何もなく朝日がのぼり、これまた何もなく学校へと足を運ぶ。そしていつも通りの朝礼会議をし、昨日奪ってきた資料に目をそれぞれ目を通し、返済金がヘルメット団などの武装勢力への“支援金”へとなっていることがわかった
「何よこれ…!じゃあ私たちのお金は全部あいつらの軍資金になってたってこと!?」
一番初めに反応したのはセリカだった。怒りのあまり額には青筋が浮かび上がり持っていた資料がグシャリと折れ曲がる。大事な証拠に何をと思うかもしれないが、それを先んじてコピーされたいわば代会品が渡されているため何の支障もきたさない。アヤネグッジョブとそう心の中でつぶやく。
『怪しい箇所が一気にわかったのはいいが、だからと言って返済を怠るわけには行かないのだろう?』
「そう…なりますね。悔しいところですけど。」
ひとしきり黙ったのち、アヤネの一声とともに全員が顔を上げる。
「これにて今日の朝礼会議を終わりとします。対策についてはまた後日」
『ちょっとすまない、昨日のことで少し疑問に思うことがあった。質問は可能だろうか』
「質問…でしょうか」
私の質問とはズバリ
『昨日見た紙切れ。あれがここの金なのだろう?一体どのような価値で運用されているのかが気になってな』
「「「紙切れ????」」」
全員の頭に❔が浮かんでいるのがうっっっすらと見える。何か不味いことを聞いてしまったのではと思い、少し背筋が凍るような感覚を得る。少しの沈黙の後に口を開いたのはノノミだった。
「紙幣をご存知じゃ…ないん、ですか?」
まるで粘つくナメクジのようにゆっくりとそうこちらに聞き返す
『悪いが、知らない』
「「「「ええええええええええええ!?!?!?」」」」
絶叫とも言える驚愕の声に教室の窓は震えて砂が落ちる。まるでそれは嵐の前兆のようだった。
「今までお金とかどうしてたんですか!?キャッシュレスといえど少しは見かけますよね!?」
『キャッシュレス?とはなんだ?』
「じゃあお店とかで何かを買う時にどうしてたんですか…まさかとは思いますが盗んでいたりしませんよね?」
「ん、お店をおs「シロコ先輩は少し黙っていてください」
『金を払う機会はあまりなかったな…そもそも使うことすらなかった。何せ店は全て閉まっていたからな。民家も完全に戸を閉めて閉じこもっていた。しかも他所者は出ていけだの穢らわしいだのと、はぁ』
『あと紙幣は知らなくとも硬貨ならわかる。ほら、これだ』
手持ちにある血の遺志を少し減らし【輝く硬貨】へ使者に変換してもらいそれを机の上に並べる。眩しく感じるほどのそれは机を照らす照明と日光により一層輝きを増していた。それぞれが手に取ってみては頭を少し掻いたり唸るばかり。
「ホシノ先輩これって…」
「いやそんなまさかね…?」
“アロナ、これの鑑定をお願い”
ホシノとセリカは耳打ちしながら相談を始める上に貴公は“謎の板に映る青い少女“に話しかける始末。何がそんなに不思議に感じるのだろうか?言うてここで言う500円玉?とやらと似ているじゃないか。そう疑問に思って頭を捻ろうとした時、貴公が口を少しばかり震わせながら喋り始める。
”こっこれ、金色のはほぼ純金…銀色のやつも…“
「へ?」
「あ〜やっぱり、そんな気は」
「ちなみに…なんですけど、価値としては?幾らほどに?」
”4…“
「よん?」
“1枚40万…”
「「「……………………すぅ」」」
ノノミと私を除くほぼ全員が後ろへ泡を吹きながらのけ反り、それに耐えきれないパイプ椅子と共に床へと倒れ込む。今机の上に広がっている10枚の硬貨のうち7枚が金硬貨、そのそれぞれが40万円。つまり推定280万円が今目の前に置いてある。
こんなヨンジュウマンとやらが幾らになるのか知らないがまあ反応から察するに卒倒する程か高価なものなのだろうと予測できる。しかしそんな高価なものを道標としてそこらの夜道に撒いていたと知ったらもっと驚くのだろうと、そう思った。
「どうかしましたか?ツキミちゃん?」
『ん?いやこれを道標として道に撒いていたと知ったらもっと驚k…あ』
思っていたことをそのまま喋ってしまい説教やら何やらされて、何位がなんなのかすら分からないまま何故か柴関ラーメンで働くことになってしまった。貴公曰く“労働を通してお金のありがたさと使い方を憶えよう”との事らしい。おおかた世間知らずな輩とでも思われているのだろう。
まあ学び新たな知見を得ることは素晴らしいものだ。
『…ではよろしく頼む、大将』
「悪いな嬢ちゃんに会った丈のがなくて寒くはねぇかい?」
制服とやらを着させられたが、大きさが足りず臍が少し見えてしまう上に、元から短いスカートは私の足の長さ的に、より短く見えてしまっている。にしてもこれが接客業というものか。このような破廉恥な格好をするぐらいならまだ娼婦の方が格好的にはまともに感じてしまう…まあ仕事内容としてはこっちの方が断然マシなのだが。
『寒くはないさ、心配してくれてありがとう』
「おっおう!なんか照れくさくなるなぁ」
毛皮の上からも頬が少しあからんで見えるがどうしたのだろうか?まあヒフミと同じようになにかしらの事情があるだけなのだろうと勝手に納得した。
「じゃあ仕事内容を今から説明する。まずやってほしいのは注文の受付とレジ打ちだな」
『レジ打ち?』
「まあ見てもらった方が早いな、ほらこれだ」
出てきたのは数々のボタンがついた台形のような形の機械だった。中には金銭を入れておく為なのだろうか、1円や10円などの硬貨がちょうど入りそうな円形の溝とまるでクリップのような構造のものとさまざまだ。そしてその中に当然紙幣も入っている。
『大将、値段は数字を見れば普通にわかるがどのように金銭を用いればいいのか私にはさっぱりだ。その上このセンエンサツがどのような価値があるのかすら分からない。』
「よしじゃあそれについても教えるぞ。いつでも見返せるように紙か何かにかいときな」
そこから説明されたのは本当に基本的なもの千円札は100円10枚分の価値があり、五千円札はその5倍であり、一万円札はその2倍、つまり千円札の10倍の価値があること、というような説明を受けた。いやアヤネよ普通に教えてくれてもよかったではないか別にへんなことではない筈だろうに、まさか私は面倒がられているとでもいうのだろうか。
その後はその機械の操作方法と接客のコツとその裏技なるものを教えて貰い実際に接客をすることになった。
大事なものは笑顔らしいが私は別にしなくても良いらしい。反応から察するによっぽど不気味だったのだろうか。
その後は少し苦労しながらも午前中はセリカが来てくれたお陰でが正午辺りからチラシ配りがあるらしくそのまま帰ってしまった。それと同時だった、入ってきたのは便利屋の面子。
「大将!以前はありがとう!今日は全員分のお金を持ってきたから柴関ラーメン4人前をたのめるわ!!」
「おお!この前の嬢ちゃんたちか!あっそろそろ休憩して良いぞツキミちゃん。ほらまかないもあるから」
『ああ分かった。』
昼過ぎだからか客足は減り、今いる客といえば便利屋だけ、スープを温めるガスコンロの音が静かにそこに響く。外は砂塵が舞い燦々と日が照りつける。
便利屋からは少し離れた窓際の席で外を眺めがらまかないの焼豚丼を頬張る。赤いレンゲで取ったそれは豚特有の白い脂身と重厚な肉、そしてその上に散りばめられた発色の良い緑色のネギが食欲を刺激する。
取ったそこから見える米の断面は上から染み込んだチャーシューのタレが白から黄金色に染めている。
そんな豪華な品を一口一口噛み締めて味を楽しむ。
甘いタレの中にネギのほのかな辛味がそこにあり甘すぎず、しかし味を損なわない程度に抑えている。
半分ほど食べ終わった頃、隣に便利屋のうちの一人。白髪にツノが生えた女が腰掛けてきた。
「昨日の強盗犯あなたたちでしょ」
『それがどうした?人違いという可能性もあるがな』
「どうしたもなにもないわ。ただよかったら一緒に食べないかって社長が誘ってるのに全然気づかないから来ただけ、あまりに無視されるから嫌われたんじゃないかっておどおどしてるから」
『すまない飯のことになると周りの音が聞こえづらくてな』
「社長はあなたの正体に気づいてないから出来るだけ感づかせるような言動は控えて。特に昨日は帰った時の社長の話が長くて大変だった。やれ二番手に見せかけた本当のボス、とか」
『能天気なものだな』
「それが社長の良いところでもあるから」
混ぜてもらい様々な話に花を咲かせた私が普段身につけている、コートはどこで売ってるのかやら、まあ楽しくはあった。こちらが食べ終わる頃に丁度便利屋の面子も食べ終わったようだった。
「今日もありがとう大将!!にしても写真よりもだいぶ多かったけどよかったのかしら。クライアントからの手付け金もあるし追加で払うわ」
「良いんだよアビドスのみんなの友達だろ?よかったら替え玉もサービスs『大将それでは「良いんだよ俺がやりたいからやってるんだ」
『だが商売としてはあまりに!』
「友…達?そんなんじゃないわ!何なのよ襲撃対象なのにみんな優しくって暖かくってこんなんじゃ絆されて理想のアウトローになれないわ!!」
突然声を張り上げてそう叫ぶアル。
『では目指すアウトローとはどのようなものだ?』
「そっそれはもちろん、意味の通り社会や秩序なんかに縛られずに、冷徹でかっこいいアウトローよ!!」
『仲間という拠り所を作る時点であまり冷徹とはいえまい、求めるのならより高みを目指すか目標を下げたまえ。あくまで目標は指標に過ぎん。無理に叶えようとして己が自身を壊しては元も子もない』
「どういう意味よ」
『向いていないから諦めるか切り捨てろというんだ!悪いが社長、貴女はその目標を掲げるに値しないほど優しすぎる。時としてそれは強さとなるが、同時に弱さでもある』
「なっそんなこと」
『ではなぜ斬りかかれる寸前まで引き金を引かなかった。私は殺すつもりだったぞ、それが弱さと言わずに何というのか考えてみるといい』
「でもあの時足が吹き飛ぶだなんて思いm
『だからなんだ?銃とは元来そういうものだ、己の意思で照準をつけ人や獣を害するための武器。一発でも貴女は撃った、それは少なくとも危害を加えようとする“意思”があった筈。自分を見失わず自分の意思を貫け』
『殺すだけなら獣にもできる。だからこそ獣より上位の我々は殺す意思を問わねばならん。選んで殺すのがそこまで高貴なものでなくとも、それがあるからこそ人は人であれるのだから』
瞬間、ゾッとした感覚に襲われ、焦燥感のままに咄嗟にカウンターを乗り越えて大将を床に押さえつける。
「嬢ちゃん何を!!」
『っ』
背中越しに熱が伝わり身を焦がされるのを感じる。壁は跡形もなく吹き飛び照明の光では無い陽の光が差し込んでくる。
「大丈夫か!?!?!?」
心配してくれる大将の声が耳に木霊する。爆風で鼓膜をやられたのか声が聞き取りづらい。だがそれを急かすように轟音が響く。店の隣の廃ビルに大きな亀裂が走り、倒れ込んでくる。
昼間の直上からの日差しを避けぎり巨大な石が落ち来た足は瓦礫に挟まれ身動きが取れず動くのは上半身だけ。朦朧とする意識の中で必死に力を振り絞り大将の首根っこを掴んでビルの影の外に放り投げた。
『今度は守れたか、な』
ガラガラガラガラガラガラ、ボスゥン!!!!!!
皆さん良いお年を