魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第55話 事件解決

 ミッドチルダ軌道上。

 宇宙空間の各所に次元穴(ゲート)が開き、その中から銀色に輝く艦隊が続々と現れてくる。

 その中央を飛ぶ母艦を操縦するオペレーターの一人が声を張り上げた。

 

「艦隊、布陣展開。あと二十分で敵戦艦と接敵します!」

 

 黒コートを着た青年提督クロノ・ハラオウンは席についたまま、ミッドから浮かんでくる戦艦(ゆりかご)を睨み、重々しい声で訊ねた。

 

「戦艦の状況は?」

 

「戦艦に立てこもっていた敵戦闘機人は二名とも逮捕。人質も救出しています。ただし、救助と逮捕にあたった魔導師三名と人質たち三者は戦艦に閉じ込められたままです。魔力リンクがキャンセルされているため、内部からの破壊による脱出も困難です。また戦艦は暴走状態にあり、ミッドチルダとこちらに攻撃してくる可能性が高いため、即時破壊するよう指示がきています」

 

 オペレーターの報告にクロノは顔を歪めながら、ミッドから上がってくる戦艦(ゆりかご)を睨み。

 

「……全艦、主砲発射準備。そのまま敵艦が接近してくるまで待て!」

 

 提督からの命令にオペレーターたちは威勢よく「はい!」と返し、発射の準備を進める。その後ろでクロノは小さく祈るような声を漏らした。

 

「なのは、はやて……一刻も早く脱出してくれ。でないと……」

 

 でないと、自分たちの手でゆりかごもろとも彼女たちを殺してしまうことになる。21年前、闇の書もろとも父を殺したグレアムのように……。

 クロノは今までにないほど彼の気持ちを理解するとともに、絶対そんなことはしたくないと思わずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、ゆりかごに囚われたなのはとヴィータたちを救出するために、ティアナたち『スターズ』はヘリに乗り込んでゆりかごに向かう。のだが……。

 

「本当に大丈夫なの? まだ傷が治ってないんじゃ……」

 

「だいじょうぶ! いっぱいみんなに迷惑かけたんだもん。せめてなのはさんたちを迎えに行くぐらいのことはこなさなきゃ!」

 

 スバルは気丈な笑顔を浮かべながら拳を掲げる。それに対し、ティアナはスバルの顔から視線を下げながら付け足した。

 

「まあ、あんたならそう言うと思ったけど、“その恰好”はまずいんじゃない? 敵と間違えられて撃ち落とされるかもよ」

 

 そう言われてスバルも自らの体を見下ろす。ギンガとの戦いから間を置かずなのはたちの救助に志願したため、彼女はまだナンバーズ用のボディスーツを着たままだった。

 ティアナは仕方なさそうな溜息をつきながら懐から青い宝石を取り出し、スバルに向けて放る。スバルは難なく掴み取り、久しぶりに手にする“相棒”を見下ろした。

 

「マッハキャリバー」

『It's been a while, Buddy(お久しぶりです、相棒)』

 

「こうなると思って持ってきてたのよ。それでさっさといつものバリアジャケットに着替えなさい。そんな趣味の悪い恰好でいられたら落ち着かないわ」

 

「う、うん!」

 

 スバルは頷き、マッハキャリバーを握りしめてバリアジャケットに装いを変える。

 そんな中、射撃音が響き、ゆりかごから出てきたガジェットが撃ち落とされる。ヴァイスは狙撃銃を構え、スコープを覗いたまま声を荒げた。

 

「船が近づいてきた。そろそろバイクに乗れ! 俺とストームレイダーが邪魔者(ガジェット)を片付けている隙にお前らはあそこに突っ込んで、隊長たちを拾ってこい!」

 

「「はいっ!」」

 

 スバルとティアナが心強い返事を返した瞬間、ヘリは一気に加速しゆりかごへ近づく。それを阻止しようと何機ものガジェットが迫るが、ヴァイスは顔色一つ変えず銃身をずらしガジェットを撃ち落とす。

 その最中――。

 

「ナカジマ」

「――えっ?」

 

 ふいに声をかけられ、スバルはバイクにまたがりながら怪訝な声を返した。

 それに対して――

 

「あまり引きずるんじゃねえぞ。お前自身に非はねえし、過ちなんて誰でもする」

 

 ヴァイスはガジェットを撃ち落としながら続ける。

 

「俺は昔、身内が巻き込まれた事件にビビって取り返しのつかねぇミスショットをした。そして狙撃手(スナイパー)を辞めて、管理局やミッドから、銃からも逃げようとした」

 

「…………」

 

 相槌も返せず閉口するスバルに背を向けたまま、ヴァイスは強く銃を構え……。

 

「そんな俺でもよ――無鉄砲で馬鹿ったれな後輩の道を作ってやるぐれぇのことはできらぁな!!」

 

 言葉とともに放たれた弾が、ゆりかごの前を浮かぶガジェットに命中し爆散する。

 その光景に劣らぬ迫力でヴァイスは言い放った。

 

「だからてめえも操られていた時のことなんて吹き飛ぶぐらいの活躍を見せてこい! ――行けっ!」

 

「――はいっ!」

 

 厳しく暖かい叱咤に応えながらスバルは“ゆりかごまでの道(ウイングロード)”を延ばす。その直後、ティアナは勢いよくペダルを踏みこみ、猛スピードでヘリから飛び出した。

 

 

 

 

 

 

「隊長、こっちです!」

 

 転送ポートの近くにいるレツヤたちを発見すると、向こうもこちらに気が付き大きく片手を振ってくる。その隣からルーテシアが声を発した。

 

「先に出てなのは隊長とフェイト隊長たちを助けに行こうかとも思ったんだけど、ポートが動かなくて……」

 

「なに?」

 

 俺はスカリエッティを傍に置いて、端末を弄る。しかしルーテシアの言う通り、ポートが動き出す様子はなかった。

 

「向こうからロックしたのか……面倒な真似を」

 

 愚痴を吐き捨てながら端末をハッキングし、内部のコードを弄る。すると横からスカリエッティが口を挟んできた。

 

「私が解いてあげようか……心配しなくても逃げるつもりもポートを壊すような真似をするつもりもない。この状況で君たちと閉じ込められたらどんなことになるか、考えただけでも恐ろしいしね」

 

 言葉につられてレツヤたちも想像してしまったのか、一様に顔をしかめる。一方、俺は作業を進めながら返事を返した。

 

「結構だ、これぐらい自力で解除してやる。幸い俺でも何とかできそうなレベルだしな」

 

 妨害用のコードも紛れてるが、スカリエッティの作品に比べて作りが甘い。たぶんクアットロって奴の仕業だろう。――と思ってる間にロックが解けた。

 

「お見事」

「そりゃどうも。行くぞ!」

 

 薄っぺらい賞賛をくれるスカリエッティを抱えながら、転送機の上に立つよう部下たちを促す。

 本当にスカリエッティからは妨害もなかったな。さすがにここで俺たちと心中するつもりなどないか、もしくは俺とレツヤが飢え死にすると困るからか……?

 

 

「――!」

 

 地上に戻ったと同時に空中に浮かぶゆりかごが映る。まだなのはたちが閉じ込められているんだったな。

 

「疲れてるとこ悪いがもうひと仕事だ。空に上がって高町たちを助け出すぞ!」

「――はい!」

 

 俺の呼びかけにレツヤは威勢のいい返事を返し、チンクも首を強く振る。

 だが、リインとルーテシアはじっとゆりかごを見て……。

 

「いえ、隊長……」

「その必要はないと思う」

 

 二人の言葉に首を傾げかけた直後、ゆりかごから“青い道”が伸びてきて、スターズとはやてたちが飛び出してくる。それとともに耳元からルキノの報告が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

『スターズ01から04、およびロングアーチ01と02、人質と犯人も含めて全員脱出確認! ゆりかご内にはもう誰も残っていません!』

 

 機動六課からの報告を聞き、クロノは恩師と同じ過ちをせずに済んだと安堵の息をつき、すぐさま気を改めて口を開いた。

 

「ここからはこっちの仕事だ――全艦エネルギーチャージ!」

 

「はいっ!」

 

 オペレーターたちはすさまじい速さでキーボードを叩き、主砲のチャージを開始する。

 一分後、ゆりかごが目の前に現れた瞬間、クロノは大きく手を突き出し、叫んだ。

 

「主砲――発射ぁ!!」

 

 指揮官(かれ)の号令とともに、全ての艦船の砲門から目も眩むほどの白光が放たれ、ゆりかごを吞み込む。

 《グランダムの愚王》や《闇の書》、ベルカの国々、数多の世界を消し去ってきた《聖王のゆりかご》は、かつてとは逆におびただしい光に包まれ――跡形もなく消滅していった。

 

 

 これが『レリック事件』、そして『JS(ジェイル・スカリエッティ)事件』と呼ばれる事になる一連の騒動の顛末である。

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