ユグドラシル社にはカロリンという少女がいる。
ヘイルダム部隊のサポートをしてくれる、ありがたくて真面目なサポート担当だ。
ほぼ毎日残業をして、電気ケトルに意識を移して休んでいるそんな
一番働いているかも、と。
何ならリゾート地に行って、島で運動会をしている場合じゃないのでは?と。
「いい電気ケトルを知りたい?」
「ああ、カロリンってよく電気ケトルで休んでるだろ、そろそろ新しい電気ケトルをプレゼントした方がいいんじゃないかと思ってな」
「そこで電気ケトルをプレゼントしようとするあたり分析員も相当疲れているな。大丈夫か?」
たまたま近くにいた晴に聞いたらなぜか心配されてしまった。
いや、こんな素晴らしいリゾート地に休暇で来れているのだ。疲れているわけがない。
カロリンは電気ケトルが欲しいはずなのだ。
「疲れているなら運動をした方がいい。自律神経が整うからな。どうだ、今からリフと一緒にそこらへんの青いドローンを叩き落す訓練をするんだが、一緒にやらないか?」
「ま、また後でで!」
ただの人間が晴とリフの訓練についていけるはずがない。無理がある。
さてどうしたものか、どんなケトルなら喜んでくれるのだろうか。
無難に湯沸かし機能だけついていればいいのろうか。睡眠の質を計測してくれる機能付きもいいかもしれない。いっそハンディサイズでいつでもどこでも休めるケトルならあの
悩みながら歩いていると、分析員~とシーリスに呼びかけられた。
「シーリスか。どうだ、休暇は?楽しんでるか?」
「もちろんだよー。この島はすごくいいところだね。思い出フォルダがまた潤うよ!ところで分析員、辰星知らない?一緒に写真とりたくて」
「辰星ならあっちでアイスクリームの移動販売をしてたぞ」
「おーありがとー分析員。じゃあ行ってくるね」
「ああ、気を付けて──あ、そうだシーリス、おすすめの電気ケトルないか?」
「え、電気ケトル?最近は不意の敵襲に備えるタイプの炸薬入り電気ケトルが売れ行き好調って、さっきニュースで見たよ」
「おお、いいかもしれないな、ありがとうシーリス。楽しんで」
「分析員もね~じゃーねー」
爆弾タイプの電気ケトルか、会社が襲われた時にカロリンが自衛で使えるのはいいかもしれないな。
ついでにユグドラシル社にいくつか備蓄しておくか?普段は電気ケトルとして使えそうだし。
「にゃ。分析員、何か困りごとにゃ?」
突然頭上から話しかけられた。
「ああ、マーシル。びっくりしたよ。何してるんだ?」
「これはドローンを上から観察することで何か発見が得られないか試してるにゃ。アヤメ人の技術は興味深いにゃ......」
「さすが技術者だな。そうだ、技術者として何かいい電気ケトルを知らないか?」
「電気ケトルにゃ?さっき遺跡にそれらしいものが落ちてたけど、それとかどうにゃ?」
「どんなやつだ?」
「ドローン技術を使用した空飛ぶケトルっぽかったにゃ。簡易的な武装に加え、電脳とリンクすることも考えられていて、十分なストレージとメモリ、コアを搭載し、外部からプログラムをインストールすればさまざまな用途に使える感じがしたにゃ。物理的にも戦える万能コンピューターな電気ケトルだったにゃ。」
それだ。それにしよう。
「なあマーシル、少しそのケトルを見てみたいんだがどこにあった?」
「この道を少し進んだ先の遺跡に落ちてるにゃ。私はここでドローンを観察するにゃ」
「そうか、ありがとう。楽しんでな」
「にゃ」
なんて有益な情報を得られたんだ。ありがとうマーシル。ありがとう休暇。ありがとう設計したアヤメ人。
「お、これか。確かにカロリンが持っているものとほぼ変わらないサイズでいて、マーシルの話によると色々できるらしい。これは便利そうだ。」
これでカロリンへの普段のお礼も兼ねたお土産はばっちりだろう。カロリンよ、楽しみに待つがいい。
今日はカロリンにサプライズでプレゼントする日だ。帰ってきてから箱やリボンといった装飾を用意した。喜んでくれるだろう。
「やあカロリン、久しぶり。元気にしてたか?これガルーアイランドのお土産だ。いつもありがとうの礼も兼ねてな。」
「あ、ありがとうございます。開けてみますね。」
カロリンが開けるのを待つ。楽しみだ。
「あの、分析員。これは電気ケトルですか?」
「ああ、いつもお世話になっているからな。ガルーアイランドにあるアヤメ人の遺跡で拾った電気ケトルだ。どうやら今カロリンが持っているものと比べてパワーアップしているみたいだぞ。特にドローン技術の応用で空を飛べて攻撃もできるのは素晴らしいと思ってな。」
「ア、アヤメ人の」
「そうだ。これでカロリンも、ケトルで休んでいる時に会社が襲撃されても戦える。ぜひ開けて感想を聞かせてくれ。本当にカロリンにはいつも助かってるよ。最近ヒーラが現れた時もーー」
「......なぜ電気ケトルを?」
「ーーすぐにアカシアを派遣してくれて助かったよ。あの娘はナイフでワンパ......」
すごいジト目で見られている気がする。あ、あれ?
「......なぜ電気ケトルを?」
圧を目の前の
「えっと、いや、いつもケトルで休んでるからそろそろもっと寝心地のいいケトルにしたらどうかなと」
「今まで生きてきて、布団で寝るかの如くケトルの寝心地を語られるとは思いませんでした。というかそんなに休んでほしいなら残業減らしてくれません?」
「あっ」
場に沈黙が落ちる。アヤメ人、なんてことをしてくれたんだ......
「一応言っておくとこれ作ったアヤメ人は悪くないですからね。いや、電気ケトルに使う技術じゃない気はしますけど」
「ハイ、カロリン様。これから全身全霊、粉骨砕身、電光石火でカロリン様の有休を何があっても、例え明日ユミルが現れたとしても最優先で取得させていただきます」
「いえ、休暇中もタスク溜まって休暇明けが地獄なので遠慮しておきます。というかユミルが現れたら対処してください。まあ、でも......」
おや?カロリンがケトルから目だけ出してこっち見てる。
「でも......?」
「......でも、分析員がきちんと考えてくれたお土産なので大切にします。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
おお、助かった。ありがとうエッダちゃん!
以降、アヤメ人電気ケトルで休んでるカロリンが見られるようになった。