キヴォトスに狩人様がやってきた   作:小説を書く左廻りの変態

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1ヶ月も遅れてごめんなさい。


第二十九話 狩人 【スレ回第六弾】

 

切り落とした右腕の断面を抑えながら瓦礫を掻き分ける。木材から石材に至るまでの全てが砕け、窓ガラスだったものが手や指に深々と突き刺さる。そんな状態でも私は進む。

 

『もう…失いたくない…私はどうでも良い、大将…どうか、どうか』

 

半ば祈りと化した妄言を呟きながら瓦礫の間に腕を入れ、より大きく掻き分ける。その瞬間、待ち侘びていた光が目を貫く。さんさんと照りつける陽の光。柔らかな月光とは異なり、その光をもってして私の体を暴力的に照りつける。細かい傷のついた腕や顔などがその度に痛む。だが、それで良い。もう夜はしばらく良い…

 

思い足取りでも、一歩一歩前へ進む。朧げな記憶を辿って大将を投げた地点へと向かう。いや、向かうと言うほど遠い訳ではなかったが、左腕を切り落とし、足や肋骨が折れた体では酷く長い様に感じた。

 

『大将…どこ、に』

「!!ここだ!ツキミちゃん!俺ならここにいるぞ!!!!!」

 

『ふふふ、ふっあははは…よかった、私は今度こそ救えたのだな。こんな無力で弱い私でもやっと』

 

安堵すると同時に乾いた笑い声が自然と出る。でもよかった。あの子と違って今度こそ救うことができた。それに比べたら私の右腕なんか安いものだと感じる。

 

そして声の聞こえる方向に進んでいった。そこにいたのは大将と便利屋だった。双方共に驚いた顔をしているのが見て取れる。まあ…片腕がない訳だしな…うん、その反応が正しいのがわかるが。まあ良いだろう。だが、この店を…いやここら辺一帯を吹き飛ばした輩共だ。その様子を見ていると貴様らがやった癖に何を驚いているのかと殺意以前に疑問と呆れが頭の中を占める。

 

『貴様ら…なぜいる?殺されたくなかったらそこからd』

「ちょっっ!?!?!その腕どうしたのよ!?!?いや足が吹き飛んだのも見たけど、だからやっぱりおかしいわよ!?」

 

ほとんどの者が呆気に取られてまるで足に根が張ったかの様に動かないなか、アルだけは凄い勢いで走ってきた。爆発音よりも大きいと思える様な声が耳を貫き、視界からは腕の断面を見て忙しなく手を動かしては何度も頭を抱えるなど、現状に対して受け入れ難い状況になっていることが分かる。

 

『いやまあ幸い血は止まっている。まあ輸血すればまた生えるから心配することはない。とにかく大将が無事でよかっ』

「「「よくないよ!?!?!」」」」

 

大将を含めた全員から否定されてしまったな…ははは、さて荷物を回収して。かい、しゅう…

その時私は気づいた。装束も使者の入った水筒も、その何もかもが瓦礫の下にあるという事実に。

 

『ああ、そうだ…ところで私の私物は、どうなった?』

 

人形から託された物が、あの世界の私の唯一の存在した証拠が、今手元に無い。そのこともあるがあの水筒の中には使者も入っている。託されたもの、私が継いだもの。左手に力が込められて爪の食い込んだ手から鮮血が滴り落ちる。歯が軋み、肩が上がる。それはまさしく殺意だった。

 

「えっと、それならこっちに」

 

そう言ってカヨコが渡してくれたのは少し煤呆けた水筒と水銀弾と散弾銃。そして私の衣服。その後ろからムツキが引き摺ることもなく、両手を使って回転ノコギリを持ってきた。おおよそあんな華奢な女子に持てるそれでは無いと思うが、まあどうでも良い。

 

水筒の中身を見ると少し目を回した様な様子の使者が身を折り畳めて入っていた。外傷も特に無さそうだ。しかし、何か足りない。ああ、そうだ。輸血液がない、しかも一本もだ。

 

『こう…ガラス瓶に入ったものは…なかったか?』

「あ〜それが見つからないんだy」

 

ダンッ!!!!!ダンダンッ!!!!!

 

突然、ムツキの声を銃声が遮った。その方向を見れば大量の血溜まりがそこには出来ていた。誰かが撃たれたと言うわけでもなく地面に広がるばかりで周りに困惑の色が窺える。だが、私は気づいた。この鉄臭い様で甘くいこの香りに、鼻の奥から脳を痺れさせる様な濃い匂いを。

 

「壊れてください壊れてください壊れてください壊れてください壊れてください!!!!!」

『……っ』

 

ヤーナムの輸血液を、ハルカが壊していた。狂熱にうなされた様に同じ言葉を繰り返すその様は私から見ても狂っている様に見えた。

 

「ハルカ!?!?一体何をしているの!?!?!」

「それが無いとこの人は体を治せないんだよ!?」

「ハルカお願い一旦止まって!!」

 

アルたちの静止も虚しくハルカの行動は止まることを知らない。まるで使命に駆られているかの様にも見えるその様はかつての英雄ルドウイークの愚行を思わせる。

 

疑いはすれど止まることなく己の正義と導きと呼ばれるそれに突き動かされ、自らが最も忌む獣へと、自らの手で成り果てた。かつての英雄の似姿を、こんな少女に。いや私もさほど違いはないか?

 

そんなことを考えているうちに、肩で息をしているハルカがこちらへ向き直る。どうやらひとしきり壊し終わった様だ。

 

「これで、これで良いんです」

『何が、良いと言うのかね?人様のものを壊しておいて…それで良いだと?』

「そ、それが目的ですから」

「ちょっとどう言うことかわからないわ、ハルカ」

「アル様を守るためです!!この人はアル様を殺そうとした!!そして夢を!生き方を否定しました!!放っておけばまた殺しにきます、だから、だから!!!!!」

 

『「殺そうとする前に殺す」』

 

予想していた言葉をほぼ同時に吐き出す。ここまでの殺気をただの人間が出せるのは驚きだ。狩人でも無い、ましてや年端も行かない少女なら尚更と言うものだ。

 

『結局、回復する手段をなくして手負の状態にして殺す…そう言う企てか?ハルカ』

「っ…」

 

その質問に答えることはなく、ただ黙ってハルカは銃に弾を込めた。

 

「死んで…下さい」

『願うのでは無く、』

殺しに来い

ダンッ!!!!!

 

ハルカの発砲と共に”狩り“の火蓋が切られた。顔面に散弾が掠る。

 

『なるほど…えずくじゃあないか。堪らぬ血で誘うものだ』

 

傷口から滴る血を舐め取り、そう呟く。その様子を見たハルカは悔しそうに顔を歪めて再度撃とうとする。その動作には無駄が多く手は震えていた。そうか怖いんだ。お前は、私のことが怖いんだ。

 

『フッハハハハどうした?殺すのだろう?たった一発当たらなかった程度で怖気付いたか?恐れは良い…恐れなき者など獣と何の違いがあろうものか。だが、私は貴公を狩らねばならん。怖気つつも挑むその姿勢に敬意を払おうじゃないか』

「っ!」

 

右腕が使えない以上、この回転ノコギリは使えない。だが、使うしかないだろう。左腕でも使えるだろうか。

 

ガンッ!!!!!

 

鈍い音を立てながら仕掛け武器を地面へと突き立て、そして回転機構を動かす。

カッカッと弾く音を立ててながら火花を散らすそれを回転の勢いを使って持ち上げ肩に担ぐ。

 

本来両手で持つそれを片手で、その上利き手ではない左腕で持つことは非常に体に負担がかかる。乗せた衝撃か、あるいは身体の耐久が無い性なのか、それとも両方だろうか。

 

『まあ…そんなことはどうでも良い…そういう者を狩るのも狩人の役目というものだ。』

『私はゲールマンほど優しくは無い、だがこの言葉を借りるとしよう』

 

狩谷ツキミ(ゲールマンの成り損ない)の狩りを知るがいい』

 

ミチミチと音を立てながら肩から粘液が滴ると共に翅が飛び出す。日に照らされたそれは粘液により艶めかしく光り、そして悍ましい様相を顕現させる。以前の小さいそれではなくアスファルトの黒い地面に映し出された影の大きさから優に超えている。まあそんなものはどうでも良い。不思議と今は気分が澄んでいるようだ…

 

『さぁ始めよう。狩の、時間だ』


 

【速報】ツキミちゃん人外説浮上

 

1:名無しの先生

うわっ!?なんか羽生えたんだけど!?

 

2:名無しの先生

なんか気持ち悪りぃこの羽、触手?

 

3:名無しの先生

触手っ…ぽいよなぁ羽毛すらないから鳥の羽とは違うんだとは思うけど

 

4:名無しの新米先生

いや突然そんな話から始められても何が何だかわからないんだけど?

 

5:名無しの説明先生

よし、おっさんが説明してやろう

便利屋が来店

ツキミちゃんと口論?説得?

ハルカブチ切れ店爆破

『殺しても構わんのだろう?』

冒涜的な羽がツキミちゃんから生える

 

6:名無しの新米先生

わーお

 

7:名無しの先生

改めて文字に起こすとね、これもうわかんねぇな

 

8:名無しの先生

黒服ってやつが言ってた【精神に干渉するカビ】ってのも信憑性が出てきた気がする…あんな怪しいやつが言ってることなんて信じれるわけねぇじゃん、絶対ツキミちゃんのこと孤立させようとする策略だってホシノと同じこと思ってたよ?

 

9:名無しの先生

でもあんな羽が生えてるやつだとねぇ?

 

10:名無しの先生

まあ疑いはするわな

 

11:名無しの先生

そう言えばカビの作用ってどんなんだっけ?

 

12:名無しの先生

ドーパミンとオキシトシンの分泌が促される…的なやつだった筈。

間違ってたらすまぬ

 

13:名無しの博識な先生

ドーパミンとかは有名どころだと快楽としての面が強いけど気分とかにも深く関わるし精神に作用するとも取れるよ

 

14:名無しの先生

出たな博識野郎

 

15:名無しの博識な先生

ども、まああとオキシトシンの方は結構有名だね。別名は幸せホルモンとか愛情ホルモン

 

16:名無しの先生

というかそれがどう言った形で作用するんだか俺わかんないから出来ればそこも教えて下さい何でもしますから(何でもするとは言ってない)

 

17:名無しの博識な先生

おk。多分と言うか自分の妄想の域を出ないんだけど、ツキミちゃん大好き状態になるんじゃね?

 

18:名無しの先生

おん…なんかそれって嫌だな。考えてもみろよなんか最近みんな優しくって仲良くしてくれるなって思ってたら自分から出る病原体のせいなんだぜ?つまりその優しさは本心ではなくカビの性…絶対人間不信になるわ

 

19:名無しの先生

結局そう思わせる物質を撒いてる訳だしね、近くにいると幸せになるとかもあるのかな?

 

20:名無しの先生

正確にはその物質を分泌させるカビを撒いてるんだけどね…バイオ7かよ

 

21:名無しの先生

『今日からお前も家族だ』

ってツキミちゃんが言いながら殴ってくる姿が頭に

 

22:名無しの先生

やめろツキミちゃんファミパンおじさん概念とか言う邪悪なものを生み出すんじゃない!!

 

23:名無しの先生

そのクソったれな情報を俺の頭に流し込むんじゃねぇ!!

 

24:名無しの先生

にしてもあの肉塊ってさ…絶対頭にブッ刺したタピオカストローみたいな奴から取ったやつだよね?それ以外接触してないだろうからさ。

 

25:名無しの先生

本当にもうよくわかんねぇよ!!!!!

どこの学園に所属してたのかハッキリ分からないしさ!

平気で人殺すし!!!!!

よくわかんないカビで人の頭を弄るしさ!!

そんでもって2メートル近くの羽が生えるし!!

 

26:名無しの先生

まあ同じくらい気が狂ってるハルカって言う輩もいるけどね

 

27:名無しの変態先生

人殺しと建築物損壊…どっちも悪いっちゃ悪いけど確実に人殺しの方が悪いし気が狂ってると思う。

 

28:名無しの先生

変態がまともなこと言うんじゃねぇよ

 

29:名無しの変態先生

罪人が罪を説いちゃダメかい?というかまだ変態的行為をやった訳じゃないんだけど?

 

30:名無しの感の良い先生

まだ?

 

31:名無しの変態先生

おっと

 

32:名無しの先生

にしても次の話見たくねぇよ…程度は違えど狂人VS狂人だもん。

 

33:名無しの感の良い先生

と言うかこれみろよ…

https:///BloodborneⅡmattemasu.

 

34:名無しの先生

ああ今回の話の最後らへんで出たスチル?なんかおかしい点でもあったか?

 

35:名無しの感の良い先生

いやみれば分かるだろ片手で大きい得物を肩に背負ってさ、足に力が入っていないこの姿完全に【深淵歩きアルトリウス】のセルフパロディだろ!!

 

36:名無しの先生

おっそうだな

 

37:名無しの感の良い先生

そうだよ(便乗)

 

38:名無しの先生

でもアルトリウスは右手で、ツキミちゃんは左手だから逆ってこと?かな

 

39:名無しの卑屈な先生

というかそんなことよりもツキミちゃんの腕のこと誰も心配しねぇのかよ!!!!!ふざけんな!!!!!

 

40:名無しの先生

いやまぁツキミちゃんだからねぇ…

 

41:名無しの先生

輸血すれば生えるって本人も言ってたしさ…

 

42:名無しの卑屈な先生

なんかお前らが怖くなってきちまった…おかしいだろ、キャラクターといえど人の腕がもげた、と言うか自分で切ったというか…それに対して何とも思わずにいるのがさ…感の良い先生も何も言わないし

 

43:名無しの卑屈な先生

散々変なことを言ってきた俺がいうのも何だけどお前たちおかしいよ

まるでツキミちゃんのカビに侵されてるみたいじゃないか

 

44:名無しの狩人

……っ

 

45:名無しの卑屈な先生

狩人っ…なんか言えよなんか知ってんだろ?

 

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