キヴォトスに狩人様がやってきた   作:小説を書く左廻りの変態

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第二十五話 「ん、銀行強盗」

⚪️

 

「なあ、戦車が一台まだきてないんだが、お前知ってるか?」

「ああ?確か”あいつ“か?確か指名手配されてた“やつ“を発見したかなんかで隊列から外れてたぞ」

「話によると旧式のショットガンらしきものと工具かなんかで武装してるらしい……気でも狂ってるのか?」

「しかも弾薬は鉛じゃなくて水銀らしい……うちらみたいな軽量アルミフレームにとって悪夢みたいなもんだな。どうか終わるまでで良いから対面したくないな」

「でも懸賞金は結構な値段だぞ!とっ捕まえられればすぐにこんなところ辞められる。ああ早くこの仕事辞めて農業でもしてゆっくりしたいよ」

「にしてもあの銀行員は何を手間取ってるんだ……渡すだけだったらすぐに終わるだろ」

「なんか今回の警備代と諸々が今手元に無いんだとよ、銀行警備から駆り出されたと思ったらボランティアとはなぁ…」

 

にしても遅すぎる。まさかやられたんじゃ……そんな不安を払拭するためにライターのやすりを擦って火花を起こして、少し焦げたウィックに火が灯る。その火の先端にタバコを当てがって白い包紙が赤く染まっては黒く焦げるのを眺め、揺れ動く炎を振り落とす。

 

フィルター越しでも濃く感じるニコチンの甘み。頭の中が真っ白になり多少の不安は拭えた。それでも、何だか胸騒ぎがする。どうかこのまま……何も起きない様に、祈ることしか出来ない。

 

“やつ”がきたら全部お終いだ…隣で仲間が一瞬で吹き飛ばされて粉々になった様子は未だに脳裏に焼き付いて離れない。前は運が良かった。そうだ!俺は運が良い、きっと大丈夫、大丈夫…大丈夫だ……ああ、きっとそうだ。

 

目の前の奴が腹を貫かれるまでは、そう思っていた。

 

 

銀行の前でたむろしている連中の話し声が聞こえる。一方はタバコをふかし、その他は地面に座り込んだりしているなど様々だ。やる気がない。その一言にに尽きる、まだ獣狩りの群衆の方が殺る気に満ち溢れていた。

 

「どうやら運転手さんの帰りが遅いのを怪しんでいる様です…私たちのことは特にバレていないかと」

「ん、大まかに外観から予測するけど一般的な銀行の作りと同じ感じがする。裏口にも誰か回ってくれると時間稼ぎができる。その間にいっぱいお金を強奪d」

「シロコちゃん、おじさんたちはただ銀行のお金、もといアビドスのお金がどこに流れているか調べるだけ……お金はとっちゃいけないよ?」

 

幼い体躯に相応しくないその覇気、これで私よりも一歳歳上というのが実に奇妙だ。もっとも、私がそれをいうのも難儀だが。

 

“みんな行くよ!!”

 

先生の指示に全員が頷き、各々が武器を構えて歩を進める。当然、私もだ。回転機構を背に背負い、愛銃を左手に、メイス部分は右手にしっかりと握り締める。初めて持った時は重さのあまり持ち上げることすら出来なかっとが、今は違う。筋力武器全般に言えることだが、そういえばルドウイークの聖剣を持った時も似た様なことを言った気がする、いやどうだったか……まるで靄がかかっているかの様に記憶が曖昧だ。

 

にしても、先生が私を戦闘に参加するのに対して何も言わないのも少し気がかりだ。それに人を殺しかけた姿を見ても少ししか怯えていなかったような……もしやヤーナムと似た様な地の生まれでは無かろうな?まあないだろう。あんな腑抜けた女にそこまでの陰惨さは感じなかった。殺そうとすることを咎めるくらいだ。そんな人間がやすやすと許すだろうか、前に戦場へ行くことすらさせてくれなかったはず……なぜ?

 

それになぜホシノも許可をくれた?何もかも私のしたい様に進んでいるというよりも、何かの干渉を受けている様な気がする。……まあ良い。

 

“みんな、一般市民には被害を出さない様に…ツキミちゃん?聞こえてる?おーい!?”

 

(うるさい)

 

いつも通り半ば思考を捨てて私も足を動かす。近くにいるのは…ほう、先程見ていた奴がちょうど良いじゃ無いか。機械を相手にするのは少し面白みに欠けるが、良いか。

 

『やあやあ職務ご苦労……通っても良いだろうか?』

「待て、通る前に身分証か学生証の提示を、それと全員その覆面を取r」

 

グジャァ……

 

『悪いがそれは出来ないなぁ?にしても酷い臭いだ。この腐った臓物には…?機械には無いか、まあ穢らわしい虫がいることに違いない』

「がっ!?あぁ…クッソが…!」

 

グギィヤァ

 

適当に近くにいた機械に近づき、あたかも銀行の利用者に見せかけて攻撃する。メイス部分が深く突き刺さり、それを引き抜こうと必死に掴んでは押し出そうとする。しかし力が入らないのか次第に滑り落ちては掴んでの繰り返し。愛いものだ…!

 

『狂った医療者に、気色悪いナメクジ、穢れた獣ときて、今度は薄汚れた機械とはなぁ……結局のところ変わりはない。狩の夜でなくとも、汚物は常に蠢いているのだから』

 

ッグギ……ギィャャ!!

 

『だからこそ、我ら連盟が……今となってはは私一人か。まあ良い。だからこそ踏み殺し、狩り、殺すのだ。』

 

完全に腹を貫通させ、相手の胴体が間近に迫った時に、私はそう呟く。それに、なんの意味が無くとも。それに意味を見いだすこと、意味を探すのも“人”らしくて良いじゃないか。

 

「……ッ!!お前何し」

 

ダンッ!!

 

銃をこちらに構え、引き金を引こうとする機械が一瞬にして銀行側へ吹き飛ぶ。その勢いのままに窓を突き破り、一瞬の静寂ののちに店内は悲鳴が響きわたる。その凶弾を放ったのは他でもないホシノだった。

 

「うちのツキミちゃんに手……出さないでくれるかな?」

「あっ……ああ……」

 

ホシノの表情は普段と違いすました顔をしているのが、その内には激情…つまりは怒りが確かに込められている。まさに狂気。

 

だがそれだけに気を取られていてはいけない。盾持ちが横から殴りかかってきた。身を低くしてその鉄塊を避ける。勢いのままに地面へと突っ込んだ機械を叩きつけて肩の関節を砕く

 

「が!?」

『考えなしに突っ込むからそうなるのだ。愚か者』

 

ダンッダンッ!!

ダダダダダダダダッッ!!

 

幾多もの銃声が響き、気付いた頃には目につく機械は大方片づけられてしまっていた。壊れた残骸に銀行の窓ガラスは粉々に砕け散りあたりに硝煙の匂いが立ち込めておる。いや、一体だけ残っていた。

 

タバコをふかしていた個体だ。まるで怯える子供の様に疼くまっていた。にしてもホシノがそこまで怒る理由は何だろうか、別に少し撃たれたくらいであれば機械以外の血の通った者から血を得れば良いだけだ。それこそ【血の喜び】をつけているのだから内臓を引き抜けば回復できる。

 

まあ良い、ただ感謝を

 

『助かった』

「あんまりよそ見してると撃たれるよ?そんなことはさせないけど。」

 

……なにか母性めいた物を感じる。地底で知り合った狩人が言っていたバブみというものか?人形に欲情する愚か者だったからすぐに共鳴を破ったが、聞いておけばより詳細に知れただろう。そんなことを考えていた時、アヤネの声が聞こえた。

 

「シャッターが降り始めてます!!皆さん急いで下さい!!」

 

その声に気付いた時にはもう遅かった。足元にいた生き残りがいない、銀行に目をやると中には先ほどのタバコ野郎。走って間に合うはずも無く目の前にある完全に閉じ切ったシャッターなる壁は我々を拒む。だが素材自体は脆そうだ。これなら……

 

『回転ノコギリ、その名を、その真髄をお見せしよう…』

 

メイス部分を背負った回転機構へと差し込み鈍くガシャンと音が響く。

 

『教えてやろう。彼が獣喰らいたる所以を、その陰惨さと強さを』

「ツキミちゃん何して!?」

 

ウィイイイイイィィィンン!!!

 

唸り声とも言えるその産声と共に、金属の擦れる音が響き、少しずつ少しずつ歯が食い込んで切り込みが入る。一旦武器を降ろし、その隙間に両手を捻じ込み戦車の装甲を千切った要領で上下に割く。

 

「お〜すごいね〜」

 

ホシノは感嘆しているのか何とも思っていないのかよくわからない声でそう呟く。肝が据わっているのかいないのか、わからないがまあ良い

 

『フハハハハハ!!素晴らしいじゃないか…存分に狩り!殺し回りたまえよ。狂った医療者も腐ったナメクジも汚れた獣も腐った機械共も何もかも全てだ!!フフフフ!!!』

 

「えっと……大人しくしていてください!!武器を捨てて手を頭の後ろに置いて地面に伏せて下さい!!さもなくば撃ちます!!」

 

典型的な脅しの文言を言い、それに従う者は皆手に持っていたそれを離し、窓口で据わっていた機械は奥の方へ逃げて行く。

 

「ん、逃がさない」

 

シロコがそう呟いてテーブルを乗り越え、逃げた銀行員を追うために奥の扉へと入って行く。

 

「あんた何しっツキミちゃん避けっ!!!」

 

その瞬間、セリカの声が一瞬聞こえた気がしたがそれを遮る様に一発の轟音が響く。頬というか顎が熱い。それを感じると思えば、どくどくと流れ出る血がバケツ頭から垂れて服を黒くを染め出す、やはり血生臭い感じは無い。黒い装備のため血は目立たずに周りにもただ撃たれただけの様に見えるだろう。

 

どうやら片側だけ貫いたらしい。顎が半分だけ外れて宙に浮いている感覚がする、隠してあるから良いが中々にグロテスクだ……ホシノたちには見せられんな。何を言われるかわかったもんじゃない。というか私を見つめるホシノたちの目がすでに恐ろしいのだが!?

 

「かっこいい……!」

 

困惑しながら声のする方向に目をやると、昨日見た赤い髪の女、その隣にはやはりその取り巻きがいた。赤髪は喜々とした目で私を見つめるが、その取り巻きは狂気と混乱、そして焦りの表情が見て取れる。

 

「全身黒尽くめなのに頭だけはバケツを被るという異質さ!それに目の片側しか穴が開いていないアシンメトリー?な感じも最高よ!そういえばどこかで見たことがある様な……?」

「アルちゃんしー!!」

「社長!?」

「許さない許さない許さない許さない許さない、今度こそ殺して…!」

「ハルカちゃん抑えて!ね!?」

 

白髪のツノ付きと小さい方の白髪が両方を宥めているがまあ今は良い、にしてもだ。この兜に穴を開けるとはどういう了見だ?ひとまず顎が千切れていては喋ることも出来ない。輸血液をいつも通りに太腿に刺して血を流し込む。そして、一呼吸おいてから喋り出す。

 

『どうやら死にたいらしい。この腐った糞袋野郎が……!!』

 

撃った奴はセリカにすぐに制圧されたのか武器はどこかに、抵抗する意思も無くガタガタと震えているばかりで何もしようとしない。まるで獣に怯えていたかつての私のように。

 

「待ってくれ!いやだ!!死にたくn」

 

ウィイイイイイィィィンン!!!

 

再び回転機構部分を回し、徐々に速度を上げたそれは火花を散らして相手の腹部を何度も何度も何度も何度も抉りとった。次第に顔や身体中には茶色い粘液状の油がへばりついていた。飛び散ったそれからは血ではない腐った溝のような匂いが鼻腔を充満させているのが癪に障る

 

そして惨たらしく壊れた配線から火花が飛び散るその中から出てきたのは、百数の足をもつ茶色く蠢く「虫」

 

『機械にも巣食っていたかこの糞虫が……!』

 

内部に手を突っ込んで丁寧に虫を取り出して、タイルの地面に叩き落としてそれを一気に踏みつける。ブチブチと音を鳴らして破裂しては血を噴き出すその様は悍ましくもどこか心を惹かれる。

 

「あの人何やってる、の?」

「何にも無いところ踏みつけてるけど?」

「ちょっと心配よね…あの?大丈夫、かしら?調子が悪いんだったら」

 

『ほう?気狂いと見做すか。今はそれで良い、【淀み】など見えない方がいいのだから。我ら連盟が、この淀みのカレルを刻んだ者だけが見える使命だ。人の臓物のうちに蠢く【虫】を容赦なく踏み潰す。常人には理解されない、だからこそ我ら連盟は同士を愛する。ああ、そうだろう?』

 

その問いかけが返ってくることはないが、まあ良い。全てこの私の過去に囚われた役立たずのごっこ遊びなのだから。ああ、ゲールマンよ私は貴方のように獣にも人ににも慈悲をもつことなんて出来やしない。狩は弔いでも何でもない、ただの復讐と恨みの果てなのだ。幼稚だと蔑むが良い。

 

「ん、必要な物は手に入れた。早く逃げようリーダー」

「えっと…りーだーって誰のk」

「よろしくお願いしますファウストちゃん!」

「わっわわわたしですか!?!?」

 

一際大きなカバンを担いだシロコが奥から戻ってきた。

 

『遅かったじゃあなあいか、ヒヒヒ!』

 

とりあえずこれで目的は達成した。あとは持ち帰って調べて怪しいところをぶち殺すだけでいい。簡単だ。思ったよりも呆気なく終わってしまったことに少し残念だが、まあ私以外の全員が怪我なく終えることが出来たのは良いことだ。

そう思いながら踵を返して去った

 

気づけばブラックマーケットを抜けて、いつも通りの砂しかない閑静な街に辿り着いていた。だが、一つ気になるのが背後の気配だ。ブラックマーケットを抜けるよりも前、と言うより銀行あたりから付けられている。にしてもあんな杜撰な隠れ方でバレていないと思っているのだから滑稽だ。まだ獣の方が気配を消せている。みんなは気づいていないようだ。

 

カバンの中身が書類だけじゃ無く大量の現金が入っていいたらしい。ここの通貨の価値は知らないが、あんな紙切れに価値を見出すとは。だがそれに手をつけるつもりはないらしい。何でもそれに頼ったら、次も同じようにするという理屈だ。ごもっともだがそれだけでどうにかなるほど世の中は甘くない。

 

というかそのような話はホシノでは無く教師である貴公の出番のような気がするが、まあ良い。とにかく後ろをつけているやつをさっさと殺して方をつけようと、そう思ったのと同時だった。気配の主自らから現れたのだ。正体はあの赤い髪の女、確か便利だとか何とかだったな。今更になって思い出した。

 

「後ろからつけていてごめんなさい!!怒らせるつもりはなくって、えっと、あ、ああ…」

『つけるからには理由があるはずだ…一体何が目的だツノ付き』

「貴方達の、名前を教えて欲しいの!!!!」

 

は?

 

「私たちの名前は覆面水着団!!普段は水着に覆面が正装なんですが、今回は少しばかり急な感じでこの格好で、そして私の名前はクリスティーナだお♤」

 

「かっこいい!!!!圧倒的武力による制圧だけじゃなくそんなユーモアも持ち合わせているなんて、私とっても感動したわ!!他にも何かモットーのようなものってあるかしら?」

 

「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれた。おじさん達のモットーは目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く」

 

「かっこいい!!」

 

?????????????

 

よくわからずに帰った。相変わらず撃たれた跡を気にするように顎あたりをもみくちゃにされた。そういえば置いて行った現金はどうなるのだろうか、そのようなことを考えたのち、結局面倒臭くなって考えるのをやめた。疲れた。すごく疲れた。




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