魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第51話 最後の捜査・開始

 “俺たち”の一撃を受けて大きな傷を負い、さらに気を取り戻したメガーヌの送還術によって白天王は姿を消し、あたりに静寂が戻る。それを破ったのは……。

 

『ぐ、愚王――いつの間にここに? それに融合騎と合体してるとはいえ、白天王を一撃で倒すなんて――一体どんな魔法を使ったんですの!?』

 

 モニターの向こうでがなり立てるクアットロというナンバーズに、俺は頭を掻きながら言った。

 

「まあ昔、あれぐらい巨大な敵と戦ったことがあるし、今回はコアも丸わかりだったからな。それと人聞きの悪い呼び方するな。独立分隊の分隊長、御神健斗だ。それぐらいもう調べてるだろう」

 

 そう言うとクアットロは頬を歪めて笑みを作り、

 

『あら、この子たちはまだ知らなかったんでしたっけ? これは失礼しました、()()()様』

 

 悪いなどと露ほども思ってなさそうな表情と声色で、彼女は薄っぺらい謝罪を口にする。そんなやり取りを聞いて怪訝そうに眉を寄せるレツヤたちや“元仲間”をよそに、クアットロは取り直すように咳払いしながら言った。

 

『まあいいですわ。……それで、ろくに空も飛べない新人さんたちと一緒に《ゆりかご》に乗り込むつもり? もちろん、あなたたちの来訪に備えたおもてなしの用意もしてますが』

 

 挑発的な問いに俺は首を振り。

 

「いいや、そっちにはすでにおっかない隊長(エース)たちが向かってるし、お前やゆりかごなんぞにつられてる間に本局が落とされたら管理局はおしまいだ。あっちは六課の隊長(エース)たちに任せて、俺たちはこのままボスを捕まえに向かわせてもらう」

 

『もっともらしいこと言って――ほんとは自分を殺した聖王様が怖いだけじゃないんですか~?』

 

 また俺の正体をほのめかしながら挑発するクアットロに、俺はため息をつき、

 

「なんとでも言え。そっちこそ今のうちにあの子を解放して投降した方が身のためだぞ。今の“あいつ”なら本物の聖王ともタメ張れそうだからな」

 

『ご忠告どうも……では私は、聖王陛下とお母様の感動の再会の仲介(マネジメント)という大切なお仕事がありますので』

 

 忠告に従う気はないか……。

 慇懃に頭を下げながらモニターを切る敵にあきれながら下を見ると、思い思いの顔でこちらを見る部下たちや元敵と目が合った。俺はリインと分離し、彼らのもとへ降りる。

 

「隊長、一応報告しておきます。メガーヌたちの身柄を確保しました。ここまでの事はどのぐらい?」

 

 レツヤの問いに頷き、

 

「おおよそ把握してるつもりだ。さっきの奴がべらべら話してたからな。周波(チャンネル)も絞らず発信してたみたいだし、オペレーター陣もたぶん聞いてる」

 

 そう言うとレツヤたちもあきれ顔になる。

 スカリエッティ以上に自己顕示欲の強い女だ。あれでよく十年も逃げられたな。まあそれもあいつらを追うべき管理局のトップ、最高評議会がバックについていたせいだが。

 

「まっ、そういうわけでさっきあいつに言った通り、俺たちはこのままスカリエッティを追う。が、その前に――ルーテシア、メガーヌたちをアースラまで転送する準備をしてくれ」

 

「えっ?」

 

 突然の指示にルーテシアは思わず声を上げる。だが、傷ついた母親を見てすぐに思い返し、首を縦に振った。

 

「さすがに捕まえたばかりの容疑者を戦わせるわけにはいかんし、メガーヌの頭の中にはなんとかコンソールっていう洗脳装置がある。まずはそれを除去してもらわないとな。そっちの子も念のために調べさせてもらう」

 

 メガーヌの隣を飛ぶ小人型の女の子に向かって言うと、その子は不審げに口を開いた。

 

「てめえ、んなこと言って姐さんやあたしを実験動物にするつもりじゃねえだろうな?」

 

「……お前はベルカの融合騎(ユニゾンデバイス)だったな」

 

 訊ねるとその子は小さな手から炎を出して――

 

「ああ。もし姐さんとあたしに手を出そうってんなら、こいつでてめえらの本拠地を――」

 

「そんなことは絶対にさせない! 向こうのトップもベルカの騎士でお前や私のような融合騎も抱えている、信頼できる(ロード)だ」

 

「私のようなって――まさか、お前も?」

 

 驚きを隠せず問いかける彼女に、リインは硬い面持ちで頷きを返した。

 

「ああ。お前とは少し(タイプ)が違うが、同じベルカの融合騎だ。ここは私と私たちの主を信用してくれないか」

 

 顔を硬くしながら返事を待つリインをアギトはじっと眺め、手の中の炎を消しながら答えた。

 

「確かに人間よりあたしらに近いみてえだな…………わかったよ。同じ融合騎だっつうお前を信用してやる。その代わり、もし裏切ったらお前の主って奴を燃やしてやっからな。覚悟しておけよ」

 

「その必要はない。むしろ事件後に嫌というほど猫可愛がりされるだろうから、そっちの覚悟をしておけ。……メガーヌさん、“例の場所”へのパスを教えてください。そこにスカリエッティがいるはずですから」

 

「……わかったわ。くれぐれも気を付けなさい。采配ミスなんかで娘に傷でも負わせたらただじゃ済まさないから」

 

 凄むような言葉をかけつつ、メガーヌは念話でパスワードを伝えてくる。それらに対しわかったという代わりに頷きを返し、ルーテシアに目を向ける。俺たちが話してる間に準備を終えていたようで、ルーテシアは頷きメガーヌたちに言った。

 

「じゃあお母さん、アギトさん、今からアースラという船に送るから私の前に並んで」

 

 娘の言う通りにメガーヌたちが並ぶと、彼女たちの足元に転送陣が現れ、彼女たちは紫の光に包まれアースラの方へ飛んでいく。

 束の間の別れを惜しみながらルーテシアは向き直り、他の二人もこわばった顔と体を向けてくる。

 そんな部下たちを見てから、リインに顔を向けると彼女もこくりと頷きを返した。

 ――今のこいつらなら問題ない。

 

「よし、じゃあ行くぞ。機動七課、最後の捜査。レリック事件と今回のゆりかご事件を起こしたスカリエッティを捕まえるために――『管理局本局の秘匿フロア』へ!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 

 

 

 

 

「ボンッ!」

 

 頭の中に仕掛けられた爆弾が爆発する()()()瞬間、スカリエッティは軽やかに擬音を口ずさむ。それを聞いて、評議会の面々は頭上に疑問符を浮かべながら驚きの声を上げた。

 

『ば、ばかな……』

 

『エラーか? も、もう一度やれ!』

 

『――、――、――駄目だ。なぜ、なぜ爆発せん!?』

 

 評議長はうなり声をあげながらスカリエッティに向けて何度も念を送るものの、スカリエッティは余裕の笑みを浮かべてたたずむのみだった。それを見て三人の脳裏にまさかという言葉が浮かぶ。

 その言葉と想像を肯定するようにスカリエッティは首を縦に振った。

 

「ああ。あのオモチャならとっくに解除しておいたよ。プロテクトも少なく、拍子抜けするほどあっさりハッキングできた。向こうにとっては()()試作品だったようだね」

 

『ば、馬鹿な!? “ユニット”はちゃんと機能してるはず――』

 

 評議長は声を荒げながら、スカリエッティのモニターを浮かべる。そこには“ユニット”が生き(機能し)ている証拠としてスカリエッティの脳波が映っていたが……。

 

「まだ取り出してないからね。あなたたちの慌てぶりが見たかった――もとい、隙をつくために埋め込んだままにしてある……そして、あなたたちの方はそろそろ……」

 

 そう言ってスカリエッティは右腕を上げ、腕に嵌めた時計を見る仕草をする。

 それと同時に――

 

『ぐっ……ぐぉ……っ……』

 

『ど、どうし――うぐっ』

 

 評議員と書記はくぐもったうめき声を漏らす。そんな二人の間で評議長は愕然とつぶやいた。

 

『ジェ、ジェイル……おまえ、まさか……』

 

 それに対し、スカリエッティは大きな頷きを返し。

 

「ああ。あなたたちの“容れ物”にちょっと細工をしてね。生命線である培養液のろ過が始まるように仕込んでおいた。数十年ぶりの真水の味はいかがかね?」

 

『ば、ばかな……そんな真似ハッキングだけでは……ここまで来ない限り不可能なはず……』

 

 苦しげな声で訊ねようとする書記に、スカリエッティは笑みを深めウーノに目配せをする。それを受けてウーノも冷ややかな笑みを浮かべながら、軽やかな手つきで鍵盤状のキーボードを叩く。

 すると、彼らの前――誰もいなかったはずの居室にスカリエッティとウーノ、さらにその後ろからトーレとセッテも現れた。

 反して、スカリエッティたちの前には変わらず、長く巨大な三本のポッドが伸びていた。その中に一つずつ“肉体を捨てた評議長たちの脳髄”が入っている。

 

『ど、どうやってここに……いや、いつの間に?』

 

 愕然とした声色で問いかける評議長にスカリエッティは芝居がかった仕草で両手を広げながら言った。

 

()()()()()! あなたたちが私に通信を入れるよりずっと前から、()()()()()()()()()。眼も耳も失い、私が乗っ取ったカメラ越しにしか見ることも聞くことができない状態では気付きようもなかったろうがね――クククッ」

 

 驚愕のあまり、三人は一瞬苦しみも忘れて言葉を飲み込む。

 局の最高幹部でさえ踏み込めぬ、自身らの牙城。そこへ踏み込んだばかりか、自分たちの五感――そして命までも手中に収めているというのだ。

 そうこうしているうちに評議長も(からだ)の中から空気がなくなっていくような感覚を覚えた。その感覚に(あたま)を埋め尽くすほどの恐怖を覚え――

 

『わ、わかった! これからはお前の好きにさせてやろう! 研究の支援も変わらず続けると約束する! だから頼む! 早く培養液を――』

 

 評議長はついにスカリエッティの自由を約束し、自身たちの延命措置を願い出る。だが、スカリエッティは笑みを浮かべたまま首を横に振り。

 

「十分好きにさせてもらってるし、資金元の目途もある。あなたたちは何の心配もせず――楽になってくれ」

 

 彼の口から冷酷な宣告がくだされた、その瞬間――

 

『う――ぐおおおっ!』

『お、おい――うぐぅっ…………』

 

 評議員、続いて書記も苦悶に満ちた声を上げ、やがて何も発さなくなる。そしてただ一人残った評議長にも最期の時が迫ってきた。彼は薄れゆく意識を絞り……。

 

『ジェ、イル……復讐……のつもり、か…………』

 

 その問いにジェイルはわずかばかり真剣な顔を作り、言った。

 

「いいや、“感謝”のつもりだよ。私に『生命操作技術の完成』という素晴らしき目的を与え、それを叶えるための道具も用意してくれた。そのせめてものお礼に、あなたたちを苦しいだけの生から解放してあげようと思っただけさ。今までありがとう……ただ、生命操作技術完成とともに出来上がるはずの“成果品”を見せられなくてすまない……それだけ謝らせてくれ、“お父さん”」

 

 ジェイルは頭を下げ、()()()()()父に詫びる。それを前に……。

 

『くっ……狂っている…………』

 

 最後にそう零しながら、評議長も反応を見せなくなる。そこでスカリエッティは頭を上げ、“狂気の研究者(マッドサイエンティスト)”に似つかわしい高らかな笑い声をあげた。

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