魔法少女リリカルなのはStrikerS 七課の剣銃士 作:ヒアデス
バリアジャケットを装着しながらオレとルーテシアは車両の後方に、チンクが前方に降り立つ。
白い上着が付いているフォワードと違い、オレたちのバリアジャケットは黒や灰といった色彩の服だ。
思わず自分が着ているジャケットを見下ろしていると――
「――レツヤ、下!」
ルーテシアの声に反応し、すぐに後ろへ跳ぶ。それとほぼ同時に、オレが立っていた場所の真下から青色のレーザーが撃ち出されてきた。さらに、レーザーによって空けられた穴から五体ものガジェットが浮かび上がってくる。
ルーテシアは自身の前に無数のナイフを出現させ――
『
アスクレピオスの一声と同時に無数のダガーが撃ち出され、二機のガジェットを破壊する。
それを見ながら、オレは落葉の柄に手をかけ――
「天瞳流――」
『漣月』
車両の上を駆けながら鞘から刃を抜いてガジェットを真横に斬り伏せ、隣にいたガジェットも斬り捨てる。そこへ残るガジェットがオレに標準を向けてきた。
オレは懐からぶら下がっているカードを握り――
「――《ライチェアス》!」
『Yes Sir!』
カードはすぐに返事を返し、黒い拳銃の形に変わる。
オレはすかさず銃型新デバイス《ライチェアス》を構え、ガジェットに向けた。
『
弾殻に包まれた弾はAMFを貫き、五機目のガジェットを破壊する。
そして、もうまわりにガジェットがいないのを確認して――
「行くぞルーテシア。早くこの車両を止めないと、オレたちもガジェットやフォワードもろともあの世行きだ!」
「――っ!」
オレの言葉にルーテシアは無言でうなずく。
そのままオレたちはガジェットが空けた穴に飛び込んで車両の中に侵入し、中で待ち構えていたガジェットたちに仕掛けた。
◇
「そのままガジェットを破壊していきながら8両目まで向かってくれ。8両目にある制御盤を操作すれば列車を停止させることができるはずだ……最悪の場合、逆走させる必要があるかもしれんが」
アインスが付け足した言葉に、チンクとレツヤは低い声で『了解』と返し通信を終える。
レツヤたちフィルダー同様、フォワードの方もまだ車両の制圧を終えていないらしい。もしどちらかの車両のコントロールを取り戻すのに成功したとしても、もう片方の車両を止めない限り衝突は避けられない。制圧した車両を逆走させて時間を稼ぐことも考えなければならなかった。
(私が行ければ片方は確実に抑えられると思うが、どちらかが危なくなった時に備えて私は待機しておく必要がある……それに敵がガジェットだけとは限らない)
あの車両を転送してきた魔導師がまだどこか近くにいるかもしれない。それに、“ナンバーズ”が来ている可能性もある。健斗たちが飛行型ガジェットを片づけている間、アインスはフィルダーとフォワードのどちらにも加勢できるようにしておかなくてはならなかった。
そこでアインスの耳元にルキノというオペレーターの声が響いた。
『ナハト04、05、9両目に突入――大型です! こっちの車両にも大型ガジェットが!』
“大型”という言葉にアインスは目を見開く。
(大型ガジェット――よりによって、あいつらの方に!)
◇
9両目のドアを開けてすぐ目に飛び込んできた“そいつ”の姿を見て、オレとルーテシアは目を見張る。
そこにいたのは、今までのガジェットより二回り以上のでかさを誇る球型のガジェットだった。こいつだけで十分と判断したのか、他にガジェットはいない。
なら、このガジェットを倒せば――!
「はあああああっ!!」
そう思うやいなや、オレは雄たけびを上げながら刀の柄に手をかけながらガジェットめがけて疾駆する。
それに対してガジェットはベルト状のアームを伸ばし、振り下ろしてきた。オレは左に跳んで最初のアームをかわし、すぐに右へ跳んでもう片方のアームをかわしてガジェットに迫る。
「くらえええっ!!」
鞘から一気に刃を抜き、ガジェットに向かって垂直に振りかぶる。
しかし、ガジェットの前に透明なシールドのようなものが張られ、落葉の魔力がかき消される。
「AMF――今までより濃い」
天瞳流といえども、魔力がなくなった刀ではガジェットを斬ることなどできず、ギンと音を立てながら刃が弾かれる。
「だったら――インゼクト!」
後ろからルーテシアの声が響き、彼女のまわりを飛んでいた無数の
だが、ガジェットはピピッという点滅と機械音をさせただけで、そのまま棒立ちしているルーテシアに向かってアームを伸ばす。オレは彼女の前まで跳び、刃でアームを払った。
「止まらない――!?」
安堵の息さえつかずに唖然とつぶやく彼女の前に立ちながら、オレは言った。
「たぶん、インゼクトのようなのに取り付かれても操作されないように改良してあるんだ。もうあれは通用しないと思った方がいい」
「っ……」
自身の技があっさり破られたのが悔しいのか、あるいはガジェットに取り込まれたインゼクトを悼んでるのか、ルーテシアの方から歯を食いしばる音が聞こえる。
その時、ガジェットが彼女に体を向けた。それを見て――
「やばい――さがるぞ!!」
オレはとっさに彼女を抱えながら後ろへ逃げる。ちょうどその時、ガジェットの目からオレたちがいた場所に熱線が放たれた。オレはルーテシアを抱えたままガジェットに一発撃ち込み、後ろの車両に逃げ込んだ。
ガジェットはアームをクロス状にして弾丸を防ぎながら、その場にたたずむ。あの車両を守る事以外はプログラムされていないらしい。
ガジェットと離れてからまた魔力を結合できるようになったけど、銃弾はあのアームに弾かれてしまう。かといって刀で斬りかかろうにも、近づいた途端にまたAMFで魔力が消されてしまう。
壁や天井とかに跳弾させればアームをくぐり抜けて、カメラアイやAMF発生器を撃つことができるんだが、さっきガジェットが暴れまわった時に壁と天井が傷ついてすでにボロボロだ。
……だが、彼女の魔法を使えば。
「ルーテシア、お前、今魔法は使えるか?」
ガジェットを睨んだまま尋ねると、ルーテシアは怪訝な声で答える。
「うん、あいつから離れてAMFの範囲から出たから。でも、もうインゼクトは通用しないみたいだし、こんな所じゃ他の子を
「じゃあ、ガジェットの近くに結界を張ることはできるか? 訓練でガジェット相手にやってただろう、たしかリフレクなんとかって……」
「“リフレクト・ミラージュ”。できるけど、あの時みたいにガジェットを囲んで攻撃を当てるのは無理だと思う。近くに張ってもAMFで消されちゃうから。場所も狭いし、あいつより10メートルくらい前に一つか二つ張るのがやっと……」
魔法名を訂正しながらルーテシアは説明する。そんな彼女にオレは銃を掲げながら――
「十分だ。オレが奴を引き付けるから、その間に結界を張ってくれ。そこにオレが弾を撃ちこむ」
オレの言葉にルーテシアは耳を疑うように目をすがめながら口を開いた。
「……まさか、ガジェットの急所を狙って弾を跳ね返すつもり? たった一つか二つの結界で?」
「ああ。一発目で中心のカメラアイを破壊して、二発目でその奥にある発生器を破壊する。ガジェットの構造上、そこに発生器があるはずだ。中心からの方がAMFを広く張れるからな」
絶句しながら耳を傾けるルーテシアに、オレは続けて言う。
「迷ってる暇も考えてる時間もない。車両がぶつかるまであと五分もないからな。ルーテシアだって、インゼクトの仇も取れずに死にたくないだろう」
「――、うん!」
やはりインゼクトを死なせたのがショックだったのだろう、ルーテシアは目を鋭くしながらうなずく。
それを確認して――
「よし――やるぞ!」
あえて奴に聞かせるように、威勢のいい啖呵を切りながらオレは前に出て銃口を向ける。それに対してガジェットは左右にアームを広げてくる。こちらに来る様子はない。
一方オレは、AMFや装甲を貫けるよう何重もの弾殻に包んだ厚い魔力弾を形成しながら奴を睨む。そして――
「ルーテシア、奴の13メートル前左斜め下に結界!」
『Reflect Mirage!』
主の代わりにアスクレピオスが声を放ち、オレの指示と寸分違わないところに魔法陣型の結界が形成される。それと同時にオレは引き金に手をかけた。
「――ショット!」
ランティアスから放たれた弾はまっすぐ結界に飛ぶ。そして弾は結界に弾かれ、AMFを貫通し、中心の
思わぬ痛手にガジェットは耳障りな警告音を発しながら後ろに下がる。
オレは奴を追いかけながら――
「次、9両目の出入り口の3メートル先右上と、ガジェットの11メートル前左下に結界一つずつ!」
そう指示した瞬間、再び指示通りの場所に結界が作られる。それを視認した瞬間、出入り口近くに張らせた結界に向けて弾を撃ちこむ。
その直後、オレが放った弾は一つ目の結界に弾かれて二つ目の結界の方に跳び、二つ目の結界に当たった瞬間弾かれて、ガジェットめがけて飛ぶ――カメラアイを失って剥き出しになった空洞に向かって、まっすぐに!
吸い込まれるように弾がガジェットの中に入り込んだ瞬間、そこから火花が走りガジェットはのたうち回る。そして奴の前に張られていたAMFが消えていくのを見て――
「よし、今だ!」
思わずそう叫んだ瞬間、ルーテシアが右腕を振り上げながらオレを横切っていく。そして
「アングリフ・クーゲル!!」
ルーテシアの右手から撃ちだされた衝撃波に貫かれてガジェットは大破し、その場で四散した。
――あんな技も使えたのか。単独でAランク取得したのは伊達じゃないらしいな。
清々した様子のルーテシアを眺めながらそう思っていたところで、車両の速度が緩くなった。そして――。
「ルーテシア、レツヤ、無事か!?」
その声とともに、8両目に通じるドアの中からチンクが出てくる。そしてガジェットの残骸とほぼ無傷なオレたちを見て……
「新型のガジェット……お前たちが倒したのか?」
チンクの問いにルーテシアはこくりとうなずき、オレもああと言いながら続ける。
「チンクこそ無事みたいだな。車両はもう止めたのか?」
「ああ、ついさっき停止スイッチを押したところだ。この車両はもうすぐ止まる……あとは向こうの車両も止まれば衝突の危険はなくなるんだが……」
そう言ってチンクは窓の向こうに目をやる。そこで赤毛の少年が大型ガジェットのアームに捕まり、車両から突き落とされるのが見えた。
まさかの事態にオレとチンクは見張る。そんな中、ルーテシアはアスクレピオスを填めた右手を掲げ――
「いでよ、
「待てルーテシア! “彼女”が何かしようとしている!」
腕を掴みながら止めると、ルーテシアは不服そうに口を止めながら外を見る。
そこに見えたのは、少年の後を追うように自ら飛び降りる桃色髪の少女と、その後に続いて飛ぶ小さな竜が見えた。
真っ逆さまに落ちながら、少年に向かって少女は手を伸ばす。そして彼の手を掴んだ瞬間、少女は短く何かをつぶやいた。
それを聞いた瞬間、竜の体は桃色に輝き、大きく膨らみを増す。
そして瞬く間に竜は巨大化して下まで飛び、落ちてくる二人を背中で受け止めた。
それを見て……
「あの魔法は…………あの子も召喚士?」
竜とその背中に乗る少女を見て、ルーテシアはつぶやく。
呆然と眺めているオレたちの視線の先で、少年は竜の上に立ち上がりガジェットを睨む。その横で少女は、彼の槍に補助魔法をかけていた。
彼女に礼を言いながら少年は片足を前に踏み出す。そして竜の背中から飛び降り、ガジェットに向かって跳び込んだ。
ガジェットは少年に向かってアームやコードを伸ばすが、彼は強化された槍で易々それらを斬り落とし、車両に飛び乗ると同時にガジェットに突貫し、奴の
それから間もなく向こうの車両も止まり、ケースを持った青髪の女性とオレンジ髪の女性が車両の中から出てきた。二人とも苦戦した様子などない。
……あれが『フォワード』。六課に入ることを許された人たちか…………。
◇
『刻印ナンバーⅨ、護送体制に入りました』
波打った紫髪の女の声がモニターから響く。それを聞いて白衣の男はふむと声を漏らし、大型モニターに目を戻す。そこにはケースに入れられたレリックと、それを持つ少女二人、そして彼女らを迎える六課と七課の面々が映っていた。その横にもう一つモニターが現れ――
『どうやら、レリックの確保もあの子たちの始末も失敗したみたいね。わざわざ私が行って列車とガジェットを送ったのに、無駄になっちゃったかしら?』
新たに現れたモニターの向こうで、召喚士の女は頬に手を当てながらそんな言葉を漏らす。その言葉とは裏腹に彼女の表情に残念そうな様子はなく、むしろ期待通りと言わんばかりの笑みが浮かんでいる。
彼女に同調するように白衣の男も笑みを浮かべた。
「いやいや、上出来だよ。君の働きも、六課と七課とやらの活躍もね。レリックは惜しいが、それ以上の
そこまで言って、白衣の男は堪えきれなくなったようにアジト中に響くほどの笑い声をあげる。
彼の前には、チンクやスバル、ルーテシアとレツヤに加え、エリオとフェイトの姿までもが映し出されていた。
◇
停止した車両を出て、ウイングロードというスバルさんが作った光の道の上で、オレたちフィルダーはフォワード四人と再び顔を合わせた。
その中からオレンジ髪の女性が進み出てきて、オレに向かって右手を差し出した。
「ありがとう。あなたたちがそっちの車両を止めてくれたおかげで命拾いできたわ」
「いえ、それがオレたち七課の役目ですから。それにオレたちも本来は六課の一員ですし、助け合うのは当たり前です」
手を握り返しながら答えると、女性も「それもそうね」と苦笑する。そこで女性は顔を引き締めて……。
「じゃあ六課の一員同士、そろそろ自己紹介くらい済ませときましょうか。あたしはティアナ・ランスター。一応、フォワードのまとめ役ってことになってるわ」
「えっ……ティアナ、ランスター?」
思わずフルネームをつぶやくオレに、ティアナさんは怪訝そうに「そうだけど」と言う。オレは続けて……
「もしかして、ティーダさん……ティーダ・ランスターさんの妹さんですか?」
「――えっ? あなた、おにい――兄の事を知ってるの?」
驚きながら尋ね返すティアナさんにオレは大きくうなずく。
「はい! 昔、犯罪者に襲われていたところを助けてもらいました! あの人ともう一人助けに来てくれた局員さんに憧れて、オレも管理局に入ったんです! オレはレツヤ・テンドウ。まだ至らないところばかりですが、六課転属目指して頑張りますのでよろしくお願いします、ティアナさん!」
「う、うん……よろしくね、レツヤ君」
手を握りながら頭を下げるオレに、ティアナさんはぎこちない様子で返事と笑みを返す。
そんなオレとティアナさんを他のフォワード・フィルダーは呆然と見て、御神さんと高町さんは硬い顔をしていた。