キヴォトスに狩人様がやってきた   作:小説を書く左廻りの変態

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前のスレ回、あと今後の展開にちょっと不都合なので先生が死体を発見した描写を消させてもらいました。誠に勝手ながらすいません。


第二十二話 闇市と気狂い

足を進めてただ、歩く

 

セリカを助ける為に砕いた壁

 

先生に追い付かれた電柱付近

 

貴公と歩いた曲がりくねった路地

 

襲撃された交差点

 

 

どれもこれも、つい最近に起こった出来事。だが今となっては、遥か遠くの様な出来事の様に感じる。変声機が無ければ話せない体、偽りのヘイロー、秘匿で隠した醜い外見、衝動を抑えなければ殺意の溢れる瞳。こんなものが人の身体にあろうものか。

 

酒を飲んで、忘れたかった。だが、血に酔う感覚を得た私では到底敵わなかった。考えない様にしていたはずの物事が、切れた動脈のように止めどなく頭の中に溢れ出す。考えるな、考えるな、考えるな、考えるな。それをした所でどうする?何度も、永遠と考えたところで私自身が化け物なのは変わらないじゃないか。

 

考えたって仕方が無いのに、いつかはバレてしまうのに、自分と一緒にいてくれる仲間や、友人が欲しいという感情が出て来る。愚かで惨めなのはわかっているのに。そう考えるうちに、目的のアビドス高等学校に着く。

 

あと一歩。それを踏み出せば校舎内。彼女達のいる気配がする、もちろん貴公のもだ。入って一番初めに聞かれるのは黒服との関係か、刺された器具は何なのか、あるいはもう人かどうかと聞いてくるのではないか。

 

獣と対面した時よりも、より濃い恐怖。何事も無く受け入れてくれるのかが、分からず、とてつも無く恐ろしい。優しい彼女達だ、適当についた嘘でも納得したふりはしてくれる。だがこれは私の希望的観測、楽観視したものだ。昔から、それでどれほどの苦痛を受けて来た事か。

 

だが……いや、きっと、大丈夫。

 

ガラッ……

 

意を決して部室の扉を開ける。

 

「あ、えっと……」

「ちょ!アヤネちゃんそこで黙ってちゃダメだってば!」

「ん、おはよう」

「シロコ先輩!?抜け駆けは無しだって!」

「まあまあ、いいんじゃない?来てくれるかどうかだったのに、こうやって朝から来てくれるんだしさ〜」

「そうですね⭐︎じゃあみんなで」

 

「「「「「おはよう(ございます)!ツキミちゃん!!」」」」」

 

“ここにいる全員で決めたんだ”

“暖かく迎えようって”

 

『………何も』

「?」

『何も、聞かないでいてくれるんだな。私の……ことを』

「ん、今までのもそうだけど。嫌そうに…してたから」

「まあ〜おじさんにも隠し事はあるしね〜ってことで、出来るだけ聞かない様にするからさ。安心していいよ?」

「ただ、昨日みたいに一人で全部やろうとしないでよね!」

「ん、でも結果的には助かってる」

 

“早朝から仕掛けるとは考えてなかったからね…”

 

「あ!じゃあ襲撃に備えて今日からみんなで学校にお泊まりなんてどうでしょうか?」

「うへ〜!?それじゃあ体育倉庫から体操マットでも出してくるか〜おじさん腰が痛くなっちゃうよ〜」

「ホシノ先輩はまだまだ若いでしょ!!」

 

こんなにも暖かいのだな。挨拶というものは、礼などの機械的な感じでは無いのは新鮮だ

 

「はい!じゃあちょっと早いですが、今から定例会議を始めます!」

「うへ〜もうちょっとゆっくりしていこうよ〜もっと気楽に気楽に…」

「ちょっとは真面目に、ふふふ」

『じゃあ始めよう、アヤネがまた机をひっくり返す前にな……』

「もう!揶揄わないで下さい!」

 

その後は前回通りの内容だった。セリカは同じ様な詐欺に引っ掛かり、ホシノは途中で寝落ちし、ノノミはアイドルの衣装案まで作って来ていた。デザインは悪く無い、だが果たして性能はどうなのだろうか?いや、様式美の類ならば性能は二の次で良いか、さて今度は私の案だ。

 

『今咄嗟に考えついたのだが、砂を用いた物はどうだろうか?本には【星の砂】なるものを瓶に詰めたものがあると記述されていた。砂漠の砂を使って、それのアビドス版を作りたい』

 

「えっと…ツキミ…ちゃん?星の砂は海の微生物の死骸で砂自体では…」

『………』

 

そうか……そうなのか…であればどうするか、他の砂の使い道。ガラスに加工するにしても技術も何も無い、逆に砂以外のもので使えるものは、例えば金目の物。だが既に売り払っているだろう、それに、いや、うーむ…

 

そんな中、校門から音が聞こえて来た。低く響く様な音、まるで獣が唸り声の様だ。なんだか嫌な予感がする。周りの反応も同じく、芳しくはなかった。

 

「あっ!今日支払日じゃん!」

「わっわわ、お金はこっちに!」

「えっと取り敢えずみなさんでいきましょう!」

 

アヤネが棚から現金を取り出してノノミと一緒に走り去っていく。途中スカートが跳ね上がって純白の何かが見えた気がするが、取り敢えず良しとしよう。

 

校門前の道路に黒い戦車二つと、白い箱の様な車両。そして一つの機械がいた。

 

「おはようございます、アビドス高校の皆様。今月の借金の徴収に参りました。それと、借金の半分ほどである、4億8117万5千円の支援を頂いたそうですね、おめでとうございます!これで完済までの309年が大幅に短縮されましたね!」

 

「あいつ……!」

 

なんのへったくりも無い無機質な笑顔を映す画面、容赦無く畳み掛ける不条理、とても聞いていて気分の良い物では無い、ここにいる全員が同じだ。

 

「では今月分である788万円、しっかりと受け取らせて頂きました!今後ともカイザーローンを御贔屓に…」

 

アヤネが持つ現金を渡したのち、奴らは颯爽と帰って行った。

 

「ツキミちゃん……」

「えっと、ね。うん」

「おじさん達は何にももう言わないって約束したでしょ?大丈夫だからさ」

「というかあの戦車何?今までは来なかったのに、それに二両も……しかも識別マークが不自然に消されてるし」

 

「多分、他の組織の奴。カイザーPMCもヘルメット団もあんなのは持ってなかった筈」

「だとしたら何処の組織よ!?あんな大きい戦車を同時に二両も同時に動かせる組織なんて…」

 

あの黒い機体、何処かで見た気がする。しかし何処だ?自分の頭の中を探っても靄がかかった様に思い出せない。咄嗟に視界を地面に向けた時、一つの水筒が目に入る。黒いそれに描かれた白い髑髏、確かヒフミという少女にこれを貰った。その場所は…ブラックマーケットだ。

 

『ブラックマーケットで見た事がある』

「え、それいつの話!?」

『少し前に行った事があってな、少し騒ぎを起こしたら撃たれたり爆破されたり、大勢から追いかけられたり……』

「大丈夫……なんですか?その、体とかは…」

『腹と足に7発ずつ、ランチャーとやらは見て避けた』

「うへ、見て避けるだなんて凄いね〜ただ。二度とそんなことはしないでね」

 

ぞくりと背中に冷たい水が掛かったような感覚がした。目の前にいるたった一人の少女が向ける視線が、とても恐ろしく思ってしまう。一瞬でも、泥濘の様に濁った瞳孔が、確かに見えてしまったのだから。

 

『わかった……出来る限りは、な…』

「お願いね…」

 

最後になるにつれて尻窄みする言葉を、そう発するだけだった。

 

「とっとと取り敢えず、調べておきますね!」

「うっうん!お願いね!じゃあ私バイト行ってきまーす……」

「あっじゃあセリカちゃん、今日お休み取ってみんなでブラックマーケットにいこうよ…落とし前をつけないとだからね

 

一瞬、何か聞こえたが……うん、気にしない様にしよう。

時に知らない振りをすることも必要なのだ。

 

その後は何事もなく、ただ平凡な時が過ぎ去っていく。今までは考える事すら出来なかった。だからこそなのかも知れない、今の心地よさが愛しいと同時に恐ろしいのだ。あの頃の事を“過去の出来事”として忘れ去ってしまうんじゃ無いか、と。

 

最近の事は思い出せるのに、あの頃の事が霞がかった様に朧気で……あ

 

「ねえねえ!これから倉庫にショットセル取りに行くんだけど手伝ってくれないかな?」

『何故……?』

「いやねぇ?予備のを掃除する時に棚の一番上に置いちゃって、脚立もどっかやっちゃってて……お願い?」

 

ホシノが上目使いをしながら擦り寄ってきた。何故か普段よりも距離が近い、鎮静剤割り増しだな。手を引かれるまま倉庫へ辿りつき、目当ての弾薬箱を手に取ってホシノに渡す。

 

「えっとスラッグじゃなくって……お!あったあった!そう言えばツキミちゃんのもショットガンだよね?だいぶ古めかしいというかアンティークっていうのかな?何処で買ったの?使い心地は?」

 

『聞かない様にするというのは……?』

「あっ……いやごめんね?でもさ、止めたってどうせ前線に出ちゃうでしょ?だから銃の特性だとか装填時間とか知れれば援護出来るかと思って、だめかな?」

 

『別に良い……まあそうだな、装填はそこまで時間がかからないが、撃つ前後が動き辛い程度だ。それに、殆どは仕掛け武器で対処するから滅多に使わないな…』

 

「あっそれと一つ思う事があるんだけどさ、盾とか使わないの?おじさんのはちょっと貸せないんだけどせめて銃弾を防げるやつw『断る』

 

『基本的に私を含め狩人は盾を用いない。獣に対して余りにも無力なのだ。恐らく銃弾にも同じ事が言える。それに避ければ済む話、さりとて盾全てを否定する訳では無い。ただ過信することなかれ、死はいつでも襲ってくる』

 

いかん、思わず食い気味で…

 

「まあそういうならい、お!セリカちゃんから電話だ〜ちょっと待ってて〜」

 

盾…盾か。湖の盾と木の盾はあるにはあるが、銃を捨てでも使う価値はない上に、おそらく貫通されるだろうな……ガラスと木だし。

 

そうだ銃も一緒に使える盾は如何だろうか、金属製にすれば多少なりとも防げはするだろう。しかし大型のものだと回避しずらい、そうすると大楯は除外だ。小盾、あるいは中盾ぐらいが望ましい。それでいて攻撃も出来ればなお良い。

 

大剣に盾を刺して斧状態に……何処かで見た事があるような、ないような……*1

 

「よし、じゃあ行こっか〜」

 

 

━━━━━━

━━━

 

 

“みんな揃ったね”

 

ヤーナム程ではないが陰気臭い空間の中、それに似つかわしくない声が辺りに響き渡る。

 

「もうホシノ先輩!急な予定立てないでよ……大将が優しかったからよかったけど、ビラ配りの時だと大変なんだからね!?」

 

相変わらずセリカが怒っているが、もう慣れた。

 

「まあまあそう言わずに、ところでツキミちゃんが見たのはどの辺りですか?」

『ここの路地を真っ直ぐに、そこで右に回ったところだ。視界の端に映った程度だから、確信は出来ない』

「にしてもなんでカイザーローンの回収車がこんな所に、銀行はもっと別の場所の筈なんです。如何して…」

 

アヤネの疑うような、それでいて不安気な声で話す。セリカの様に堂々とすれば良いものを、それも出来ないのは知っているがな……

 

“じゃあみんな、絶対に逸れない様に”

 

『待て、何か来る。いやあれは…』

 

前の方向、人だかりがあって見えずらいが、確実に何かが走ってきている。まさか

 

「おらああ!逃げんな!」

「嫌です!」

「トリニティの生徒は良い鴨なんだよ!身代金を要求すればたんまりと金が」

 

『すまんが、少し離れる』

「ちょっと!行ったそばから!」

 

人混みを押し通り、“彼女”の前に立ち塞がり形になる。

 

「きゃ!?」

 

その後ろからは絶えず汚物の様な声が響いている。しかしまあ前と同じ様に追いかけられ、それに遭遇するとは因果なものだ。

 

「なんだあのでけぇの!?いや待てよ?赤いヘイローに黒い服…あんた正義実現委員のやつか?」

「なんでこんな所にいると思ってんだよ。絶対に違うだろ、よかったらそいつを渡してくれたら山分けするぞ?」

 

『素晴らしい提案だ』

「え、ぇええ!そんな、そんなぁ…酷いですツキミさん…」

 

「よしじゃあ、大人しくこっちに」

『いやあ抑えるのがやっとだ…手伝ってくれ』

「んだよ、でかいのは見せ掛けか、よ。」

 

図々しく何も警戒せずに近寄ってくるとは愚かなものだ。やはり脳が腐っているに違いない。さりげなく相手の腹に散弾銃を近づけ

 

引き金を引く

 

ドパンッッッッ!!!

 

「なん、で…血が、いた、い」

「おい何しやがんだ!渡すんじゃねぇのかよ!?」

 

『騙して悪いが、嘘も技の一つだ。さあ狩りを始めようか』

 

「に、逃げろおおお!!」

 

殺気が出てしまったか。にしても負傷した仲間を抱えて走るとは凄い胆力と精神力だ。下郎であろうともそこは評価に値する。

 

「ちょっと急に走り出してどうし…誰?その子」

『友人…で良いよな?』

「はっはい!大丈夫です。ちょっと危ないところを助けて貰ったところでして…」

 

“ツキミちゃん、怒るよ“

 

「そうですよ!もう勝手に突っ走らないで下さい!」

「待って下さい!ツキミさんは私を助けてくれたんです。前の時だってスケバンの腕をこうやって!」

『しー……』

 

そのあとは、ひとしきり説教を受けた後に先生の監視がついた。何故こうも縛られなくてはならないのだ…ああ、もっと自由気ままに、朝日を飛んでいたあの鴉の様に自由に……

 

「えっと……大、丈夫?ですか?」

『駄目だ…』

「そんな落ち込まなくても、ってあれ!!」

「ほ、本当にカイザーローンの車が!」

「ほ〜らツキミちゃんも行くよ、ほらあとで慰めてあげるから』

『……』

「ん、不機嫌そう」

『実際不機嫌に変わりは無いぞ』

 

*1
完全にモンハンのチャージアックスですありがとうございます




なんか夢でツキミちゃんがシュープリスとかアレサとかに乗りながらコジマ粒子を撒き散らす幻覚を見た。狩人の徴的にタロットカードの逆さ吊りの男なんだから「いやいや!ちょっとお手伝いをね!」って言いながらヒュージキャノンブッパだろうに、まあ良いや。

夢は夢でしかないのだから

銀行強盗

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