるだろう事件の事を考えたら、ガジェット()()()に苦戦するようでは話にならない。最低でも一ヶ月後までにチンクに迫るぐらいの実力は持たせておきたいところだ。

 

「まあ、そこはあなたに任せるわ。私はせいぜいこの演習のデータを基に、ターゲット用傀儡(ゴーレム)の作成に勤しむとしましょう。その代わり、六課の部隊長さんに掛け合って“六課と七課の合同演習”を担当させてちょうだい。私に任せてくれたら、プレシアが造った傀儡(ゴーレム)なんかより遥かに高性能な“敵”と高難度のステージを用意してあげるわ」

 

 そう言ってティミルさんは怪しげな笑みを浮かべる。そんな彼女を見てリインとティミルさんは顔に冷や汗を流し、俺はため息をつきながら言葉を漏らした。

 

「……十年前、あんたが敵でなくてよかったですよ」

 

 

 

 

 

 

「くっ――はあっ!」

 

 ガジェットを追いながら銃を構え弾を撃つ。しかし奴らは見た目よりはるかに速い動きで弾をかわし、うまく当てられてもAМFで打ち消されるだけだった。チンクはもう五機も破壊してるっていうのに。

 

――普通に撃ってたんじゃ傷一つつけられない。なんとかして奴らが予測できない方向から、AMFを破れる弾を撃ちこまないと。……“あれ”をやるしかないか。

 

 オレは足に身体強化をかけながら道を駆け、四機のガジェットを視界に捉える。さらにその最中、カートリッジを三発吐き出しながら銃に魔力を込め、複数のバリアで包んだ魔力弾を形成しながらガジェットの先にある建物の壁に狙いを付けた。

 

「――はあっ!」

Variable shot(ヴァリアブル ショット)!』

 

 銃口から音声とともにバンッと破裂音が響き、橙色の弾が発射される。

 弾はそのまま目標の建物にぶつかって硬い壁に弾き返され、()()()()()()()()()()()()()。ガジェットは即座にAMFを張り巡らせるが、バリアに包まれた弾は消される事なくAMFとその向こうに浮かぶガジェットを貫き、爆散させる。

 機体が一つ破壊された事に反応し(気付き)、他の三機は一斉に反転し弾を撃ってくる。オレはそれを躱しながら――

 

「行くぞ――《落葉(らくよう)》!」

『応!』

 

 オレが呼びかけた瞬間、腕に填めていた腕輪状のデバイスが応答し、“鞘に収まったままの日本刀”に姿を変える。オレは愛刀を掴み取りながらガジェットに迫り、落葉の柄に手をかけ――

 

「天瞳流抜刀居合――《天月》!」

 

 鞘走りを利用して瞬時に刃を抜き、ガジェットを袈裟斬りに裂き斬る。それを受けてか残り二機の内、一機がオレに砲口を向け、もう一機が背を向けて逃げようとする。

 オレは一度刀を鞘を収め、攻撃を避けながら一体を斬り捨てる。その間に残り一機はオレから距離を取るが――。

 

「《ストップ・ザ・ファイブ》!」

 

 技能名を叫んだ瞬間、最後の一機はピタリと動きを止める。オレはもう刃を収める事もせず、真上から刀を振り下ろし、ガジェットの中心部を貫いて動きを止めた。

 

 

 

 

 

 その頃、ルーテシアの方でも……。

 

「……リフレクト・ミラージュ」

 

 ルーテシアの声に手袋型のデバイスがコアを点滅させて応えた瞬間、五機ものガジェットのまわりに無数の魔法陣が出現する。さらにルーテシアは自身のまわりに出現させた紫の短剣をガジェットに向かって撃ち出す。

 ガジェットはその場から素早く動いて避けるものの、短剣は魔法陣にはじき返されて再びガジェットの方に飛んでいき、それを繰り返していくうちにガジェットらはとうとう為すすべなく無数の短剣の串刺しにされた。

 それを見て魔法陣に囲まれていなかった二機が逃げるものの、ルーテシアはそれを一瞥し……。

 

「召喚……インゼクトツェーン」

 

 ルーテシアが両腕を広げながら唱えた途端、彼女の足元に三角の魔法陣が浮かび、そこから細長く透明な繭が飛び出し、さらにその中から十匹の《召喚虫》が出てくる。

 ルーテシアは逃げるガジェットを指さしながら、命じる。

 

「ミッション、オブジェクトコントロール」

 

 その直後、十匹の召喚虫はガジェットを追って取り憑き、内部から動きを停めて“捕獲”した。

 

 

 

 

 

「テンドウ二士、アルピーノ三士、ともにガジェットを破壊しました。捕獲のノルマも達成しています。残りの機体もすでにナカジマ三士が撃破済みです」

 

「了解。今の訓練のデータはそのまま保存しておいてくれ。そのデータを参考にマリエルさんはあいつらのデバイスの改良を、ティミルさんは仮想敵(ターゲット)の作成をお願いします」

 

 リインの報告を受けてすぐに指示を出す俺に、マリエルさんは「うん、任せて!」と、ティミルさんは「すぐ仕上げてみせるわ」と答えてくれる。

 それにうなずいてから、俺はすぐに次の訓練の準備を指示した。

 

 

 

 今の訓練でおおよそ三人の特性は掴めた。

 しかし、レツヤの技能《ストップ・ザ・ファイブ》か。父親も似た技能を持っていたらしいな。まさかと思うが……。

 チンクとルーテシアもだが、レツヤも大きな事情を抱えていそうだ。

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