裏切られた霊力使いの最強剣士は、拾った魔物付きの少女を弟子にしたら育てすぎてしまった〜二人は幻の理想郷を目指して旅をする〜   作:わんた

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一つ、聞きたい

「お二人はその村を探すために旅をしていたんですね」

 

「その通りだ。何か知らないか?」

 

「そうですねぇ」

 

 言葉を止めてペイジはパーティー会場内を見渡す。

 

 生き残った人々は既に逃げ出してしまったため、死体ばかりだ。騎士、商人の護衛、リザードマン、そして襲撃に参加した成人した魔物付きもある。

 

「私は知りませんが、ハラディン様が逃した女性なら何かの情報をもっているかもしれませんね」

 

 パーティー会場襲撃犯のリーダーであるクレイアなら、魔物付きが集まる場所を知っている可能性は高いだろう。

 

 成人した魔物付きを集めて今回のように使い捨ての武力として運用する。

 

 これは常に需要があると、ペイジは気づいた。

 

 権力者だけでなく豪商も客になるだろう。大金が稼げるはずだ。

 

 危険な仕事は魔物付きにさせて、上前をはねる立場になれれば安定した生活も望める。ちんけな裏商人から脱却できるのだ。

 

 プルグド子爵が死んだことで真っ当な商人への道が絶たれたペイジは、新しい商機を見いだしていた。

 

「彼女がどこに行ったか知りませんか?」

 

「わからん」

 

「手がかりはないと。ふむ。聞き込みから始めないといけませんが……我々はすぐにでも町を出なければいけない」

 

 逃げ出した貴族がクレイアだけでなく、ハラディンやペイジ、メーデゥも捕まえるために動くだろう。宿に戻ろうとすれば捕まってしまう。情報を集める時間なんてない。

 

「ここは情報屋を使いますか」

 

 新しい商売を思いついたペイジは協力的だった。

 

 伝手と金を使ってクレイアの情報を手に入れようとしている。

 

「一つ、聞きたい」

 

 静かな殺気がハラディンから放たれた。

 

 刀の柄に手が置かれる。

 

 答えを間違えれば斬られてしまうだろう。

 

「仕事を失敗した俺に、どうして協力しようとする?」

 

 人生を変える商談、それを破壊してしまったハラディンに対して裏切り者と罵ってもおかしくない状況なのに、責めることなく受け入れていることに疑問を持ったのだ。

 

 復讐するため、親身になっていると警戒していた。

 

「こんな商売をしているとですね。予想外のことなんてよくあるんですよ。裏切りだって一度や二度じゃありません」

 

「理由になっていない」

 

「そうですね……では、魔物付きの村を見つけないと私は成り上がれない、と言ったらどうです?」

 

「何を狙っているんだ」

 

 ハラディンは黙るとプレッシャーを与える。

 

 パーティー会場の外から足音が聞こえるようになってきた。クレイアを逃してしまった騎士たちが戻ってきたのだ。早く脱出しなければ捕まってしまう。

 

「成人した魔物付きの傭兵団と作って新しい商売をしようかと思っています。彼らは人間よりも能力が高いので、各地で活躍するはずです」

 

 さすがに暗殺に使うとは言えなかったので別の目的を語った。

 

 多少納得できたハラディンは殺気を収める。まだ問い詰めたいところではあるが、これ以上は時間をかけられない。

 

 ドアが開いてパーティー会場内に騎士がなだれ込んできた。

 

「お前たち! 動くなよ!」

 

 と、制止されて従うような者はいない。当然のように無視される。

 

「今はそれで良しとしておく。付いてこい、逃げるぞ」

 

 ハラディンはペイジを抱きかかえると窓に足をかけて飛び降りた。メーデゥも後に続く。

 

 地面に着地すると敷地外に向かって走り出す。屋敷から霊力で創られた矢が放たれるが、暗闇の中移動していることもあって命中しない。

 

 巡回している騎士もいるが、鎧を着込んでいるため追跡途中で息切れしてしまい見失ってしまう。

 

 屋敷を囲う塀の近くまで来るとペイジを降ろしてハラディンは腰を落として構えた。

 

「何をするつもりですか?」

 

「見てれば分かる」

 

 白い霊力をまとった刀が抜かれると、目の前の塀が細切れになった。

 

 貴族の屋敷に使われる塀が、こんな簡単に壊れることはない。ハンマーで叩いたとしても傷一つ付かないぐらい頑丈であるため、未だにペイジは目の前の光景が信じられないでいる。

 

 魔物付きを連れていることといい、常識外の男である。

 

「すごいですね……」

 

「行くぞ」

 

 今度はペイジだけでなくメーデゥまで抱きかかえると、屋敷の敷地から出て近くを走っている馬車の屋根に飛び乗る。激しく上下に動いていたため、客車の中にいる人間は気づいていない。

 

 ガラガラと音を立てて町に入ると、今度は近くの屋根に飛び乗る。

 

「しばらくは安全だ」

 

 ようやく落ち着ける場についたので二人を降ろした。

 

 激しい移動だったこともありペイジは目を回している。しばらく休みが必要そうだ。

 

 屋根に身を隠してハラディンは周囲を見渡すと、ランタンをもった騎士たちの姿がいくつも確認できた。貴族が殺されたのだ。彼らは威信に賭けても逃がすつもりはない。捕まえるまで諦めることはないだろう。

 

「この後、港の方まで行けますか?」

 

 顔色の悪いペイジが聞いてきた。

 

「可能だが何をするつもりだ」

 

「情報屋で襲撃した女性……」

 

「クレイアだ」

 

「そのクレイアさんの情報を集めましょう」

 

「時間をかければ脱出が困難になるぞ?」

 

「大丈夫です。麻薬を扱っている商人には緊急脱出用のルートもあるんですよ」

 

 誰も喜ばないウィンクをしたペイジは自信ありげに言い放ったのだった。

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