魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
「フリーズバレット!」
『――ぐっ!!』
「ミッドの魔導師め、ここは通さんぞ――ぐあっ!」
物陰から黒ずくめの男が銃を構えながら現れるが、別の隊員に撃たれ、床に倒れ伏す。
白いジャケットを着込み、白いヘルメットで顔を覆った部隊員の一人は
「L1、16フロア内にいた生物兵器5体とテロリスト1人を鎮圧。自爆は阻止しましたが兵器たちは活動停止、テロリストも昏倒しています。現時点での聴取は困難かと」
『かまわん。このまま次のフロアへ向かい、全ての兵器とテロリストを鎮圧せよ』
耳元から伝わる指令に「了解」と返し、彼は手招きするように片手を上げ前屈姿勢を取る。それに続くように他の部隊員たちも上半身をかがめながら武器を構え、次のフロアへ進入していった。
モニター越しにそれを見て、ヴォルツはひやりとした汗をかいた。
「自爆を阻止したのはいいが、強硬的過ぎやしないか? もし逃げ遅れた人に当たったら――それに俺たちを無視して勝手に動き回られても困るんだが!」
だが、部下達同様白ジャケットの制服を着た指揮官は首を振り、呆れたような声を返した。
「我々
耳元に手を当て部下たちに指示と
最高行政府直属の魔導師部隊にして、防衛軍の
(よりにもよってこんな時に。このままだとマリアージュや
「スターン司令! 応援に来ました!」
真後ろから青年の声が届き、ヴォルツはそちらに顔を向ける。他世界からの協力者であるレツヤ・テンドウとエリオをはじめとする年少組が息を切らせながら駆けてくるのが見えた。
「テンドウの坊主か。わざわざ来てくれてすまねえ。こっちは行政府が寄越してくれたMWATっつう部隊とともに火事の消火と逃げ遅れた従業員等の救助をしているところだ」
「MWAT……あいつらが、ですか……」
いまだ通信したままの指揮官を見てレツヤが呟く。
対してあちらも一部の部隊員がこちらを眺めていた。レツヤに視線が集まっているような気がするが……。
などと考えてる暇はないと、ヴォルツは頭を切り替えレツヤたちに訊ねた。
「執務官とナカジマ妹は? 一緒じゃないのか?」
その問いにレツヤは険しい顔で頷く。
「はい。スバル――ナカジマ防災士はまだ容疑者の尋問をしているのではないかと。ランスター執務官はこちらに向かっているところです。スターン司令、俺たちも犯人捕縛と救助活動の手伝いに加えていただけないでしょうか?」
「頼む。犯人はMWATが片付けてくれてる。お前さんたちは中に残ってる人の救助と搬送を頼む――それと」
ヴォルツは言葉を区切り、レツヤを見る。怪訝そうに眉を寄せたレツヤの脳裏に――
《テンドウ、イクスヴェリアっつうのを捕まえたいならお前さんはそっちに行った方がいい。このままだと次元解放戦線かMWATの連中に奪われかねん》
《えっ!? いいんですか?》
思わず訊き返すレツヤに、ヴォルツは小さく頷く。
《ああ。先に
「――了解! これより作業に入ります!」
敬礼と返事を返すレツヤにヴォルツも頷きを返しながら「頼む」と告げる。
そしてエリオたちは救助活動に、彼らに紛れてレツヤはイクスヴェリアの捜索に入る。ちょうどそこへティアナが駆けつけてくるのが見えた。
それを黒ずくめの衣装を着た茶髪の女が冷徹に見下ろす。
◇
『同志R、無事か?』
耳元から届く問いに“同志R”は耳元に手を当てながら頷く。
「“同志E”。ええ、外を見張っていたのが幸いして私はなんとか無事です。ですが同志もマリアージュも次々に落ちていっています。MWATの動きがあまりにも正確で、マリアージュの構造と弱点を知り尽くしているような……正直私もいつ捕まってもおかしくない状況です」
『……イクスヴェリアさえ捕まえれば何とかなるかもしれん。奴らを死体に変え、“冥王”の力でマリアージュに作り変えれば……』
「はい……ここは私たちが食い止めます。同志E――兄さんは早くイクスヴェリアを見つけ出してください!」
『すまん、ルネッサ。お前たちを捨て駒にする形になってしまうかもしれんが……悲願は必ず果たす。故郷の解放と俺たちの世界をかき乱した管理局への報復は必ず!』
それだけ言うとダンッと床を蹴る音とともに通信が切れ、再び外の喧騒が耳に届いてくる。
同志R――いやルネッサは愛銃《シルバーダガー》を構え、自身を奮い立たせるために“父”から教わった言葉を口ずさんだ。
「この
ふいにルネッサは体を翻し、後ろに向かって銃を撃ち放つ。
ティアナは乗り出しかけた身を引っ込め、銃弾をかわしつつ言葉を漏らした。
「独り言は演技じゃなかったんだ」
その言葉にルネッサは気恥ずかしさを含んだ声で答える。
「気を引き締める時の癖のようなもので。やはり、下にいたのは
“元部下”の言葉に、同じ兄を持つ身としてティアナはわずかに共感を覚えかけるとともに内心でため息を吐く。
その気概を局員としての仕事に向けてくれたらよかったのに。
「そっちの事情は分かったつもりだけど、あなたたちの悲願とやらのために罪もない人たちを巻き込むわけにはいかなくてね――ルネッサ・マグナス、連続殺人の容疑および施設破壊の現行犯であなたを逮捕します!!」
掛け声とともに
それを前にルネッサは端正な顔を歪めながら『いつまで凌げるだろうか』と胸の中で吐き捨てた。
◇
『あなたもイクスの糧に――』
「断るに決まってんだろっ!」
海底トンネルの中で遭遇したマリアージュたちを袈裟掛けに斬り落とし、彼女たちが自爆する前に空いてる場所へ跳んで距離を取る。
熱い……ただでさえ400度を軽く超えてるってのに、マリアージュから上がった炎で蒸し焼きにされてるみたいだ。耐熱防護服もいつまで
『こちら《ソードフィッシュ1》スバル・ナカジマ。ごめんレツヤ。今ようやく着いたところ! あたしも遺跡の捜索を指示されたから、きつかったら戻っていいよ! あたしがそっちに行くから』
スバルの声が届き、耳元に手を当てながら返事を返す。
「スバル、もう戻ってきてくれたのか! 俺はまだ大丈夫。気持ちはありがたいけどもう遺跡まで近いし、あの中から生命反応がある。あの中にいる人だけでも助けてから戻る!」
『遺跡から生命反応って、まさか、イクスヴェ――』
スバルが言い終わるのを待たず扉を開け、遺跡の中に飛び込む。
海水が流れ込んでくるのを覚悟したが、遺跡の中は地上の施設と変わりなく鉄製の壁に囲まれており、灯りまでついている。それに対して、窓の向こうはここが海底だと証明するように暗い海水に満ちていた。
想像してたのよりずっと近代的だ。ここが《聖王のゆりかご》と同じ古代ベルカの遺跡で……“冥王”って王様が眠ってる場所。
「……んっ、今の音は……」
ふと中央の小部屋から声がして、俺は注意しながらそちらに歩を進める。
そこには――
「えっ――?」
そこには無数のケーブルに繋がれた大きなカプセルが置かれてあり、開かれた
短い橙色の髪と肩までかかった長いもみあげ、エメラルドのように緑色に染まった両眼をこちらを向け、桃色の短いワンピースを着た十くらいの女の子。
まさか、この子が……?
「君は一体――」
「来ないで――あっ!」
俺が近づいた瞬間、女の子は逃げようとするように後ずさるも、上手く動けずカプセルから落下――しかけたところで、俺は少女を両手で抱え上げた。
驚きに目を見張りながら見上げる少女に、
「大丈夫か?」
「あっ、はい……あの、あなたは?」
少女の問いに俺は安心させるように頷いてから口を開いた。
「俺はレツヤ・テンドウ。時空管理局の捜査官だ。ここの近くで火事が起きて、しかもマリアージュって悪い奴らが来ててな。そいつらを捕まえたり逃げ遅れた人を助けたりしてる」
自爆されたり氷漬けになった瞬間機能停止してて、生きたまま捕まえられた例はないけど。
心中で付け足す俺をよそに、少女はたどたどしい口ぶりで「じくう、かんりきょく」と呟く。
この歳で管理局を知らないということは管理外世界の人間か、あるいはやはり……。
「君は? 名前ぐらいあるだろう?」
俺の問いに少女は迷うような沈黙を挟みながらも……。
「イクスヴェリア……」
「そうか。長いから“イクス”って呼んでいいか」
「はい、好きなようにお呼びください」
頷くイクスに、俺は意を決したように告げる。
「ここは危険だ。早く外、いや上まで逃げるぞ。しっかり捕まってろ!」
そう言って少女……イクスヴェリアを抱えたまま、俺はさっき来た道を戻ろうとする。
だがほぼ同時に――
「ぐああっ!」
扉から火柱が噴きあがり、白ジャケットの部隊員が吹き飛んでくる。
火柱が吹き上がった道から現れた黒ずくめの迷彩服を着た赤毛と赤眼の男は、舌打ちしそうな顔で俺たちを見下ろし……。
「イクスヴェリア……それと管理局の局員か」
男は心底忌々しそうに付け足す。その声と視線を受けてイクスはビクリと体を震わせる。
俺は彼女を後ろに下ろし、庇うように彼女の前に立ちながら――
「イクス、少しだけそこで待ってろ」
『Protection』
《落葉》の声と同時に、イクスの体が橙色のバリアに包まれる。
それを背に俺は立ち上がり、赤毛の男と対峙した。
「《次元解放戦線》のリーダー……だな」
赤毛の男は頷く。
「一応な。同じ目的のもとに集まった同志たちの集まりだから、上下関係などないが。……後ろにいる娘を渡してもらおう。そうすればこの場は見逃してやってもいい」
「渡すわけねえだろう。この子は俺が
俺の言葉に男は首を横に振る。
「俺の目的はトレディアやルネッサとは少し違う。俺が望むのは“管理局への復讐”と“故郷の解放”のみ。他世界の無関係な市民を巻き込むつもりはない。それでもイクスヴェリアを渡さないつもりか?」
その問いに俺は首を縦に振った。
「イクスも“無関係な市民”の一人だ。それにオルセアの戦争は管理局が介入するずっと前から起きてるんだ。局を恨むのは筋違いだろう」
そう言ってやると、男はため息をつきそうな顔をしながら拳を構えた。
「話しても無駄みたいだな――ならば力づくでイクスヴェリアをいただくとしよう」
「させるかよ! イクスもあんたも
俺はイクスを庇いながら《落葉》を構える。
その直後、マリアージュ事件の主犯にして最後の敵“エリック・グラーゼ”が炎を纏った拳を振るってきた。