キヴォトスに狩人様がやってきた   作:小説を書く左廻りの変態

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にしても本当にこのTwitterアカウントの告知ってどうすればいいのか分からなくて本当に大変でした。教えて頂いためろんムーンさん、いや様には本当に感謝しかありません。この場を通じて感謝を…本当にありがとうございました。

セイアおめでとう!!


第二十七話 自切

『う、ああ…』

 

光一つ見えない暗闇の中、何をするでも無く私は、うつ伏せの状態で獣の様に呻いていた。それをしてもどうにもならないと知っていても、まるで風船から空気が漏れるかの様に自然とその声が漏れ出す。

 

そんな中、頭の中を駆け巡るのは大将のことだ。無事だろうか、しっかりと逃げられただろうか、今は確認しようも無いが故にそのことばかり考えてしまう。

 

ならばどうにかここから出なければならない。

 

『ぐぎ、あ』

 

瓦礫に阻まれ、身動きも取れず背中に覆い被さる様に倒れた柱が息を吸うのも声を出そうとすることさえも阻む。

どうにか動くのは上半身と左腕だけだった。

 

しかし上半身を動かそうにも、それは私には出来なかった。右腕がちょうど肩から瓦礫に潰されまるで枷の様に抑えつける。その下には潰れた影響だろうか、黒く悍ましくも、なぜか星空の様な輝きを放つ青ざめた血が禍々しく砂に染み込む様子が見える。

 

その上まるで木が根を張る様に石に染み込み始めているではないか。だが、血が渇いていない事から恐らく時間はそれ程経っていない筈…だと思う。

 

それにこれだけの規模の爆発が起こったのだから、恐らくもうアヤネやホシノたちも駆けつけてくるだろう。いや待て?このほぼ死に体と化した様な状態を見られたらどうなると思う?恐らくまた小一時間体を弄られ続けることになるだろう。

 

それだけは絶対にいやだ

 

とにかくそう考えると不味い。大将の安全確認の為もあるが早くここから出なければならない、そう絶対にだ。

 

だが本当にどうすれば良いのだろうか。丸呑みにされたことはあれど*1生き埋めにされたのは今回が初だ。どの様に対処したら良いのか全くと言っていいほど分からない。

 

だがまあ、手段は選んでいられないだろうな。そう思った時、ふと胸元に違和感を覚える。まるでそれは自己を誇示するかの様に着々と違和感を大きくしていく。

 

【蝕まれたスローイングナイフ】

 

細かいキザ刃のついた投げナイフ。

しかしこれは人血により錆びつき蝕まれている。元の物よりもダメージが期待できるものではない。だがそれは呪いに近く、人よりも上位の存在に対して有効となる。

 

失ったそれにより、深く傷つけ痛みを残す。あるいはそれが償いとなるのだろうか

 

『………』

 

べっとりと血の付着したスローイングナイフ。いつぞやの夢の産物。私の失敗の徴。咎の原因。そして償わなければならないものだ。全て、私が弱かったから、私が、守れなかったから、私が、全て、悪いから。

 

潰れた右肩に対して左手を用いて突き立て

 

『ぐっ…!?』

 

ゆっくりと刺しこむ。もとよりノゴギリ形の刃により肉が抉られ関節部の軟骨をゆっくりと割いていく。だがそれは今まで受けたどんなものよりも鋭く、例えるなら電撃が体の全ての血管を裂き、その内側に溶鉄を流された様な痛みが走ったとでも言うのだろうか。酷く熱く痛む。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!』

 

『ふっ……あ、ううう、あ、あ……』

 

ブチィ

 

『い゛…!!!!』

 

バチャァ…

 

切り離した腕の断面を庇う様に左手で覆い身を捩って痛みから逃げようと身体を捻ることを繰り返す。けれどその痛みに終わりは無く、まるで永遠とも思わせる様なそれの影響か、あるいは押さえつけられているのに無理に動いた結果だろうか。腹の内側から、胃の中からどろりと焼豚丼だったものがゴポリゴポリと音を立てて口から溢れ出す。

 

『お゛え゛、え゛…う゛』

 

でも、これで、やっと動け…

 

⚪️

 

「あーもう暇だなぁ!!」

「珍しいですねーセリカちゃんが暇だなんて言うことなんて」

「だってチラシ配り休みだったのよ!?しかも連絡も無しによ!?もう、ちょっとツキミちゃんの手伝いに行ってk」

 

そう、セリカちゃんが言い出した瞬間と同時でした。突如爆発音が響き窓ガラスが一斉にガタガタと震えると同時に、警報音が鳴り響き、シロコ先輩が自転車整備をほったらかして部屋の外にに飛び出してしまいました。カツカツと勢いよく階段の登る音がした事から、恐らく屋上から様子を見に向かったのでしょう。

 

“アヤネ!!どこで何があったの!?”

「そんな……!」

 

私はそう声が漏れ出す。

 

「周辺の監視カメラも衝撃の影響か中継が繋がりません!!でも、信号が消えた半径から推測して…中心は柴関ラーメン、かと」

「え…どう、して」

「ツキミちゃんは?ねえ、アヤネちゃん、ツキミちゃんはどう、どうなってるかわかる?ねぇ、ねぇ!!」

「黙っていて下さい!!!!!いま、今被害状況の確認を」

「ん!みんな!柴関ラーメンが…」

 

“シロコ落ち着いて、なにがあったの?”

 

戻ってきたシロコ先輩が血相を変えて戻ってきました。血の気の引いたその様子は普段の様相とは全くと言っていいほど焦ったその様は、普段の冷静さは無く、まるで焦っている様にも、怯えている様にも見えました。

 

「柴関ラーメンだけじゃ無くて、その周辺が吹き飛んでた…」

 

一斉に騒がしかった室内が静まり返り、沈黙の時間が流れる。ほんの数秒のそれは、まるで1時間、いえもっと経っている様に感じました。

 

「ホシノ先輩はどこ!!みんなで助けに行かないと!!」

「ダメです、朝からいなくて…」

「とにかくホシノ先輩は私が連絡をしておきます!」

“みんな行くよ!!”

 

セリカちゃんの一声で、その沈黙は破られてそれと同時に時間の流れが通常通りに戻った。

 

⚪️

 

「おやおやこれはこれは、貴女から来てくださるとは想定外ですね暁のホル…小鳥遊ホシノさん。今回はどの様な要件で…」

「単刀直入に言う。黒服、あなたの提案を受けに来た」

 

「クククッ…して、なぜ?以前の貴女でしたら絶対にありえない行動です。何か理由が…いえ、“彼女”についてでしょう?小鳥遊ホシノさん。」

「あの子が本来関係の無いこのアビドスの借金を半分も肩代わりしてくれた。でも、肝心の私は何も出来ていない。あの子が身を削って得たそれに、私も応えなくちゃいけない。」

 

「……私がアビドスに誘わなかったら、ツキミちゃんは何も傷つく必要はなかった。私が責任を果たさなくちゃいけない。アビドス高等学校廃校対策委員会の委員長として、そして何よりもこれで全てを終わりにして、ツキミちゃんがみんなが借金の事を何も考えずに済む様にする為に…っ!」

「本当に、それで良いのですか?」

 

「もう、私の中では決まった事だから」

 

「一つ、研究の成果が出ましてね。それを聞いた後でも同じ回答ができるでしょうか。」

 

「なんなの?あなたからすれば鴨がネギを背負って来て鍋に火をつけて入ったみたいなものでしょ。そんなんじゃまるで、まるでそうして欲しくない理由がある様に思うけど」

 

「彼女、狩谷ツキミは得体が知れません」

「その出生から今までの全てが」

「こちらを、どうかご覧ください」

 

目の前に出されたのはガラス張りの箱に入ったシュウマイの上に乗っかっているグリーンピースほどのピンク色の塊、そしてそこから何か苔の様なものが生えている奇妙なものだった。

 

「一つ、疑問に思ったことはありませんか?」

「……?」

「あなたは何故、そこまで狩谷ツキミに固執するのか」

「セリカちゃんを助けてくれたし、借金の事も、あった…から」

 

「それにしても異常なのです。それでも多少なりとも不信感を募らせたり怪しむ性分、実際先生、大人のことも怪しんでいる。けれど、彼女に対してはそれがなく、無条件で信じているかの様な態度を取る」

 

「それに、あなたが接触した当初、そのショットガンで頭を撃ち抜いた後にも関わらず、たった数時間程度しか経っていないにも関わらず、彼女がその場に何事もなくいる事に何故か“納得”しているのです。」

 

「その上、生徒の一人の頭を握り潰そうとしたにも関わらず、それがさも“当たり前”の様に流した。まるでその行動に一切の疑問を持たないかの様に…」

 

「不思議に思いませんか?頭部を撃ち抜いた時や損壊した四肢を見た時は嘔吐する感性が、何故かその時だけ鳴りを潜める、その違和感に」

 

「しかもそれは、“彼女”が近くにいる時のみに限定して起こる現象」

「……何が言いたいの」

 

「言ってしまえば簡単です。彼女は、狩谷ツキミは」

 

「人の精神に干渉できる」

*1
漁村の大型魚人やエブタソ、聖杯の穴掘りetc




自切(じせつ)は、節足動物やトカゲなどに見られる足や尾を自ら切り捨てる行動ないし反応。

主に外敵から身を守るために行われる例が多い。外敵に捕捉された際に肢や尾等の生命活動において主要ではない器官を切り離すことで逃避できる可能性を作り、個体そのものが捕食される確率を下げるための適応であると考えられている。そのため自切する器官はあらかじめ切り離しやすい構造になっていたり、喪失した器官を再生させる等の機能を持つ種が多い。

Wikipediaより参照
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