魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
「お遊びは終わりだ――IS《ドレッド・ブレイズ》!!」
トーレが両腕を掲げた瞬間、彼女の腕は紅蓮の炎に包まれ、暗い次元空間を照らす。その直後、彼女は瞬時にオレの眼前に現れ、炎を纏った拳を振るってきた。
「喰らえぇぇ!!」
「ぐッ――!」
オレはとっさに銃を捨てて展開した
それにうめく暇すらなくトーレが放った第二打が盾を砕いた。その瞬間、オレは口を開き――
「ストッ――」
「させんっ!」
トーレは右腕を捻り上げ、視界を炎でふさぐ。反射的に言葉と動きを止めるオレの真横にトーレが移動し、炎に包まれた腕を振り上げた。
「はあああっ!」
「――ぐああっ!」
受ける暇も避ける暇もなく、腹元を炙られながらオレは虚数空間に向かって落下していく。そこで「レツヤ!」と声がかかり、ルーテシアが出現させてくれた魔法陣がオレを受け止めてくれた。オレは「サンキュ!」と礼を言いながらそれを踏み台にして飛び上がる――その時だった。
「今です――はあああ!」
セッテは
「させるか――」
チンクはすぐにセッテと矢を狙ってスティンガーを投げつける。だが、それより速く矢は撃ち放たれ、さらにセッテは空いたブレードを構えてスティンガーを叩き落とす。そしてもう一本の矢もスティンガーとチンクをくぐり抜けオレに向かってまっすぐ飛んでくる。オレは刀を振り上げ矢を弾き上げる。
「はああっ!」
チンクはセッテに向かってスティンガーを飛ばすが、セッテは矢筈で弾き飛ばす。そしてそのまま矢はオレの方へ向かって飛んでくる。
「このっ!」
オレは刀を振り上げ、矢を叩き落とす。その合間に――
「――今ですっ!」
セッテはその場から跳び上がり、棒立ちするルーテシアに斬りかかる。
「まずい――逃げろルーテシア!!」
オレが叫びに反応し、ルーテシアもすぐさま後ろへ駆ける。そんな彼女の前にトーレが回り込んできた。
「っ――この!」
ルーテシアは片手をあげて衝撃波を撃つ。だがトーレはひらりと首を捻じって衝撃波を避けルーテシアに向かって拳を突き出した。
「はああっ――!」
「――危ない!」
その時、チンクがルーテシアの前に飛びこみ、トーレの一撃を受ける。シェルコートに守られたことと受け身を取っていたためダメージはない。。
が、トーレの拳の勢いはすさまじく、チンクの体は大きく吹き飛び、そのまま足場から転がり落ちていき――
「――チンク!」
それを見て、ルーテシアは前にいる敵二人も忘れ、たまらずチンクを追う。
だが、彼女はそのまま暗い虚数空間に落ちていく。それを見てトーレも目を見張る。
そんな中、チンクは懸命に恐怖をこらえながらオレたちを見上げて笑みを浮かべ、
「あとは頼む」
それを聞いた瞬間、オレはたまらず端まで走って手を伸ばす。
が、チンクにはまったく届かず、彼女は真っ黒な闇の底に向かって落ちていく。
だというのに、チンクの顔はオレたちを活気づけるように、あるいは今までの報いを受ける時がきたかのように穏やかな笑みを浮かべていた。
――これがチンクの償いだっていうのか? これがあいつに相応しい最期だっていうのか!?
――ふざけんな! こんな罰も、こんな結末も、こんな別れも――オレは絶対認めない!
「ストップ・ザ・アレス!!」
あらん限りの声で頭に浮かんだ《呪文》を叫んだ瞬間、警戒の目を向けるトーレたちも、固唾を飲んでいるルーテシアも、隅で横たわっていた旋空王も、昏い底に向かって堕ちかけていたチンクも……
――一歩も動けない。奴の視界に入ってないどころか、ほとんど別の方向を向いているのに、しかももう三十秒も経ってるのに……。
――これが《マセラティ》の真の技能……《愚王ケント》の技能と同じ、《闇の書》さえ不可能だった『時間への干渉』をも可能にする力……まさか、ここで目覚めるとは……。
微動だにしない敵と味方をよそに、宙を浮かんでいるチンクの元へ飛び、彼女を抱き上げて浮島に昇る。
そして、
「戦闘機人として生まれたら兵器としてしか生きられない? 馬鹿言ってんじゃねえよ! チンクもスバルもギンガさんだって、泣いたり笑ったり、友達と遊んだりケンカしたり、勉強したり仕事したり、オレたちと変わらねえ人間として生きてるんだ! それを知ろうともせずスカリエッティにしがみついて、しまいには平和に暮らしてる人間やいち早く解放されたチンクに八つ当たりかよ――姉妹11人も揃って情けねえっ!」
毒づくオレに、トーレもディードも顔を青くするばかりで何も言えずにいる。“強制停止”の技能がかかっているのもあるだろうが、かかっていなくてもまともな返事も返せないだろう。
いかにも図星だって顔してるからな。
「それがわからねえってんなら、教えてやるぜ! お前たちが馬鹿にしてる“外”で、チンクとオレたちがどんな特訓を積んできたかを!」
「レツヤ……」
「……」
トーレたちはおろか、ルーテシアとチンクもじっとオレの
「無限の欲望だろうが、最高評議会だろうが、聖王のゆりかごだろうが、愚王だろうが、この世界の人たちや平和を踏みにじろうとするやつはみんな――オレが
◇
その頃、アースラの治療室にて。
「気分はどうかしら? 今流し込んだワクチンで《コンシデレーション・コンソール》のプログラムを無効化してるところだけど」
私服の上に白衣を着て、紫色の瞳の上に眼鏡をかけた黒髪の女の問いに、メガーヌはベッドに横たわったまま首を横に揺らす。頭についてるヘッドギアがなければもう少し大振りに動かすこともできただろう。
「いえ、なんともありません。まあ多分、スカリエッティたちにとって私は用済みなので、今さら洗脳してどうこうされることはないと思いますけど」
その返事に今度は黒髪の女が首を横に振った。
「まだ油断はできないわ。スカリエッティの他にも厄介な愉快犯がいるみたいだし。ここで白天王や他の召喚虫を出されたらとんでもないことになる。悪いけどコンソールが無効になったとわかるまで大人しくしてもらうわ」
――まあ、その白天王も御神君が弱らせてくれたみたいだし、私とシグナムさんがいればなんとかできると思うけど……。
内心で付け足しながら黒髪の女は素知らぬ顔でキーボードを叩き続ける。
彼女は十年前に犯した罪と諸々の事情により、家族ともども地球に移り住んだうえに、管理管理外世界問わず魔法の使用は原則禁じられている。しかし、今回は機動六課および七課の臨時協力者としてアースラに呼ばれ、自衛と一定以上の幹部の承認で魔法とデバイスを使用できることになっていた。
「アギトは?」
「隣の部屋でマリエルってスタッフが見てるはずよ。あの子もこの手の作業はかなりのものだし、同型のユニゾンデバイスを作ったこともあるから私より向いてるはずよ」
「そうですか……」
メガーヌは相槌を打ち、診察机の隅に置かれている杖状のデバイスを見て再び口を開いた。
「あなた、もしかしてプレシア・テスタロッサさん……? スカリエッティから何度か聞いたことがあるわ」
それとスカリエッティのもとにいた時、彼の協力者・関係者の素性は可能な限り調べてある。プレシアのことも彼が作った研究施設の一員としてマークしていた。『J・D事件』の主犯ならなおさら。
メガーヌが元捜査官だと知るプレシアは顔を青ざめさせもせず頷いた。
「ええ。一昔前、あの男の所で研究をしていたことがあるわ。奴の元共犯という意味ではあなたと似たような立場ね」
「そうですね……ごめんなさい」
「いいわ。違法研究と知りながら協力していたのは確かだし、自分の目的のためにあいつを利用したつもりで《プロジェクトF》なんて完成させた私の方があくどいもの」
メガーヌの謝罪をすげなく笑い捨てながらプレシアはモニターに目を通し、全てのコードが無効化されてあることを確かめ、眼鏡をはずしながら彼女の方を向いた。
「コンソールはすべて無効化されてある。もう大丈夫よ。ただ、あの男が作ったプログラムだから絶対とは言い切れない。念のためあなたとアギトって子にはこのまま医務室で休んでもらいたいんだけど……」
『ゆりかごから小型艦載機50機以上、地上に降下しています! 航空魔導師、誰かいないか!?』
管制士の荒ぶった声が室内にまで響き渡り、プレシアとメガーヌは思わず顔を上に向ける。そこでドアが開き患者着のままのアギトが、その後ろから眼鏡をかけた短い緑髪の技官マリエルが飛び出してきた。
「姐さん! 大丈夫か?」
「ええ、アギトこそもう平気なの?」
問いかけるメガーヌにアギトは「おう」と胸を反らす。
その横でマリエルがプレシアに向かって頭を下げていた。
「すみません。放送を聞いた途端、言葉どおり飛び出して行っちゃって」
「いえ、今はまとめて目の届くところに置いた方がいいわ。ところで敵が下りてきているって聞こえたけれど」
「あっ、はい。ゆりかごからガジェットが出てきたんですけど、現場じゃもう手が回らなくて。シグナムさんが出てくれるみたいですけど、あれだけの数、シグナムさんだけじゃ……」
戦力として見ればプレシアなら対処できるかもしれないが、彼女はAMF戦の経験がほとんどなく、囲まれて捕まってしまう危険が大きい。もしプレシアほどの研究者がスカリエッティの手に落ちてしまったら。そう考えると彼女を戦場に出すのは危険だった。
一方、二人のやり取りを聞き、メガーヌは顎に手を当てて『シグナム』と小さく呟く。
確か、以前までの戦いでもそんな名の魔導師か騎士が紛れていたはず。それも確か……。
「もしかして、そのシグナムさんって炎熱系の魔法の使い手?」
「は、はい。そうですけど……」
マリエルは戸惑いながら答えを返し、プレシアも怪訝な顔と視線を注いでくる。
そんな中、あわただしい靴音が聞こえ、開きっぱなしのドアから後ろにくくった桃色髪の士官が走ってくるのが見えた。それを見て――
「待って、シグナムさん!」
突然、名を呼ばれシグナムは反射的にそちらを振り返る。そんな彼女に向かってメガーヌは隣に浮かぶ元相棒を指さし、真剣な表情で言った。
「この子も一緒に連れて行ってあげてくれない。あなたと同じ炎熱系で今まで私の手助けをしてくれた
その言葉にシグナムは目を丸くしてアギトを見る。同様にアギトもシグナムを見、再びメガーヌに顔を向けた。
この時こそ、アギトが新たな相棒にして“本来の
◇
「はあああっ!」
「――甘い!」
至るところから伸びる赤い糸を斬り捨てながらスカリエッティに迫る。だが、奴はグローブ型デバイスを嵌めた腕を振り上げ、難なく刃を弾き上げる。
――見た目に寄らず俊敏な動きだ。管理局から逃げてこられたのは最高評議会に護られてたからだけじゃないってことか。
「健斗!」
「隙ありですっ――!」
リインが思わずこちらを見上げるが、ウーノの指先から撃ちだされた氷弾に気づき、真横に跳躍して躱す。その直後リインの眼前にウーノが現れ爪を振り上げる。リインは身をよじって爪を躱し魔力を帯びた拳を突き上げるが、ウーノは後ろに跳んでかわし再び氷弾を飛ばし、リインは左手に展開したパンツァーシルトで防ぎながら『クレイヴ・ドルチェ』を放った。
こっちにかまう余裕はとてもない。いや、地の利を考えると下手すればリインが負けてしまう可能性すらあるかも――。
「ちっ――はあっ!」
向こうの助太刀に入るため、目の前の敵に斬りかかる。だが、スカリエッティはひらりと躱し、グローブから伸びた鉤爪を振り下ろした。
「――ぐっ!」
後ろに跳躍して爪をかわし、後ろの足場に飛び移る。だが――
「しまっ――」
飛び移った瞬間、足場から伸びた糸に足を絡めとられ、動きを止めてしまう。そこにスカリエッティが飛び掛かってきた。
――もったいぶってる場合じゃねえ!
「“フライング・ムーヴ”」
叫んだ瞬間、スカリエッティごと周りの動きが緩やかになる
その隙に足場から伸びている糸を断ち切り、そのままスカリエッティに斬りかかった。
「――ぐおぉっ!」
「ドクター!――ぐはっ!」
斬り伏せられる主に顔を向けるウーノのどてっ腹にリインの拳が叩き込まれ、ウーノは向こうに吹き飛ばされる。――よし、流れがこっちに向いてきた! このまま――
「――っ!?」
「健斗、動くなっ!!」
このままとどめを刺そうと前に出た瞬間、リインの叫びと異様な気配に反応し、即座に足を止める。
その直後、赤い物体が横切り、前の足場を
「なかなかやるね。ではそろそろ私も本気を出させてもらおう。正直ここで君を殺したくはないんだが、腕の片方、いや、髪の毛一本でも残せばコピーとして再生することができる。記憶をほとんど消去して、欲望に忠実になるよう教育してみようかな」
勝手なプランを立てながらスカリエッティは真っ赤な糸を垂らした人差し指を持ち上げる。それに引っ張られるように、奴の目の前に“球状の怪物”が浮かび上がってきた。
“それ”はスカリエッティに指の動きに合わせてこちらに顔(?)を向け、一瞬ほどの間も空けずこちらに突進してきた。
「――っ」
俺は反射的に真上に飛び上がり“糸の怪物”の突進をかわす。その真下で俺が立っていた足場は怪物に呑み込まれ、跡形もなくなっていた。
――冗談じゃねえぞ。あんなのに喰われたら髪の毛一本すら残らねえかもしれねえ……。
「いくよ――ふっ」
スカリエッティが指を手繰るとともに怪物は口を開け、すさまじい速さでこっちに飛んでくる。すんでで真横に跳んで躱した瞬間――
「――そこだ!」
「ぐっ――」
スカリエッティのもう片手から放たれた光弾を喰らい、思わず動きを止める。その直後、怪物が態勢を整えこちらに向かって飛び込んできた。ここはもう――。
「――“フライング・ムーヴ”!」
技能を使った瞬間、怪物とスカリエッティの動きが止まる。
――と思いきや、怪物はほとんど動きを緩めずそのまま突っ込んできた!
「くそっ――だあああっ!!」
剣を振り上げ、怪物の顔面を叩きつけて奴の機動を無理やりずらし間一髪逃れる。
だが、怪物は悠々と停止しながら振り向き、ぎらついた牙を見せた。
――しまった、“慣性の法則”か! すでに直進している物体に技能を使おうと、止まるどころかスピードが落ちることもない。無生物ならなおさら。あとわずか気づくのが遅れたらやられていた。
「ほう、うまく避けたか。では次はどうかな――」
やはり計算ずくだったらしく、スカリエッティは口角と指を曲げ、操り糸を手繰る。その瞬間、再び怪物はこっちに飛び込んでくる。さらにスカリエッティも片手を突き出し、光弾を撃ち放ってきた。
「ちっ――」
光弾を斬り払いつつ怪物を避け、二人から距離を取る。ここであえてスカリエッティに接近し怪物と同士討ちさせる作戦も頭をよぎったが、それは局員として取ってはならない方法だし、スカリエッティからは聞き出したいことが山ほどある。
ならば――
「――はああっ!」
突進が外れ、空を切りながら制止した怪物に向かって突撃し、真後ろから刃を叩きつける。
糸で出来た体躯は柔らかく、思いのほかあっさりと割れた頭をもたげながら怪物はこちらを振り向いた。
次で真っ二つに斬り裂いてやる。そう思いながら奴から離れつつ剣を構える――その時!
「――!?」
周囲から赤い糸が伸びてきて、俺の手足に絡みついてくる。
それを見てスカリエッティはにやりと大きく口を吊り上げた。
「心配しなくても数ヶ月後にまっさらな状態で蘇らせてあげるよ――そらっ!」
スカリエッティが指を捻った瞬間、怪物が鎌首をもたげ一気に飛びだしてきた。
「っ――、ぐうっ!」
四肢、特に剣を持っている右手を力を込め、必死に糸から逃れようとする。だが、もがく俺を嘲笑うように糸はよりきつく俺を絞め上げる。糸の強さと激痛に手足が千切れそうなほどだ。
その間にも怪物が巨大な口を開けながらすぐ目の前にやってくる。未だに呑み込まれてないのは命の危機に対して脳の処理能力が上がっているせいだろうか。
もうここはイチかバチか――。
「フライング――」
「健斗!」
技能を使おうとしたその時、ふいにあがった声に俺もスカリエッティも目を見張りながらそちらを見る。
その直後、鮮やかな銀色の髪を振り乱した美女が飛び出してきて、怪物に両腕を突き出し――
「デアボリック・エミッション!」
その直後、怪物の周りに黒い球形の魔力が現れ、奴を閉じ込める。
そんな中、俺は
「リイン――まさかあいつは?」
その問いにリインは笑みを作りながら離れた足場を顎で示す。そこにはバインドで縛られたまま倒れ伏しているウーノの姿があった。
それを見て俺はほっと息をつき、その反対にスカリエッティは額に皺を作り――
「まさかここで君が来るとはね。ならば――」
スカリエッティは左手を突き出し、光弾を放つ。だが――
「はあああっ!」
リインは魔力を纏わせた腕を振るって容易く光弾を弾き落とす。そしてもう片手で俺を抱きしめながら唇を動かした。俺も無意識に彼女と同じ
「
「ほぉ。これが《初期型融合騎》のユニゾン、後期補助型のアギトとは魔力の量も質も違う……」
リインフォースと融合した俺を見て、スカリエッティは感嘆の息を漏らす。そしてそれに紛れて指に絡めた糸を引いた。
その瞬間、怪物は気を取り戻したように浮かび上がり、再び“俺たち”に顔を向けた。
――グォンッ!!
咆哮代わりの風切り音をあげながら、怪物が迫ってくる。さらにスカリエッティが光弾と糸を放ってきた。
だが――
「――ふっ」
リインの揚力を得た俺はあっさり怪物を躱し、光弾と糸を斬り裂く。
そして怪物ががら空きの背中を晒したところで――
「フライング・ムーヴ!」
技能を使った瞬間、怪物とスカリエッティ、もちろん縛られたままのウーノも動きを止める。
その隙に俺は奴の元まで跳び、剣を振り下ろした。
「はああああっ!!」
――ブッチチチチッ――。
耳障りな切断音を響かせながら“糸の怪物”の
だが――
《健斗、気を抜くなっ!》
胸の中からリインの声が響きあがった瞬間、二つに
飛び上がるよう急かすリインに反し、俺は剣を垂直に立て――
「御神流――
縦一文字に振るった刃から突風が
「フライング――スラッシュ!!」
「行くぞ、リイン!」
《ああっ!》
バラバラに舞い散る糸くずの中で俺たちは頷きをかわし、上空から見下ろす
それに対しスカリエッティは無数の光弾を放つものの、“俺たち”は難なく光弾を避け、加速をつけながら魔力を刃に集めスカリエッティに迫る。
だが――。
「――かかったね!」
スカリエッティの眼前まで迫った瞬間、周りから周りの糸が奴を庇うように張られ刃を受け止めた。
それどころか糸は網状になって俺たちを取り囲んだ。今までの糸より、あの怪物よりはるかに硬く、技能を使っても抜け出せないほどびっしり囲まれている――
――だが。
「フライング――ドゥツェンツゥマレ!!」
それは《夜天の書》の片隅に載ってた――“どこかの世界の俺”が考え付いたかもしれない技。
“技能で時間を止めている間、ひたすら剣に衝撃を溜め込む事”で威力を数倍にも数十倍にも高めていく技。
「はあああああ――」
《ああああああ!!》
あらん限りの声と力を振り絞り、その数十倍の威力の籠もった剣を突き出す。その直後、俺たちが振り上げた刃から長大な光線が放たれ、鋼より遥かに硬いはずの糸は粉々に千切れ落ち、スカリエッティまで飛んでいく。
その向こうでスカリエッティはぐにゃりと歪んだ笑みを浮かべ……。
「別の“時間線”の技までも引き出したか。素晴らしい……“
光線を喰らい、スカリエッティは鈍いうめき声も上げながら真下に堕ちる。
俺は奴を視界に捉えながら片手を突き出し――
「チェーンバインド!」
唱えた瞬間スカリエッティの周りに紺色のチェーンが現れ、彼を雁字搦めに縛り上げ、宙に浮かび上がる。
俺はリインと分離し、彼の隣に下りながら告げた。
「これ以上の抵抗は無駄だ。大人しく同行しろ」
「ふっ、それはどうかね? さっきも言ったが、トーレたちがレツヤ君たちを倒せば、もしくはクアットロがゆりかごとともに軌道ポイントまで逃れれば、彼女らに仕込んだ私のコピーが誕生して――」
そう言ってスカリエッティは笑みを漏らす。その時、俺の近くにモニターが
それを見て、スカリエッティもまさかと笑みを消しそちらに顔を向ける。
『隊長、トーレとセッテを捕まえました。ルーテシアとチンクも無事です! 閉鎖
レツヤの報告と“蒼い右眼と紫の左眼”を前にして、俺たちはまさかと目を見張る。その向こうにはバインドに縛られているトーレとディードが上体を起こしながらこちらを睨んでいるのが見えた。さらに――
『状況報告、《ゆりかご》内にいた
「――本当か!?」
ルキノの報告に安堵より耳を疑い、思わず聞き返す。
まさか本当に《ゆりかご》を……ベルカ最悪の兵器を破っちまうとは。あいつらがあの時代に生きていれば、
感嘆と未練の混じった思いを振り払い、縛り付けたままの主犯に顔を向けた。
「ずいぶん滞納してくれたようだが、いい加減年貢の納め時だ――広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ。次元管理法および各管理世界の治安法に則り、お前たちを逮捕する。大人しく同行してもらうぞ」
「…………」
スカリエッティは応えずただ苦笑を返す。俺は舌を打ちながら奴を、リインはウーノを抱えながらレツヤたちに合流の指示を出し、急いで彼らのもとに向かった。
《ドクター、よろしいのですか? このままだと“今回の計画”が。捕まった妹たちも離反してしまうかもしれませんし……》
《いや、プリムスとマセラティの出来栄えは十分見れた。ゆりかごと作品たちを失うのは
やっとバトルラッシュが終わった……。
もう少しでJS編も終わりです。