魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士   作:ヒアデス

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第6話 フォワードとの対面

 機動六課の部隊長、八神二佐からの出動命令を受けて、オレたち『七課』はすぐに隊舎から外へ飛び出す。ちょうどそこへ空から輸送ヘリが降りてきた。

 ヘリが地面につく前に後部のランプドアが開き、その中から栗色髪の女性が顔をのぞかせる。

 あの人はまさか――。

 

「御神三佐、私たちと七課の合同で現場に向かうように言われています。後ろの子たちと一緒にヘリに乗ってください!」

 

「ありがとう高町一尉。ご厚意に甘えさせてもらう」

 

 高町なのは……《エース・オブ・エース》の異名を持つ戦技教導官で、ニュースやネットに何度か出ていた人だ。母方と同じ世界と国の人だから目についていたが、まさかあの人が六課にいたとは……。

 

「高町一尉が言った通り、このヘリに乗って現場まで向かう。六課の『フォワード』たちも一緒だが、くれぐれも揉め事を起こすなよ」

 

 御神さんはこちらを振り返り、オレたち――特にルーテシア――に向かって釘をさしてくる。ルーテシアを含めオレたちは「はい」と返し、御神さんとリインフォースさんの後に続くようにヘリに乗り込んだ。

 オレたちが乗ってランプドアが閉じるとともに、ヘリは地上を離れ空高く浮かぶ。とりあえず席に着こうと中を見渡しているところで、先に乗っていた四人と目があった。

 

 一人はたぶんオレより年上の短い青髪の女性。その隣には左右に分けたオレンジ髪の女性が座っており、さらにその隣にルーテシアと同じくらいの背丈の赤毛の男の子と、肩に小さな白竜を乗せてる短い桃色髪の女の子が座っていた。

 あの四人が『フォワード』か。

 彼女たちの隣には小人サイズの長い水色髪の女の子が浮いていたが、たぶんフォワードじゃないと思う。

 

 そこで青髪の女性がオレの隣を見て目を見開き――

 

「――チンク姉!」

 

「スバル……」

 

 名前を呼ばれ、チンクも彼女の名をつぶやく。

 まさか、彼女がチンクの妹か? もっと小さい子だと思ってた。

 一方で、スバルという人の隣に座っているオレンジ髪の女性は驚きもせず、無表情のままチンクに頭を下げる。誰かに似てるような……。

 

「邪魔するようで悪いが今は時間がない。現場に到着するまでにいくつか確認しておきたいから、三人ともすぐ席に着いてくれ」

 

「――あっ、はい!」

 

 御神さんに言われた通り、オレたちはフォワードの反対側の席に座る。あっちでも高町さんが四人に向かって同じようなことを言ってるところだった。

 

 

 

「もうすぐ現場に到着する。新しいデバイスについては副隊長から聞いてるな?」

 

 その問いにオレたちがうなずくと、御神さんは念を押すようにリインさんの方を向く。彼女もこくりと首を縦に振った。それを見て御神さんも鷹揚なうなずきを返し、またオレたちに顔を向ける。

 

「わかった、じゃあ話を進めるぞ。先ほど八神部隊長が言った通り、我々七課は六課のフォワードたちと協力して何者かに乗っ取られたリニアレールを止める。問題の車両はフォワードが止めに向かう。その他にもう一つ乗っ取られたと思われる車両があるが、そこにはお前たち『フィルダー』を向かわせようと思っている。いいな!」

 

 御神さんの言葉にオレとチンクは顔を硬くしながらうなずく。そこへルーテシアが右手を上げながら声を発した。

 

「隊長、今のうちに聞いておきたいんだけど、『フォワード』と『フィルダー』ってどういう意味? ミッドじゃあまり聞かない言葉だし、訓練校でも習ったことないけど」

 

 その質問に御神さんとリインさんは顔を固くし、後ろでフォワードたちと話していた高町さんと小人の女の子までもがこちらを振り返る。フォワードも、スバルさん以外の三人は興味がわいたように耳を傾けていた。

 そんな中、御神さんは言いづらそうな様子を見せながらも口を開いた。

 

「“サッカー”という、俺たちがいた世界のスポーツから取った隠語だ。そのスポーツで攻撃を行うのが『フォワード』、フォワードの後ろで攻撃と守備の補助を行うのが『ミッドフィルダー』、それをスバルたち四人とお前たちのポジションに合わせた部隊名として付けることにしたんだ。俺たちも六課の隊長たちも訳あってサッカーに詳しいんでな」

 

「部隊名の由来がスポーツの用語……」

 

 ルーテシアはつぶやきながら御神さんと高町さんにジトリとした目を向ける。オレとフォワード三人も同じだった。

 ふざけてるのかという心の声が伝わったのか、御神さんたちをかばうようにリインさんが声を上げた。

 

「まあ待て! 隠語として悪くないんだ! もし敵に私たちの会話を聞かれたとしても、フォワードやフィルダーの意味なんて知りようがないだろう」

 

「……まあ、そういう考え方もできますが……」

 

 釈然としない気持ちを抱えながらオレはそう答える。その横で御神さんと高町さんがちらりと視線を交わす。

 

《やっぱり、サッカー用語はまずかったかな。ミッドじゃ使われてないし、大丈夫だと思ったんだけど……》

 

《かもな。忙しくて考える時間がなかったから俺もつい賛成してしまったが、もう少しひねるべきだったかもしれん》

 

 そこで突然、操縦席から声が上がった。

 

「現場に到着しました! それと前方の空に無数の機体を確認! 新型のガジェットだと思います!」

 

 それを聞いて御神さんと高町さんはドアを開き、操縦席に張られたガラスの向こうを見やる。

 操縦士が言った通り、ヘリの前には何十機もの機体が空を塞ぐように飛んでいた。訓練で戦った奴と違って、小さなジェット機のような形をしている。

 

「ヴァイス君、私が出るよ! 健斗君も手伝って。フェイトちゃんもこっちに向かってるから、三人で空を抑えよう」

 

「――わかった」

 

 素の口調で頼んでくる高町さんに御神さんはうなずいて応える。それとともに後ろのランプドアが開き、外の景色が目に飛び込んでくる。二人はそれを背にしながら再びオレたちの方を見た。

 

「俺と高町はあいつらを片づけてくる。リイン、後のことは任せたぞ」

 

「はい。御神隊長と高町一尉もどうかお気をつけて!」

 

 リインさんの言葉に二人はうなずき、高町さんもフォワードにいくつか言い残す。それが済むなり、二人は躊躇いなく外へ飛び降りた。

 

「スターズ01(ワン)・高町なのは、行きます!!」

 

「ナハト01(ワン)・御神健斗、出撃する!」

 

 

 御神さんと高町さんは空中でバリアジャケットを装着しながら、ガジェットの方へ飛んでいく。それを見て……

 

――御神さんのバリアジャケット、やっぱり『あの人』が着ていたものと同じだ。偶然なのか……?

 

「それでは任務の説明をします。――あっ、七課の皆さんとは初めてですね。私はリインフォース・ツヴァイ。『ロングアーチ隊』所属の空曹長で、八神部隊長の補佐とフォワードの管制を務めています」

 

 自己紹介しながら敬礼するツヴァイ曹長にオレたちも敬礼を返す。曹長はオレたちフィルダーとフォワードの間に浮かびながら話を続けた。

 

「任務は二つ、車両にいるガジェットを逃走させずに全機破壊すること。そして《レリック》というロストロギアを安全に確保すること。そちらはフォワードにお願いします。そして七課、フィルダーの三人は……」

 

 曹長がオレたちに目を向けるとともに、リイン――アインスさんがこちらを見て言った。

 

「フィルダーはしばらくここで待機。フォワードが危なくなった時、もしくは敵に乗っ取られたもう一編成の車両の所在が分かり次第、そちらに乗ってもらう。その指揮は――レツヤ、頼めるか」

 

「オレ、ですか……」

 

 尋ね返すオレにリインさんは「そうだ」とうなずく。

 

「今まではチンクにまとめ役をさせていたが、レツヤも二人との動きを覚えてきた頃だろう。元々二人より階級が高いお前に指揮を任せるつもりでいた……できるか?」

 

 リインさんはそこで言葉を止め、厳しい目でオレを見る。オレは意を決して――

 

「はい、やってみます」

 

 そう言うとリインさんは首を縦に振り、奮い立たせるように笑みを作る。

 そんな中、こっちの話を聞いてオレンジ髪の女性がオレの方に目を向けてきた。

 

(あの子がフィルダーの指揮を……。階級の件があるとはいえ、経験の長いチンクさんが指揮する流れになると思ったんだけど。形だけなのか、それともよほど優秀なのか……)

 

 

 

 

 

 

Schwarz weitz(シュヴァルツ ヴァイツ)

「――はあぁ!!」

 

 剣型デバイス《ティルフィング》を振るいあげ、すれ違いざまに三機の飛行型ガジェットを斬り捨てる。さらに続けて十機ほどのガジェットが向かって来るのが見え、俺は剣を真横に構えながら突貫する。その横でなのはとフェイトもデバイスを振るってガジェットを撃墜していた。

 例によってこいつらもAMFを張っているが、AAぐらいの魔力なら容易く破れるようだ。

 空の方は問題ない。車両の方もフォワードが上手くやっているようだ。あいつらの出番はなしかな。

 そう思ってレールを見下ろすと……。

 

「あれは――」

 

 突然、レールの反対側が光り始める。そしてそこから現れたものを見て、俺やなのはたちは思わず目を剥いた。

 

 

 

 

 

 

 空で御神さんたちがガジェットを破壊していき、その間にフォワードの四人がリニアレールに降りてリニア内部にはびこるガジェットを破壊していく。それを見て……。

 

「もしかして、私たちの出番がないまま終わり?」

 

 不満げにぼそりとつぶやいたルーテシアの声がヘリの中に響き渡る。それを聞いてチンクが「おい」と咎めるように声をかけるも、いつものような張りはなかった。

 チンクも妹の加勢に行きたい気持ちはあるだろうし、この一戦に六課転属がかかっているかもしれない。少しでも手柄を立てるチャンスは逃したくないだろう。オレも内心彼女たちに似た心境だった。

 隊長やフォワードたちの活躍を見ながらそんな鬱屈感を抱えているそばで、ふいにモニターが現れた。そこから眼鏡をかけた茶髪の女性が慌てた様子で告げる。

 

『こちらロングアーチ01(ワン)。レールの反対側から別の車両が出現しました! 制圧中の車両にまっすぐ向かってきています!』

 

「なにっ!?」

 

 その報告を聞いて、チンクは椅子から立ち上がりながら声を荒げる。そこへ御神さんが映ったモニターが現れた。

 

『ナハト01、こちらも問題の車両を確認した。“菱形の文様”の魔法陣とともに突然現れたようだ』

 

「……それって、転送魔法」

 

 魔法陣の正体を察してルーテシアは声を漏らし、オレも敵の狙いを察して。

 

「まさか、レリックが手に入らないと悟って、あれごとフォワードを葬るつもりか?」

 

「――“あの人”ならやりかねないな」

 

 チンクもそう口走りながら唇を噛む。そこで御神さんが再び口を開いた。

 

『その考えで間違いないだろう。このままだと、あと十分もしないうちにフォワードのいる車両と衝突する。まだ飛行型ガジェットが残っていて、俺たちは手が出せん。お前たちフィルダーにあの車両の停止とガジェットの始末を頼みたい――やれるな!』

 

 戦闘を続けながら御神さんは有無を言わさぬ口調で訊いてくる。それに――

 

「は――」

「やれます! オレたちであの車両を止めて、フォワードもレリックも守ってみせます!」

 

 チンクより先に宣言すると、御神さんは満足げな笑みとうなずきを返してくれる。それを背にしながらオレたちは再び開いたランプドアの前に立った。

 

「ナハト03(スリー)・チンク・ナカジマ、行きます。《グルカスティンガー》――セットアップ!」

『Standby,ready!』

 

 そう言ってチンクはヘリから飛び降りながら新しいデバイスに呼びかける。新デバイス《グルカスティンガー》が応えると、チンクの体が青い光に包まれ、彼女はバリアジャケットを装着した状態で車両の先頭に降り立った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ナハト04(フォー)・ルーテシア・アルピーノ。《アスクレピオス》――セットアップ」

『Set up』

 

 ルーテシアもヘリから飛び降り、バージョンアップした《アスクレピオス》とともに紫色の光に包まれ、バリアジャケットを着ながら車両の後方に降りた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 残るはオレだけだ。

 

「ナハト05(ファイブ)・レツヤ・テンドウ、行きます。《落葉》――セットアップ!」

『準備完了!』

 

 《落葉》が応えると同時に視界が白く染まり、今まで着ていた陸士服は粒子状に分解され、代わりに黒コート状のバリアジャケットが装着される。

 そしてオレも車両の後方、ルーテシアの隣に立った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子たちが“ドクター”の言ってた『機動六課』と『機動七課』か……衝突しちゃう前に上手く列車を止められるかしら。六課もうまくいってるからって油断してると、誰かひとり痛い目見ちゃうかもしれないわよ~♪」

 

 衝突寸前の列車と、その上で戦う少年少女たちを眺めながら女は楽しげに独り言を零す。

 長い紫髪を下ろした妙齢の女で、黒いマントとグレー色のウェットスーツのような恰好を纏っており、額には赤い文様を刻んでいる。

 

 七課に所属する魔導師、ルーテシアにとてもよく似た女だった。




 七課『フィルダー』の挿絵は、pixivでmirangaru様からいただいたイラストをAI加工したものです。
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