魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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幕間2 “愚王の末裔”を称する男、新たな“敵”

「カート、グレンデル……?」

 

「家来? 愛人?」

 

 唖然とおうむ返しをするシャンテとクインにカートは「ああ」と頷き、隣の女は呆れられていることを察してガムを吐き捨てながらため息をつく。

 そんな三人の胸中を知ってか知らずか、カードは続けた。

 

「俺様はカート・グレンデル。ここら一帯を仕切る《グレンデル一家(ファミリー)》の首領(ヘッド)だ。聞いたことねえか?」

 

 その問いに、シャンテとクインは怪訝そうな顔のまま首を横に振り。

 

「知らねえよ」

 

「同じく。ここには何度も来てるけど、“グレンデルファミリー”なんて聞いたことがない」

 

 すげなく否定する二人にカートはちっと舌を鳴らし、隣の女は『だから言ったのに』と言わんばかりに頭を抱える。

 そんな中でカートは取り直すように言った。

 

「だったらこんな話は聞いてねえか? ミッドのどこかに“愚王の末裔”がいるってよ」

 

 その言葉にもシャンテは「いいや」と首を振るも、クインは思い出したように呟きを発した。

 

「そう言えば、この前叩きのめした奴から聞いたことある。“愚王の末裔”なんか名乗ってる変わり者がどこかのスラムにいるって」

 

「オー、イエース! ベルカ最悪の愚王、ケント・ナントカ・グレンデルの血と意思を継ぐ男――それがこの俺様、カート・グレンデル様ってわけだ! ガハハハッ!!」

 

 カートは上機嫌そうな笑い声をあげながら二人に人さし指を向ける。それに対し二人は身構えながら……

 

「本当かよ? 確かにアホそうな所は本に載ってた愚王そっくりだけど」

 

「わかんない。愚王には何百人か何千人も愛人がいたっていうから子供もいたと思うけど。愚王の子孫なんて名乗る奴は今まで存在しなかったらしいし、そいつは左右色違いの目をしてたはず」

 

 カートという男と話の馬鹿さ加減のあまり、殴り合ったことも忘れ訊ねるシャンテにクインは首を横に振りながらカートと目を合わす。その色は両目とも灰色。

 だが――

 

「はっ、目の色なんか知らねえよ。俺様は“愚王の末裔”として、ミッドのど真ん中に奴が治めていた『グレンデル王国』を復活させる。そうすりゃオッドアイじゃなかろうが、誰もが俺様を新しい《愚王》と認めるはずだ!」

 

 自らの顔に親指を突きつけながらカートはニカッと笑う。

 それを見てシャンテは呆れたようにため息をつき――

 

「つくづくアホなヤロウだな。わざわざ“愚王”になりたがるなんて――そのためにあたしたちに家来になれってか?」

 

「おう。腕だけじゃなく顔もいいし、愛人としても可愛がってやるぜ。ご先祖様も城にいる侍女や女兵士はもちろん、都や巡幸先で目についた女も一人残らずモノにしたっていうしな」

 

「……確かに本やテレビで見た愚王にそっくりかも。でも、あんたが本当に愚王の子孫だとしても私たちが大人しく従うとでも思う?」

 

 クインの問いにカートは自信満々に頷く。

 

「俺様の家来になったら飯は三食食い放題だぜ。現に今から()()()()()が手に入る予定でよ。俺様たちについてくるって言うなら、好きなだけ食わしてやる。それに俺の元にくれば、俺たちの取引相手から強ええ“力”が手に入れられるかもしれねえぜ」

 

「「――!」」

 

 “大量の食糧”と“力”と聞いてシャンテとクインは目を見張る。

 シャンテとクインが争う理由もそれにあった。

 スラム、特に廃棄都市などに食事を売る店などない。あっても強盗や襲撃にあってすぐ潰れるのがオチだから、食事や日用品などは自身で独占するか人目を盗んで売買するのが当たり前だ。

 それゆえにシャンテもクインも金目の物や食料を奪うようになり、いつしかそれらを巡ってぶつかり合うようになった。教会の連中が炊き出しなんかすることもあったが、二人ともプライドから並ぶ真似はしなかった。

 この男についていけば飯の心配がなくなる上、強い“力”とやらまで手に入るという。

 嘘だったり何かされそうになったらボコればいいし、たっぷりご馳走になるか“力”とやらを貰った後でトンズラするのもありだ。

 クインもシャッハもそう考えかけるが……。

 

 

 

あなたたち、一体何をしてるんです!!

 

 

 

 二人が迷っていたところで突然現れた赤紫髪のシスターが叫び、一同は会話を止めてそちらを見る。

 さらに彼女の横から出てきた水色髪のシスターが指を突き出し――

 

「オレンジ髪の子――あの子がシャンテって子だよ!」

 

 突然指を向けられた上に名前まで出され、シャンテは反射的に身構える。

 そしてカートの隣に立つ女もシスターたちを見てちっと舌打ちを鳴らした。

 

大将(ヘッド)、自己紹介と勧誘はここまでだ! 撤退するよ! ()()教会と管理局とはやり合うなって言われてるし、万が一あたしらが捕まったら食糧を取ってる“あいつ”までお縄になっちまう!」

 

 相方の指摘にカートは頷き、

 

「まっ、“挨拶”もしたしここらが潮時か――んじゃ頼むわマリーヤ」

 

 大将(ヘッド)からの指示にマリーヤと呼ばれた女は石つぶてを握り込んだ両手を持ち上げ、無粋なシスター二人めがけて撃ち放った。

 

「うわっ!」

「セイン、動かないで!」

 

 シャッハはセインを庇うように前に出、シールドを張って自身とセインを守る。

 その隙にマリーヤとカートは背中を向け――

 

「じゃあ、その気があったら俺たちを訪ねてきな。家来でも愛人でも俺様はいつでもウエルカムだからよ。シスターたちもいずれモノにしてやるかもな!!」

 

「待ちなさい! あなたたちは一体――」

 

 逃げるカートとマリーヤ、その後に続くように走るクインに向かってシャッハは声をかける。

 そんな彼女の耳元に――

 

『シスターシャッハ、大変です! 午後の炊き出しに使う食糧を載せた車が子供に乗っ取られて――』

『誰が子供だー! 免許取れる歳は超えてるっつーの!! 持ってないけど

 

 配給場所にいた修道士に続き、少女のような声、そしてそれらを掻き消すほどのけたたましい車の加速音が響いてきた。

 

――食糧? まさか、さっきマリーヤと呼ばれていた女性が言ってたのはこれのこと? 配給用の食糧を奪おうとする人間がいたなんて――。

 

「シスターセイン、あなたは彼らを追って! 私はあの子を――」

「おう!」

 

 シャッハが命令した直後、セインは地面を潜ってカートたちを追う。

 それに対して――

 

「くそ! なんなんだよ一体?」

 

 シャンテも我を取り戻し、カートたちとは違う方に逃げる。だが「ヴィンデルシャフト」という掛け声とともに、目の前に赤紫髪のシスターが“転移”してきた。

 それを見てシャンテはズザーッと盛大な擦過音を立てながら止まる。そんな少女の前で……。

 

「あなたがシャンテさんね?」

 

「だったらなに? シスターなんかに呼ばれる覚えはないんだけど」

 

 尋ねるシャッハに、シャンテは反抗的な目を向けながらパイプを持ち上げる。逃げるより脅し(びびらせ)て追い返した方が早いと判断したのだ。

 そんな不良娘に対し、シャッハは両腕を持ち上げて構えをとり。

 

「一度、きつくお説教(はなし)しないといけないみたいね」

 

 そう言ってシャッハは一歩踏み出し、そのまま不良娘めがけて殴りかかっていった。

 

 

 

 その結果、シャンテと数人の子供が聖王教会に保護され、里親の元へ送られたり新たな聖職者の卵として教会で働くことになった。

 その一方で、セインの能力をもってしてもカートたちを追い切れず、食糧も奪われてしまい午後からの炊き出しは中止となってしまった。

 

 これがシャンテが教会入りするきっかけの日であり、“愚王の末裔”を名乗るカート・グレンデル率いる《グレンデル一家(ファミリー)》が初めてスラム外の勢力に牙をむいた日でもある。

 

 だが別の世界では、それよりも“とんでもない事”が起きていた。

 

 

 

 

 

 

 第30管理世界上空を飛ぶ艦の上……。

 

「はあああっ!」

 

 トーレはエネルギー翼による高速で迫り、相手のどてっ腹に拳を叩き込む。

 だが――

 

「なかなかの速さだ――だが威力が軽すぎるな」

 

 トーレの攻撃を受けた上半身裸の青髪の男は平然としたまま冷たい言葉をぶつける。それを見てトーレが目を見張った直後、彼女の胸元に斧型の《ディバイダー》が叩きつけられ、トーレは真後ろに飛ばされた。

 

「トーレ! このっ――」

 

 セッテは怒りに任せ、ブーメラン状の(ブレード)を投げつける。だが、その前に右眼を眼帯で覆った金髪褐色肌の女が現れ、手にしていた刀型の《ディバイダー》でブレードを両断した。

 

「これがミッドチルダを制圧しかけたというナンバーズ……いや、戦闘機人の力か。他愛ないな。この程度で向こうを落としかけられるのなら、私たちはミッドに加え第2世界と第3世界も征服できるんじゃないか」

 

 褐色肌の女は刃を撫でながら言い、挑発的な笑みを浮かべる。それに異を挟んだのはセッテ――ではなく、隣に立つ青髪の男だった。

 

「調子に乗るな。こいつらは二十年ほど前に造られた旧型にすぎん。それに向こうにいる新型も含め管理局に負けた時点でミッドチルダを征服するほどの力はないだろう」

 

「っ……」

 

 自身らと姉妹を侮辱する言葉を耳にし、トーレとセッテはきゅっと唇を噛む。そこで脳裏に上官の声が響いた。

 

『トーレ、セッテ、もういい、そこから早く離脱しろ! 『プランC』に変更する! 他の皆ももう艦に戻った!』

 

「了解! セッテ、戻るぞ!」

 

「――はい!」

 

 トーレとセッテは前を向いたまま後ろに跳び、前の敵から距離を取る。それを見て――

 

「逃がすと思うか」

 

「ああ。せっかく来たんだ。私たちの“糧”になってもらおうか。抵抗しなけりゃ苦しませずに逝かせてやるよ」

 

 トーレたちの意図を察し、敵二人も武器を構え彼女らに迫る。そんな二人の顔面に弾が命中した。

 

「ぐっ――」

「――ぐぉ」

 

 敵二人は思わず顔面を庇う。一方トーレたちはもしやと後ろを振り返る。

 そこには今の拠点を兼ねた黒い艦船と、艦載機や魔導師が出入りするためのハッチの向こうで片膝をつきながら狙撃銃(ライフル)を構えた赤毛の少女の姿があった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「トーレ先輩たち、早く来てください!」

 

「ラグナ、助かった! いくぞセッテ!」

 

「はい!」

 

 後輩に礼を告げながらセッテとトーレはその場から飛び上がり、艦に向かって飛び込む。

 それを見て敵二人も後を追おうとするが――

 

『かまうな。行かせてやりな』

 

「姉貴?」

 

「いいのか?」

 

 脳裏に話しかけてきた姉貴分に、手下二人は訊き返す。それに彼女は『ああ』と肯きながら言った。

 

『こっちもそろそろ引き上げ時だと思っていたところだ。お客さんもいなくなったことだし、あんたらもさっさと戻ってきな。酒瓶でも傾けながら一緒に綺麗な“花火”でも眺めようじゃないか』

 

 その言葉で首領の意図を察し、褐色肌の女は「わかった」と吐きながら相方の男に「戻るぞ」と告げる。男も口答えを挟まず彼女とともに艦の中へ戻って行った。

 

 

 

 

 

「敵二名、艦内に戻って行きます! 敵艦はなおも逃亡中! 追跡を続けますか?」

 

 操縦パネルを弄りながら報告するルキノ・ロウラン操舵長に、『ヴォルフラム』の艦長を務める八神はやて捜査指令は頷き。

 

「うん。そのまま今の距離を保ちながら追いかけて。もう『プランC』に賭けるしかない!」

 

 彼女の指示と鬼気迫った声にルキノは「はい」と返しながら、ヴォルフラムの操縦を続ける。そこで別のオペレーターが声を発してきた。

 

「司令、本局から《アルカンシェル》の発射許可が下りました! 容疑者たちが死亡しても責は問わないとのことです」

 

 その報告にはやては「そう」とだけ呟く。

 最悪のロストロギア《闇の書》を幾度も消し飛ばし、その根源たる《闇の書の闇》をも完全に消滅させた、時空管理局の持つ最強の魔導兵器《アルカンシェル》。

 十人にも満たない集団とヴォルフラムより小さい艦一隻を消滅させるために“それ”の使用を許可するとは……。本局――いや管理局も《エクリプス》を脅威とみなしたということか。

 はやては隣に立つ黒髪オッドアイの士官に顔を向ける。彼――御神健斗一佐ははやてを促すようにこくりと首を縦に振った。

 それを見てはやても覚悟を決めたように――

 

「《アルカンシェル》のチャージと発射準備! 敵艦の追跡を続けながら準備をしてください!」

 

 その命令にオペレーターたちは「はい!」と返しながら、せわしなくコンソールの操作を続ける。

 それと同時に、はやての前に赤いスイッチ付きのブロックが出現した。

 押しただけで十人近くの人間の命を奪うスイッチに、はやては恐る恐るといった様子で手をかける。

 健斗はたまらず――。

 

「八神一佐。俺にも発射権限はある。代わってもいいが……」

 

「ううん、わたしがやる! やらなきゃあかん! 御神一佐は万が一のための準備をお願いします!」

 

「わかった……」

 

 健斗は頷きながら組んでいた腕を解き、敵艦が映るモニターを見守る。そこでオペレーターの一人が声を上げた。

 

「チャージ開始、いつでも撃てます!」

 

「地上に被害が及ぶ可能性は0.0003%以下。近くに飛行している船もありません。八神司令――!」

 

 ルキノは強く言って艦長(はやて)を促す。

 その後ろではやてはすぅっと息を吐き、スイッチにかける手に力を込めた。

 

「《アルカンシェル》――発射!!」

 

 スイッチを深く押し込んだ瞬間、船の先端に取り付けられた砲口の周りにいくつもの環状魔法陣が現れ、それをくぐるように長大な白い光線が放たれた。それとほぼ同時に光線は敵艦に到達し、丸ごと吞み込む。

 モニター越しでも眩しさを覚える光景をはやてと健斗と一部のクルーはじっと見、ほとんどが彼らの最期を確信する。

 

「アルカンシェル命中! 敵艦は――っ!?」

 

 ――()()を見た瞬間ルキノは息を呑む声を漏らし、俺たちも自身の目を疑った。

 

 

 アルカンシェルの直撃を受けてなお、敵艦――『飛空艇フッケバイン』は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 フェイトもヴォルケンリッターも、はやても健斗も、リインまでも、それを見て絶句するしかない。

 

 “あらゆる魔法を無効化する《エクリプス因子(ウイルス)》”。300年前と変わらず――いや、あの時よりも出鱈目(でたらめ)になってる! 

 胸中で突っ込んだところで艦内に軽い通知音が響く。そして彼らが応答する前にモニターが開いた。

 

『管理局の皆さ~ん♪ 綺麗な花火を見せてくれてありがとう! ファミリー一同楽しませてもらったわ~♪』

 

 モニターの向こうから目元が隠れた長い黒髪の女、《フッケバイン一家(ファミリー)》の首領“カレン・フッケバイン”は心底楽しそうに告げる。それを憎々しげに見上げる俺たちを見下ろしながらカレンは続けた。

 

『じゃあお互い末端の顔合わせも済んだし、そろそろお別れにしましょうか。そっちも何人かボロボロみたいだし、そろそろ休ませてあげた方がいいわよ~』

 

 軽い口調とともにぶつけられた忠告に、何人かの口から呻きが漏れる。こちらはさっきの襲撃でエース級何人かが倒れ伏している。その一方で向こうは大したダメージも受けていないのだ。

 

『それに私たちなんかより、そっちの世界で悪さを始めてる“冥王様の人形たち”と“なんとか解放戦線”って奴らの方を何とかした方がいいんじゃない? 放っとくとクラナガンって首都を炎上させるぐらいはやっちゃうかも』

 

 “冥王様の人形”? “解放戦線”? それってまさか……。

 

『ああ、そうそう。王様って言えば、ベルカで《愚王》って呼ばれてた王様と守護騎士ってのに似た奴らがいるって聞いたんだけど。その王様と騎士たちには、昔あたしのご先祖様がお世話になってたらしくてさぁ……』

 

 言いながらカレンは俺や守護騎士たち(ヴォルケンリッター)に向けて視線を放ってくる。その視線を受けた瞬間、俺と騎士たちはは思わず身構えた。

 カレン・フッケバイン……やはりこいつ“カリナ”の――。

 

『まっ、いいや。あたしらはスカリエッティとかと違って管理局とやり合うつもりはないし、ご先祖様の敵討ちとか無意味なことも考えてないからそんなに気を張らなくていいよ。その代わり、“外”でちょくちょくやるお仕事と“狩り”は見逃してもらえないかなぁ』

 

 ――そういうわけにいくか! と怒鳴りつけたいが、こちらにはあいつらを捕まえる力も余裕もない。

 ならばせめて……。

 

「カレン・フッケバイン……一つ聞きたいことがある」

 

『……何かな?』

 

 眉を持ち上げながらカレンは聞き返す。俺は怒鳴りたくなる自分を必死に抑えながら続けた。

 

「4年前、第3世界ヴァイゼンの北西部にあった『アミア』という鉱山町が崩壊した()()……あれはお前たちの仕業か?」

 

 俺が問いを放った瞬間、事情を知る仲間たちは顔を硬くしながら“容疑者”が映るモニターを見上げる。だがカレンは記憶を引き出しているような沈黙を挟んだのち――。

 

『いいや、そんなところ襲った覚えがないね』

 

 心当たりがないと言いたげにカレンは首を横に振る。俺は目を鋭くし『本当か?』と訊き返すも、カレンは肩を竦め――。

 

『まっ、別に信じなくてもいいけど。今さら冤罪の十や二十かけられたところで痛くもかゆくもないし。――じゃあお話はここまで! せっかく見逃してあげたんだから、つまらない事故で死んだり“冥王の人形”やなんたら解放戦線なんかに殺されちゃわないようにね~♪』

 

 盛大な皮肉を放りながらカレンは手を振り、通信を切る。その直後、向こうの飛空艇が紅蓮色の光に包まれ、俺たちの前から姿を消した。

 

「敵艦と《フッケバイン一味》の反応……ロストしました……」

 

 ルキノが告げた瞬間、艦内は重苦しい雰囲気に包まれる。

 『フッケバイン捕獲作戦』は完全に失敗した。

 

 

 かつて最強のロストロギア《闇の書》と《聖王のゆりかご》から地球やミッドチルダを守った俺たちは、《魔導殺し》の異名を持つフッケバイン一味に完敗を喫した。

 これが《エクリプスウイルス》……“世界を殺す毒”とまで言われてる“最悪”の力。

 ――畜生、300年前より強力になってやがる。

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