キヴォトスに狩人様がやってきた   作:小説を書く左廻りの変態

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第三十話 異形の翼

『死ね』

「くっ…!」

 

散弾を躱すと共に最短距離で相手の懐へと突っ込み、そしてその勢いのままに左肩の回転ノコギリを振り下ろす。しかしそれは当たることもなくハルカの右肩のワッペンを切り取るだけだった。

 

外した。普段であれば特段気にすることはないが、今は手負いの身。

それすらも大きな隙となる。両手で扱っていたそれは非常に重く振り下ろしたそれを易々と持ち上げることは出来ない。

 

「ふっ!!」

 

ダンッ!!!!!

 

射撃音が聞こえた時にはもう遅かった。数多の弾丸が横から腑を貫き体に焼けるような痛みが走る。

 

『見事だ、だが足を止めるんじゃない』

 

振り下ろした回転ノコギリを軸に

 

最早諦めのように私はそう呟きその痛みに身を任せるばかりで砂の地面へ倒れる。抉れた傷口に砂が張り付きとても痛い。その間私はとある物を準備し、背中へと隠す。

 

「とどめ!!!!!」

 

そう言いながら飛び上がり、私の頭に照準を正確に捉えた暗い深淵のような銃口がこちらを覗き込む。まるで瞳孔のようなそれが間近に迫った瞬間、私は背中に隠していたソレを取り出して引き金を引く

 

『追い討ちとは、感心しないな』

 

ダンッ!!!!!ドパンッッ!!!!!

 

二つの破裂音が空気を揺らす。一つはハルカの、もう一つは私のものだ。水銀弾の血の量を調整した私の必殺技とも言える弾丸の射撃音だ。ハルカの体は宙を舞いドサリと重い音を立てながら地面へと伏す。痛みのあまり撃たれた箇所を庇いながら蹲る姿を晒す。

 

かく言う私の頭は右上が吹き飛んで脳髄がゴボリと滴り落ちる。だが、それでも私は死なない…死ねない。

 

『殺せ、殺してくれ!!殺せ殺せ殺せ殺してくれ!!あぁもっともっとだ!!』

 

回転ノコギリの回転機構を外し、軽くなった槌矛を片手で振り回す。顔面を右へ左へ何度も何度も殴打する。そして何回も胸や腹を突く。しかし今までの生徒とは違い皮膚が赤くなるだけで血が少し滲む程度だった。撃たれた箇所も黒ずんでいるだけで目立った外傷はない…強いて言うなら衣服が少し破けた程度だ。

 

ヘルメット団の輩に撃ち込んだ時なんぞ腑が溢れ落ちたと言うのに…

 

何故だ…個体差はあるといえどこんな極端な。そういえば以前に水銀弾を打ち込んでも少し血が出た程度で突っ込んできたな。全くふざけた堅牢さだな。だが、

 

『クククッ、ヒヒヒ…やはり楽しいなぁ』

『堪らぬ血の香りで誘うものだ』

 

しかしそれを嘲笑うかのように腹部へ重い衝撃が走る。

見ればハルカの足が腹を歪めるほど強い勢いで突き刺さっていた。

 

『ゴフッガハッ…う、はぁ…はぁ…ははははは』

 

しかし足は突き刺さったまま離そうとしても離れない。その間、私の体はもう限界だった。ランタンの光が私を包み込み再生された体が出現して突き刺さった足が腹から弾かれる、

 

「化け物っ…」

『その感想は酷いじゃないか…化け物?化け物だと?お前たち生徒の方がよっぽど化け物じゃないか!!!!!銃で撃たれれば穴が空いて出血して死ぬのさ普通は!!だがお前たちはどうだ!?撃たれてもせいぜい痣ができる程度だ。私は違う!!!!!撃たれれば血は出るし死ぬ!!!!!私こそが人間だ!』

 

『ひっひひひひ…ああ』

『わたしはにんげんなんだぁぁぁあぁああああああ!!!!ヒャャハハハハハハハ』

 

怯えて足の竦むハルカを尻目に生え揃った両手を使って回転ノコギリを高々と掲げる。ハルカの瞳は震えてその淵には涙が見える。全く、身の程も知らぬような輩が下手に手を出すからこうなるのだ。

 

『伊草ハルカ、恩人の為に奮うその姿は確かに良かった。けれど、けれどね…それが出来るのは強者だけだ。貴女は強かった、だが過去の狩人たちに比べれば赤子も同然…傲慢というものさね』

 

『堪らぬ狩りだったぞ』

 

ウィイイイイイィィィィン!!!!!

 

仕掛けにより刃が回転を始めまるで金切り声にも似た音を響かせながら火花を散らす。いざ振り下ろさんとばかりに力を振り絞った。

 

ジャキッガチャッ!

ウィィィン!!!ガガガガッ…

 


 

⚪️

 

「はっ…はっ…」

『……ふむ』

 

あと少しで顔面を潰そうと迫るくるノコギリの刃が、寸前で逸れて耳元でアスファルトを削りながら停止した。よかった…というべき状況なのか。だけど、辺りの状況は芳しくなかった

 

銃を構える大勢の【ゲヘナ風紀委員会】がいまかいまかと引き金に指をかけながら近付いてきた。

馬乗り状態のこの女はそちらに気を取られて体勢を起こして私に背を向けるかたちで風紀委員会の方へ向き直した。

今この無防備な背中を撃てば…そう思った時だった。

 

『これはこれは…ゲヘナの風紀委員会の方達ではありませんか』

『どうしてこちらまで?』

 

突如変化したその雰囲気に出鼻をくじかれてしまった。先程までの殺意がまるでなかったのかの様にどこかの令嬢の様に厳かな態度で話しかけている。ほんのちょっと前までは殺し合いをしていたと言うのにも関わらずに、やっぱりこいつは狂ってる。殺さないとだめだ。

 

「いや…そこにいる便利屋たちを捕まえn」

『お前が答えるんじゃ無いこの部隊を動かしているやつを出せ、そいつと話をする』

 

そう言ってズカズカと大軍の中に入ろうとしてやっぱりと言うべきなのか止められていた。

 

「!?!?いやちょっとま」

『待てと言うのかね?ここを何処だと思っているのだ君たちは…ここはアビドス。君たちゲヘナの糞共の治める場所では無いことは知っているはずだよなぁ?どういう了見で、かつそれに見合う理由はあるのかね?』

「糞って!?おまっ!!」

「ストップストップ!!抑えて!?」

 

一部の部員が奥へ行った後に銀色の髪をで片方の赤い目を隠し【風紀】の腕章をつけた人物が砂塵を祓いながら現れた。

 

「私に何か用か?」

 

高圧的な態度であからさまに怒っている様子のその人物は【銀鏡イオリ】ゲヘナ風紀委員会切り込み隊長だ。

今までに何度も追いかけられてきた影響で名前も顔もしっかりと記憶に焼き付いている。

 

「ハルカ!こっちよこっち!」

 

後ろの車の影からアル様が顔を出して手招きしていただいている。

 

「はっはい!!」

 

思わず声が大きく出てしまい、それを叱るように口元に人差し指を当てている。また迷惑をかけてしまった。私なんか生きているべきじゃ無いんだ。何度もアル様に迷惑をかけて…私は私は私は私は私は

 

『何を呆けているさっさと行け』

 

振り返ればあの女が私のことを見下ろしていた。先程までの殺気はまるではじめから出していないかの様に無い。どちらかといえば、言葉は強いものの迷子の子供を諭すかの様な様相で優しさが見える。

 

「おい待て!!私たちはそいつらを捕まえ」

『待て待て、お前の相手は私だ。しかも先ほどからの失礼極まりない態度は何だ?』

『貴様らは良く言えば【来客】しかし悪く言えば【侵入者】だ。我が校アビドスでの定時連絡ではその様な報告は一つも上がっていない。』

『何様のつもりだ!!恥を知れ俗物!!だから糞だと言うんだ!!人様の庭に勝手に入り込み住人に暴言を喚き散らして銃口を向けてあまつさえ撃とうとしているその不逞な様が心底私は憎らしい。』

 

それを尻目に自然と足が運び車の裏へと至った

 

「ハルカよかった!!」

「心配したんだからね!?」

「もう…無茶はしないで…」

「はっはい…申し訳ありまs」

 

「謝らなくていいわ、あなたなりに私のことを考えてやったことなのでしょう?でもね、やり方が駄目だったわ」

「ア、ル様?」

「私なりにあの人の言うことを考えてみたの。確かに…私は甘い方だと思う。けれど自分の夢を諦めたく無い」

「「アルちゃん…」」

 

「便利屋68!!」

「ちょ!?何であなたたちがモゴッ!?」

「社長、バレるから」

 

目の前に突如現れたのはアビドス高校の廃校対策委員会。

でも一人少ない。

 

「アヤネちゃんホシノ先輩からの連絡はないの?」

「いつもならこんな連絡が取れないなんてことはなっ今連絡来ました!!」

 

「えっと…【何か鼻を塞げるものをつけて、マスクとかでもいい】何でしょうかコレ?砂嵐の予報も特にないので使わないと思うのですが…あ!でもマスクでしたら掃除の時に使ってた防塵マスクが、あっ便利屋の皆さんも」

 

「ちょっとノノミ先輩!?そいつらが何をしたかわかってるの!?いや確実にそうと決まった訳じゃないけど状況的に考えてさぁ…」

 

「そうよ、“私たち”が爆破したわ。柴関ラーメンを爆破したのは私たち便利屋68よ!!」

「白状したわね!!というか何で大将を抱っこしてるのよ!?」

 

“セリカ、今は抑えて。とにかく大将は今そこにいるとして…ツキミちゃんは無事なの?“

 

「あの人は無事、何だったら今風紀委員会と啀み合ってるくらいだから」

「大将も今は気絶してるけど怪我も無く無事だわ」

 

”わかった。アヤネ、念の為に急いで救急へ連絡をお願い“

 

先生がそう言った瞬間だった。

通路にそうかの様に空中から黒い何かが降ってこようとするのが見えた。

 

“全員伏せて!!!!!”

 

呆然と立ち尽くす視界の中

一際大きな人影が昼間の空の直上で輝く太陽を背に悍ましい羽で飛びながら影で覆い隠した。

 


 

 

「なっなるほどお前アビドスの人間か、だったら話が早い。早く便利屋を差し出せ」

『断る』

「お前状況がわかっているのか!?この部員の数に囲まれているのにも関わらずに…!」

「イオリちゃん準備できたけどどうする?」

「なっイオリちゃんて言うな!とにかく予定通りに進めて、このバカにも目にもの見せてやろうじゃない」

『聞こえているぞ馬鹿は貴様だイオリちゃん』

 

「ふん!そんな風に減らず口を聞けるのも今のうちだ!迫撃砲、てー!」

 

瞬間、複数の軽い破裂音と共に黒い影が頭上を通り過ぎ去っていった。

黒く輝くそれは見れば弾頭だった。

 

それがどこまで飛んでいくのかと自然と目で追ううちに、後ろを向く。

恐らくこの攻撃は便利屋を狙ったものだろう。ハルカが逃げる際にアルが顔を出していたからそれて居場所がバレた様だな。瞬時にそこまでの行動が出来るとは素晴らしいと感嘆の意すら覚える。

 

しかし、その視界の内に見たくないものが写ってしまった。

 

『…!』

 

気がついた時にはもう足は動いていた。便利屋たちだけならまだしも、アビドスの皆ごと…こいつら一体何を考えているんだ!!学園とは名ばかりの国家の様なものなのにそんな軽々と武力を行使するというのか。

 

アビドスも少人数とは言え私も含めて人がいるというのに、ここ自治区だって市民がいる。あんな曲射でしかもすぐに発射したところから見て精密にそこだけを撃ち抜くつもりなんて到底無い。

 

つまりあの弾頭は爆発する。しかも巻き込むことすら考えずに…!

 

(奴ら戦争を始めるつもりか…!!)

 

しかし私の聖杯ダンジョンを潜り抜けた足でも流石に間に合わない。弾頭の落下速度が速すぎる。焦っているのにも関わらず、こうして頭で落ち着いていられるのも狩りを続けてきた賜物だろう。

 

ああ、そうだ。私には翅があるじゃないか。彼女(星の娘)から継いだこの翅が。

 

(エーブリエタース、貴女の力を今ここで貸して下さい)

 

(薄く淡いあの柔らかな月光に照らされた祭壇の間で貴女が飛んだ様に)

 

(どうか私に飛ぶ力を与えたまえ)

 

祈りとは信仰対象のための物ではなく、それ以上に祈る者の為となる。死者への惜別の涙が、それ以上に生者の為となる様に。

 

羽ばたきはせぬその翅は空を掴み私を浮かび上がらせた。

 

鳥でもなく

 

ましてや蝶でもない

 

その悍ましき形容し難い異形のそれは確かに飛んだのだ。

 

弾頭を空中で掴み身を捩って自身の身体ごと地面へと叩きつける。静かに響く破裂音を掻き消す様に爆発音が響く。私の体は肉塊となって飛び散り辺りを血で染め上げる。ランタンは貴公の足元へと転がり落ちていった。

 

「いっいやああああああああ!!!!」




「あともうちょっとで、あと一人でお気に入り登録者数が960人になるんです…」

「どうか、誰か…誰でもいい、登録して下さい。私は小説に疲れました。もうこの物語に何も見えないのです。(構想が尽きそう)誰でもいい…だれか、うう、ああ」

追記
970人になりました!!ありがとうございます!!!!!(大迫真)
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